太平洋フェリー株式会社(愛知県名古屋市)

「環境と効率の共存『フェリーで繋ぐ脱炭素社会への航路』」

業種:海運業(フェリーによる自動車並びにその他車両及び一般旅客の航送、貨物利用運送事業、旅行業、倉庫業)

 住所:名古屋市中村区名駅4-24-8

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運行している航路
「きたかみ」の船体

事業の概要

○国内最大級の大型カーフェリー3隻で苫小牧-仙台-名古屋の約1,330kmを結ぶ定期航路を運航。

○2019年「きたかみ」就航時は、省エネに対応した船型・推進機器改良・廃熱有効活用システムの採用により、CO2排出量は従来船に比べて14.3%削減を達成。

○2024年問題でモーダルシフト推進の機運が高まり、船舶輸送の動きが加速。更なるモーダルシフトを推進するため、各物流事業者の貨物車両乗船の促進に加え、自社でもセミトレーラーを所有し、協力会社との連携で海陸一貫輸送サービスを展開。

○エコシップ・モーダルシフト事業(国土交通省海事局、エコシップ・モーダルシフト事業実行委員会)に、当社フェリー乗船貨物(荷主企業:味の素・物流事業者:F-LINE)を推薦し、CO2削減率・運転手労働時間削減率等が評価され、令和4年度「海運モーダルシフト大賞」を受賞。

省エネ取組の主な概要

令和4年度「海運モーダルシフト大賞」受賞事例(当社推薦) 

○荷主企業:味の素株式会社 様
○物流事業者:F-LINE株式会社 様
○輸送区間:三重県四日市市 → 宮城県仙台市

三重県四日市市から宮城県への本輸送ルートは、荷主企業の増産を機に埼玉県久喜市を経由する形から、宮城県仙台市へ直送する形への変更となり、モーダルシフト推進として当社フェリーの名古屋港~仙台港を利用いただく事でCO2と運転手の労働時間を大幅に削減する事に成功。また、本輸送は環境面に加え、昨今の運転手不足問題を鑑みて持続可能な物流体制の構築に成功した革新的な取り組みであり、当社から推薦させていただき、令和4年度「海運モーダルシフト大賞」の受賞に繋がった。
使用車両がトラックからセミトレーラに変更となる為、各社の努力で出荷ロットも16PLから22PLに効率的に変更できた。

輸送ルート(変更前→変更後)

輸送ルート(変更前→変更後)

省エネ取組による省エネ効果

上記モーダルシフト大賞受賞事例の省エネ効果
CO2排出量削減率:73.8%・運転手労働時間削減率:88.0%(当社調べ)

担当者インタビュー

太平洋フェリー株式会社
取締役 物流営業部長  齋藤 騰 さん
物流営業部 次長 兼 モーダルシフト推進担当 古市 洋正 さん
経営企画部 兼 監査室 次長  白木 元規 さん

省エネの取組推進のきっかけ

モーダルシフトを推進するため、セミトレーラーを所有。協力会社との連携で海陸一貫輸送サービスを展開。

 太平洋フェリーにおけるフェリー運航は、1970年に前身の「太平洋沿海フェリー」を設立して54年を迎えたところです。当時の日本は、国道が慢性的な渋滞を起こしており、それによりトラックドライバーが過酷な労働を強いられてきた事など、陸上インフラ問題を解消する手段として期待されていました。
 その後、1997年の京都議定書により日本がCO2排出量削減を掲げてから、モーダルシフトがCO2削減に貢献できる輸送手段として注目されるようになりました。
 当社では、フェリーをご利用いただいている物流事業者様のモーダルシフトをサポートするため、自社でも様々なセミトレーラー(荷台車)を所有し、各拠点の集配協力会社と連携しながら、海陸一貫輸送サービスを展開しています。

