2013年9月17日
【今回のキーワード/自動車軽量化研究】
第3回目は、三重県工業研究所に伺い、企業さんと一緒に実践する自動車軽量化研究会の活動についてお話しをうかがうとともに、 その活動に大きく役立っている研究所独自の取り組みである「ハイブリッド自動車解体部品展示」について、担当者とともにご紹介します。
今回は、プロジェクト研究課 自動車軽量化研究会ご担当 林様、中村様、産学官連携ご担当 増田様にお話をうかがいました。
Q1自動車軽量化研究に取り組んだ経緯は?
これまで三重県では、農業、食品、エネルギーなどに公設試験研究機関による支援の重点が置かれていました。 あらためて地域の産業を考えた場合、地域のものづくり産業のトップはやはり”自動車関連産業”であり、 大手自動車メーカー関連の企業さんや、鈴鹿サーキットなどレース関係の企業さんもあるため、自動車に関する研究をしっかりやっていこうとなりました。
自動車といえば、「次世代自動車」に焦点があたっていますが、地域の企業の現状を考えた場合、 これに取り組むにはあまりにも課題が先端的かつ開発費用等にもお金がかかりすぎると思います。 そこで、これまでも業界として取り組んでいる、また、今後(次世代自動車)も取り組んでいかなければならないテーマとして、「軽量化」を取り上げ、実施することとしました。

自動車軽量化研究会 担当者 (左・林さん、右・中村さん)
Q2自動車軽量化研究会の活動は?「企業さんと一緒になって実践」との意図は?
研究会は、県内企業もしくは県内に事務所や事業所が存在している企業さんを対象としています。平成23年度から活動を始め、現在は、「複合プラスチック」、「金属材料」、「接合技術」、「CAE」、「電動・電装部品」の5テーマで活動しています。 当初、研究所で4つのテーマ設定を行いましたが、参加企業さんにもご意見をいただき、名称変更や統合、テーマ追加などを行いました。
研究所として、これまで、自動車に重点を置いた活動は行ってこなかったため、整備している機器類も十分なものが用意できているわけではなく、正直、研究員も日々勉強しています。
そのため、研究所も一緒になって勉強し取り組んでいく姿勢です。 「軽量化」は、企業さんでは、これまでも実施してきた取り組みですし、「一緒になって」との活動ですので座学では意味がないと考えています。(というか、おもしろくありません。)
また、各テーマには、材料メーカーさんや地域の大学等の先生にご協力いただき、アドバイザーを配置していますし、担当分野の技術研究員も配置しています。 参加企業さんとの連絡を含め、自動車軽量化研究会の全体のまとめ調整役として、プロジェクト研究課の林、中村が担当していますので、参加してみたい方は、 まずは林、中村に連絡いただければと思います。
自動車軽量化研究会の開催風景
研究会での試作品
ぎふ技術革新センターにて作成した試作品(参加企業へ配布するため切断した試作品)
Q3研究会での「実践」とは、どのような活動でしょうか?活動の目標、今後の展開は?
