2013年8月20日
第2回目は、石川県工業試験場に伺い、試験場として長年研究に取組んできた「コーティング技術」について、ご担当である研究者(安井研究主幹)に、これまでの試験場での研究の変遷、参画企業さんの製品化などの成果、今後の取組についてお話しを伺いました。
本試験場には、企業さんと一緒に製作した独自のコーティング装置があり、試作段階から性能評価、分析まで一連して行う事ができる体制が整っており、地域企業の技術相談・指導役としての活躍を研究者を通じてご紹介します。
機械金属部 舟木副部長、同部 表面処理ご担当安井研究主幹にお話を伺いました
Q1これまでの試験場での「コーティング技術」への取組について教えて下さい。
(安井)
当試験場では、1983年(今から、30年前)から、「コーティング技術」に取組んでいます。当時、県内の企業さんが、工具・金型へのコーティング事業に参入したのがきっかけです。試験場では、地場産業である織機部品や、漆器へのコーティングなどに取組みました。
それから、近隣県の企業さんとの連携や、他の研究機関からのアドバイスも受けながら、密着性等の向上などの技術的課題や、評価手法の確立などに対して、 国等の委託事業等を企業さんとともに獲得し、クリアしてきました。私は、1990年代からコーティング技術に関わってきました。現在は、次代の若手研究員の育成に力を入れています。

表面処理ご担当安井治之研究主幹
石川県工業試験場におけるコーティング技術の歩みopen_in_new[石川県工業試験場サイト内]
Q2取組が30年も続いているのは、どのようなところにポイントがあるのでしょうか? また、これまでの成果をご紹介ください。
(安井)
前段でお話ししましたが、新事業に取組む企業さん、そして、サポートする当試験場の研究者、更に他の機関に所属する外部アドバイザーなどの体制で当初から取組んでいたので、幅広い対応が可能であったことかと思います。現在も、以前と同様な体制で皆一緒になって課題解決に取組んでいます。 この体制の中で、一つの大きなポイントは、当初から表面処理に関して意欲ある企業さんと連携してきたことです。 表面処理に係る技術の蓄積があり、現在も稼働している表面処理装置を共同で製作するなど、とても大きな存在となっています。 そして、何より、長年取組んでいるという、有形無形の技術や知識の蓄積がとても大きいと思います。
これまでの研究成果ですが、HND膜(ハイブリッドナノダイヤモンド膜)の開発や、高硬度・超低摩擦・高密度の水素フリーDLC膜(高密度ダイヤモンドライクカーボン膜)の開発などがあります。 現在、高密度DLC膜は自動車部品、特殊レンズ金型等への適用の実用化研究を行っています。
自動車軽量化研究会の開催風景
研究会での試作品
ぎふ技術革新センターにて作成した試作品(参加企業へ配布するため切断した試作品)
高密度DLC膜の成膜技術シーズはこちらopen_in_new[中部イノベネット「産業技術の芽」より]
<参画している企業さんが、高密度DLC膜の受託成膜を行っています>
研究開発|研究成果|成果発表会要旨集open_in_new[石川県工業試験場サイト内]
Q3新たな取組みや、今後の研究について教えて下さい。
(安井)
平成23年度から、県内企業さんと「表面処理技術研究会」を始めました。参加無料で、現在、27企業1大学(64名)に参加いただいており、評価・分析手法や、新たな技術動向、 表面処理の仕方などを勉強しています。今後は、他の地域の同様な研究会・勉強会グループと連携を図りながら、表面処理技術の発展に努めていきたいと思っています。
表面処理研究会について
企業さんとの共同研究については、私自身、国際学会(ISSP)に実行委員として関わっていますが、最新の技術情報にも触れつつ、 企業さんのもつ技術課題のクリアに重点おいて行うよう心がけています。現在、コーティング技術については、自動車分野だけでなく、医療機器分野などにも拡大してきており、 新たな課題も多く出てきていますので、最新技術のみを目指すのでは無く、身の丈にあった取組をしっかりと続けていきたいと思っています。
Q4コーティング技術についてのご相談は是非安井主幹にですね。
(安井)
研究室にいるだけでは、技術の向上・高度化には繋がらないと思いますので、積極的に外に出ています。技術的なご相談があれば、是非ともご連絡をいただきたいです。
コーティングの技術だけで無く、評価装置なども備えていますので、それらについてもご相談ください。
(舟木)
当試験場では、以前から、広報誌等には、研究者の顔写真やメールアドレス、研究者の想い(一言)を掲載しています。 これら広報誌等をご覧いただき気になることがありましたら、直接担当者にご連絡下さい。もし担当者がご相談に対応できなくても他の研究者に繋げ対応します。是非ご連絡ください。

機械金属部 表面処理ご担当 安井治之 研究主幹
専門:表面処理、トライボロジー(摩擦) 「石川県から新しい表面処理技術を発信します」
取材後記
「コーティング技術」は、自動車部品等への適用拡大、医療機器への使用用途の拡大など、今後も新規事業への発展が期待できる技術といえます。 石川県工業試験場には、長年の研究による知識の蓄積と、これまで地元企業さんとの連携した取組の経験が豊富にあります。
県内企業の皆様だけでなく、地域企業の皆様に広くご活用いただけると幸いです。
お問合せ先
- 中部経済産業局 地域経済部 イノベーション推進課
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愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052‐951‐2774
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