2024年問題でモーダルシフト推進の機運が高まり、船舶輸送の動きが加速。

 2024年問題が注目される中、モーダルシフトを推進する機運が高まっています。それに伴い、船舶輸送の動きが加速しており、当社へのお問合せは増えています。
 フェリーによるモーダルシフトは集荷から配達までのリードタイムがトラック輸送に比べて延びる側面があります。しかし、大型トラック免許の所有者は年々減少している事から、長距離トラック輸送は現状の機動力を維持する事は困難な状況である事に加え、2024年問題である運転手の労働時間も加味するとトラックによる早期納入輸送体制は、各企業の物流の安定化には適しているとは言えない。リードタイム緩和の必要性を荷主企業に理解いただく事がモーダルシフトへの第一歩と考えます。
 当然、急送品の対応でトラック輸送は一部必要ではあるので、長距離輸送はフェリーを含めた複数の輸送モードにリスクを分散する事がBCPの観点では重要と考えます。
 フェリーを利用した輸送はCO2削減による環境面での効果に加え、運転手の労働時間が大幅に削減される事からも持続可能な物流体制を構築する為には有効手段です。
 運転手の労働力もひとつのエネルギーです。よって私たちはモーダルシフトによる運転手の労働時間削減は立派な省エネルギーであると考えます。

取組推進のポイント

集配時の陸上輸送業者及び港湾運送業者と連携し、海陸一貫輸送サービスを提供。

 海陸一貫輸送サービスは、1輸送につき、①集荷、②乗船、③航送、④下船、⑤配送 で成り立っており、自社フェリー航送の他に集配業務を担うドレージ会社と、本船への車両の積込みや取卸し業務を担う港湾運送事業者で構成されています。いずれの事業者の運転手もセミトレーラーを牽引する業務であるので牽引免許を必要とします。また、乗船時の積込み作業は限られた船内のスペースに効率よく車両を停車させるテクニックも必要となりますので各社の運転手は本輸送サービスには欠かせない存在です。私たちは各社との連携により、海陸一貫輸送サービスを長年続けてきたことでノウハウを蓄積してきました。
 当社では、各社様の貨物特性をはじめ輸送量やリードタイム等、諸条件に合わせて効率的なモーダルシフトを提案しています。

セミトレーラーの多様化と船体において省エネの工夫。

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 当社のフェリーには、農産品・水産品、食品加工品、生活用品、粉体などの工業用原材料、工業製品、多種多様な品目の貨物が乗船しています。そのため、各社の物流をサポートする為に、当社では約20種類のセミトレーラーをラインナップし、660台の車両を保有しています。
 重量物に対応する為の車両・大容積に対応する中低床車両・定温輸送に対応する冷凍車など多様な貨物輸送に対応しています。冷凍車の冷凍機は、乗船中は電気で稼働させている為、小さなCO2削減に貢献しています。
 また、2019年1月に就航した「きたかみ」では、船型やプロペラ部の改良により水の抵抗を抑える対策や、排ガス熱交換器の搭載による廃熱の有効活用などを行っており、従来船と比べてCO2排出量は14.3%の削減を達成。

取組効果、今後の課題

省エネにかかる実績について。

 トラック輸送からフェリー輸送へモーダルシフトすると、CO2排出量は5分の1に削減できると言われています。前述のモーダルシフト大賞受賞事例でのCO2排出量削減率は73.8%と大幅に削減できている事に加えて、運転手の労働時間短縮にも大きく貢献しています。
 また、「きたかみ」建造時の省エネ取組に加え、海陸一貫輸送システムの構築など環境保全に関する活動に積極的に取り組んだことから、当社は2022年には交通関係環境保全優良事業者等大臣表彰を受賞しました。
 しかし、フェリー輸送においてもCO2は排出しています。LNG船や、今後実用化が期待される水素・アンモニアを動力源とした船など、技術開発の動向などを見据えながら、次世代エネルギーも視野に入れて船舶の建造を検討する必要があると考えています。 

積載効率の向上に向けて、今運ばれている荷物を知ることが重要。

 フェリーは往復しています。例えば、往路には冷蔵仕様のセミトレーラーで運ぶ荷物がある一方で、復路ではその荷物がなければ、空車を回送する事になります。当社では往路と復路で特性が異なる貨物を効率的に往復利用できるように、マッチングする事が今後の課題です。
 よって各物流事業者でご乗船いただいている貨物特性を把握し効率よく往復できる体制の構築を目標としています。
 今後は、更に多くの企業様にフェリー輸送の利点をご理解いただき、モーダルシフトが推進できるよう取り組んでいきたいと思います。

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