2021年1月29日
今回のキラリ公設試(No.38~No.42)では、経済産業省の平成30年度補正予算「地域新成長産業創出促進事業(地域未来オープンイノベーション・プラットフォーム構築事業)」を活用して、 地域の公設試験研究機関・大学に導入された「試験研究・検査設備」の特徴と地域の企業に対する利活用の期待についてご紹介いたします。 実際の利用事例から、『これは自社で活用できるかも!』といった、企業の方々の利活用のヒントへとつなげていければと考えております。 導入された設備は県内外に関わらず利用可能となっていますので、是非ともご活用ください。

村山さん、森さん
三重県工業研究所は「地域企業の発展を支援する中核的機関」として、「技術相談」、「機器開放・依頼試験」、「研究開発」を通じて、将来の産業動向も視野に入れながら、 地域企業の技術開発を支援しています。ものづくり企業だけでなく、食や医薬品研究に関する企業向けの設備も数多く保有しています。
今回は、経済産業省の平成30年度補正予算で導入した「X線CT測定装置」について、村山さん、森さんにお話を伺いました。
Q1X線CT測定装置とはどんな装置ですか。
本装置は金属やCFRP等のプラスチック素材や繊維素材の試験片を高速で引張り、対象物の物性を測定する試験機です。 X線を透過させることにより、試料の内部構造を非破壊で観察することができる装置です。試験物内部の欠陥や空隙、異物を把握することができます。 試料を回転させて撮影した透過画像を合成することで3Dモデルを形成することが可能です。 そのため、三次元形状を確認しながら任意の位置の断面を観察することができます。 利用企業の皆様には新製品の研究開発や既存製品の不具合解析など、様々な用途でご利用頂いております。
X線CT測定装置
Q2とても大きな装置ですね。この装置ではどんなものを測定することが出来ますか。
Φ400mm×H300mm以内の大きさ、かつ12kg以内の重量の試料に対応しています。従来の装置と比較すると最大撮影領域と最大重量が向上した為、 より大きな試料を観察することが可能になりました。材質は金属だけでなく、樹脂やコンクリートなどのX線が透過可能な物質であれば測定できます。 例えば、電子基板や樹脂モールド製品など複合材料からなるものも測定できます。試料の厚さにつきましては、材質ごとにX線の透過しやすさが異なるため、別途ご相談ください。
Q3X線CT測定装置は他にも種類があるかと思いますが、本装置の特徴について教えて頂けますか。
多種の材質の観察に対応でき、小さな欠陥を検出することが本装置の特徴です。本装置は高解像度の大型フラットパネル検出器を搭載しているため、 広視野・高解像度・高コントラストの測定が可能となりました。また、測定した透過画像を3Dモデル化することで,3DCADによる編集・加工が可能で、 本研究所内の3次元形状造形装置(3Dプリンタ)や5軸加工機等、他の機器と連携した運用も可能です。
例えば図1のようなハイブリッド成形品をスキャンすると図2,3のようなデータが得られます。
図1
図2
図3
Q4利用料金を教えてください。
利用料金は、基本料金370円に加え、1時間ごとに8,770円です。基本的な測定の場合、10分/回で測定することが可能です。但し解析に別途時間がかかります。より精密に測定をする場合は40分以上の測定時間を要する場合もございます。
Q5誰でも装置を利用することは出来ますか。
産業用途であればどなたでもご利用可能です。初めてご利用の方、操作に不安のある方には職員が付き添い、操作方法や注意事項の説明・操作補助をさせて頂きます。 基本的な操作と致しましては、X線の強さを調整するために電圧と電流の数値を設定してスキャンを開始するだけなので、本装置に知見のない方でもご利用して頂けます。 本装置には安全機構が施されており、X線被爆の恐れがある状態ではX線照射がされないようになっていますので、安心してご利用して頂けます。
Q6利用までの流れを教えてください。
この装置をご利用したい方はまず、担当者にメールか電話にて連絡して頂き、予約をして頂く必要があります。 この際、本装置で観察できるサンプルかどうかを確認させて頂きます。予約日当日に観察したい試験物をお持ちのうえご来所頂ければ、本装置で観察をすることができます。 測定データや透過画像をお持ち帰り頂く場合、大きなデータ容量の記録媒体をご持参ください。ご相談内容によっては別の装置の利用をお勧めする場合もございますが、 まずはお気軽にご相談ください。
Q7今までにどんな相談を受けましたか。
ご相談は、観察の可否や測定条件に関するものを多くいただきます。装置仕様内であっても個々に測定条件を調整する必要があり、最終的には実際に測定してみて判断することとなります。 測定目的は、製品の不良や不具合の原因調査が最も多く、次に製品管理や品質確認のため、新規開発のためにご利用いただく場合が多い印象です。 具体的には、ダイキャスト製品の内部欠陥、複合成型品の接合面の状態、電子基板のハンダ状態、マイクロスイッチやリレーなどの電子部品の内部破損などの観察がありました。
Q8幅広い業種の方が利用していますね。県外からの利用は可能ですか。
可能です。実績としては半数以上が三重県内企業の利用ですが県外企業の利用も可能です。 ただし、新型コロナウイルス感染症の状況次第でお断りすることがありますのでご利用の際は事前に連絡を頂けますと幸いです。
Q9実際に依頼試験で本装置を利用した企業の皆様の声を聞かせていただけますか。
はい、機器を利用した企業の方にご意見を頂いたので紹介します。
1.アルミ製品製造業
【利用内容】
自社で製造する次世代自動車部品や機械部品等のアルミダイキャスト品の品質検査のために利用した。
製品内部の欠陥(鋳巣・異物のサイズや分布状況)を解析して、鋳造方案等の改善に活用した。
【開放機器を利用した感想】
大型製品に関しては切断分割が必要となるが、非破壊で製品内部の欠陥の観察が行えるため、手軽に利用することができた。
新製品開発や品質向上のためのツールとして活用したい。
2.車載部品開発業
【利用内容】
自社製品の基板実装部品のハンダ部のボイドを確認するために利用した。
また、信頼性評価での劣化確認をするために継続的に利用した。
【開放機器を利用した感想】
観察したい箇所が細かいピッチで確認できるため、見落としなく観察することができた。
また、短時間で確認ができ、機器の操作性も複雑でないので簡単に利用することができた。
Q10最後にこの装置を今後どのように利用していきたいか教えてください。
電子基板・金属製品の非破壊検査が多い一方、他分野でのご利用が少ない傾向があります。 X線が透過可能で、装置に入る物であれば非破壊検査が可能ですので、コンクリート等の建材分野の亀裂や内部気泡の状態確認等、一つの分野に限られない利用をしていきたいです。 また、機器の開放利用のみならず、企業の皆様と三重県工業研究所による共同研究にも利用出来ればと考えております。
機器紹介
- メーカー名
- 株式会社島津製作所
- 型式
- inspeXio SMX-225CT FPD HR Plus
- 主な仕様
-
最大管電圧: 225kV 最大管電流: 1000μA X線検出器: フラットパネル検出器 X線検出器サイズ: 16インチ 搭載可能ワークサイズ: φ400mm×H300mm 12kg

本インタビュー対応者
- 三重県工業研究所 ものづくり研究課 村山 正樹 主幹研究員
- 三重県工業研究所 ものづくり研究課 森 大樹 研究員
お問合せ先
- 中部経済産業局 地域経済部 イノベーション推進課
- 〒460‐8510
愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052‐951‐2774
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