研究会では、いろいろな機関のご協力もいただきながら、『試作加工用の試料の提供(研究会参加企業は無料です。)』を行っています。また、研究会としての『加工テスト』も行っています。
研究会開催当初からの取り組みですが、そもそも材料が高価で試すことすら困難なものもありますので、研究所がこれを用意し、企業さんで試作加工を、そして研究所で評価分析を行うことで、 加工のノウハウなどを獲得していくとのイメージです。
さらに、「複合プラスチック」研究会では、主に熱可塑性CFRPを取り上げてきたために、熱硬化性CFRPの大型試作にも取り組みたいとの参加企業さんからの希望があり、 研究所にはその設備もないため、装置を所有する「ぎふ技術革新センター(岐阜県工業技術研究所内)」に研究会ごと伺って、現地での勉強とともに、 大型装置をお借りして試作加工なども行ったりしました。
これまでの試作や加工テストなどを通じて、いろいろな課題が出てきているのですが、その課題解決にあたっては、 三重県で行っている「メイド・イン・三重ものづくり推進事業」などの研究開発事業や国の助成事業などの活用なども想定し、その提案に向けたお手伝いも当研究所で担っていますので、 研究会にはもっと多くの企業さんにご参加いただきたいと思っています。
今年度、「金属材料研究会」の参加企業さんが、当研究所と一緒になって『アルミダイカストの軽量化技術』で国のサポイン事業に挑戦しています。今後の展開については、研究会は現在、3年目となりますが、次の展開としては、もう少し「技術の深掘り」をして共同研究やプロジェクト化の模索につなげていけないかと考えています。
ちょうどこれから県の産業振興策等の関係から、次期の活動を考えるタイミングですので、参加企業さんからのご意見・ご要望等もいただきながら次の展開を決めて行きたいと思います。
Q4ハイブリッド部品解体展示(ハイブリッド自動車の基幹部品の常設展示)について教えて下さい。
ハイブリッド自動車の分解部品の展示は、平成22年度の「リーディング産業展みえ」の企画展示が最初でした。 この際、当研究所が、分解、展示、PRなどの役割を担った関係から、イベント終了後、当研究所で常設展示として展示させていただくことといたしました。
見学は県内外関係なく、すでに600名以上の方にご覧いただいています。私どもはこの場に企業さんがお越しいただけることがとても重要であると考えていて、 いろいろなお話しを通して知識の習得や視点の向上にも役立てています。
展示物は、現在メインが、3代目トヨタ・プリウスと、2代目ホンダ・インサイトの2種類の比較展示。 そして、その他、初代・2代目プリウスやアクアの一部(電装系)の部品もありますので、それらについては時系列での比較などもできます。 また、現在、展示の充実をはかるため、電気自動車の入手も考えています。
見学に来られた企業さんは、例えば、早急に実物の部品の確認のためであったり、部品採用されなかった企業さんがその要因を実物をみて分析するためであったりと、様々な理由で来られます。 分解した状態ですので、表側から見えなかったり、開けないと見られない中身も見られたりしますので、ちょっと「見に行ってみようかな?」的な感覚でお越しいただいてもお楽しみいただけると思います。
また、自動車軽量化研究会の担当者が分解を行っていますので、分解した人間しか分からない話も聞けると思います。

ハイブリッド部品解体展示風景
Q5よく見ると、展示物が細かく分解されているだけでなく、切り取られたりしていますが・・・。
当然、展示だけしているわけではありません。
研究所では、材料の物性を調べたり、性能の測定をしたりもしています。そして、自動車軽量化研究会の参加企業さんとの実践的な活動に繋げるためにも、研究会の題材として取り上げたりしています。
さらに、その他の利用では、他県の公設試験研究機関等への貸し出しも行っています。
展示から3年以上経っていますので、ご覧いただくとおり、皆様に見ていただいたため、より細かく分解して戻らなくなっていたり、中身が一部はがれていたり、分析のために切り取られたままとなっている所があります。今後もそのように活用していきます。
取材後記
研究所として新しい分野への取り組みを進めていくにあたって、「地域企業さんと一緒になって考える」視点での研究会の開催、そして、必要とあらば、研究会が丸ごと他県まで装置を使いに行くなど、できることはやってみようとの心意気が感じられるそんな事業の実施方針が徹底されている様に思います。
ハイブリッド自動車の分解展示でも、ただ単に部品そのものを見るだけではなく、分解した経験者との話や、切り取られた跡のお話などもでき、「これは結構”楽しめそうだ”」と思えるような仕掛けとなっています。興味がありましたら、是非一見の価値ありです。
ちなみに、「リーディング産業展みえ」は毎年、四日市市で開催されており(平成25年は11月7・8日)、研究所からの研究成果も発表されています。
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