2021年1月22日
今回のキラリ公設試(No.38~No.42)では、経済産業省の平成30年度補正予算「地域新成長産業創出促進事業(地域未来オープンイノベーション・プラットフォーム構築事業)」を活用して、 地域の公設試験研究機関・大学に導入された「試験研究・検査設備」の特徴と地域の企業に対する利活用の期待についてご紹介いたします。 実際の利用事例から、『これは自社で活用できるかも!』といった、企業の方々の利活用のヒントへとつなげていければと考えております。 導入された設備は県内外に関わらず利用可能となっていますので、是非ともご活用ください。

三河繊維技術センター 原田さん
三河繊維技術センターは、蒲郡・知多地域を中心に生産されている綿や合繊織物、ロープ、ネットなどの繊維業界に対する技術支援機関として、産地特有の技術に加え、海洋、農業や土木など各種用途に応じた新しい産業用繊維資材の開発支援に力を注いでいます。 最近では、軽量で高強度な材料として注目を集めている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に関しての試作、性能評価、技術相談、情報提供など総合的な技術支援を積極的に進めています。
今回は、経済産業省の平成30年度補正予算で導入した「高速引張試験機」について、原田さんにお話を伺いました。
Q1高速引張試験機とはどんな装置ですか。
本装置は金属やCFRP等のプラスチック素材や繊維素材の試験片を高速で引張り、対象物の物性を測定する試験機です。 例えば、近年、自動車業界を中心に様々な部品を樹脂系素材や高機能な樹脂複合材料に置き換える動きが拡大していますが、衝撃特性や強度等のシミュレーションの元となるデータを取り、解析するのに利用されています。
高速引張試験機
Q2どんなものを測定することが出来ますか。
幅13mm、厚み3mm以下の試験片を測定することが可能です。写真は実際に測定に利用したCFRP試験片の一例です。(左:試験前、右:試験後)
(左:試験前、右:試験後)
Q3装置のアピールポイントを教えてください。
最速20m/s、最大試験力10kNで高速度で引張試験を行えるのが本装置の特徴です。 通常の引張試験機と比較して数百倍の速度での試験ができ、従来の高速引張試験機よりノイズの少ない安定したデータの取得が可能になりました。 また、温度を-40℃~+150℃まで調節することが出来ます。 例えば自動車のボンネット内は温度が80度℃以上まで上がることもあり、こういった環境下を想定した実験も可能です。
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引張試験の様子
Q4ただ引張るだけでなく温度設定ができるとより多くのニーズに対応することが出来ますね。利用料金を教えてください。
一試験片あたり6,500円から利用出来ます。
試験片の変形をより正確に測定するオプションや、温度調整については別途料金が必要です。
Q5誰でも装置を利用することは出来ますか。
はい、誰でも利用する事が出来ます。
依頼試験の対応となりますので操作自体は三河繊維技術センターの職員が行います。
Q6利用までの流れを教えてください。
まずは電話やメールでご相談ください。ご相談の内容をお聞きした上で本装置もしくは他の装置もご紹介します。 出来れば依頼試験の前に、1度センターへお越しいただき装置をご確認ください。実際に装置が動いている様子をご覧になっていただき、また、試験結果がどのように出るのかも説明させていただければと思います。
Q7気軽に電話やメールで相談できるのはありがたいですね。今までにどんな相談を受けましたか。
材料メーカー、自動車メーカー、自動車部品メーカー、建設業者や材料商社等、様々な業界の方から相談を受けています。 例えば材料メーカーからは防弾チョッキ等に使う高強度繊維等の強度を測定したいという相談を受けました。 自動車部品メーカーからは、自動車部品の性能実験・信頼性確認のための利用の相談を受けることもあります。
Q8幅広い業種の方が利用していますね。県外からの利用は可能ですか。
可能です。実績としては半数以上が愛知県企業の利用ですが県外企業の利用も可能です。
Q9実際に依頼試験で本装置を利用した企業の皆様の声を聞かせていただけますか。
はい、機器を利用した企業の方にご意見を頂いたので紹介します。
1.自動車部品製造業(中小企業)
【困り事・依頼内容】
自社製品の性能が顧客の要求性能を満たしているか確認したい。
新規開発品の性能評価のため、高速での引張試験、破壊試験を行いたい。
【依頼試験を利用した感想】
急な評価が必要であったが対応いただけ、費用も想定より安価でよかった。 試験実施のための打合せに何度も対応いただき助かった。 取り付けジグの取り付けや方法について意見交換しながら測定できて、評価に役立った。
2.金属製品製造業(中小企業)
【困り事・依頼内容】
自社の製品開発時における成形・製造条件の検討のため、様々な速度で引張った時の材料の機械的特性を知りたい。
【依頼試験を利用した感想】
試験についての丁寧な説明や情報をいただき助かった。
試験にあたっての事前のテストなどの対応がスムーズな試験につながり助かった。
試験の立ち合いができて、その場での意見交換も参考になった。
Q10最後にこの装置を今後どのように利用していきたいか教えてください。
もっと気軽に様々な企業に利用していただきたいです。今年度は、新型コロナウイルス感染防止のため講演会等での周知が難しい状況ですが、 敷居を低くしてより多くの企業の方に利用していただきたいです。また今後は、高速度カメラを導入して、破断する瞬間の様子を利用企業の方に提供できるようにしたいです。 引張試験で壊れた・壊れなかっただけでなく、どう壊れたのか等の情報も得られるとより魅力的な試験になると考えています。
機器紹介
- メーカー名
- 株式会社島津製作所
- 型式
- HITS-TX
- 主な仕様
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試験速度設定: 0.0001m/s~20m/s 最大試験力: 10kN 最大ストローク: 300mm 測定可能温度: -40℃~+150℃ 試験片: 平板(幅13mm、厚み3mm以下)、
丸棒(取付部 M6×0.75メネジ)

本インタビュー対応者
- あいち産業科学技術総合センター 三河繊維技術センター 原田 真 主任研究員
お問合せ先
- 中部経済産業局 地域経済部 イノベーション推進課
- 〒460‐8510
愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052‐951‐2774
メールアドレス:bzl-chb-sangi■meti.go.jp
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