2019年3月18日更新
保温性に優れ、押湯重量を50%削減できる「シェルモールド型 空気断熱押湯スリーブ」の開発
株式会社瓢屋
プロジェクト名 | 鋳造歩留りを10%以上向上させる新押湯方式による鋳造方法の開発 |
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対象となる川下分野 | 自動車、住宅・インフラ、産業機械 |
川下企業におけるニーズの対応 | 高機能化(精度・性能の向上など) 質量低減(小型化、軽量化など) 低コスト化(ランニングコスト低減、ロス削減、 省力化など) |
上記ニーズに対する具体的な数値 | 押湯質量50%低減で全体的な鋳造歩留り10%向上 従来押湯スリーブの30%以上コスト低減 |
事業実施年度 | 平成24年度~平成25年度 |
事業化状況 | 補完研究中(完成に向けて現在研究中) |
対象としている素材 | 鋳造(鋳鉄、鋳鋼、非鉄合金) |
- プロジェクトに至った背景・経緯
- 鋳造は自動車を始めとする我が国産業の基盤技術である。鋳造業のコスト競争力の最大の課題は鋳造歩留りの向上であるが、この40年間、業界努力にも関わらず平均で50%程度に留まっていると推定される。鋳鉄年間生産量400万トンのために2倍の800万トンの材料溶解が必要で、極めてエネルギー消費量が高く他加工法や海外との価格競争力の低下をきたしている。この状況打破のため革新的な鋳造法開発の一つとして押湯給湯効率を高めて押湯を削減することがある。本開発では新規な発想に基づく新押湯方式を開発することで、押湯を半減し、鋳造歩留りを大幅に向上させることを目指した。
- 研究開発のポイント
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押湯量が削減できない原因としては、①給湯距離が長くなり給湯効率の低いサイド押湯を用いることが多い。②凝固モジュラスの点で効率の悪い円柱状押湯が一般的に用いられている。③給湯効率の高い揚り押湯に用いる押湯スリーブ方式は、高価で適用率が低い。
本開発では、給湯効率の悪いサイド押湯から、効率のよい揚り押湯への変更が容易にできるように、安価に適用でき、かつ給湯効率の高い押湯スリーブの開発を目指した。また、押湯スリーブの形状についても、凝固モジュラスの面から効率の良い形状を検討した。
- 研究開発の具体的な成果
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今回開発された断熱押湯スリーブの特徴は次ぎの通りである。
1)通常の押湯より保温性が高く、約50%押湯重量を低減できる。この結果、鋳造歩留りは10%以上の向上となる。
2)スリーブ材料は一般の珪砂を骨材とし(特殊砂の使用も可能)、成型方法も容易で生産性が高いので、安価に供給が可能である。
3)スリーブ材が鋳物砂に混入しても同一珪砂であるので、従来から危惧されてきた鋳造欠陥などへの影響はほとんどない。
4)揚り押湯のみでなく、サイド押湯にも適用可能であることを別実験で確認している。
知財・広報活動 | 今回得られた知見をもとに知財化を進めている。 また広報活動としては鋳造業界誌の「鋳造ジャーナル」掲載を2014年9月に行い、10月にはTECH Biz EXPO 2014、サポインコーナーに出展済み。 |
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今後の見通し | 今後は引き続き補完研究により下記課題の適用試験を行って、実用化を進めて行きたい。 1)断熱押湯スリーブ量産化及び形状バリエーションの充実。 2)断熱押湯スリーブの各種鋳造品に対する適用性の拡大。サイド押湯への適用など。 3)シミュレーションによる最適な断熱押湯スリーブの設計と提案。 |
当初の目標を踏まえた 上での達成度や 新たな課題 |
新押湯方式である、「断熱押湯スリーブ」の開発により当初目標の鋳造歩留り10%向上は達成できた。 今後の課題は基本技術のさらなる向上、製造工程の確立、市場への広報活動を行って事業化を推進していきたい。 |
川下産業からの引き合い状況 (件数等、内容) |
鋳造大手数社から「断熱押湯スリーブ」の試験依頼問い合わせをいただいている。 |
事業管理機関 | 一般社団法人日本鋳造協会 |
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法認定事業者 | 株式会社瓢屋、株式会社マツバラ |
研究実施機関 | 城田鋳工株式会社 |
アドバイザー | 大同大学工学部教授 前田安郭 |
今回開発された断熱押湯スリーブを用いた断熱押湯方式は、押湯の形状効果と相まって高い保温性を実現し、高い給湯効果により実際の鋳造量産品でも引け巣不良が防止できることを確認できた。
本開発の断熱押湯スリーブは、従来の発熱型の押湯スリーブに近い保温性を有しており、揚り押湯方式で安価に適用ができ、また従来のサイド押湯方式をこれに転換することで、押湯サイズを半減することができる。これにより、鋳造歩留り向上目標10%をほぼ達成することができた。
社名 | 株式会社瓢屋 (法人番号:5180001022657) |
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所在地 | 〒456-0031 名古屋市熱田区神宮3-10-10 |
電話番号 | 052-681-6821 |
社員数 | 110名 (男性 80名、女性 30名) |
資本金 | 1929万円 |
業種 | 窯業・土石製品製造業 |
事業内容 | 鋳物砂、窯業原料の採掘ならびに製造販売 シェルモールドコーテッドサンド製造販売 鋳物製品の販売 サンドブラスト材料、建築材用珪砂の販売 鋳物材料の産業廃棄物の再生処理、収集、運搬、最終処分 |
URL | http://www.hisagoya.com/ |
保有する生産設備と スペック |
鋳物砂乾燥設備 鋳物砂再生プラント レジンコーテッドサンド製造設備 |
海外生産対応 | 不可 |
主要な取引先 | 日立金属 |
本プロジェクトに 関する問い合わせ先 部署名 |
技術商品開発室 |
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