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No.64電子機器のEMC評価について

2025年11月17日

今回のキラリ公設試では、富山県産業技術研究開発センターに伺い、電子機器のEMC評価(電気・電子機器の電磁ノイズに関する試験)について主任研究員の奈須野さんにお話を伺いました。

富山県は、製造業が盛んな地域であり、全国的に見ても第2次産業、特に製造業の割合が高いのが特徴です。富山県産業技術研究開発センターは、「高度で、特色があり、役に立つ」をモットーに、県内の主に中小から中堅の製造業を中心に、技術支援・研究開発・技術情報の提供を行い、技術力の向上と新製品の開発を支援しています。

  • エミッション測定措置と奈須野主任研究員

    エミッション測定装置と奈須野主任研究員

  • リアルタイムスキャン測定例

    リアルタイムスキャン測定例

Q1電子機器のEMC評価とはどのようなものがあるのですか?

EMC評価とは、「電気・電子機器(以下「機器等」という。)が電磁ノイズによって誤作動しないかを確認する試験」で、一般的に「エミッション試験(EMI試験)」と「イミュニティ試験(EMS試験)」の2つに分類されます。

Q2「エミッション測定システム」、「イミュニティ試験システム」を使用した試験について教えてください。

エミッション試験は、機器等から発生する電磁ノイズの強度を測定し、機器等の種類ごとに要求される許容値以下のレベルとなっているかを確認する試験、イミュニティ試験は機器等に擬似的に電磁ノイズを印加※1したときに誤作動しないかを確認する試験です。

製品の開発にあたっては、機器等から発生する電磁ノイズが他の機器等の動作に影響を与えないようにするとともに、機器等が外部からの電磁ノイズに影響を受けても正常に動作することが求められます。

エミッション試験もイミュニティ試験もそれぞれ空中を経由する電磁ノイズを対象とする放射ノイズに関する試験と電源線や信号線を経由する電磁ノイズを対象とする伝導ノイズに関する試験の2つに分かれており、当センターでは国際無線障害特別委員会(CISPR)や国際電気標準会議(IEC)が定める規格に沿った試験ができますが、実際の測定方法は内容によって変わります。

※1印加:電気回路に電源や別の回路から電圧や信号を与えること。

Q3設備の特徴について教えてください。

放射エミッション測定において、東海・北陸エリアの公設試験研究機関として唯一、10メートル法対応の電波暗室(北信越地域では長野県、新潟県に設置)を保有しているため、大型機器のEMC評価が可能です。また、1GHz以下のエミッション測定では、2マスト(ダブルアンテナ)法を用いることにより、水平・垂直の両偏波を同時にプレスキャン測定ができ、アンテナ1本の場合に比べて測定時間を約半分に短縮できるという特徴があります。放射イミュニティ試験では、80MHz以上の周波数帯域において、3mの距離で電界強度15ボルト毎メートルまで耐性試験を実施することができます。

製造業の皆様の開発、検査などにご利用いただくため、施設・設備を有料で開放しています。

操作経験がない方には、職員が取り扱い方法等について個別指導を実施(有料)していますので、まずはお電話でご相談ください。担当の職員が詳しい内容(試験品概要、試験条件)をお伺いし、ご案内いたします。

  • 放射エミッション測定
  • 放射エミッション測定

Q4どのような企業の利用が多いでしょうか?

電子機器、医療機器、産業用機器(制御機器・ロボット)などの製造業の皆様の自社製品の試験でのご利用が多いです。

エミッション測定システムについては、新レシーバの導入により、測定時間がさらに短くなりました。2マスト(ダブルアンテナ)による水平偏波と垂直偏波の測定をスペクトラムアナライザ※2とレシーバのスペクトラムアナライザ機能を用いて同時に測ることが可能なため、短時間で効率的に測定できると評価いただいております。

イミュニティ試験については、アンプを増強しており、通常より強めの電磁ノイズ試験のご要望にも可能な範囲で対応しています。

※2スペクトラムアナライザ:入力した信号を周波数成分に分解し、それぞれの周波数における信号の強さ(パワー)を測定・表示する機器

  • エミッション測定装置(制御機器、測定機器等)

    エミッション測定装置
    (制御機器、測定機器等)

  • 類似電源回路網

    類似電源回路網

Q5利用料金を教えてください。

本設備は、ご利用時間に応じた利用料金となります。

エミッション試験は、「10メートル法電波暗室」で行います。イミュニティ試験は「小型電波暗室」で行い、それぞれの暗室の利用料もかかります。利用料については下記のとおりです。

10メートル法電波暗室 + エミッション測定システム
1時間につき 9,340円 + 1時間につき 5,120円 = 1時間につき 14,460円
(県外企業料金:1時間につき 14,010円 + 1時間につき 7,680円 = 1時間につき 21,690円)
小型電波暗室 + イミュニティ試験システム
1時間につき 3,170円 + 1時間につき 3,230円 =  1時間につき 6,400円
(県外企業料金:1時間につき 4,750円 + 1時間につき 4,840円 =  1時間につき 9,590円)
※装置の操作指導が必要な場合は1時間につき 4,140円(県外企業料金:1時間につき 6,210円)の追加料金がかかります。

Q6他にEMC評価で実施できるものはありますか。

ループアンテナの新規導入により低周波(9kHz~30MHz)の放射測定が対応可能となりました。ラージループアンテナ(直径2m)では、「家庭用や工業用で使用される照明器具」の低周波数帯域の放射エミッション試験が可能となり、当センターではLED照明やLED提示板等の測定に利用いただいており、ループアンテナ(直径60cm)は、工業用途や船舶規格等のEMI試験で低周波帯域の測定に使用しています。

このほか、IEC規格に基づいた静電気試験や雷サージ試験、ファスト・トランジェント/バースト試験など多種EMC試験をワンストップで実施可能です。

  • ループアンテナとラージループアンテナ

    ループアンテナとラージループアンテナ

Q7その他本設備利用者へ一言お願いします。

EMC試験は労力のかかる作業です。電磁ノイズを可視化するなど、システムの機能を上手く使うことにより効率よく試験・測定を行い、安全な製品の開発に役立てていただければと思います。

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本ページに関するお問合せ先

中部経済産業局 地域経済部 イノベーション推進課
〒460‐8510
愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052‐951‐2774
メールアドレス:bzl-chb-sangi■meti.go.jp
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