同社の歴史
株式会社 大野ナイフ製作所
弊社は私の祖父が1916年(大正5年)に創業し今年で103年目になります。創業した当時から輸出向けポケットナイフを製造していました。
輸出先でのポケットナイフの法規制やプラザ合意などによる為替相場の影響、量販店による価格破壊といった時代の変化の荒波をなんとか乗り越え、現在は貝印株式会社などの有名包丁メーカーの海外向け高級包丁のOEM製造をメインに行っております。
高級包丁開発の動機
20年以上前の関の刃物屋は典型的な3Kの職場であったため私は家業を継ぐつもりはなく、大学卒業後は東京の企業に就職していました。
しかし、日々サラリーマンとして働く中でこのまま働いていても一生で稼げる金額は決まっちゃっているなという漠然としたもやもやを感じており、関に戻ることを考え始めていました。
関に戻って、価格競争・納期競争にさらされる普通の包丁ではなく世界に1500万人ほどいるといわれている富裕層向けに1本100万円もするような高付加価値の包丁を製造してみようと考えました。
ダメだったらあきらめようと思っていましたが、大学時代のアメリカ留学で海外の富裕層の世界を垣間見たことがあり、1本100万円でもその価値に値する包丁であれば躊躇なく買う層は国内外に一定数いるという確信がありました。
そこで今から40年ほど前に関に戻り高級包丁の製作に試行錯誤を繰り返しました。
高級包丁の開発スタート
自ら包丁をデザインし、包丁の持ち手に伊万里焼陶器を付けたり包丁の表面にダマスカス模様という日本の和を感じさせる綺麗な模様を出しつつも美術工芸品の様な美しさを兼ね備えたアレンジを施すなど様々なアイデアを出し、弊社でしかできない包丁製作に取り組みました。
特にダマスカス模様はいまでは多くのメーカーが製造していますが、実は20年前に弊社が先駆けて製作しました。
高級包丁を製造した当初は国内で売り込みに行ったものの高すぎるという理由で誰も相手にしてくれませんでした。そこで海外をターゲットに絞りました。
日本の一流の板前は日本刀を作っている鍛冶屋に20,30万円以上するようなオーダーメイドの包丁製作を依頼する文化がありますが、それに対して当時の欧米のシェフは一流クラスであってもドイツ製のそれほど高額でない切れ味の鈍い市販の包丁を使っていたので、
抜群に切れ味が良くかつ見た目も美しい高級包丁はもの珍しく、市販品が飽きられ始めていたことや忍者ブーム、日本食ブームも相まって弊社の製造した高級包丁が売れ始めました。
旬シリーズ 「初代」
刃の表面には美しいダマスカス模様が
浮かび上がっている。
旬限定シリーズ 「紫鳳」
大人気高級包丁ブランド「旬」、限定ブランド「紫鳳(しほう)」
弊社がOEM製造を行っている海外向け高級包丁ブランド「旬」はその品質とデザイン性の高さから世界中で大変人気を博しており、国内外で累計出荷本数が700万本を突破し月間5万5千本を売り上げる貝印㈱を代表する大ヒット商品となっております。
旬シリーズだけで280種類ほどのアイテムを展開しています。また、刃の表面にはダマスカス模様をはじめとした美しく品の良い模様を鍛造などの独自技術で浮かび上がらせ、刃先の研磨、刃付けには職人技を駆使し細部までこだわって製造しています。
品質とデザイン性の高さからナイフ業界において最高峰の名誉とされる「ナイフ・オブ・ザ・イヤー」の「キッチンナイフ・オブ・ザ・イヤー」部門を過去10回受賞しています。最近では日本国内でも人気を得ており、高級百貨店の包丁売り場で対面式での販売が行われています。
また、「旬」の限定シリーズとして2年に1度「紫鳳」シリーズを製作しています。「紫鳳」は200本限定生産品でデザイン性、品質ともにこだわりぬいて製造する1本20万円ほどの特別な包丁です。
200本限定生産のためそれほど利益は出ませんが、次のデザインができあがっていない段階で多くの注文をいただくほどの人気ぶりで「旬」ブランドの宣伝やブランド力強化につながっています。
特定の同じ商品ばかり製造を行っているとコストダウンのことばかり考えてしまいますが、こういった普段とは異なる製品を製造することで社員にもわくわく感を持って仕事に取り組んでもらうことができますし、何より紫鳳シリーズを心待ちにしていただいているお客様にも大変楽しんでいただけています。