放置されていた間伐材を有効活用したバイオマス熱利用

バイオマスボイラー施設

間伐材、建築廃材からできた木質チップを
毎日燃やし蒸気に変換している。

木質チップ
当社の製油事業では原料の乾燥や搾油の工程において大量の蒸気を必要とします。10年前まではA重油を用いたボイラーで蒸気をつくっていましたが、イラク戦争の勃発で原油市場が不安定になり、重油の値段が高騰したため製油事業では致命的なコストアップに晒されたことから、
当社の対応策として化石燃料の代替エネルギーを検討していました。そんな時、森林面積が65%の三重県の山において山林を守るために間引かれた間伐材が放置されているという話を耳にしました。
身近なところにある大量の未利用間伐材を燃料に活用できないかと考え、森林組合や製材会社と共同で蒸気エネルギー供給工場となる松阪木質バイオマス熱利用協同組合を設立しました。林業関係者からも、今まで伐採し放置されていた間伐材が商品になるということで絶大な協力を得ることが出来ました。
現在では当社の製油事業で使用する蒸気の大半は、バイオマスボイラーから生み出された蒸気を使用しています。余剰分の蒸気についても本社工場近くのトマトハウスで利用しており、エネルギーの完全利用を実現することができました。更に京都議定書に基づくCO2排出のない環境づくりに貢献していきます。
高い生産性を実現するトマトハウス農園を運営!
三重大学からの紹介において、県内で高付加価値トマトの高効率栽培に取り組む株式会社浅井農園とご縁ができたことで農業分野にも進出しました。
同社とは、当社が推進する循環型社会の形成ならびに環境保護対策を目的としたバイオマス事業において自家消費しきれない余剰分の蒸気や製油工場から発生する未利用温水を利用した、年間を通して栽培を可能にする植物工場を共同運営することになりました。
この取り組みに賛同した、辻製油株式会社、株式会社浅井農園、三井物産株式会社、イノチオアグリ株式会社の4社の出資により農業法人うれし野アグリ株式会社を2013年に設立しました。
当社が総合経営と熱源供給、浅井農園がトマトの栽培技術と販売、イノチオアグリがハウス設備と設備管理、三井物産が流通と海外戦略というようにそれぞれが得意分野を持ち寄り、役割を分担して運営を行っています。
オランダの高軒高・高効率な栽培方式を採用した約2haのガラスハウスを建設し、人が作業しやすい体制の位置に実がなるような優れた作業効率を実現する設計が行われているほか、収穫状況や空調・労務管理をコンピューターで一括管理し、高い生産性を実現しています。
今般の需要増加に対応するため、LEDライトを使用した1.3 haを有する国内最大級電照型のトマトハウスを新しく建設中です。LEDを使うことで夜間でもトマトの成長が可能となり、生産効率の向上が期待できます。
本施設経営は地域雇用貢献策も担っており、このトマトハウスでは子育てをしながら働く地元の女性約100名に活躍してもらっています。LED使用の新しいハウスが稼働し始めれば、更に多くの雇用を生み出します。

ハウス内で栽培されている房どりトマト

東海地域最大規模のトマトガラスハウス

建設中の新たなハウス

ハウス内に蒸気や温水を通すための管
過疎地に雇用を創出!道の駅にみかん工場を整備

工場で製造されたみかんジュースシリーズ
三重県の南端にある御浜町は三重県最大のみかん産地ですが、高齢化が進む過疎地でもあります。年中通して様々な種類のみかんを収穫できますが、みかんの収穫時期は限られており、一時期に採取するため、未利用目的分のみかんが発生します。
農家が苦労して生産した柑橘を放置しなければならないことに心が痛み、御浜町内の大型道の駅「パーク七理御浜」の経営に携わり、同施設内にみかんジュース工場を建設しました。現在、道の駅は地元の従業員40人以上が働いています。
道の駅には直売所「浜街道」、大型レストラン「ごちそうダイニング」を併設しており、全国や海外から多くの来訪者があります。その観光客に生産状況がよく見えるように造った「見えるジュース工場」を建設し、この地域ならではの特徴を持った安全安心の商品つくりに取り組んでいます。
地域の活性化に力を注ぎ、地域の過疎化を少しでも食い止めることの重要性を感じています。
今後の取組
創業以来72年を迎え、地域と共に発展してきました。当社が地域に貢献できることは、今まで培ってきた技術を更に研鑽し、地域の資源を発見開拓し、付加価値を付けて地域に貢献することを最大のテーマとして、地域社会のプラットホームとなることです。
「抽出・精製・発酵」が当社の最大の技術であり、また最大の知財でもあります。地域資源と当社の技術を使った商品づくりは今後地域の発展の為に大きく貢献できると確信しています。
アグリ事業ではミニトマト栽培の他、機能性野菜、薬草、特殊柑橘栽培など多種多様な素材つくりと、そこから生まれるこれまで市場になかった新しい商品づくりに取り組んでおります。
販売面では、今春、東京都港区浜松町に開設した東京事務所の機能を充実させ、海外戦略を積極的に推進してまいります。具体的には農産物栽培、農産物加工、機能性油脂製品、フレグランス市場に提供できる精油製品、香味油、化粧品素材などオンリーワン商品の開発に取り組んでまいります。
また、植物油脂の輸出入など海外戦略に必要な基地である三重県松阪港に建設した大型タンクターミナルの充実も図り、貿易に力を入れてまいります。
油脂の海外戦略と機能性素材の更なる開発、地域資源を使った高機能製品の開発に当社技術を研鑽し、地域の発展に寄与してまいります。