2013年7月9日
【今回のキーワード/食品の試作・加工研究】
第1回目は、今年創立100周年を迎えた富山県工業技術センターに伺い、最新の試験研究設備を活用した研究開発への取組、若手研究者の育成など、 センター独自かつ特色のある取組について、その事業を担当されている方々とともにご紹介します。
今回は、企画管理部長 土肥様、電波暗室ご担当:中央研究所評価技術課 塚本様、佐々木様、宮田様にお話を伺いました。
Q1今年で創立100周年とのことですが
100周年を迎え、”未来を拓くものづくり、富山から”(Create Next ‘MONOZUKURI’ from Toyama)を合言葉に革新的なものづくりの技術の創出、優れた人材育成に取り組んでいます。 当センターは、大正2年3月に地場産業(銅器・漆器・織物)から世界に通用する技術への転換を図ることを目的に、全国で15番目に「富山県工業試験場」が創設されたのが始まりです。
平成23年4月に「ものづくり研究開発センター」を開所し、共同研究のための企業スペースや、最先端のものづくり設備を揃えた、”ものづくり産業振興の拠点”として、「世界の試作品工場」を目指した取組を始めています。

電波暗室担当者(左から)宮田さん、塚本さん、佐々木さん
Q2異分野・異業種交流、研究開発に向けた取組「ものづくり産学官協働バトンゾーン形成研究会」というものがあると伺ったのですが、どのような事業でしょうか。
産学官協働研究につながる先導的な研究やコンソーシアム形成に向けた研究会として、専門家による講演会やプロジェクト提案に向けた会合を開いています。
電波暗室関連では、評価技術課の佐々木が代表世話人を努めています。10m法電波暗室が設置される前年の平成22年度より研究会の活動を始めていて、電波暗室の基礎の研修やノイズ対策の基本講習、事例などについて定期的に勉強会を行っています。現在、17社の参加があります。
電磁環境(EMC)技術に関心のある企業等の技術者が集まり、情報収集や意見交換を行うことで、企業のもつ試験ニーズが把握でき、また関係する人材のネットワークが生まれています。
平成25年度は、EMC対策技術をテーマにしておりますが、今後、ノイズ対策のためのシミュレーション技術の分野にも、展開を考えています。興味がある方は、県内外を問わず無料で参加いただけますので、是非ご連絡をいただければと思います。
EMC・システム研究会 EMC対策WG開催風景
研究会世話人 佐々木さん
若手人材育成事業 研究風景
Q3貴センターでは、若手の人材育成についても熱心に取り組んでいるとのことですが。
富山県には、今年で27年目となる「若い研究者を育てる会」という組織があります。
昭和60年に富山県職員が企業との共同研究の成果を学位論文にまとめ、工学博士を取得したことを機に、県内企業経営者有志の皆様から、 自社の研究人材の育成を図って欲しいとの話があり、昭和61年から共同研究の実践を通した人材育成の事業が始まりました。
「研究開発ができる人材の育成」をモットーに、センターからの研究テーマだけでなく、企業からもテーマを募集し、毎年5から8テーマほどで、 「若手研究者育成支援事業」として企業技術者を受け入れ共同研究を実施しています。(参加企業さんも募集しています。)
企業提案のテーマは、提案企業の若手研究者ご自身が取り組むこととなります。そして、1つのテーマに、センターの研究員が数名でチームを組み、 企業の研究者は原則、週1回センターに来て研究活動を行い、3月には論文にまとめて研究発表会を開催するところまで行っています。 発表会では、出身企業の経営者の方も出席し、学術的な質問のほか経営に近い質問のやりとりなどもあり、研究者としては厳しい部分もありますが、とてもいい経験になっていると思います。
また、研究に参加することで、センターのいろいろな設備を知ってもらうことができますし、研究活動や発表会を通してセンター職員や他の企業の技術者と交流をもつことは、 人のネットワークを拡げるという点で、大変、有意義なことだと思います。
電波暗室の関連では、設備が設置された平成23年度に「LED照明のEMC・ノイズ対策に関する研究」を、引き続いて「SW電源の電磁ノイズのシミュレーション」、 「スイッチング電源における電磁界ノイズシミュレーション実用化の研究」と毎年1テーマずつ共同研究を実施しています。
若い研究者を育てる会のご案内open_in_new[富山県新世紀産業機構サイト内]
Q4この試験研究設備(10m法電波暗室)の利用方法等をご紹介下さい。
この設備は、開放機器として、ご利用者自らが設備の操作を行ってもらいます。電磁波対策は現場での測定&対策の繰り返しですので、初めての方には操作方法をお教えしたうえで、じっくり腰を据えてご利用いただいております。
この暗室は、2本のアンテナで水平と垂直方向の電磁波を同時に測定するダブルアンテナ法に対応しており、測定時間が短縮でき、効率的に対策が行えるという特徴があります。また、暗室と測定設備は、FCC(米国)とVCCI(日本)に登録されており、国際・国内規格等への適合確認も可能となっています。
センターの機器担当者には、規格に関する研修を修了している者もおりますので、試験方法等でご不明な点はご相談いただければと思います。

10m法電波暗室風景
電波暗室の設備仕様・性能はこちらopen_in_new[PDF/富山県工業技術センターサイト内]
さらに、この部屋の隣には小型電波暗室も整備しています。それぞれ完全な独立した部屋(出入口を含め完全に分断)となっておりますので、企業秘密にも配慮しています。2つの電波暗室を同時に使用することで、時間短縮など効率的な試験を行う企業の方もございます。
10m電波暗室と小型電波暗室を設置しているのは、全国の公設試で5カ所のみです。東海北陸地域の公設試では唯一となりますので、是非ご利用いただければと思います。
Q5100周年を迎えられ、盛大なイベントが開催されるとのことですが。
毎年、研究発表会を開催していますが、今年は100周年として、「富山県工業技術センターテクノシンポジウム2013」を7月25日(木曜日)26日(金曜日)の2日間開催いたします。 25日(木曜日)には、基調講演に加え、インタラクティブ・セッション(研究成果のパネル展示)、研究発表(材料・プロセス関連、電子・計測関連、生活・環境関連の3分科会で各4テーマ)、 新設設備の紹介などを行います。26日(金曜日)には、「中央研究所」、「生活工学研究所」「機械電子研究所」の一般開放を行います。 見学会、機器の実演も行いますので是非ともご参加ください。
富山工業技術センターテクノシンポジウム2013ご案内open_in_new[PDF・796KB/富山県工業技術センターサイト内]
※イベントは終了しました
取材後記
地元の企業さんにとって、また、地元以外の企業さんにとっても、有用な装置がたくさん設置されていますし、また、それらを活用した研究開発・人材育成にも計画的かつ熱心に取り組まれていると思います。 若手研究者の育成にも、センターの若手の研究者が一緒になって取り組むなど、長くつきあっていける感じがする公設試と思います。富山県の企業の皆様だけでなく、広くご活用いただきたいと思います。
お問合せ先
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