「社員が働きやすい職場づくりを重視し、自社でエネルギー消費量やCO2排出量の算出・シミュレーションを行い、省エネ活動を実践。」

株式会社岩田製作所

業種:製造業(産業用機械部品の開発・製造・販売)

  • セットカラー

    セットカラー。
    軸に取り付けてベアリングやプーリー等を固定する。

  • シム・スペーサー

    シム・スペーサー。
    すき間調整用の部品。

  • 空からみた工場の様子

    空からみた工場の様子。
    左側の工場棟が第3工場で、2024年4月に稼働開始している。

事業の概要

工作機械、自動化装置等に使用される金属部品45,000アイテムを取り扱う。

取引先からのカーボンニュートラル推進の要求を受けて、エネルギー消費量やCO2排出量の推移を自力で算出。社員との雑談をきっかけに照明のLED化を実施し、働きやすさの向上が省エネにもプラスに働く取組であることに気づく。

エネルギー関連の補助金を活用して、空調設備の更新、マシニングセンタの導入を実施。省エネ実現に止まらず、作業空間の改善やコスト削減、労働時間の削減にもつなげている。省エネ診断も受診。

「社員が働きやすい職場づくり」を重視し、省エネ活動を推進。約15%の省エネを達成。製品1個単位のCO2排出量の算出、太陽光パネルによる自家発電などの検討も進めている。

省エネ取組の主な概要

照明のLED化

「関市ものづくり脱炭素経営推進事業費補助金」を活用し、工場内の95%の照明をLED化。

補助金申請の際、昔からある照明のため、それぞれの電力消費量が不明だったことから、1つずつ蛍光灯を取り外してワット数を確認。点灯時間も加味して部屋ごとにLED化によるエネルギー使用量及びCO2排出量の削減状況を算出。

蛍光灯のシール。ワット数が記載されている
蛍光灯のシール。ワット数が記載されている

  • LED化する前の作業空間

    LED化する前の作業空間

  • LED照明を導入した作業空間

    LED照明を導入した作業空間

空調設備の更新

「岐阜県中小企業脱炭素化推進補助金」を活用し、空調設備を計13台更新。

導入した空調設備

導入した空調設備

マニシングセンタ等を導入し、工場の稼働時間削減によりエネルギー使用量を削減

「岐阜県エネルギー価格・物価高騰対策設備整備事業費補助金」を活用し、マシニングセンタ等を4台導入。加工時間の短縮が省エネ、コスト削減、労働時間の削減につながる。

導入したマニシングセンタ

導入したマニシングセンタ

省エネ取組による省エネ効果

各取組での効果

※照明のLED化
年間エネルギー使用量 5.66kL(年間)削減(原油換算)
CO2排出量 10.06t-CO2(年間)削減
コスト低減 339,141円(年間)(電気代の削減による)

INTERVIEW
インタビュー

株式会社岩田製作所 代表取締役 蜂須賀 慶さん

株式会社岩田製作所 代表取締役 蜂須賀 慶さん

省エネの取組推進のきっかけ

取引先の要求を受けて自ら取り組めることを模索し、エネルギー消費量やCO2排出量の推移を自力で算出。

当社は産業用機械部品メーカーで、主にセットカラー、シム・スペーサーの開発・製造・販売を行っています。

2020年頃から、私たちのような中小企業でもSDGsやカーボンニュートラル(以下、「CN」)に対する取組姿勢を取引先から問われることが増えてきました。ヨーロッパ方面への輸出が多い大手メーカーからは、CNの取組状況に関するアンケートが来ました。当時の社長(岩田修造さん。2024年12月より会長)が、将来的にCNへの取組姿勢が取引条件の1つになりうるものと判断し、当社で取り組めることやCNを巡る社会情勢について調査を着手しました。

その後、2003年にISO14001の認証を取得しており電気・ガス・ガソリンなどのデータは集計していたため、まずは自分たちでCO2排出量を計算することにしました。電力会社に相談して計算方法などを指導してもらった上で、毎月の電気使用量のデータを活用し、Excel上で2008年以降のエネルギー消費量やCO2排出量の推移を算出しました。

社員との雑談をきっかけに、市の補助金を活用して照明のLED化を実施。

ある時、社員と雑談していると、「部屋が少し暗いと思う」という話を聞きました。私も同じように感じていたので、照明のLED化について検討することにしました。

当時、「関市ものづくり脱炭素経営推進事業費補助金」が新設されたことを思い出し、まずは市役所へ話を聞きに行きました。その際、設備から排出される温室効果ガスを従前より年間10トン以上削減するケースが対象になると説明してもらったので、LED化でどのくらい電気消費量が削減されるのかを計算することにしました。

計算するにあたり、電気工事会社と一緒に1つずつ蛍光灯を取り外し、貼っているシールに表示されたワット数を確認する作業を1日かけて行いました。その数字をもとに、点灯時間も加味して、部屋ごとに現状とLED化した場合のエネルギー使用量及びCO2排出量の比較表を作成して市に提出。無事に補助金が適用でき、照明の95%をLED化しました。ちなみに、当社がこの補助金の利用者第1号だったこともあり、市の広報で紹介されました。

