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中部発きらり企業紹介 Vol.92

更新日:平成27年2月17日

独自のデジタル画像処理技術を活かした構造物点検診断ビジネスにより、
インフラ維持管理の効率化、低コスト化に貢献

株式会社 中部EEN ロゴ 株式会社 中部EEN
  • 愛知県名古屋市
  • デジタル画像による構造物の点検・分析業務並びにソフトレンタル業務
  • バイオマスプラントシステムの企画・設計・販売・管理
  • 環境製品の販売
  • 一級建築士事務所として建築設計業務等
スター★ちゅぼっと君
 今回は、株式会社中部EENの衣笠貢司社長にお話を伺いました。 同社は、今後急速に社会的需要が高まるインフラの点検効率化、低コスト化を図るべく、独自のデジタル画像処理技術による構造物点検診断ビジネスを展開されるとともに、 エネルギー環境分野においても、海外の先進的なバイオマスガス発電システムの国内展開を目指して取り組まれています。
Q.はじめに御社の創業からこれまでの沿革についてご紹介頂けますでしょうか?
A.衣笠社長
株式会社中部EEN
株式会社中部EEN
 2010年6月頃、56歳で地元の建設会社を退職しまして、2011年2月に株式会社中部EENを創業して、約4年となりました。 将来的に、エネルギー分野やインフラの維持管理が重要になると考えまして、独立して事業を開始しました。
 もともと、以前の会社にいた時から、これからの時代は、建設会社も本業以外にも、エネルギー分野などの新分野を開拓して挑戦していくことが必要と考え、2005年頃には、 自身が担当して、メタン発酵によるバイオマス発電システムの導入に取り組みました。事業実施に際しては、経済産業省の新連携事業を活用させて頂き、 コンテナ型(300kg/日処理)バイオマス発電装置の稼働試験や、当時、世界100ヵ所以上のプラント設計・製造の実績があるドイツのバイオマス発電システムメーカーから技術供与を受けて、 メタン発酵施設を設置して、そこで得られた電力、熱、液肥を活用して、トマトの水耕栽培を行い、すべてのエネルギーが循環するシステムを構築することを目指しました。 プラント建設は、将来的に本業の建設の仕事にも繋がりますし、メタン発酵発電のノウハウも蓄積できるため、さらに事業を推し進めて、今度は、 廃棄物を使ったメタン発酵発電に本格的に取り組もうと考えましたが、業界を取り巻く厳しい経済状況もあり、最終的に実現には至りませんでした。
 そこで、自身がこれまで建設業で培ってきた知識や経験、エネルギー環境分野の知識・ノウハウを活かして、 今後大幅に需要が増加する構造物の診断技術とエネルギー環境技術を広く社会に提供したいと考えまして、創業を決意しました。

ドイツにてバイオマステストプラント出荷前工場検査
ドイツにて
バイオマステストプラント
出荷前工場検査
 退社をして間もない頃、NEXCO中日本(中日本高速道路株式会社)が有機性発生材の3Rシステムに関する共同研究の公募をしており、まだ会社を立ち上げる前の個人の状態でしたが、 応募しまして、当社がバイオマス発電分野において先進的に取り組み、同分野に知見ノウハウを有していたことが評価されまして、共同研究を実施できることになり、法人化を進めて、 2011年2月に会社設立に至りました。その研究の内容は、高速道路の法面の草木を有機材料対象とするバイオマス発電システムに関する研究開発で、 ドイツで製造した実証機械の納品検査の最終確認のためにドイツに行く直前に、東日本大震災が起きました。 震災の直後ということもあり、ドイツにおいても新エネルギーに日本企業が取り組むということで、高い注目を受けて、現地マスコミにも取材されました。 その後、再生可能エネルギーへの関心が社会的にも高まり、共同研究で成果も出て、新たにバイオマスプラントを設置する場所を選定して、具体的に設置を検討するところまで話が進みました。
バイオマスガス発酵発電システム
バイオマスガス
発酵発電システム
 ところが、橋梁の劣化問題が各地で報道される中、2012年の3月に笹子トンネルの天井板落下事故が起き、それにより、国を始め全インフラの整備が緊急の課題と急浮上してきたため、一旦進捗が止まってしまいました。当時は、自然エネルギー関連業務をメインでやっていましたので、エネルギー分野が進まなくなり、今後の業務をどうするか考えていたときに、NEXCO中日本様より、名古屋大学と連携して、今後必要とされる構造物インフラを点検する人材育成の教育プログラム事業(N2U-BRIDGE)を実施するため、当社の技術が活用できないかとお話がありました。
画像処理技術を活かした構造物点検・解析は、元々独立する前から行っており、遠方から撮影しても、高い精度でクラック等の画像解析が可能な技術を保有しており、 その技術が評価されて、人材教育で使用する教本の資料作成を受注するなど事業に参画することができました。 そして、これを契機に、今度は、エネルギー分野から点検診断業務へと軸足を移していくことになりました。 東日本大震災以前は、当社のメイン業務は、エネルギー分野だと考えていましたが、今後、膨大な量の社会インフラの劣化対策が急務の中、点検診断業務は確実に仕事が増えていくと考え、 震災以降はエネルギー分野と並ぶ事業の柱として、現在は実質的に後者がメイン業務となっております。事業の柱を複数持っていたことで、 時代のニーズに合致した柔軟な事業展開ができたのは、大変よかったと感じています。
         
