「付加価値の高い資源循環サービスの提供を目指し、SBT認定取得、RE100達成、取引先へのCO2排出量の原単位提示等を実施。」

加山興業株式会社

業種:製造業(廃棄物の適正処理・リサイクル事業)

毎年発刊するサステナビリティ報告書において、SDGsの取組の一環としてカーボンニュートラルの取組を整理。ステークホルダーとのコミュニケーション向上に役立たせている。

毎年発刊するサステナビリティ報告書

「KAYAMAみつばちプロジェクト」を2012年より展開。プラントに隣接するKAYAMAファームで環境指標生物であるみつばちを飼育し、はちみつ採集会の開催、採集したはちみつの販売、地元のお祭りやマルシェでの提供等を行っており、同社事業が環境に悪影響を及ぼしていないことを証明している。

KAYAMAみつばちプロジェクト
同社の太陽光パネルのリサイクルシステム

同社の太陽光パネルのリサイクルシステム

事業の概要

廃棄物の運搬から処理までを一気通貫で行うリサイクル業者。

付加価値の高い資源循環サービスが提供できるリサイクル業者となるよう、サステナビリティの考え方を経営に統合することと並行して、カーボンニュートラルへの取組にも着手。

中部地域のリサイクル業者として初めて中小企業版SBT認定を取得した後、RE100達成、CO2排出量の少ない燃料への転換、ディマンドのピークを下げる取組等を通じて、CO2排出量の原単位平均は同業者の約60%減となっている。

カーボンニュートラルへの取組を通じて、環境対応意識の高い新規顧客の獲得を実現。自社で培った脱炭素活動に加え、SDGs 実装ノウハウをコンサルティングするサービスの提供、意欲的なサステナビリティの取組を通じて、人材募集にも好影響を及ぼしている。

省エネ取組の主な概要

中小企業版SBT認定取得。目標設定にもとづき、サプライチェーン排出量削減の取組を推進。

2021年に、中部地域のリサイクル業者としては初めて中小企業版SBT認定を取得し、2019年を基準年として2030年には50.4%削減、2050年カーボンニュートラルを目標に設定。

目標設定にもとづき、サプライチェーン排出量削減の具体的方策として、Scope1、2、3それぞれで打ち立てて、取組を推進している。

サプライチェーン排出量削減に向けた取組方針(Scope1、2、3)
サプライチェーン排出量削減に向けた取組方針(Scope1、2、3)

太陽光パネルの設置及び自家消費等を通じて、RE100を実現

太陽光パネルの設置及び自家消費、CO2フリー電力の導入を進めることで、2022年にRE100を達成。

工場の屋根に太陽光パネルを設置

工場の屋根に太陽光パネルを設置

処理サービスごとのCO2排出量の原単位を取引先に提示

取引先に対し、処理フローごとにCO2排出量の原単位を毎年提示。

処理サービスごとのCO2排出量
処理サービスごとのCO2排出量

省エネ取組による省エネ効果

各取組による効果

※焼却炉の使用燃料の切り替え(灯油から都市ガス)
約10%のCO2排出量削減効果

※重機の使用燃料の切り替え(軽油からGTL燃料*)
約8.5%のCO2排出量削減効果

*GTL燃料:天然ガスを原料として製造される液体燃料

※電力使用における CO2 排出削減量(RE100 による)
年間約 3,000t -CO2

INTERVIEW
インタビュー

加山興業株式会社 代表取締役 加山順一郎 さん

加山興業株式会社 代表取締役 加山順一郎 さん

省エネの取組推進のきっかけ

付加価値の高い資源循環サービスが提供できるリサイクル業者となるよう、カーボンニュートラルへの取組にも着手。

当社は廃棄物の運搬から処理までを一気通貫で行うリサイクル業者で、2024年で64期となります。

私たちのリサイクル業界では、2010年頃に、CSR、今で言うところのSDGsの取組について、自らが積極的に取り組んだり、あるいは取引先の取組を支援したりするなどして業界を盛り上げていこうという機運が高まっていました。当時、私が産業廃棄物の全国組織の青年部会長に就任し、さまざまなCSRの取組事例を知っていく中で、自社でも継続して取り組むべきではないかと考えるようになりました。

