日本特殊陶業株式会社(愛知県名古屋市)

「『社内炭素税』と『環境ファンド』の導入を含めて
 CO2排出量を年間5,000トン削減」

業種:製造業(自動車の内燃機関用関連品の製造・販売)

 住所:名古屋市東区東桜一丁目1番1

エネルギー測定

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スパークプラグ
製品・技術の歩み

事業の概要

○グローバルに展開する自動車の内燃機関用関連品等の製造・販売メーカー。

○CO2排出量削減の具体的な施策を4つに整理。それらをロードマップで進捗管理することで、2030年までの成り行きのCO2排出量から49%削減(2018年比)の目標達成を目指す。

○「社内炭素税」を導入し、徴収した税による「環境ファンド」でCO2排出量削減の取組を支援。

○「社内炭素税」と「環境ファンド」を導入したことも後押しとなり、CO2排出量を年間で5,000トン削減。施策と投資のバランス、新技術の開発とルール化、従業員・関係者のモチベーション持続の課題に向き合いながら、カーボンニュートラルを目指す。

省エネ取組の主な概要

CO2排出量削減の具体的な施策を4つに整理。それらの進捗をロードマップで管理

CO2排出量削減の具体的な施策を「A省エネ」、「Bものづくり・働き方改善」、「C創エネ」、「D調達・証書」の4つのプランに整理。各カンパニーにおける4つのプランの進捗をロードマップで管理し、2030年までの成り行きのCO2排出量から49%削減(2018年比)の目標達成を目指す。

CO2排出量削減の施策

CO2排出量削減の施策
「社内炭素税」と「社内環境ファンド」の導入

「社内炭素税」として、事業活動におけるCO2排出量1トン当たり1万円で換算し徴収。
この徴収分について、CO2排出量削減に係る設備投資の補助金として「社内環境ファンド」を運用し、CO2排出量削減の取組を支援。
「社内炭素税」と「社内環境ファンド」は、社内で設定したカンパニー単位で運用している。

「社内炭素税」と「社内環境ファンド」

「社内炭素税」と「社内環境ファンド」
従業員宅で発電した太陽光発電の余剰電力を工場で利用

従業員宅で発電した太陽光発電の余剰電力を工場で利用。
余剰電力を提供した従業員には、中部電力ミライズ(株)を通じてインセンティブを付与。

従業員宅で発電した太陽光発電の余剰電力を工場で利用

従業員宅で発電した太陽光発電の余剰電力を工場で利用
物流拠点の見直しにより、CO2排出量を年間42トン削減

名古屋港と博多港に陸送していたさつま工場の製品の一部を、薩摩川内港を利用して輸送。

物流拠点の見直し

物流拠点の見直し

省エネ取組による省エネ効果

「社内炭素税」と「環境ファンド」の本格運用の効果

CO2削減量   5,000トン/年(2022年実績)


物流見直しの効果(SCOPE3)

CO2削減量   42トン/年

担当者インタビュー

担当者インタビュー

日本特殊陶業株式会社
グローバル戦略本部
サステナビリティ戦略室長
兼 経営戦略室 シニアマネージャー
北河 広視 さん
伊藤 康生 さん

省エネの取組推進のきっかけ

「エコビジョン2030」 の目標達成のため、成り行きのCO2排出量から49%削減を目指す。

 日本特殊陶業は、スパークプラグ等のセラミック製品を中心に製造しています。
 社内でカンパニー制を設け、例えばスパークプラグの部門は「プラグのカンパニー」、センサを扱っている部門は「センサのカンパニー」など、事業ユニットごとにカンパニーが構成されています。
 当社の「エコビジョン2030」では、2030年までに、CO2排出量を2018年比で30%削減することを目標にしています。当社では、2030年に向けて売上増を見込んでおり、その目標達成のためには、成り行きのCO2排出量から49%削減する必要があります。当社では、その目標達成に向けて、ロードマップを作成し、委員会やプロジェクトチームを立ち上げながら取り組んでいます。

各カンパニーにおける4つのプランの進捗をロードマップで管理しながら、目標達成に向けて取り組む。

 CO2排出量削減の具体的な施策として、「省エネ」、「ものづくり・働き方改善」、「創エネ」、「調達・証書」の4つのプランに取り組んでいます。  「省エネ」では、工場の停止時間を増やす、機器の更新、熱の有効利用、照明のLED化等の地道な省エネ活動を進めています。
 「ものづくり・働き方改善」では、焼却が必要な製造工程を異なる方法に変更したり、焼却時間を短縮したりすることで、CO2排出量削減を検討しています。なお、工程の変更にあたっては、効果検証し実績を得てから、顧客に相談し、許可を得ています。
 「創エネ」では、まずは太陽光発電の導入について検討しています。全工場の敷地に太陽光発電設備を設置できるポテンシャルを調べて、優先順位が高いところから計画的に取り組む準備を進めています。
 「調達・証書」では、CO2フリー電力を計画的に導入しています。CO2フリー電力を100%採用することで、本社では年間200トン、さつま工場等では年間2万トンのCO2排出量を削減できました。 当社では、各カンパニーにおけるこれら4つのプランの進捗をロードマップで管理しながら、2030年までの目標達成に向けて取り組んでいます。

