「SBT認定取得時の目標を目指し、省エネ診断の受診結果を踏まえて工場の改善活動の一環として全社的に省エネ活動を継続して実施。」

河村産業株式会社

業種:製造業(電気絶縁材料・電子材料の精密加工)

  • 各種プラスチックフィルム、金属箔、絶縁物などのスリット加工品

    各種プラスチックフィルム、金属箔、絶縁物などのスリット加工品

  • 変圧器(トランス)用の絶縁物加工

    変圧器(トランス)用の絶縁物加工

  • 接着剤レスの耐熱性に優れたステンレス/ポリイミド積層材料

    接着剤レスの耐熱性に優れたステンレス/ポリイミド積層材料

事業の概要

電気絶縁材料・電子材料の精密加工を得意とし、電力・自動車・半導体部品など幅広い業界で展開。

取引先からの問合せや展示会での商品群などから、カーボンニュートラル対応の必要性に気づき、金融機関からの紹介で三重県の「脱炭素経営支援事業」と「省エネお助け隊」を知り、事業を活用。

三重県の事業で専門家の指導を受けて、2022年に中小企業版SBT認定を取得。省エネ診断を受診し、電力ピークの抑制などを実践するほか、社内で各種データ取りを行い、取組策の検討を進めている。

SBT認定の取得時の目標「2030年に42%削減(2020年基準)」を目指し、工場の改善活動の一環として全社的に省エネ活動を継続的に推進。「三重のサステナブル経営アワード」の表彰をはじめ、ホームページにおいて温室効果ガス排出量や環境配慮への取組について積極的に情報発信している。

省エネ取組の主な概要

中小企業版SBT認定取得

三重県の「脱炭素経営支援事業」に参加し、専門家の指導を受けて2022年に中小企業版SBT認定を取得。2020年を基準として2030年に42%削減を目指す(SBT1.5℃水準)を目標とし、事業活動に伴う温室効果ガス排出削減に向けた取組を実践。

省エネお助け隊による省エネ診断・支援を受ける

2022,2023年度の2年間で、省エネお助け隊による省エネ診断・支援を受ける。
省エネ診断の受診結果をもとにした設備の運用改善の具体的検討、実践を行っている。

省エネ診断における専門家による主な提案内容1
省エネ診断における専門家による主な提案内容2
省エネ診断における専門家による主な提案内容

太陽光パネルの設置

太陽光パネルを本社工場と上石津工場(岐阜県大垣市) で導入。

発電した電気は、工場や電気自動車、事務所の一部に供給するほか、本社工場では充放電設備(V2H)も導入し、電気自動車を電源として事務所の一部に給電が出来る仕組みを構築している。

太陽光パネルの設置、充放電設備(V2H)の導入

太陽光パネルの設置、充放電設備(V2H)の導入

再生可能エネルギーの導入

本社工場と上石津工場において、県内で作られた再エネ電力利用に積極的に取り組んでいる。

三重県からは、令和3年度に「三重県産再エネ電力利用事業者」として認定を受けている。

表彰の様子

表彰の様子

省エネ取組による省エネ効果

各取組での効果

※太陽光パネルの設置によるCO2排出量削減効果 30 t-CO2(年間)減

INTERVIEW
インタビュー

河村産業株式会社 管理本部 統轄 河村 香保里さん(右)、総務部 総務課 課長 舘 裕貴さん(左)

河村産業株式会社
管理本部 統轄 河村 香保里さん(右)
総務部 総務課 課長 舘 裕貴さん(左)

省エネの取組推進のきっかけ

取引先からの問合せや展示会での商品群などから、カーボンニュートラル対応の必要性に気づく。

当社のメイン事業は、大きなロール状になった紙やフィルム、金属といった材料を、一定の幅に連続裁断し、使いやすいサイズに巻き上げるスリット加工です。その他にも表面処理加工や打ち抜き加工、熱ラミネート加工なども行っていて、電気絶縁材料・電子材料の精密加工を得意とし、電力・自動車・半導体製造装置部品など幅広い業界で展開しています。

当社がカーボンニュートラル実現に向けた取組を進めるようになったのは2021年ごろからです。それ以前に、取引先から見積アイテムに対するCO2排出量の問合せがあったのと、展示会でもカーボンニュートラル対応の製品が増えてきたこと、さらには菅元総理によるカーボンニュートラル宣言もあり、「当社でも進めるべきだ」と、経営層も含めて考えるようになりました。

しかし、当初は何をどうすれば良いのか、またどこから手を付けて良いのかもわからない状態でした。

日頃からつきあいのある金融機関から、各種施策について紹介される。同時期に、太陽光パネルを2工場に設置。

どう取り組んでいけばいいかを悩んでいたところ、当社が日頃からよく相談している金融機関の担当者から、タイミングよく三重県の「脱炭素経営支援事業」(後述)を紹介いただきました。その後、三重県の事業に参加した際に「省エネお助け隊」(後述)について教えてもらったので、こちらも活用することになりました。県や国の支援を受けながら取組を模索できたので、非常に有難かったです。

同時期に、少しでも取り組んでいこうということで、当時、太陽光パネルを設置しました。太陽光パネルは設置してから10年で減価償却できると算出した上で、トップが必要と判断し、本社と上石津工場(岐阜県大垣市)に設置しています。なお、本社の太陽光パネルは、電気自動車を充電できるように、さらにはBCPの観点で、緊急時は車から工場へ電気を送り込めるようにもしています。また、これら2つの工場では、地域で作られた再エネ電力の利用にも積極的に取り組んできました。

