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No.31 マイクロフォーカスX線CTシステム(X線CT装置)

平成28年度地域新成長産業創出促進事業導入機器編

2018年12月12日

今回のキラリ公設試では、「平成28年度地域新成長産業創出促進事業(地域未来投資の活性化のための基盤強化事業)」を活用して、名古屋市工業研究所に導入されたX線CT装置の特徴、使用状況等をご紹介いたします。 実際の使用手順や取組をご覧いただくことで、『自社も依頼したい!』というように企業の方々の利活用の促進につなげていきたいと考えております。ものづくり企業の皆様に、広くご利用いただきたいです。

左から 岩間さん、岡本さん

 

左から 岩間さん、岡本さん

 

名古屋市の公設試験研究機関として、企業の方々の生産技術の向上や研究開発などを支援する業務を行っている名古屋市工業研究所(名古屋市熱田区)の岡本さんと岩間さんにお話を伺いました。

Q1X線CT装置はどういった機器ですか?

医療現場で使用されているCTと撮影原理は同じで、物体を透過する能力を持つX線を利用し、対象物体を内部構造も含めて3次元で観察できる装置です。 寸法測定については工業用のノギスや3Dスキャナほどの精度はないのですが、深い穴や閉じた空間など、それらの装置では測定できない内部の計測が可能です。本装置はプラスチック製品やアルミなどの軽金属でできた物の調査が得意です。 モーターや磁石など磁気が強いもの、ガスや粉じんが出るなど装置を汚す恐れのあるものは観察できません。 この機器で観察できる物体の上限は、直径40cm、高さ30cm、重さ12kgですが、X線の透過力の関係でCT撮影が可能なサンプルサイズはプラスチックで透過距離20cm、アルミで10cm、鉄で2~3cmぐらいです。

  • X線CT装置を説明する岡本さん

Q2X線CT装置の詳しい仕組みを教えていただけますか?

まず、ある一定の方向からX線を照射した時に、対象物体を透過したX線は検出器で受け取られ、これを透視画像(レントゲン画像、X線写真)と言います。 透視画像は影絵のように「影の濃さ」として得られ、それはX線が吸収された量に相当します。次にCT撮影では、対象物体を回転させて、異なる方向からの透視画像を数百~数千枚撮影し、各方向における「影の濃さ」のデータを集めていきます。 このデータをコンピュータ処理することで、元の撮影空間においてどの位置でどれだけのX線吸収があったか(各位置におけるX線吸収係数)が算出されますので、それを画像として表すことで、3Dデータが得られるという仕組みです。

  • 三次元X線CT撮影の概要

    三次元X線CT撮影の概要

光学式のカメラで形状を取得する3Dスキャナと違い、計算したX線吸収係数で作られる画像なので、ガラス繊維強化プラスチックなど混合物の内部の分散状態を三次元で観察することができます。 一方、透過像で一見きれいに写っていても、極端にX線を通しにくいもの、例えば鉛や鉄心が撮影対象に入っているとコンピュータで計算処理することが難しく、データのない真っ黒な場所ができたり、放射状のノイズが入ったりします。 X線CT撮影は、対象物体が均質で各部分のX線吸収係数がほぼ等しい場合には効果的ですが、電子機器では、筐体やフレームにはプラスチック、回路には鉄、銅や鉛などの重金属が使われているなど複合的であり、3Dの像を作成することが難しいため、透視画像観察を主にすることも多いです。

Q3どのような利用依頼が多いですか?

主な利用用途としては、製品内部の形状観察や不具合部分の特定、樹脂や金属内部に生じた空洞(欠陥)の調査、繊維複合材料の繊維の状態の観察などです。 前述しましたように、X線CT装置の大きな特長として、対象物体を非破壊で調査することができる点が挙げられます。つまり、例えば製品が壊れた時、実際にその物体を分解する前に、どこに原因があるのかを非破壊で見ることができるため、不良原因を調査する利用依頼が多いです。 依頼される方の内訳としては、自動車部品関係企業や電子機器メーカーなど、実に様々です。また愛知県に限らず、他県からの利用依頼もあります。

  • X線CT装置の利用について説明する岩間さん

Q4この装置ならではの特徴はありますか?

従来まで難しかったカーボン繊維の観察ができるようになったことです。有機物は、金属などの重たい素材と異なり、軽い元素でできているため、X線のエネルギーが高いと素通りして影がほとんどできません。 しかし、この装置はエネルギーの低いX線が出力光に含まれるため、軽元素でできたものでも影が映りやすくなり、また、X線検出器の階調が2ビット上がって16ビットになったことで、撮影画像のコントラスト(濃淡)が大幅に向上しました。

更に、金属の撮影画像に生じるノイズを、コンピュータ上の処理で低減することができるようになり、詳細な観察も可能となっています。なお、X線の受光器が丸みのないフラットパネルとなったため、透視画像、CT像共に歪が少なくなりました。

  • ノイズ除去後

    ノイズ除去後

  • ノイズ除去前

    ノイズ除去前

Q5実際に利用依頼する際の手順を教えていただけますか?

本装置は、利用依頼者が直接操作するのではなく、当研究所の職員が操作させていただきます。そのため、まずは利用依頼者からの要望を伺うことからスタートです。 本装置を用いて具体的に何を調査するのか、どれぐらいの大きさの内部構造を観察したいのかなど利用目的を依頼者にお尋ねします。先に述べましたように、周囲の金属部品や出っ張りなどは詳細観察の邪魔になりますので、可能な限り取り除いていただくようお願いすることもあります。 利用目的に応じた調査・観察をしていただくことを大切にしているので、サンプルの加工を決める際は来所いただくか、メールや電話で打ち合わせをさせていただきます。

  • 株式会社島津製作所 inspeXio SMX-225CT FPD HR

その後、サンプルを当研究所に持ち込んでいただき、実際にX線を照射して撮影を行います。依頼者の考えるイメージと撮影結果が異なることや、その場で画像をご覧いただくことで意外な事実が判明することもありますので、基本的に初回は同席をお願いしております。

出来上がったCTデータは数百MB~数十GBにもなり、メールでの送信は不可能なため、当研究所で契約している大容量専用のデータ受け渡しサーバーを用いて授受を行います。 GB単位のデータがダウンロードできるWEB環境と、それが開けるPC環境(CAD用を推奨)があれば理想ですが、不安な場合は相談してください。

なお、X線CT装置の利用料金は、透視撮影が6,200円~、CT撮影が1測定21,500円~となっております。撮影方法や物体の大きさによって変わるので、詳しくは名古屋市工業研究所のHPをご覧いただくか、職員までご連絡ください。 また、ご要望いただければ機器の見学も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

機器紹介

メーカー名
株式会社島津製作所
主な仕様
         
型式: inspeXio SMX-225CT FPD HR
X線管電圧: 最大225kV
最小焦点寸法: 4μm
最大試料寸法&スキャン範囲: φ400mm×H300mm
X線検出器: 16インチフラットパネル(約1400万画素)、階調16ビット(65536階調)
株式会社島津製作所 inspeXio SMX-225CT FPD HR

本インタビュー対応者

  • 材料技術部 有機材料研究室 岡本 和明 研究員
  • システム技術部 生産システム研究室 岩間 由希 研究員

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お問合せ先

中部経済産業局 地域経済部 イノベーション推進課
〒460‐8510
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電話番号:052‐951‐2774
メールアドレス:bzl-chb-sangi■meti.go.jp
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