1. ホーム
  2. 施策のご案内
  3. 技術開発
  4. キラリ公設試
  5. No.30 恒温槽付き疲労強度試験器

No.30 恒温槽付き疲労強度試験器

平成26年度地域オープンイノベーション促進事業導入機器編

2018年4月20日

今回のキラリ公設試では、「平成26年度地域オープンイノベーション促進事業(戦略分野オープンイノベーション環境整備事業)」を活用して、 地域の公設試験研究機関に導入された地域の重点分野に関する取組を支援する「試験研究・検査設備」の特徴、使用状況、今後の見通し等をご紹介いたします。 実際の使用事例、取組から、「これは自社にも使えるかも」というように企業の方々の利活用の促進につなげていただきたいと考えております。 (県外の企業の皆様も是非ご利用下さい。)

左から齋藤さん、森さん、長谷部さん

左から齋藤さん、森さん、長谷部さん

石川県の公設試験研究機関として、企業の方々の生産技術の向上や研究開発などを支援する業務を行っている石川県工業試験場(石川県金沢市)の繊維生活部 複合材料技術開発PJ室(旧 企画指導部 次世代技術開発支援PJ室)の森さん、齋藤さん、長谷部さんにお話を伺いました。

Q1恒温槽付き疲労強度試験器はどのような装置ですか?

恒温槽付き疲労強度試験器は、所定の温度環境下で炭素繊維複合材料の試験片に繰り返し荷重を加えることにより、疲労強度を調べることができる装置です。

炭素繊維複合材料はその高強度や軽量性から今後需要拡大が期待されていますが、これまでは熱硬化性樹脂が中心で、熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維複合材料の普及はこれからです。

本装置に付属される恒温槽を活用することで、種々の温度環境下において、熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維複合材料の温度の影響による疲労強度を評価することが可能となります。 その評価結果として、製品設計に有用なデータを得られることから、産学官共同研究や開放試験用の機器として利用されています。

  • 疲労強度試験器

    疲労強度試験器

  • 恒温槽

    恒温槽

Q2炭素繊維分野は石川県の重点支援産業と伺いました。

石川県はポリエステルやナイロン等の繊維加工が盛んな地域です。その上、プレスをはじめとする機械加工についても技術力の高い企業が集積しています。 これらの強みをもとに、「いしかわ炭素繊維クラスター」や金沢工業大学における革新複合材料研究開発センター(Innovative Composite Center(ICC))、北陸先端科学技術大学院大学に隣接しする北陸StarBED 技術センターなど産学官連携のネットワークや研究拠点を活かして、 今後成長が期待される炭素繊維分野を本県の次世代産業として集中的に支援しています。

炭素繊維については、自動車や航空機向けの利用拡大に加えて、建築部材への応用など将来的にも大きな需要が期待できる産業であると考えています。実際、県内企業においても炭素繊維分野の事業拡大を進めており、製造ラインの増強や工場新設を含めた大型の設備投資を行う企業も出てきています。

Q3地域の重点産業を支援することは重要ですね。続いて恒温槽付き疲労強度試験器を用いた具体的な試験方法を教えてください。

先ほども申しましたが、本設備については、温度環境を変えて疲労強度試験ができることが大きな特徴です。 そのため、熱の影響を受けやすい熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維について、低温あるいは高温など厳しい環境で長時間の繰り返し負荷に対する疲労強度特性を確認することができます。

例えば、自動車分野では寒い環境での走行もあれば、エンジン周りの部品など高温に晒される部品もあります。 本装置は-60℃~250℃という広い温度領域で疲労試験を行うことができるため、自動車業界から熱可塑性CFRPに関する信頼性のあるデータを求められる際にも利活用いただける評価装置になります。

  • 疲労試験の様子と炭素繊維試験片

    疲労試験の様子と炭素繊維試験片

Q4熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維ならではの評価試験方法ですね。強度評価の具体的な用途例を教えていただけますでしょうか?

