2021年2月26日
今回のキラリ公設試(No.38~No.42)では、経済産業省の平成30年度補正予算「地域新成長産業創出促進事業(地域未来オープンイノベーション・プラットフォーム構築事業)」を活用して、 地域の公設試験研究機関・大学に導入された「試験研究・検査設備」の特徴と地域の企業に対する利活用の期待についてご紹介いたします。 実際の利用事例から、『これは自社で活用できるかも!』といった、企業の方々の利活用のヒントへとつなげていければと考えております。導入された設備は県内外に関わらず利用可能となっていますので、是非ともご活用ください。
Nagoya Musubu Tech Labでのイベントの様子
立松さん、巣山さん
名古屋市工業研究所は、名古屋市熱田区において、企業の方々の生産技術の向上や研究開発のための支援を行っています。 令和2年11月には技術系のスタートアップ企業等をサポートする「Nagoya Musubu Tech Lab」open_in_newを開設し、試作・試験用の装置の開放利用やセミナーや相談会など各種イベントを開催しています。
今回は、経済産業省の平成30年度補正予算で導入した「結露サイクル試験機・超促進耐性試験機」について、立松さん、巣山さんにお話を伺いました。
Q1結露サイクル試験機と超促進耐候性試験機の概要を教えてください。
結露サイクル試験機
結露サイクル試験機は試験槽の温湿度を、低温から急激に高温高湿に変化させることで試験槽内のサンプルに強制的に結露を発生させることを繰り返す試験機です。 環境変化で生じる結露や熱疲労によって、金属表面の腐食や異種素材接合部の劣化といった不良要因が製品の耐用年数内で発生しないことを短期間で確認するために活用します。
試験槽の寸法は650×460×370 mm、試験槽耐荷重50kg以内であれば測定可能です。電子基板のように小さくて軽いものは耐荷重5kgの試料棚(最大4段)を設置して試験を行います。 金属、樹脂、セラミックスといった素材を問わず試験可能です。ただし、槽内を物理的、化学的に汚染してしまう可能性がある場合などはお断りさせていただいています。
結露サイクル試験機
超促進耐候性試験機
超促進耐候性試験機は、耐候性を調べる装置です。耐候性とは、屋外条件下での暴露に対する耐久性のことを言います。 耐候性を調べる場合、試験物を屋外環境に放置する屋外暴露試験では結果が出るまでに長時間要するため、本装置のような人工光源を用いた促進耐候性試験が行われます。 本装置は人工光源の種類により大別されており、当所では本装置の他に、サンシャイン、キセノン、紫外線カーボンによる耐候性評価も行っております。 また、試験後の強度は所内の別の試験機で測定することが可能です。
試験の対象の材料は塗膜をはじめ、樹脂、金属材料でも可能です。対象物は190 mm×422 mmが有効照射エリアで、高さ方向は50 mmまでの材料であれば試験をすることが出来ます。
超促進耐候性試験機
Q2装置のアピールポイントを教えてください。
結露サイクル試験機
結露サイクル試験が実施可能な装置は、東海地方の公設試では本装置だけです。人が携行する電子機器、高い信頼性が求められる車載部品、空輸が想定される輸出・輸入製品などは急激な温湿度変化にさらされるため、結露サイクル試験が必要になります。 これらに加えて、IoT技術の発展・普及により通信機能が加えられた機械要素やセンサが、従来設置されることがなかった屋外や工場のような厳しい環境下に設置される機会が増えるに伴い、結露サイクル試験の要求も増えています。
結露サイクル試験機
超促進耐候性試験機
太陽光よりも非常に強力な紫外線を照射するメタルハライドランプを搭載している点です。屋外暴露試験1年分を数日で再現可能な優れた劣化促進倍率を有し、その他の促進耐候性試験機と比べても短時間で試験物の劣化具合を確認できます。 また東海地方で耐候性試験機を導入している公設試は他にもありますが、約100倍の促進倍率を実現できる超促進耐候性試験機を導入しているのは名古屋市工業研究所だけです。
超促進耐候性試験機
Q3利用料金を教えてください。
結露サイクル試験機
最初の8時間が10,000円、追加8時間につき8,000円です。
超促進耐候性試験機
1試料(10時間あたり)10,000円です。また、1試料追加(10時間あたり)100円です。
※試験の対象物が試験機に収容可能な限り、いくつでも同時に試験を行うことが出来ます。
Q4誰でも装置を利用することは出来ますか。
県内外にかかわらず誰でも利用できます。本装置は依頼試験という形式でご利用いただけます。
