A.南川社長

卓上豆腐製造機「豆クックミニ」

「萬来鍋」製造現場
最盛期で5万軒あった豆腐製造業者は、近年では1万軒程度になり、お得意さんであった中規模の豆腐メーカーが廃業していく中、豆腐製造機器を売る先がなくなっていました。
豆腐をパックに入れ、日持ちできる技術革新が進む反面、手作りの出来たて豆腐のおいしさが味わえる小さな豆腐屋さんはどんどん店をたたんでいました。独創性を活かすにはどうしたら良いかと考え、大量生産の自動化ラインの逆をいこうと、小型の卓上豆腐製造機を開発しました。
始めは、スーパーに売り込みをかけましたが、全然売れませんでした。たまたまホテルや旅館から声が掛かり、手軽においしい手作り豆腐が作れるのは面白いと言われ、展示会に出展したところ好評価を得ました。
お客様は豆腐製造業者としか頭になかったのですが、ホテルや旅館などの別の業態で自分の強みを活かせる、ということが分かりました。

【萬来鍋】
熟練者でも難しいとされる
天然にがり100%の手作り豆腐が10分で出来る
この卓上豆腐製造機を使っていただいている飲食店のお客様から、豆腐を作る樹脂製の容器を木製にできないか、という要望をいただきました。理由を聞きますと、本当に出来たての豆腐を作っていることを直接目で見てもらいたいから外観にもこだわりたい、との答えでした。
目の前で作って、そのまま出せるというのは面白いと思い、それならもっと簡単に目の前で豆腐を作ることはできないかと考えました。試行錯誤の結果、蒸気を循環させて上下から加熱する二重鍋構造にたどり着き、職人でも難しい天然にがり(海水から取れる凝固剤)100%の豆腐を、
短時間にムラなく簡単に作ることのできる鍋の開発に成功しました。機械メーカーですので、試作の鍋はステンレスで作ったのですが、豆腐の器としては見た目があまりおいしそうではありません。そこで思いついたのが、地元(四日市市)の地域資源である萬古焼です。
伝統工芸品である萬古焼は、土鍋の国内シェアで7~8割を占めており、耐熱性に優れているという特徴があります。早速、地元の窯業者の門をたたきましたが、素人の発案で売れるわけはないといわれ、なかなか賛同を得られませんでした。
あきらめずに捜し続け、ようやく協力していただける若手経営者に出会いました。豆腐製造機と萬古焼という、それぞれの得意分野を融合して開発を進めていき、出来上がった鍋で試したところ、陶器の熱伝導率と遠赤効果が良い影響をもたらし、ステンレスよりも非常にうまく豆腐を作ることができ、
見た目の風合いも良くなりました。2002年、萬古焼と千客万来を掛け合わせ「萬来鍋」(ばんらいなべ)と名付け、豆乳や天然にがりなどもセットで販売を開始すると、飲食店やホテル等を中心にヒット商品となりました。豆腐が目の前で作れることと、地場産業とタッグを組んだ取り組みが面白いと話題になり、
様々なメディアに取り上げていただき、宣伝の大きな助けとなりました。独創的な器具と最適な材料の双方のノウハウを販売に活かすことで、相乗的に売上げを伸ばし、現在、萬来鍋については出荷数が10万個を超えています。