「コンプレッサ更新とエア漏れ削減システムによる省エネルギー事業」
住所:愛知県豊田市広久手町5丁目24番地
更新したコンプレッサ
事業の概要
親会社である豊田鉄工(株)の傘下で、プレス加工、溶接組付加工を中心とする自動車部品の製造を行っており、エネルギー消費の主体はエアコンプレッサである。
平成27年に省エネルギーセンターの無料省エネ診断を受診した後、その情報をフォローしたESCO事業者(今回、エネマネ事業者として本事業に協力)の支援のもとで、工場のエネルギー消費の主要を占めるエア系統について、省エネ補助金活用による省エネルギー改善を検討した。
平成28年度にコンプレッサの高効率機更新にて補助金申請したものの不採択、次年度は対象を拡大し、かつエネマネ事業を組入れた高い省エネ率にて申請し採択された。
省エネ取組の主な概要
○コンプレッサ
4台のうち、2台をインバータ制御付き高効率機に更新
(6.3m3/min-37kW、3.8m3/min-22kW各1台)
○スポットクーラ
15台を高効率機に更新(7~0.87kW)
○空調機(事務所)
パッケージエアコン5台を高効率機に更新
(3.6~25kW)
○EMS導入
・コンプレッサのインバータ制御に加え、プレス機負荷に応じた台数制御
・コンプレッサおよびスポットクーラの消費電力を計測
・コンプレッサのエア流量計測と工場内エア配管ルートの見直しを行い、コンプレッサの稼動と消費電力の時系列変化を「見える化」することにより、プレス機停止・待機時のエア漏れ量が分かるシステムを構築
これにより、エア系統の無駄のない効率的な運用を実現
エア系統図(事業実施後)
スポットクーラ
コンプレッサ台数制御盤
※平成29年度 エネルギー使用合理化等事業者支援事業 を活用
[総事業費 50.4百万円/補助金額 19.4百万円(補助率 1/2。エネマネ事業組込み)]
省エネ効果
○省エネ設備導入部分のエネルギー削減量 kL/年(原油換算値)
(1)コンプレッサ・空調機器更新効果
事業開始前(平成28年度)に対する削減計画値 21.4kL/年に対し、
1年目(平成30年度) 25.0kL/年 (対当初計画値117%達成)
2年目(令和元年度)見込み 39.4kL/年 (対当初計画値184%達成)と増加
事業開始前の対象設備エネルギー使用量を47%削減
(2)EMS効果
事業開始前(平成28年度)に対する削減計画値 30.7kL/年に対し、
1年目(平成30年度) 25.0kL/年 (対当初計画値82%未達成)であったが、エア漏れ量改善対策を強化・徹底して、2年目(令和元年度)見込み 31.8kL/年と計画達成(104%)
内訳は、コンプレッサ台数制御効果3.7kL/年、運用改善効果(エア漏れ削減)
28.1kL/年で後者のウェイトが大きい
※事業開始前後ともに年度は4月~3月のデータ
○工場全体の省エネ効果
事業開始前(平成28年度)278.4kL/年 ⇒ 事業開始後(平成30年度)216.9kL/年、削減率22.1%
生産個数を分母としたエネルギー消費原単位評価では、 他要因有り削減率7.6%
加古社長様へのインタビュー
社長 加古浩史様
まず最初に、今回の取組みのきっかけといったところからお聞かせください。
地元の信用金庫さんから紹介を受けて、省エネルギーセンターの「無料省エネ診断」を受診したのが平成27年だったと思います。
それまではあまり省エネを意識はしていなかったですね。ただ電気代を下げたいというコスト低減課題は持っていましたが。
その後に、診断結果の情報がESCO協議会へ伝達されたことから、あるESCO事業者さんがうちへ来られて、コンプレッサ設備の省エネについて提案を受けました。
それは補助金による設備更新の提案だったのでしょうか?
ええ、そこで補助金を活用した設備更新が申請できることを知りました。
ESCO事業者さんからの提案を基に平成28年度申請をしましたが、残念ながら通りませんでした。
おそらく、省エネルギー率がもっと高くないと採択されないのではと思い、戦略を練り直しして翌年度申請を目指したということです。
翌年の申請は工夫されたんですね?
過去の例から、エネマネ事業を付帯する申請にすると補助率も上がるし、何より採択されやすいことに注目しました。
省エネ効果をもっと高めるために、4台のコンプレッサのうち2台を高効率化更新とし、プレス機負荷に応じた台数制御を導入すると共に、エア系統の漏れ量が相当あることを診断で指摘されていましたので、「見える化」できるシステムを考えていただき、これを活用しての運用改善効果も積上げました。
更に工場のスポットクーラと事務所のパッケージエアコンも高効率化の対象にして更新することとし、これで平成29年度の申請としました。
この工場ではエア設備のエネルギー使用量比率が大きいんですね?
プレス機がエアシリンダー駆動ですから、コンプレッサのエネルギー使用量が工場全体の1/3を占めており、大きいです。
ESCO事業者さんからは、単に設備を高効率化するだけでなく、必要なだけ上手く使えるような運用につなげることと、そのためには可能な限り漏れを無くすことが有効との説明がありました。
ですから申請案では、設備更新部分の省エネ効果より、運用改善と漏れ削減効果を引き出すためのEMS制御効果のほうが大きい計画になっています。
省エネ成果は期待通りですね。
コンプレッサなど更新した設備の高効率化の効果は計画通りでしたが、事業後1年目のEMS制御効果は、計画未達成でした。
つまり、もっと徹底的にエア漏れを潰さないとだめとの意識を持ちましたので、ラインのどこでどれくらい漏れているかを調べて対策を打ちました。
プレス機入り口のレギュレータ周辺や、接続ホースなどの劣化や緩みが多かったように思います。やりにくかったのはプレス機の内部のシリンダー漏れで、これはまだ完全にやり切れてはいませんが、やれるだけのところは対応しました。
これにより、2年目は運用改善効果が積みあがり計画達成の見込みです。
結構大きな金額規模の改善テーマでしたが、一生懸命やったことが経費削減成果として評価もできるので、社員のコスト意識向上にもつながり効果的です。
この事例は、ESCO事業者と協調して成果につなげた省エネ取組みの好事例だと思います。今後の取り組みについてお聞かせください。
今まで、省エネルギーを特に意識したことは無かったですが、今回の「見える化システム」でムダや漏れが分かるようになりましたので、これを活用しつつ効果を維持していくことはもちろんですが、エネマネ事業者さんからは、エア漏れゼロが実現できれば、コンプレッサ運転台数を半分に減らせるとの試算も頂いていますので、さらに頑張りたいです。
社員の意識も変わってきており、プレス機停止と同時にエア供給回路オフとなるような改善提案なども出ていますので、やるべきことはまだあると思っています。