「環境事業の成長を目的にSBT認定を取得。CN実現に向けて、改善活動の積み重ねと、環境事業の拡大による新たな取組への投資を目指す。」

サハシ特殊鋼株式会社

業種:卸売業(特殊鋼材の販売、機械加工、金属製品・製缶品の組立、各種プラントの製作・施工、各種装置・設備の設計開発)

様々なメーカーとのタイアップにより多種多様な特殊鋼等の在庫を有し、小ロットから即日対応、即納体制を実践している。

多種多様な特殊鋼等の在庫

3Dレーザー加工、摩擦圧接、セラミック加工・溶射など、様々な加工サービスを提供。

  • 3Dレーザー加工
  • 摩擦圧接
  • セラミック加工・溶射

7年前から展開する環境事業における代表的な製品「摩擦乾燥機DRY-E」。
化石燃料を使わずに摩擦熱を利用して乾燥・粉体化ができる特許取得済みの乾燥機で、使用済廃棄予定のおむつのペレット化、食品の製粉機等の用途で販売実績がある。

摩擦乾燥機DRY-E

摩擦乾燥機DRY-E

事業の概要

特殊鋼材の卸売販売業を主とするほか、部品加工サービス、プラント事業、環境事業も展開。

環境事業において、カーボンニュートラルを意識して製品・装置の開発に取り組む上で必要性を感じ、SBT認定の取得に着手。

環境事業で販売展開する製品・装置に説得力を持たせることが取得目的の1つと捉え、2022年にSBT認定を取得。カーボンニュートラル実現に向けたロードマップにもとづき、改善活動も積み重ねる。

SBT認定の取得が、プラント事業における高評価、若手人材の雇用確保など事業活動への波及効果を創出。カーボンニュートラル実現に向けて、改善活動の積み重ねと、環境事業の拡大による新たな取組への投資を目指す。

省エネ取組の主な概要

SBT認定を取得。目標に沿って、CO2排出量削減に向けたロードマップも作成。

2022年10月にSBT認定を取得。
2021年を基準として2030年に25%削減を目指すことを目標とし、ロードマップを作成している。

省エネの取組による効果

各取組による効果

※販売する摩擦乾燥機DRY-EにおけるCO2排出量
使用済み紙おむつの廃棄の場合(通常の焼却処理との比較)約25%の削減効果

INTERVIEW
インタビュー

サハシ特殊鋼株式会社
取締役 佐橋 拓弥さん

省エネの取組推進のきっかけ

環境事業を推進する中で必要性を感じ、SBT認定の取得に着手。

当社は創業1903年で、鉄にカーボンやマンガン、クロム等を添加し、性能を強化した特殊鋼材の卸売販売業を主に行っています。

経営理念の1つとして「いろんなことにチャレンジする」と掲げていることもあり、事業活動の中で取引先から依頼されることで、新たな事業を展開してきました。2000年頃からは、自動車や産業機器等の部品加工サービスを始めるようになりました。2010年頃からは、大型機械や生産設備の設計製作から施工・据付、アフターメンテナンスまで取り扱うプラント事業を開始しています。

2017年頃からは、全く新たな展開として環境事業に着手しています。環境事業を展開していく上で、環境ビジネスや環境技術、エネルギー、リサイクルなど、環境について多角的に学ぶべきだと考えて、当社の人材が愛知県主催の「あいち環境塾」に2019年から継続して参加しています。

2020年代に入ってから、「カーボンニュートラル」という新たなキーワードが出てきて、企業がカーボンニュートラル実現に向けた目標を設定するツールとなる「SBT」が注目されるようになりました。当社は環境事業を推進する企業として、自分ごととしてSBTについて理解を深めるべきだと思い、SBT認定の取得に着手しました。

環境事業において、カーボンニュートラルを意識して製品・装置の開発に取り組む。

当社の環境事業では、有識者や企業などと協働しながら、技術開発や販路開拓を進めてきました。

代表的な製品が、化石燃料を使わずに摩擦熱を利用して乾燥・粉体化ができる摩擦乾燥機DRY-Eです。プラント事業の取引先に使用済み装置開発者を紹介されたのが開発のきっかけで、名古屋大学の先生の協力も得て、開発を進めてきました。使用済み紙おむつを高温殺菌し、プラスチックペレットを製造する装置として、NIPPON紙おむつリサイクル推進協会では有用な処理技術として紹介されています。また、食品の製粉機などの別用途でも販売実績があり、売上を伸ばしています。