照明のLED化により、作業環境が明るくなったのに加え、消費電力の半減や電気代削減にもつながったので、省エネ活動は企業にとっていろんな面でプラスに働く取組だとその時思いました。

取組推進のポイント

省エネ診断を受診し、専門家より10の改善提案をもらう。社内にはない視点での提案が多い。

関市で毎年開催される「ビジネスプラス展 in SEKI」に参加した際に、市の担当者から「岐阜県中小企業脱炭素化推進補助金」を紹介されて、この補助金は省エネ診断を受診することが適用条件になっているという説明を受けました。その時、省エネ診断について初めて知り、調べてみると診断料が1万円程度と安価だったため、省エネ診断を受診することにしました。

省エネ診断の専門家が診断する現場に、私と技術系社員2人の計3人が2日間立ち会いました。専門家と私たちが現場で会話するだけでも、省エネに関するいろんな気づきがあったように思っています。

また、診断結果の報告書には10個の改善提案をもらいました。自分たちでまとめるのが難しいのは勿論のこと、中には、「電気消費量が多いコンプレッサーの改善」といった全く気付いていなかった提案内容もあり、とても参考になりました。また、「生産設備の更新」についても提案がありました。提案内容について、社内で検討を進めています。

県の補助金を活用し、既存工場の空調設備を多数更新。社員の働きやすい作業空間に改善できた。

当社は2024年5月に、敷地内に第3工場を新設し稼働していますが、それ以前から工場全館に空調設備を導入しています。工場に来られた取引先の方には、「夏場も冬場も空調が利いているので快適ですね」とよく言われていました。

同じ年に、既存工場の空調設備について、「岐阜県中小企業脱炭素化推進補助金」を活用して計13台更新し、エネルギー使用量やCO2排出量の大幅な削減を実現しています。

多数の空調設備を設備更新したのでコストはそれなりにかかっていて、補助率が3分の1あっても減価償却期間を計算すると20年以上に及びます。しかし、暑さや寒さを感じにくい快適な作業空間にすることは、社員が働きやすい職場環境づくりにもつながるので、その点でも当社にとって必要な取組だと考えています。

マシニングセンタ等を新たに4台導入。加工時間の短縮が省エネ、コスト削減、労働時間の削減につながる。

2023年には、「岐阜県エネルギー価格・物価高騰対策設備整備事業費補助金」を活用し、新しいマシニングセンタ(切削加工装置)を中心に、4台の新規設備を導入しました。

補助金申請の際に、導入効果に関するシミュレーションを行いました。既存のマニシングセンタでは、年間生産数2万個の製品を作るのに、1日14.5時間動かす必要があるため、切削加工の一部を外注していました。新しいマシニングセンタを導入することで、1日8.5時間の稼働に短縮できるので、社員でシフトを組むことができ、外注することなく製品を作ることができます。

導入設備のエネルギー効率は既存設備とあまり変わりませんが、加工時間が短縮されることで設備の稼働時間が減り、結果的に省エネにつながることにその時気づきました。加えて、電気代や外注費などのコスト削減につながります。さらに、労働時間の削減にもつながり、社員の勤務日数を1日減らすことができました。

取組効果、今後の課題

省エネにかかる実績について。

省エネのLED化では、エネルギー消費量は5.66 kL(年間)削減、CO2排出量が10.06トン(年間)削減となりました。また、空調設備を13台更新することで、エネルギー消費量は4.79kL(年間)、CO2排出量が7.73トン(年間)削減となりました。

当社では、「一番大事なのは社員、2番目は仕入先、3番目にお客様」という経営理念があり、社員の働きやすさを最優先に、職場環境づくりや給与水準、福利厚生に注力しています。その結果、最近は3年以内にやめる社員はいないなど、定着率が高くなっています。

当社の多くの省エネ活動は、「社員が働きやすい職場づくり」を追及していったら、結果的に省エネになった、という事例が多いように思います。

製品1個単位のCO2排出量の算出、太陽光パネルによる自家発電などを社内で検討していく。

新工場の屋根に太陽光パネルを設置することについて、検討を進めています。太陽光パネルの設置により、工場全体のエネルギー消費量の25%が賄えて、15年程度で投資回収できる見込みです。太陽光パネルで自家発電できれば、自ずと製品1個あたりのCO2排出量も削減できるので、取引先の評価にもつながるものと考えます。太陽光パネル廃棄時の対応やメンテナンスの在り方など、まだまだ検討の余地がありますが、価値の高い省エネ活動だと考えています。

また、今後は製品1個単位におけるエネルギー使用量やCO2排出量も算出できればと考えています。但し、当社の製品は4万5,000アイテムあり、それぞれ1個当たりの加工時間はデータ取りしていますが、自分たちだけで作る製品、協力会社による加工工程が入る製品、海外から輸入する製品、さらには使用する材料がさまざまであるため、ハードルは高いものと思っています。

企業データ

株式会社岩田製作所
業種:製造業(産業用機械部品の開発・製造・販売)
住所:岐阜県関市池尻923-1

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