取組推進のポイント

「社内炭素税」と「社内環境ファンド」の導入により、CO2排出量削減の取組を支援する補助金を支給。 

 CO2排出量削減の取組として、事業活動によるCO2排出量を基準に徴収する「社内炭素税」と、CO2排出量削減に係る設備投資を支援する「社内環境ファンド」があります。カンパニーごとに、双方を運用しています。
 以前から「社内炭素税」を設定していましたが、徴収分の還元方法を検討している中、CO2排出量削減に寄与する設備投資や取組の負担を軽くするアイデアとしてファンドの仕組みを考案しました。なお、社内で理解を深めるよう、社内の説明会も繰り返し開催しました。
 新規事業を立ち上げる場合、「社内炭素税」によって経常利益が赤字になる可能性がありますが、これは、将来的に炭素税を納めることになった場合は赤字となる事業である、とも読み取れます。そのため、「社内炭素税」の運用を通じて、新規事業におけるカーボンニュートラルを志向した事業モデルの構築を間接的に求めています。
 「社内炭素税」の計算フォーマットも作成しています。各カンパニーの製造工程の各ラインまで落とし込める形式にしており、取引先にも展開しており、使用方法についても、何度も説明を行いました。
 また、イントラネットに「社内炭素税」と「環境ファンド」の専用ページを設け、どのカンパニーがどのような内容で補助金を得たのかという情報も見られるようにして、横展開を促進しています。

従業員の家での太陽光発電の余剰電力を工場で使用。インセンティブ付与で省エネ活動の自分事化を狙う。

 従業員参加型の取組として、従業員の家で発電した太陽光発電の余剰電力について、当社の工場で利用し、余剰電力を提供した従業員には、中部電力ミライズ(株)を通じてインセンティブを付与する取組も行っています。
 この取組を通じて、従業員が省エネ活動の重要性を理解し、自分事化できることを狙っています。

SCOPE3の排出量削減の取組を、取引先も巻き込みながら実施。

 当社では、SCOPE3の取組として、80%を占める製品使用時に着目し、環境配慮製品の普及・拡大や、製品ライフサイクル全体を考えた研究開発・製品設計を進めることで、CO2排出量削減を目指しています。
 取引先向けには「カーボンニュートラル交流会」を開催し、当社グループの省エネ事例紹介、工場見学、ワークショップに加え、現地視察による省エネ診断等を提供しています。省エネ診断等の支援により、コンプレッサー最適運用サービスを導入し、年間63トンのCO2排出量を削減できた取引先もあります。
 また、当社グループ工場で製造した製品は陸送で港まで運ばれ、船便で世界中に出荷します。さつま工場(鹿児島県薩摩郡さつま町)で製造した製品は、名古屋港と博多港の2つの拠点に陸送して出荷していましたが、新たに製品の一部をさつま工場と距離が近い薩摩川内港を活用することで、陸送中に排出されるCO2削減を実現しています。 

取組効果、今後の課題

省エネにかかる実績について。

 2022年4月から「社内炭素税」と「環境ファンド」を本格運用し、年間で5,000トン(2022年実績)のCO2排出量を削減できました。
 「社内炭素税」は1トン1万円で設定しています。欧州の炭素税は1トン当たり100ユーロ前後なので、特に円安の下で「社内炭素税」は欧州基準に比べて金額が低く、今後は「社内炭素税」の価格調整が必要だと考えています。
 企業体力があるうちに、「社内炭素税」で疑似的に取り組み、実際に炭素税が導入された際、スムーズに対応できるよう、準備を進めてまいります。

CO2排出量削減につながる製造方法について研究を進める。

 当社の製品は、セラミックスが中心のため、電気やガスを使用した焼成工程があります。焼成工程は製品の性能に影響を及ぼすとても重要な工程ですが、この工程におけるCO2排出量が削減できる方法について研究を進めています。
 また、カーボンニュートラルを目指す上で、CO2削減施策と投資のバランスや、従業員や関係者の自分事化とモチベーション持続も、重要な課題と感じています。
 当社では、試行錯誤し、悩みながら、これらの課題に向き合いながら取り組んでまいります。

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