「SDGsの取組の一環としてカーボンニュートラルへの対応を位置づけ、全社的にできるところから活動を実践」

ヤマサン食品工業株式会社

業種:製造業(野菜加工品、山菜加工品[水煮パック・レトルトパック]の製造・輸入・販売)

SDGsの取組を推進する「サステナビリティ推進委員会」において、毎月、自社の取組や用語解説などをA4サイズにとりまとめて通信を作成。 社内のポータルサイトで発信するほか、商談室にも掲示している。

  • うまみまるごと野菜シリーズ、パパッとデリサラシリーズ
  • サステナビリティ推進委員会通信

事業の概要

野菜や山菜の水煮パック・レトルトパックを業務用や家庭用で販売。

食品スーパーとの取引でカーボンニュートラルへの対応が問われるようになったのを機に、本格的な検討に着手。部署横断による「サステナビリティ推進委員会」が先導するSDGsの取組の一環として、カーボンニュートラルの具体的な取組を実践。

非化石証書の導入で、本社工場及び事務所の使用電力を100%実質再生可能エネルギーに転換。並行して、全社的な節電対策と、毎月の電力使用量の算出・レビューにより社員の意識啓発を図る。

全社的な節電対策等を通じて電力使用量は昨年度比で2.0%減少。カーボンニュートラルへの意識浸透に加え、LPG消費量の削減、エネルギー原単位の算出も将来的に見据える。

省エネ取組の主な概要

非化石証書の導入により、使用電力を100%再生可能エネルギーに転換

2022年より、北酸株式会社が取次サービスする非化石証書を購入。

購入の1,2年目は、本社工場及び事務所の年間使用電力の50%超を実質再エネ化し、3年目の2024年からは100%実質再エネ化を実現する。

非化石証書
非化石証書

全社的な節電対策と、毎月の電力使用量の算出・レビューによる意識啓発

全社的に節電対策を実施。半期ごとに全部署を対象とした節電対策のアンケートで取組を棚卸し、レビューを行い、全社員へ情報発信。 また、SDGsの取組状況について毎月発信する「サステナビリティ推進委員会通信」の中で、毎月の電力使用量と電気料金を算出し、その実績を経年変化のグラフ等で提示。

電力使用量と電気料金のグラフ
電力使用量と電気料金のグラフ

省エネ取組による省エネ効果

各取組による効果

※電力の100%実質再エネ化によるCO2オフセット量
384.47 t-CO2(年間)

※全社的な節電対策による電気使用量の削減(2024年4月-2025年2月実績)
2.0%の削減効果
(参考:本社工場及び事務所の2024年度年間使用電力量見込み 748,000 kWh)

INTERVIEW
インタビュー

ヤマサン食品工業株式会社 管理部 経営戦略室 室長 広井 和裕さん(左) 購買部 バロン 有希子さん(右)

ヤマサン食品工業株式会社
管理部 経営戦略室 室長 広井 和裕さん(左)
購買部 バロン 有希子さん(右)

省エネの取組推進のきっかけ

食品スーパーとの取引で環境負荷の低減が問われるようになったのを機に、本格的な検討を始める。

当社の主力製品は野菜の水煮やレトルトパックで、カレーの具、豚汁の具、サラダ豆などを製造販売しています。

当社がカーボンニュートラルについて本格的に検討するようになったきっかけは、2020年頃から、大手食品スーパーから取組状況を問われるようになったことからです。昨今、食品スーパーは取引先について、カーボンニュートラルへの対応状況や姿勢を取引可否の1つとして判断していて、きちんと対応することが取引の必須条件になっているように思います。また、取引先と社長が面談する場面では、環境負荷低減に向けた取組について問われることも増えています。

当社では、以前からコスト削減効果も期待して省エネ診断を受診し、診断結果にもとづく提案内容に取り組むことも少し行ってきましたが、これからはしっかりと取り組まなければ取引に応じてもらえなくなるかもしれないという危機感もあり、全社的な取組として進めていくよう着手しました。

サステナビリティを推進する委員会組織を立ち上げ、SDGsを全社的に取り組む。

2021年、食品スーパーとの取引に変化が出てきたときのほぼ同じ時期に、当社ではCSR委員会を立ち上げました。

委員会設立は、ある若手女性社員による「食品工場とはいえ、食品がたくさん廃棄されるのはもったいない。なんとか減らしたい。」という一途な想いがきっかけです。一途な想いは社長への提案となり、経営戦略室では食品ロス問題に取り組めるよう規約を作り、委員会組織を立ち上げました。 

また、富山県が同じ年に「富山県SDGs宣言」という県内の企業や団体等がSDGs関連の取組について宣言できるプラットフォームをつくられたので、当社でも宣言できるよう、食品ロス問題以外の取組も委員会で検討し、全社的に実践していくことになりました。