Q.御社のデジタル画像処理による構造物の点検調査・解析システムは、東日本大震災 の復興にも活用されたとお聞きしてますが、どのようなものですか?
A.衣笠社長
東日本大震災での活用 石巻工業・災害復旧工事
東日本大震災での活用
石巻工業・災害復旧工事
 橋、トンネル、建物など構造物の長寿命化には、定期的なひび割れなどの劣化診断が必要となります。放置すると漏水や錆など劣化の原因となり、修復費用が膨大になります。 また、2012年の笹子トンネル事故以降、安全性の確保が必要な莫大な量の公共資本が約1200兆円規模存在しており、その半分はコンクリート施設であり、 点検調査(道路構造物5年毎点検、特殊建築物3年毎点検が義務付け)、劣化対策が急務です。増大する調査、修繕費用が課題となる中で、効率的な点検と適切な補修工事が今後、 一層重要となっています。現在、自治体等が有しているトンネルや橋など小さいものも含めれば、1市町村でも数百程度保有しており、それを調査するだけでも何千万も費用がかかるため、 予算を捻出するのが大変な状況です。そのため、いかに低コストで、精度を高めて、中長期的にも効率的にデータを蓄積していけるかが今後、大事となります。
 当社のソフトでは、デジタルカメラで撮影した画像を、独自の画像処理技術を用いて、パソコンに取り込み、データを正射影変換することにより、ひび割れの幅や長さ、面積を計測して、 構造物の劣化状況を簡単に診断・分析することが可能です。従来の目視と手書きによる点検に比べて、現場での調査時間を大幅に短縮でき、 また、足場が必要な場所や近接することができない場所などでも容易に調査可能となり、低コスト化、点検精度の向上に繋がります。そのため、熟練者に頼らなくてもよく、 担当者を変更しても解析レベルにばらつきがでません。当社のシステムでは、現場での主な作業は撮影のみで、実際の診断業務は事務所など屋内で行うため、 高齢者や女性などの活躍する場を拡大することにも貢献できます。更には、測定結果を画像データとして蓄積できるため、数年おきに経年変化の観察をするのにも効率的です。 画像データを正射影変換処理した構造物の画像上で、クラックやひび割れ幅が広がったか伸びたかを判別でき、 範囲指定する事で長さや面積を計測及び図面化すると同時に自動で数量化もできます。そのため、解析結果のデータ化により、 点検調査費用のコスト削減と正確な経年変化情報を得て確実な事業計画の作成が可能となります。
外壁調査の赤外線診断
外壁調査の赤外線診断
 なお、本技術は、国交省の公共工事における新技術の活用のため、新技術に関わる情報共有及び提供を目的とした新技術情報提供システム (New Technology Information System:NETIS)試行評価済として登録されています。
 昨年9月には、NETISの維持管理支援サイトにおいて、「コンクリートひび割れについて遠方から検出が可能な技術」の評価結果で、当社技術が国内でトップレベルで評価されました。 現在では、約100m先の0.2mm幅までは、測定、画像解析が可能です。すでに、公共・民間調査での実積をはじめ、ゼネコン、コンサルタントなどからも、 当社システムを導入頂き、海外からも問い合わせがあります。
図面上に投影した診断結果を合成し表示
図面上に投影した診断結果を合成し表示
 また、東日本大震災の際にも、当社のソフトが、インフラ調査に活用されました。震災直後に、仙台の測量会社より電話があり、現地に入るためには、被災状況を確認して、 道路の復旧がまず必要となりますが、道路の調査をして図面化するための計測機器が被災して壊れてしまい、使用できるものが、 一部の計測機器や通常のパソコンやデジタルカメラぐらいしかなく、行政に相談したところ、当社を紹介されたとのことでした。 早速、当社のソフトを現地に提供させて頂き、そこで使ってもらいました。数週間後に、現場での使用が容易であり、早期に調査に対応できたと感謝されました。 当社のソフトは汎用性があるため、一般のデジタルカメラやパソコンさえあれば、調査ができるという点で災害時においても有効に活用され、その実績もあり、 国土交通省NETIS「震災復旧・復興支援サイト:資する技術」 2011.07として登録されて、官民問わず高く評価されています。
         