また同時期に、リサイクル業者としてステークホルダーに選んでもらうためには、付加価値の高い資源循環サービスを提供するべきだという考えのもと、当社でどんなサービスが提供できるかについて、経営会議で様々な議論をしていました。その結果、社会課題の解決を積極的に取り組むべきであり、カーボンニュートラルもその1つと捉え、どんな取組が展開できるかを検討するようになりました。

自社のSDGs経営の考え方や方策を検討するのと並行して、SBT認定やRE100に取り組む。

2017年頃に、社会課題の解決にどう取り組むかを検討している中でイマココラボのSDGsカードゲームに出会い、「このツールを活用して、いろんな方と出会い、SDGsを理解してもらいながら納得してゴミを出してもらえるようにしよう」と考え、SDGsコンパスを読み解きながら企業としてどう取り組むべきか社内で議論し、サステナビリティを経営に同軸化(一体化)して推進しています。

その後、2018年より定期的に、本社や名古屋市内でSDGsカードゲームのワークショップを企画・開催しながら、いろんな方と出会い、考え方を広めていきました。今では、「企業がどのようにSDGs経営を進めるべきか」という切り口でコンサルティングする事業も展開しています。

なお、SDGsの取組は、SBT認定やRE100達成といったカーボンニュートラルの取組(後述)とほぼ同時期に進めてきました。自社でどんなSDGs経営が展開できるか、考え方や方策を検討していく上では、カーボンニュートラルの取組を同時並行で考えて実践することは効果的だったと思っています。

取組推進のポイント

SBT認定をいち早く取得することで新規顧客を獲得。2022年にRE100を達成。

2021年に、中部地域のリサイクル業者としては初めて中小企業版SBT認定を取得しました。2019年を基準年として2030年に50.4%削減、2050年のカーボンニュートラルを目標に設定しています。

SBT認定を取得した時期が早かったこともあり、プレスリリースを見た大手メーカーから「こういう業者と、ぜひともお付き合いがしたい」と声がかかり、新たに営業許可を取得し、全国の収集運搬を任せてもらうようになりました。

また、太陽光パネルの設置及び自家消費、CO2フリー電力の導入を進めていき、2022年には工場を含む事業所全体の使用電力を全て再エネ由来とし、RE100を達成しました。再エネ電力に切り替えることによるコストアップは免れません。そのため、事業活動に本当に必要かどうかを社内で徹底的に議論した上で、付加価値の高い資源循環サービスを提供する上で必要な取組と認識し、実施しています。

なお、燃料については、焼却炉は灯油から都市ガスへ、重機は軽油からGTLへと、できる限りCO2排出量の少ないものに転換しています。

現場を説得し、ディマンドを下げる取組を実践。コストダウンにつながる。

リサイクルするごみの量が増えれば増えるほど、電気などエネルギー消費量はおのずと増えてしまいます。また、リサイクル業者の工場は大型設備が多いので、一般的な工場での省エネ活動が適用できない性質もあります。

そういう中でも、電気量のディマンドを下げる取組は効果的だったと思います。例えば、破砕機に大きな丸太が入ると、電力ピークが急激に上がってしまいます。そうならないよう、一定のところまで電力消費量があがると、自動的に機械停止させることでピークカットするようにしています。

現場を説得するため、口論を繰り返しました。機械停止すると、機械にユンボを突っ込み、電力負荷をかけたものを取り除いてから運転再開するため、機械停止から再稼働するまでに長い時は10分ほどかかり、作業効率を下げてしまいます。現場に理解してもらうよう、「電力ピークが上がると、年間契約額が300万円上がる。ピークカットすれば、給料1人分のコストダウンができる」などと話をしながら説得しました。