Q5利用までの流れを教えてください。
まずは事前予約の上、来所いただき、技術相談を行います。相談の中で、試験の背景や目的をお伺いし、具体的な試験条件や日程を決定します。相談内容によっては最適なご提案をさせていただくために、別の装置をおすすめする場合もございます。
Q6今までにどんな相談を受けましたか。
結露サイクル試験機
電機メーカーから通信機器を客先工場内に設置するにあたって、結露への耐久性を確認したいというご相談や、自動車部品メーカーから車載機器の結露サイクル試験に関するご相談をいただきました。
超促進耐候性試験機
樹脂部品の製造メーカーや建材メーカーから本装置を用いた耐候性試験に関してご相談いただき、製品の耐久性評価として本装置をご活用していただきました。
Q7実際に装置を利用した企業の皆様の声を聞かせていただけますか。
はい、機器を利用した企業の方にご意見を頂いたので紹介します。
■結露サイクル試験機/依頼主:金属加工製造業(中小企業)
【困りごと・依頼内容】
得意先の要求する規格を満たしていることを確認したいが、適切な試験装置を保有していない。
【依頼試験を利用した感想】
試験実施により得意先の要求する規格を満たしていることを立証できたため、得意先での需要増加が見込めることになり大変助かりました。
■超促進耐候性試験機/依頼主:半導体・開発事業など(中小企業)
【困りごと・依頼内容】
セラミック板の耐候試験で、紫外線の光をあてて何年もつか調べたい。
【依頼試験を利用した感想】
所定時間の紫外線をあて続け、劣化もなく成功した。
Q8最後にこの装置を今後どのように利用していきたいか教えてください。
結露サイクル試験機
中小企業では本装置を含め多種多様な環境試験の設備を揃えるのは容易ではなく、当所や近隣公設試の既存設備との連携により幅広く環境試験に対応していくことで中小企業の高付加価値、高品質なものづくりを支援していきたいと考えています。 当所は本装置の他にも恒温恒湿槽や熱衝撃試験機、振動試験機、耐候性試験機などさまざまな環境試験機を保有しているため、お気軽にご相談ください。
超促進耐候性試験機
企業様の製品開発の場面において、耐候性試験機を組み合わせた評価をご提案できればと考えております。本装置は屋外暴露試験との相関性などの課題もありますが、前述の通り、優れた劣化促進倍率を有しています。 この特徴を生かし、まず部材の選定段階で本装置によるスクリーニングテストを行い、開発が進んだ後に、製品としての耐候性を評価する流れが最も効率的と考えられます。 限りある製品開発期間の中で、評価を適正に手早く行うことは企業にとって非常に重要です。各促進耐候性試験機の特徴を生かして製品開発をサポートしていきたいと考えています。
機器紹介1 結露サイクル試験機
- メーカー名
- エスペック(株)
- 型式
- TSA-103D-W
- 主な仕様
-
高温恒湿器: (a)冷熱サイクル試験時+70~+150℃ さらし温度範囲: (b)結露サイクル試験時-10~+100℃ 低温恒温器: (a)冷熱サイクル試験時-70~+10℃ さらし温度範囲: (b)結露サイクル試験時-40~+10℃ 湿度範囲: 40~95%RH 試験槽寸法: 幅650mm、高さ460mm、奥行き370mm 試料かご寸法: 幅640mm、奥行き356mm 試料かご耐荷重: 5kg

機器紹介2 超促進耐候性試験機
- メーカー名
- 岩崎電気(株)
- 型式
- SUV-W161
- 主な仕様
-
光源: 水冷式6kWメタルハライドランプ 紫外線照度: 1500W/m2 均斉度: 90%以上 温度制御範囲: 照射時(BPT)50~85℃(室温20℃の時):
休止時(BPT)35~75℃(室温20℃の時)湿度制御範囲: 照射時40~70% RH(BPT63℃の時):
休止時50~90% RH(BPT50℃の時)有効照射面積: 190mm×422mm

本インタビュー対応者
- 名古屋市工業研究所 システム技術部 立松 昌 研究員
- 名古屋市工業研究所 システム技術部 巣山 拓 研究員
お問合せ先
- 中部経済産業局 地域経済部 イノベーション推進課
- 〒460‐8510
愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052‐951‐2774
メールアドレス:bzl-chb-sangi■meti.go.jp
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