Q.現在、本技術を活用して、トンネル点検に利用できる走行自動撮影システムの実用化に取り組まれているとお聞きしておりますが、ご紹介頂けませんでしょうか?
A.衣笠社長
トンネル壁面変状の自動撮影装
トンネル壁面変状の自動撮影装
  高度経済成長時代に建設されたトンネルが、今後、建設後50年の節目を順次迎え、老朽化していく莫大な量のトンネルの劣化対策が急務の中、増大する調査、 対策費用が課題となり効率的な点検と適切な補修工事が重要となっています。また、調査業務は膨れあがるものの、経験豊富な技術者が今後減少していくことが課題です。
 そこで、愛知県の補助事業を活用して、一般トラックの上にカメラを搭載して時速数十km程度で走行させて、トンネル内壁面の劣化状態について、 半断面を動画撮影して画像解析できる低価格・高性能のシステムの実用化に取り組んでいます。
 一般的には、車線規制をしてトンネル点検作業車の上で、目視でスケッチするなど天井を見上げながらの仕事であるため、1日でできる範囲も限られ、時間がかかる上に、 作業者の負担も大きく、劣化図の精度も低いというのが現状です。
トンネル壁面変状の走行自動撮影の実証テスト
トンネル壁面変状の走行自動撮影の実証テスト / 鉄道トンネルでの実証予定
 本システムが実用化されましたら、撮影した動画から、トンネルの曲線は、ゆがみ補正などの画像処理を施して、早く正確に劣化状況をデータ化して、診断分析に活用できるようになり、 また経年変化を見ることも可能になります。本事業は、昨年末に公道で実験を行い、3月には鉄道トンネルでの実証も予定され、本年中には実用化を目指しています。 本システムが実用化すれば、一般の運搬車に搭載が可能なため、経済的にも非常に安く済みますし、従来より正確かつ短期間で作業を終えることができ、更に、 作業者の負担軽減にも繋がりますので、将来的には、当地域から全国の自治体に対して、本システムを提案していきたいと考えております。
         
