2021年11月12日
今回のキラリ公設試(No.43~No.45)では、経済産業省の令和元年度補正予算「地域新成長産業創出促進事業(地域イノベーション基盤整備事業費)」を活用して、北陸3県の公設試験研究機関に導入された「試験研究・検査設備」の特徴と地域の企業に対する利活用の期待についてご紹介いたします。
実際の利用事例から、『これは自社で活用できるかも!』といった、企業の方々の利活用のヒントへとつなげていければと考えております。是非、ご活用ください。

左から中村さん、金森さん
富山県産業技術研究開発センターは、「高度で、特色があり、役に立つ」をモットーに、県内の中小企業に対して、技術支援・研究開発・技術情報の提供を行い、技術力向上と新製品開発を支援しています。
今回は、経済産業省の令和元年度補正予算で導入した「複合材料デザインシステム」について、金森さん、中村さんにお話を伺いました。
Q1複合材料デザインシステムとは、どのような機器ですか。
複合材料部材の設計・解析機能と、作成したアプリ・データを企業等と共有する機能を有する機器です。複合材料を用いた製品開発時の設計支援等に利用されます。
本装置は、2つの主要な技術ソフトウェアがインストールされた高性能コンピュータと、ファイル授受システムを備えたネットワークシステムから構成されます。
1つ目の主要な技術ソフトウェアは、複合材料のモデル化ソフトです。
軽くて丈夫な複合材料を用いた製品を設計するには、単一材料とは異なる複合材料の特性を考慮することが必要です。例えば、複合材料には、ある方向には強くて、ある方向には弱いといった、異方性という特徴があります。この異方性は、製造過程の影響を強く受けるので、厳密な挙動解析を実施するには、異方性を考慮する必要があります。
複合材料モデル化ソフトの大きな特徴は、材料の微視的な構造や特性を指定すると、CAE(Computer Aided Engineering)解析の際に入力する必要のある巨視的な材料特性の数値を算出することができることです。
2つ目の主要な技術ソフトウェアは、CAE解析の実施およびCAE解析アプリを作成するソフトウェアです。
複合材料を対象としたCAE解析が実施できるとともに、CAE解析アプリを作成することができます。作成されたCAE解析アプリは、スタンドアロンでこの機器以外のコンピュータで動作させることができます。
Q2複合材料デザインシステムの特長やアピールポイントは何ですか。
アピールポイントは主に3つあります。
1つめは、複合材料を使ったCAE解析に必要な巨視的材料特性を算出できることです。従来のCAE解析ソフトウェアで解析出来るような材料特性に直す事が出来るソフトが入っています。
2つめは、他のPCで動作するCAE解析アプリを実行ファイルとして作ることができることです。自社に持ち帰り、自社のPCにて寸法や荷重も変えたりして解析をすることも可能です。
3つめは、CAE解析に必要な大容量データの授受ができることです。それにより、企業と研究所間のやりとりを円滑に進めることができます。
CF/PA6板状試験片3点曲げ
Q3自社でCAE解析アプリを使えるのはとても便利ですね。では、利用料金を教えてください。
解析モデルの作成など職員が操作する時間に応じた手数料に加え、機器の解析時間に応じた使用料が必要です。
解析モデル作成等職員が操作する時間:4,140円/時間(下記の使用料に加算に加算されます。) 設備の稼働時間: 2,000円/時間
材料モデルのモデル化、CAE解析、CAE解析アプリの作成を承ることができます。
(なお、本設備を職員以外が操作することは、ソフトウェアのライセンス契約により禁止されています。)
Q4次に、利用までの流れを教えてください。
- (1)まずは、どのような解析を実施したいのか、どのような複合材料をモデル化したいのかなどをメールまたはお電話にてご相談ください。担当者が実施の可否を検討し数日以内に回答します。
- (2)解析を実施する場合、「試験等依頼書」及び「設備利用申請書」を提出ください。
- (3)改めて解析・モデル化に必要な事項を、来所いただいたうえお聞き取りさせて頂くとともに、必要な場合はCADデータや材料特性データなど提出いただきます。
- (4)必要な情報・データが揃い次第、解析・モデル化を実施し、結果をメールやファイル授受システムにてお送り致します。
Q5どのような分野での使用が多いですか。また、今までにどんな相談を受けましたか。
炭素繊維強化複合材料の構造解析、金属やセラミックスの加工における応力分布の解析に使われることが多いです。共同研究では、伝熱解析によるセンサーのシミュレーションを行っています。
また、ダイカスト製品の構造解析、セラミックス製品の熱応力解析、機構部品の振動解析等に関する相談を受けています。
Q6様々な分野で利用できますね。複数の企業や大学と共同でも利用することができますか。
共同研究契約に基づき利用することが可能です。共同研究の契約がなされていれば、新たに料金が発生することはありませんので、利用の流れ(2)の「試験等依頼書」及び「設備利用申請書」の提出は要りません。
Q7北陸三県で機器が導入されましたが、具体的にどのような連携をされているのですか。
富山県産業技術研究開発センターで複合材料を使った部品の設計、石川県工業試験場で成形加工、福井県工業技術センターで部材の評価を行うといった連携をしています。石川県で成形加工を行った際に、違う材料を組み合わせたらどういう特性になるか調べたいというニーズがあります。実際に富山県の複合材料デザインシステムでシミュレーション・解析をして福井県で評価をして比べてみたいというご相談がありました。
Q8今後は、どのような取組みを考えていますか。
設備利用や共同研究で作成した解析用アプリを、現場で利用いただく事例を増やしたいと考えています。研究発表会を参加者の人にメルマガ配信等で案内しております。また、解析アプリを作成するということも含めた実習の技術講習会を実施予定です。
Q9それでは最後に、利用を考えている方へ一言お願いします。
すでに単一材料によるCAE解析を行っている企業の方に対してですが、複合材料を対象としたより精度の高いCAE解析を行う場合に、複合材料モデル化ソフトによる巨視的材料特性を計算することをぜひ試してほしいと思います。
また、これからCAE解析を導入しようという方に対しては、まずは、手元のPCで手軽に実施できる簡単な解析アプリの作成を体験いただきたいと思います。
県内外にかかわらず誰でも利用できますので、是非ご活用ください。
機器紹介
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メーカー名・
型番(または品名) -
ワークステーション(コンピュータ・ハードウェア): 日本HP社 Z8G4 複合材料モデルの作成ソフトウェア: エムエスシーソフトウェア社 Digimat CAE解析および解析アプリ作成ソフトウェア: COMSOL社 COMSOL Multiphysics ファイル授受システム: プロット社 SmoothFile6

本インタビュー対応者
- 機械電子研究所 機械情報システム課 金森 直希 副主幹研究員
- 機械電子研究所 機械情報システム課 中村 陽文 研究員
お問合せ先
- 中部経済産業局 地域経済部 イノベーション推進課
- 〒460‐8510
愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052‐951‐2774
メールアドレス:bzl-chb-sangi■meti.go.jp
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