この他に、大学やJAXAとの共同研究で、月面基地での活用を視野に入れた酸化還元反応による熱バッテリーの開発も行っています。

これらに限らず、環境事業において開発・販売する製品や装置については、ユーザーの「カーボンニュートラル」に寄与することを必ず意識しています。

取組推進のポイント

SBT認定を2022年に取得。環境事業で販売展開する製品・装置に説得力を持たせることが取得目的の1つ。

当社では2022年10月にSBT認定を取得しました。中小企業の卸売業者としては、取得時期が早かったと思います。取得に際しては、CO2排出量の算定方法を個別に教えていただいた上で、社内人材でCO2排出量の算出や、カーボンニュートラル実現に向けたロードマップ作成を行いました。

当社がSBT認定を取得した目的の1つとして、環境事業において販売する製品・装置に説得力を持たせることがあります。自社のCO2排出量を把握するのは勿論のこと、「カーボンニュートラルに寄与する製品・装置」と謳って販売する上では、その製品・装置がどれだけのCO2排出量の削減効果があるか、ユーザーへ数値化して示すことが必要です。

実際、摩擦乾燥機DRY-Eを販売する際には、ユーザーに対し、電力使用量やCO2排出量の削減効果がどれだけあるかをその都度算出し、提示しています。

カーボンニュートラル実現に向けたロードマップにもとづき、改善活動を積み重ねる。

当社は卸売販売業を主としているため、エネルギー使用量やCO2排出量は決して大きくはないのですが、カーボンニュートラル実現に向けたロードマップにもとづき、できることから取り組んでいます。

まず、CO2排出量の7割弱を占める輸送燃料については、営業車をハイブリット車に切り替えることでエネルギー使用量の削減を進めています。

また、毎月の改善活動において、電力やガスの使用量削減にも取り組んでいます。例えば、部品加工サービスで行う肉盛溶接(金属表面に溶接材料を溶接し、補修や耐久性を向上させる溶接)においては、独自に作成した治具に設置して溶接することで、塗着効率を向上させ、ガス使用量の削減を図りました。また、就業時間の短縮により、事務所の電力消費量削減につなげています。

取組効果、今後の課題

省エネにかかる実績について。

当社自身のエネルギー使用量やCO2排出量については、数値が大きくなく、また販売量や受注量に左右されるため、SBT認定の取得前後で大きな変化はみられないのが現状です。

一方、摩擦乾燥機DRY-Eについては、装置の稼働条件により変化しますが、通常の焼却処理と比較すると、CO2排出量を約25%削減できる効果があります。

また、SBT認定の取得による事業活動への効果もみられます。特に、プラント事業においては、CO2排出量削減の工夫を求められることが増えており、CO2排出量の算出に加え、排出量削減に向けたダクトの工夫等も提案できる企業として重宝されるようになってきています。

さらに、SBT認定の取得と合わせて、カーボンニュートラルに寄与する製品・装置の開発や販売を行う企業としてホームページで広くアピールすることで若い方の関心を引き、最近は新卒者をはじめとする若手人材の雇用が進み、2024年には従業員が4名増えました。

カーボンニュートラル実現に向けて、改善活動の積み重ねと、環境事業の拡大による新たな取組への投資を目指す。

今後も、カーボンニュートラル実現に向けたロードマップにもとづき、例えばWEB商談を増やして営業車によるCO2排出量削減を図るなど、できることから積み重ねていくつもりです。

また、今後考えられる取組としては、充電設備の設置・運用を含めたEV自動車の導入や、CO2フリー電力の購入、太陽光パネル(倉庫に設置済み)のFIT期間終了後の運用等が考えられ、いずれも投資コストの大きな取組になります。

投資する上では収益確保が当然必要になります。そのため、売上を伸ばしている環境事業において、摩擦乾燥機DRY-Eのさらなる横展開や海外展開なども含めて事業を拡大していき、確保できた収益で投資していくことで、自社の事業活動と製品・装置のユーザーの双方でカーボンニュートラル実現に寄与できればと考えています。

企業データ

サハシ特殊鋼株式会社
業種:卸売業(特殊鋼材の販売、機械加工、金属製品・製缶品の組立、
各種プラントの製作・施工、各種装置・設備の設計開発)
住所:愛知県名古屋市港区油屋町1-33

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