用途例としては、中間基材として熱可塑性炭素繊維スタンパブルシート(織物基材、ランダム基材)については、過重をかけて引っ張りと曲げで評価することが可能です。 また、例えば、自動車の車体を支える炭素繊維製の自動車部品(プレス成形品)については、荷重をかけて圧縮で評価をすることが可能です。 さらには、建築・土木資材に用いられる炭素繊維の最終製品についても引っ張りと圧縮で評価ができます。このように評価対象は非常に幅広いことが特徴です。

  • 強度評価の具体的な用途例

Q5機器に関するお問い合わせはいかがですか?

平成28年2月の導入以来、コンスタントにお問い合わせをいただいています。 繊維関連のメーカーのほか、プラスチック業界からの問い合わせもあり、試験の性質上リピーター・新規依頼試験ともに今後の利用増加が期待されます。

県内企業による利用は技術的な相談のみならず、大学から産学官共同研究の依頼もあるなど、多くの問い合わせをいただいています。

Q6具体的な成果で用いられてる利用例があれば教えて頂けますでしょうか?

石川県の助成事業(次世代ファンド事業)の一環として、企業が開発した熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維織物シートや炭素繊維ランダムシートについて疲労強度試験を実施しました。 また、石川県プレス工業協同組合によるCFRP製のプレス成形品についても疲労強度試験を実施しました。

さらには、平成28年4月に石川県工業試験場内に産業技術総合研究所中部センターの石川サイトが開設したことから、産総研のコーディネーターとともに炭素繊維関係の企業訪問を行いながら、技術相談を受けるとともに、 技術課題の解決に向けて産総研のシーズとのマッチングを行いました。

このように地域企業や関係機関との共同研究や連携事業も重点的に行っています。

Q7今後は、どのような取組を考えていますか?

本装置の利用促進を図るためにはPRが重要と考えており、セミナーや実習を行っています。 昨年11月には「CFRPの疲労強度試験による耐久性評価について」と題したセミナーと機器実習を開催しました。CFRPは製造条件や樹脂の種類によって、その強度や耐久性が異なることから本装置を利活用することのメリットを解説しました。

地域企業が試作品開発等の基礎的な事業から実際の製品化にいたるまでの各フェーズで本装置の効果的な利活用を促進して、炭素繊維分野で製品開発を目指す企業に対し、 技術の高度化や事業化への推進に貢献できればと考えています。

  • セミナーと機器実習の様子

    セミナーと機器実習の様子

  • セミナーと機器実習の様子

    セミナーと機器実習の様子

機器紹介

メーカー名
株式会社島津製作所
型式
恒温槽付き疲労強度試験器(EHF-UV050k2)
主な仕様
       
負荷容量: ±5kN、±50kN
試験空間: 高さ354~116mm×幅560mm×奥行1000mm
繰返し速度: 最大10Hz
治具: 平板つかみ具、丸棒つかみ具、曲げ治具、圧縮治具
株式会社島津製作所 恒温槽付き疲労強度試験器(EHF-UV050k2)

本インタビュー対応者

  • 繊維生活部 複合材料技術開発PJ室(旧 企画指導部 次世代技術開発支援PJ室 森 大介 主任研究員
  • 繊維生活部 複合材料技術開発PJ室(旧 企画指導部 次世代技術開発支援PJ室) 齋藤 譲司 主任技師
  • 繊維生活部 複合材料技術開発PJ室(旧 企画指導部 次世代技術開発支援PJ室) 長谷部 裕之 主任技師

記事一覧に戻る

お問合せ先

中部経済産業局 地域経済部 イノベーション推進課
〒460‐8510
愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052‐951‐2774
メールアドレス:bzl-chb-sangi■meti.go.jp
※「スパムメール対策のため、@を■に変えてあります。メールを送信するときは、■を@に戻してから送信してください。