現在、CSR委員会は2024年に「サステナビリティ推進委員会」(以下、「委員会」)と名称変更し、部署を横断する形で10名程がメンバーとなり、「環境負荷低減」「食品ロスの削減」「働きやすい環境づくり」「地域社会への貢献」の4つの柱で、できることから継続して取り組むことにしており、カーボンニュートラルへの対応は、「環境負荷低減」の1つとして取り組んでいます。

取組推進のポイント

非化石証書の新聞記事をみてエネルギー商社に連絡して説明後に導入。2024年カーボンニュートラル達成。

まずは太陽光パネルの設置について、金融機関から紹介された複数の業者から見積をとるなどして検討していました。しかし、当社の工場の屋根に太陽光パネルを積載することが耐震強度の問題で難しく、また直置きするには地面にコンクリートを敷設するなどして多大な投資が必要になるため、早急に対応するのは難しいように感じていました。

自社で実践できる取組は何かを模索していたところ、富山県内のエネルギー商社である北酸株式会社が非化石証書の発行によるCO2フリー電力の調達代行サービスを展開していることを、2022年のゴールデンウィークに新聞記事で知りました。早速、ゴールデンウィーク明けに同社に連絡したところ、すぐに勉強会を開催してもらえることになったので、委員会のメンバーで話を聞きました。対外的なアピールにもなることを確信したのに加え、同社の価格設定が比較的安価だったので、直ぐに導入を決断しました。

2022年から3か年計画としてスタートし、導入の1,2年目は年間購入電力の50%超を実質再エネ化し、3年目の2024年は実質100%再エネ化達成を目指すこととしました。

全社的に節電対策を実施。各社員がカーボンニュートラルへの対応を具体的な行動へと移している。

社員に省エネやカーボンニュートラルに対する意識を浸透させて、行動に移してもらうために、非化石証書の購入と並行して、経営陣が「節電対策は最重要項目の1つ」と宣言した上で、全社的に節電対策を行っています。

「隣の部署が取り組んでいれば、自分たちもやらなくてはと思うのではないか」と考え、半期ごとに全部署を対象とした節電対策のアンケートで棚卸しした上でレビューを行い、「皆さんの部署でも真似できそうなことはやってみてくださいね」と社員のみなさんへ情報発信しています。

継続的にレビューすることで、社員の皆さんは不要な電気は小まめにオフにするなど、少しずつ行動に移しているように思います。

サステナビリティ推進委員会としてSDGsの取組を発信する中で、電力使用量の算出・レビューも毎月実施。

委員会では、SDGsの意識浸透に向けて「サステナビリティ推進委員会通信」を毎月作成し、社内のポータルサイトで発信するほか、PCを普段使用しない物流や生産の担当者にもみてもらうように、工場棟でも掲示しています。また、商談室にも掲示していて、取引先からは「本当にいろんな取組をされていますね」といつも評価されます。

加えて、「サステナビリティ推進委員会通信」の中で毎月の電力使用量と電気料金を算出し、その実績を経年変化のグラフで整理し評価するかたちで情報発信しています。

取組効果、今後の課題

省エネにかかる実績について。

当社の売上は増加傾向にある中、電力使用量は年々減少しており、2024年4月~2025年2月迄の本社工場及び事務所の電力使用量は昨年度比で2.0%減少しました。

また、非化石証書の導入により使用電力の実質再生可能エネルギー利用率100%を達成していることについては、某世界的な飲食チェーン店からもESGの観点で高く評価いただきました。地元の北日本新聞にこの取組が北酸株式会社とともに大きく紹介されたこともあり、取組の注目度の高さを実感しています。

カーボンニュートラルへの意識浸透に加え、重油消費量の削減、エネルギー原単位の算出も将来的に見据える。

カーボンニュートラル実現に向けて、まずは全社的に意識を浸透させることが重要だと思っています。そのためにも、例えば、委員会が主導する無理せず継続していける各種の活動に参加してもらうことで、 節電対策においても部署ごとに参加協力の機運が盛り上がり、その相乗効果でカーボンニュートラルへの対応も進めていくようにしたいと考えています。

また、今後は、サプライチェーン排出量の「scope1」においても開示を求められ、LPG消費量削減やエネルギー原単位の算出を見据えることも必要かと思います。将来的には設備更新や設備投資の問題にも直結し、多大なコストもかかるので、費用対効果の点で十分に検討し対応していく必要があると思います。

企業データ

ヤマサン食品工業株式会社
業種:製造業(野菜加工品、山菜加工品[水煮パック・レトルトパック]の製造・輸入・販売)
住所:富山県射水市黒河3197

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