Q.最後に、御社における今後の方針、課題等についてお伺いできますでしょうか。
A.衣笠社長
 今後も、これまで同様、点検診断業務とエネルギー関連業務の両方を事業の柱として取り組んでいきたいと考えています。 ただ、当社として、エネルギー関連業務を重点に据えたいのですが、点検診断業務の仕事が多いため、なかなか対応ができないのが実情です。 以前は、点検業務とエネルギー分野での売上は、50対50ぐらいでしたが、現在では、それが、90対10ぐらいの比率になっています。 やはり、バイオマスプラントシステムの導入となると億単位での投資が必要となるので、企画段階でなかなか設置までには至らない傾向があります。 また、当社の企業規模からしても、商品不具合があった場合の保証問題となると、やはり事業リスクが大きいと言えます。
 それに対して、調査点検業務は、初期費用が低く、当社の画像処理ソフトも、一般のカメラ、パソコンとソフトだけで、高性能の点検解析ができるので、事業リスクが少なく、 需要が多いという点でも、当面は、会社の体力が付くまでこちらを当社のメイン業務としてやっていこうと考えています。
 今後は、当社の画像解析ソフトのレンタルも含めて低コストで広く普及させることを目標としています。 そして導入先で、数年ごとにパソコンがバージョンアップするための更新需要やメンテナンスも含めたビジネスモデルを展開していきたいと考えています。 レンタル等により広く普及させることで、同様の技術を使った競合他社は今後増えていくことが予想されますが、発注者の多様な要求事項に現場において柔軟に対応でき、 導入後のアフターケアも含めて即対応できる点は、当社の強みとなっております。 当社ソフトが普及し、構造物点検のスタンダードとなれば、他社がでてきても、先行して市場のシェアを確保できており、また、 画像による図面作成や積算ソフトなど多くの付加機能で多様な要求に対応できるため、優位性を維持できるであろうと考えています。
 今後は、通常の人がデジタルカメラで撮って画像解析するだけではなく、機械を使って撮影して、画像解析ができるようなロボット化を更に進めるなど、 既存技術をベースに技術開発を進めて、構造物のデジタル画像解析技術においては日本のトップランナーとしての確固たる地位を確保していきたいと考えています。
 また、本技術は、例えば、今後、工事中の構造物等の常時変位計測システムや滑走路や倉庫などの大面積の床面の劣化計測の自動化など応用範囲が広く、社会的ニーズが高いため、 自治体や関連企業などとも連携しながら、多方面においても開発を進めていきたいと思います。 将来的には国内だけでなく、海外向けも取り組みたいと考えており、建築物の維持管理方法は、日本とは同様ではないでしょうが、基本的には、維持管理ソフトを英語版にするだけですので、 今後、ソフト販売など検討していきたいと考えています。
 今後の課題は、高精度の技術を提供することで、顧客から求められる技術精度の水準が高くなってきており、それに対応できるよう性能をより高めていくこと、そして、 より使いやすい価格で提供できるようにしていくことです。幸い、当社ソフトは、市販のデジカメ・PCの性能が向上していけば、当社の画像解析技術も向上していくため、開発コストを含めて、 低コストで提供できる点が強みです。また、国内における点検が必要なインフラの量は莫大であるため、現在、営業をしなくても、 問い合わせのある仕事に対応することで精一杯というような状況ですが、今後は、事業の拡大に際して、女性や高齢者の活躍に期待しています。 画像解析業務は忍耐と正確性が必要ですので女性の方が優れていると考えています。また、人材育成にも力を入れていきたいと思います。 設立当初は、社員1名で立ち上げて、現在社員7名まで増えており、技術が専門でない社員も多いですが、最初は技術の仕事を一から教えて、どの社員も現場対応ができるように、 人材を育てていくことが、今後、重要であると考えています。
         
本日はお忙しいところ、お話をお聞かせ頂き、ありがとうございました。全国的に増大する社会インフラの劣化対策は、急務であり、 その調査コスト軽減を可能にする技術は、国、自治体、民間など幅広い分野で求められるものであり、当局としても、今後とも支援・協力をさせて頂きますとともに、更なる事業の拡大、 技術の高度化に向けて、御社の今後益々の御発展と皆様の御活躍をお祈り申し上げます。
         
 企業プロフィール 
  • 衣笠 貢司 社長写真
    衣笠 貢司 社長
  • 企業名
    株式会社 中部EEN
    法人番号
    5180001070417
    本社所在地
    愛知県名古屋市瑞穂区洲山町3丁目37-3
    事業内容
    デジタル画像による構造物の点検・分析業務並びにソフトレンタル業務、
    バイオマスプラントシステムの企画・設計・販売・管理、
    環境製品の販売、一級建築士事務所として建築設計業務等
    創業
    2011年(平成23年)
    代表者
    代表取締役 衣笠 貢司
    資本金
    500万円
    従業員数
    7名
    HP
    株式会社 中部EEN ホームページ外部リンク
    電話番号
    052-848-9371
(掲載記事は平成27年2月作成のものです)
(住所・TEL・FAX・URLを平成29年7月に更新しました)
         
 企業プロフィール 
         

このページに関するお問い合わせ先

中部経済産業局 総務企画部 情報公開・広報室
住所:〒460‐8510 愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052-951-0535
FAX番号:052-962‐6804

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