取組推進のポイント

三重県の事業に参加し、専門家の指導を受けて2022年にSBT認定を取得。

2021年12月から2022年3月まで、三重県の「脱炭素経営支援事業」に参加しました。この事業はサプライチェーン排出量におけるScope1,2の算定が主な内容で、専門家の方に当社へ3回お越しいただき、Scope1,2及びScope3(一部)の算定方法の確立や、今後の中長期目標の策定をサポートいただき、さらにはSBT認定の取得に向けた相談にも対応いただきました。

事業に参加することで、まずScope1,2,3を勉強し、社内のあらゆるエネルギー関連の情報を集約し、CO2排出量を算定しました。その後の目標や計画づくりは、コストとの兼ね合いもあるので、思いの外難しかったです。支援中は、金融機関の担当者が専門家との仲介役を担い、理解が難しい点もフォローして下さったので、当社としては最初のご紹介に加え、その点も有難かったと感じております。

三重県の事業に参画することで、中小企業版SBTを2022年3月に取得することができました。支援事業が進むと、CO2の排出量を把握するためには経理課の協力が無ければ出来ないことや、コツコツと毎月のデータの積み重ねが必要であること、そしてカーボンニュートラル実現のために電化や機器更新が必要であり、大型の投資が必要であることを実感しました。

省エネお助け隊による省エネ診断・支援を受けて、具体的な提案をもらう。

2022年度より2年間、「省エネお助け隊」による省エネ診断・支援を受けました。

専門家が訪問され、実際の現場を見て頂き、必要なデータを提出すると、まずは何をするべきかアドバイスいただけます。当社は診断結果として、温度・湿度の常時管理が必要で電気消費の大きいクリーンルームの改善、熱プレス加工の改善、電力ピークの抑制などを提案いただきました。現在、提案を受けて、優先順位を付けながら取組を進めています。

2年間、同じ専門家にみてもらいました。専門家の方が、理論的に、かつ厳しいことも含めてハッキリと言ってくれていたので、社内全体で取り組もうという機運づくりにも貢献いただいたように思います。社内だけで取り組んでいたら、妥協して進められなかったとも思います。

また、費用が1割負担だけで、中小企業にとってやさしい価格設定になっているのも有難かったです。

省エネ診断・支援を受けたことで、社内でデータ取りを行い、取組策を検討できるようになった。

省エネ診断の専門家に契約電力オーバーが夏場に数日発生していたことを相談したところ、電力ピークの抑制対策として、契約電力オーバーの要因の1つである大型プレスの稼働時の電力について、機械の稼働スタートを「00分」「30分」から「15分」「45分」にずらすことで、電力ピークの抑制になることを数字とグラフにまとめていただきました。数字やグラフで示してもらうことで作業担当者にもわかりやすく、今では「15分」「45分」のスタートを現場で積極的に取り入れています。

現在では、クランプメーターや温湿度計などの測定器を購入したり、中部電力が貸し出している測定器(エア漏れ確認機器)を使用したりして、社内で各種データ取りを行っています。クリーンルームについても、品質が下がらない停止時間を測定して割り出し、不要な時間はタイマー設定で止めることで、電力使用量の削減を行っています。専門家にデータ取得の重要性を説いてもらったからこそ、自分たちでデータ取りを行い、取組策を検討できるようになったのだと思っています。

また、省エネお助け隊に相談したことで、参画したメンバーの省エネ知識レベルが上がり、自分たちでこんなことも出来るのではないかと積極的に取り組んでくれるようになったことも嬉しい成果でした。

取組効果、今後の課題

省エネにかかる効果について。

取引先からCO2排出量やその目標についての問合せが増えていますが、SBT認定を取得することで取引先への回答がスムーズにできています。また、社員への説明もしやすいことも、効果の1つと考えます。

今後も、SBT認定の取得時の目標「2030年に42%削減(2020年基準)」を目指し、カーボンフットプリントの算出をはじめ、最新情報を入手しながら省エネ活動を模索していきたいと考えています。

また、省エネ活動に加え、SDGs経営全般に積極的に取り組むことで、三重県から第1回「三重のサステナブル経営アワード」で表彰されました。HPにサステナビリティページを開設し、リクルーティングへの好影響も期待しつつ、温室効果ガス排出量や、環境配慮への取組について積極的な発信もしています。

工場の改善活動の一環として全社的に省エネ活動を継続的に推進。

取組を通じて、経営層のカーボンニュートラルへの理解が重要であることを実感しています。カーボンニュートラルや省エネには電化や高効率の機器への更新が必要であり、大型の投資が必要なタイミングが来るからです。現在、工場の改善活動の一環として、省エネも改善テーマの1つとして取り上げて全社的に取り組んでいます。

一方で、カーボンニュートラルの取組はとても細かい作業が多く、継続の難しさを実感しています。中小企業は目の前の仕事に忙殺されがちで、カーボンニュートラルへの意識は遠のきがちだと思いますが、だからこそ将来のために小さいことから積み重ねて取組を継続することが重要であると考えています。

自社のCO2排出量を把握し、設備更新時には補助金もうまく使いながら高効率の設備をできるだけ導入し、将来起こりうる要請に備えることこそが、カーボンニュートラルへの道に繋がると思っています。

企業データ

河村産業株式会社
業種:製造業(電気絶縁材料・電子材料の精密加工)
住所:三重県四日市市西大鐘町330

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