No.44複合材料成形機

令和元年度補正予算地域新成長産業創出促進事業導入機器編

2021年12月17日

今回のキラリ公設試(No.43~No.45)では、経済産業省の令和元年度補正予算「地域新成長産業創出促進事業(地域イノベーション基盤整備事業費)」を活用して、北陸3県の公設試験研究機関に導入された「試験研究・検査設備」の特徴と地域の企業に対する利活用の期待についてご紹介いたします。

実際の利用事例から、『これは自社で活用できるかも!』といった、企業の方々の利活用のヒントへとつなげていければと考えております。是非、ご活用ください。

左から 安井さん、奥村さん、筒口さん

左から 安井さん、奥村さん、筒口さん

石川県工業試験場は、「中小企業の試験室・実験室」を基本コンセプトに、技術相談・指導、依頼試験・分析、研究開発を強化・充実させ、既存産業の高度化と次世代型産業の育成を支援しています。

今回は、経済産業省の令和元年度補正予算で導入した「複合材料成形機」について、筒口さん、安井さん、奥村さんにお話を伺いました。

Q1複合材料成形機はどのような機器ですか。

一言でいうと「熱を加えながら、物を圧縮するプレス機」です。

特にCFRPといわれているような炭素繊維複合材料を作るのに、熱可塑性樹脂等を熱で溶かして圧縮することによって炭素繊維の中に樹脂を染み込ませて板状にします。この板を再度加熱すると柔らかくなるので、複合材料成形機でプレスすることによって様々な形に変形させることができます。

この板は炭素繊維と樹脂のフィルムを交互に積層しプレスすることにより作っています。質量は鉄の4分の1で、強くて錆びないので、いろんな用途に活用できます。コストはかかりますが、そこをクリアすれば普及していくと思います。

CFRPの種類は主に熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の2つがあります。熱硬化性樹脂は一回固まると変形しない性質がありますが、熱可塑性樹脂はもう一度熱を加えて変形させることができます。試験場では目的と用途に合わせて使い分けていますが、自由自在に変形可能な熱可塑性樹脂をメインに使っています。

プレスの成形条件は、csvファイルとして外部出力することができ、クラウド上のサーバーにアップロードすることで、成形条件を共有することが出来るのも大きな強みです。

プレス機を導入したのは、板から様々な形にできるという熱可塑性樹脂の強みを活かした研究開発を行うためです。もともと炭素繊維は人工衛星やロケット等の宇宙産業に使われていましたが、民生の汎用部材、例えば自動車部品に応用したときに、一部品に数時間もかけていては中々供給が間に合わないという問題が生じました。そこで、さらに速く作ることができる材料として熱可塑性樹脂のCFRPに白羽の矢が立つようになりました。

現在、速い生産速度で部品を供給できるプレス機が注目されています。

  • 熱を加えながら、物を圧縮するプレス機
  • 熱を加えながら、物を圧縮するプレス機

Q2大きな機器ですね。複合材料成形機の特長やアピールポイントは何ですか。

アピールポイントは以下の3つです。

  • 他の成形機よりも高温がかけられること。
    熱可塑性樹脂を溶かさないといけないので、高温がかけられることが一番大きな特徴です。
  • 普通のプレス機より型締め駆動速度が速い。(200mm/sec)
  • 長時間一定の圧力をかけ続ける事が出来ること。
    炭素繊維に樹脂が染み込むまでの時間がかかりますが、冷えて固まるまでの間、圧力をかけ続けることが出来ます。
  • 複合材料成形機

Q3利用料金を教えてください。

今回の装置は、企業の皆様がご自身で操作していただく「開放試験」機器になります。利用料金は9,220円/ 時間でご利用いただけます。初回に限り、機器の使い方について研修を受けていただきます。研修費は4,000円/1人です。

Q4次に、利用までの流れを教えてください。

  • (1)まずはどのような試作をしたいかなどメールや電話にてご相談ください。
    石川県工業試験場のHPに記載があります、顧客サービス窓口からご連絡可能です。
  • (2)ご連絡いただけましたら、試験実施日について日程調整させていただきます。
  • (3)機器操作研修の申込書(モノづくり技術高度化開発指導事業申込書)をお送りいたしますので、必要事項を記入しご提出ください。
  • (4)試験当日は、研修を受けた後、実際に試作していただけます。