また、全ての焼却炉の電源を同時にオンにするときも電力ピークが跳ね上がってしまうので、朝は30分ずつ時間をずらして立ち上げるようにしています。

サービス提供者に対し、処理サービスごとにCO2排出量の原単位を提示。有用性を評価する企業も多い。

当社ではさまざまなごみの処理サービスを提供していますが、サービス提供者には処理するごみ別にCO2排出量の原単位を毎年提示しています。当社はRE100を実現しているので、他のリサイクル業者に比べるとごみ処理におけるCO2排出量の原単位が随分下がることになります。

多くのメーカーにとって、ごみ処理によるサプライチェーン排出量算定のScope3カテゴリーで占める割合は決して大きくはないのですが、企業のサステナビリティ推進室の担当者などに有効なサービスだと喜ばれることも多くなっています。企業の皆さんは、少しでもCO2排出量が削減できるよう、懸命に検討していることに気づかされます。

取組効果、今後の課題

脱炭素対策をはじめとしたサステナビリティの推進による効果について。

まずは出来るところから着実に推進していく方針のもと、焼却炉のエネルギーを灯油から都市ガスに切り替えることで約10%、重機を軽油からGTL燃料に切り替えることで約8.5%、それぞれCO2排出量の削減を推進しました。。また、重機をなるべく電化することによって脱化石燃料も推進していることに加え、RE100の推進によって、電力使用によるCO2排出削減量は年間約3,000t-CO2に及びます。

取引先へ処理サービスごとに提示するCO2排出量の原単位をはじめ、サステナビリティコミュニケーションも力を入れることで顧客に評価されております。上場企業からのサステナビリティにおけるサプライヤー調査において高評価を獲得し、取引の離反を抑さえつつも新規取引先を増やしています。これらは、付加価値の高い有効なサービスを提供できていることがその要因の1つだと考えています。

さらに、様々なサステナビリティ経営の取組を実践し、真摯に向き合う姿が様々なステークホルダーに認知されることで、連携プロジェクトについてお誘いいただくケースが増えています。

ステークホルダーの一つである就活生においても、サステナビリティに真摯に向き合っている企業として認められることで興味を持っていただき、実際に採用につながったケースも多数あります。

一連の取組を通じて、SDGs経営のような非財務の取組が財務に周り回ってくることを実感しているので、SBT認定取得後に新規顧客を獲得したように、今後もカーボンニュートラルの取組が財務に効果をもたらすものと捉え、積極的に展開していこうと思っています。

再エネ関連のイノベーション推進に期待しながら、社員教育など自社でできる取組を推進していく。

再エネについては、太陽光パネルによる自家消費率はまだ小さいので、蓄電池を保有するなどして自家消費していく取組も必要だと考えています。また、焼却炉は電力消費量やCO2排出量が大きい設備であるため、CO2を有効利用できるような取組も実施できればと考えています。再エネ関係のイノベーション推進に期待し、導入できそうな技術等があれば取り入れていきたいと思っています。

また、カーボンニュートラルに取り組む上では内部調整もとても重要です。特に、営業担当は取引先に自社の取組の有用性を訴求するためにも十分理解する必要があるので、引き続き社員教育を進めていくつもりです。

企業データ

加山興業株式会社
業種:製造業(廃棄物の適正処理・リサイクル事業)
住所:愛知県豊川市南千両2-67(豊川本社。名古屋本社[愛知県名古屋市熱田区南1-15-5])

PDFダウンロード

企業事例一覧に戻る

本ページに関するお問合せ先

中部経済産業局 資源エネルギー環境部 エネルギー対策課
〒460-8510
愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052-951-0417
(応対時間:9時~12時、13時~17時)
FAX番号:052-951-2568
メール:bzl-chb-shoeneteikidata■meti.go.jp
※スパムメール対策のため、@を■に変えてあります。メールを送信するときは、■を@に戻してから送信してください。