※2回目以降は研修を受講する必要はありません。直接担当者に連絡いただければご利用いただけます。
また、県外の企業様からもご利用いただけます。

Q5利用状況について教えてください。

新型コロナウイルスの影響で9月まで新規研修ができていなかったので、企業からの利用は少なかったのですが、職員が実験を繰り返し、利用依頼があった際に適切な対応ができるように準備万全の体制になっております。

石川県工業試験場では、繊維や機械分野の企業様がCFRPを使用していることが多いので、是非とも本機器をご活用いただき、熱可塑性CFRPの研究開発にチャレンジしていただきたいと思います。

Q6複数の企業や大学と共同で利用することができますか。

もちろん、複数の企業や大学と共同で利用することができます。産学官連携・産産連携で試験場にお集まりいただくケースは多くございますので、他の機器と同様に共同研究としてご活用いただければと思います。

Q7北陸三県で機器が導入されましたが、具体的にどのような連携をされているのですか。

富山県産業技術研究開発センターに作っていただいた曲げや引っ張り等のシミュレーションソフトをクラウドサーバーを使って、開示できる情報については北陸三県で共有できるシステムになっています。 シミュレーション結果を用いて、私どもの成形機で成形し、福井県工業技術センターに評価する連絡体制は整っています。

Q8様々な業種からの相談が予想されますが、今までにどんな相談を受けましたか。

ガラス繊維の板を作りたいという相談や、ランダムに繊維を散りばめた炭素繊維の板を試作してみたいというご相談を受けました。

Q9企画された製品実現後のフォローアップはありますか。

「この性能が足りなくなった。」や「こういう問題が生じたが原因は何か。」というご相談があれば、いつでもお受けいたしますのでお気軽にご連絡いただければと思います。 性能アップ・機能性付与等でご相談をいただくこともあります。その際は、企業の自己資金で共同研究開発を立ち上げたり、共同で外部資金に申請して共同研究開発したりしていくといった対応も可能です。

県内外にかかわらず誰でも利用できますので、是非ご活用ください。

Q10今後は、どのような取組みを考えていますか。

石川県工業試験場では、企業の皆様が興味をもつ技術課題を選定して、石川県次世代産業育成講座・新技術セミナーを年間約50件企画しています。 今年度は、炭素複合材料関係で3回企画しました。その中で複合材料成形機の特徴を紹介したり、実際に機器を動かしている動画を中継で流したりしました。より多くの方にご利用いただけるよう、今後も新たなPR活動を考えていきたいと思います。

Q11それでは最後に、利用を考えている方へ一言お願いします。

炭素繊維に限らず、ガラス繊維等の複合材料、最近では木材、金属、ガラス繊維、アルミニウム等の材料と炭素繊維を掛け合わせた“マルチマテリアル”が広く知れ渡っています。 炭素繊維の生産には多くのエネルギーを消費しますが、二酸化炭素を使わずリサイクルもできる天然の材料を炭素繊維に混ぜ込んだマルチマテリアルは、省エネ且つ、今までと同じ性能を維持できます。つまり、“カーボンニュートラル”を目指す材料であるともいえます。

しかし、このような新しいモノを作る際に、普通の常温プレス機の性能ではやはり限界があります。一方、本試験場の高温タイプの複合材料成形機は“マルチマテリアル”と“カーボンニュートラル”の2つを実現できる可能性をもった機器です。我々もこの2つのキーワードをもとに様々なことにチャレンジしております。

少しでもご興味がありましたら、試験場職員が丁寧に対応させていただきますので、お気軽にご連絡いただければ幸いです。ぜひご活用下さい。

  • 機械の前でエンジニアの方と写真

機器紹介

メーカー名
アサイ産業(株)
型式
HTS50
主な仕様
最大プレス荷重: 500kN(50t)
最大成形温度: 450℃
型締め駆動速度: 200mm/sec
ストローク長: 420mm
金型設置盤面サイズ: 500mm×500mm
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(株)島津製作所 AGX-300kNV

本インタビュー対応者

  • 石川県工業試験場 企画指導部 筒口 善央 副部長
  • 石川県工業試験場 繊維生活部 安井 治之 複合材料技術開発プロジェクト室長
  • 石川県工業試験場 繊維生活部 奥村 航 研究主幹

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お問合せ先

中部経済産業局 地域経済部 イノベーション推進課
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