「社員全員参加で省エネ活動に取り組み、Sクラス評価を連続取得。
省エネ活動を利益の還元と企業価値の向上につなげる」
住所:富山県富山市岩瀬赤田町1番地
事業の概要
○セラミックス材料、ファインセラミックス製品(半導体製造装置部材)の製造を主に行う。
○電力消費量の多い事業者として、省エネ活動は社員全員参加の取組と位置づけ、1999年にEMS委員会を設置して以降、継続して省エネ対策の検討を進めている。
○高効率空調機の導入などハード面、空調エリアの分割による省エネ、操炉パターンに基づくデマンド予測と使用電力の平準化などソフト面の両側面から取組を推進。太陽光発電設備の導入も進めている。
○中小企業版SBT認定を取得。Scope3の算出も視野に入れてGHG排出量削減目標の設定を推進。
省エネ取組の主な概要
経年化による故障が原因の製品不具合や納期遅延を防止するため、高効率空調に更新。
(10馬力×2台)
新たに導入した空調機
会議室と管理室が同一空調エリアとなっており、会議室不在時も空調が使用される状況となっていたのを、省エネタイプのパッケージエアコンに更新して管理室と会議室を分けて空調機を設置。
空調エリアの分割イメージ(実施前→実施後)
各炉のデマンド(電力需要量)パターンを測定し、操炉計画とデマンドパターンに基づき全デマンドを予測。
超過予測時は操炉日をシフト変更しデマンドを平準化。
デマンドの平準化前と平準化後の比較
化石燃料消費量の削減を通して脱炭素化に寄与するため、再生可能エネルギーである太陽光発電設備を導入。工場の屋根に加え、グラウンドでのメガソーラー建設も予定している。
太陽光パネルの設置場所
省エネ取組による省エネ効果
各取組での効果
※高効率空調機の導入
エネルギー削減量:44,000kWh/年(原油換算:11.3kL)
CO2排出削減量: 20.5t-CO2
※空調エリアの分割による省エネ
エネルギー削減量:2,789kWh/年(原油換算:0.7kL)
CO2排出削減量: 1.3t-CO2
※操炉パターンに基づくデマンド予測と使用電力の平準化
デマンドの平準化により工場全体の最大使用電力を10%削減
※再生可能エネルギーの導入(太陽光発電設備)
エネルギー削減量:156千kWh/年(原油換算:40.1 kL。工場全体の1.6%相当)
CO2排出削減量: 72.7t-CO2
→メガソーラー等の今後の計画を含めると、工場全体の14%相当のエネルギーを賄う見込み
全社での効果
※温室効果ガス排出量(Scope1+Scope2, CO2 換算)(2022年): 5,253-CO2/年
(2018年比・3,013 t-CO2/年減[36%減])
担当者インタビュー
大平洋ランダム株式会社
代表取締役社長 薄田 新一郎 さん(左)
取締役 ESCプロジェクト室室長 兼 工務部部長 江野 学 さん(右)
電力消費量の多い事業者として、省エネ活動は全員全員参加の取組と位置づける
大平洋ランダムは、セラミックス材料とファインセラミックスと言われる半導体製造装置部材の製造を主に行っています。
半導体製造装置部材の原料となる炭化ケイ素は非常に耐熱性が高いため、製造工程における電力消費量は自ずと大きくなります。また、ファインセラミックスの焼成は、じっくり温度を上げて、じわりと冷やさないといけないので、運転管理が重要です。
今や省エネは世界的に関心の高いテーマであり、エネルギー消費の増大が地球温暖化、気候変動の大きな原因の1つと認識されています。社会の大きな変化と同様に、当社のお客様の省エネに対する認識が高まっていることを日々実感しています。
そのため、当社としては、環境負荷低減に関する活動は企業価値の向上につながるものと捉え、お客様に「ここまで環境に配慮した取組を実践する企業だからこそ、頼みたい」という信頼を得るためにも、環境に配慮した取組の一環として、省エネ活動を社員全員参加の取組と位置づけています。
1999年に省エネに関する委員会を設置。継続して省エネ対策の検討を進めている
当社は、1999年にISO14001を取得し、同年2月にEMS(環境マネジネントシステム)委員会を設置しています。
また、2009年の省エネ法改正の際に、省エネ部会を立ち上げました。現在でも、2ヶ月に1回のペースで会議を開催し、エネルギー使用状況や省エネルギー進捗状況の報告と情報共有に加え、省エネ対策の検討、事業所内の省エネパトロール及び指導を行っています。
さらに、環境の目標について中期計画とそれに沿った単年度計画を立てており、その具体的な取組について、設備更新などのハード面と、炉の温度管理や乾燥炉の最適化などのソフト面の両面から現場で検討し、事業部の各課のレベルで、それぞれ打ち出すようにしています。
ハード、ソフト共に、効果的な取組を実践
ハード面での取組として、設備更新時には費用対効果も考えて、電力会社や商社、メーカーからの情報を得て、補助金も活用しながら高効率な設備を導入するよう心掛けています。
最近では、FC第2工場において、24時間365日空調を運転し室温管理を行っている空調機を高効率なものに更新しました。更新することで、使用電力量の削減に加え、経年化による故障が原因の製品不具合や納期遅延を防止することにもつながります。
また、運用にかかるソフト面の工夫も重要です。
ESC工場では会議室と管理室が同じ空調を使用するエリアとなっており、会議室不在の時も空調が入った状況になっていたので、省エネタイプのパッケージエアコンに更新する際に、管理室と会議室を分けて空調機を設置することで会議室の不在時に停止するようにして、使用電力量の削減につなげました。
操炉パターンに基づき、デマンド予測と使用電力の平準化を図る
受注量増加に伴う増産によりデマンド(=電力需要量)が増加し、ひっ迫することが何回か発生しました。さらに増産となるとデマンド超過の恐れがあったため、その原因を調査したところ、特定の日に操炉が集中していることが分かりました。
そこで、各炉のデマンドパターンを測定し、操炉計画とデマンドパターンに基づき、全デマンドを予測するようにしました。そして、超過する可能性があるものと予測される時はその都度、操炉日を変更することで、デマンドを平準化するようにしました。
その結果、工場全体の最大使用電力量を10%削減しつつ、増産対応可能となりました。
従来は、毎回決まった操炉サイクルで稼働していたため、現場の理解を得るのに少し時間がかかりましたが、エネルギー管理担当者との話し合いにより、デマンド平準化に対する理解が得られるようになりました。
当初は、現場側から提出された操炉計画ではデマンドの平準化が不十分で、エネルギー管理担当者から現場側に計画変更の依頼を行う事が度々ありましたが、最近では現場側でデマンド予測値を算出し、デマンドの平準化を考慮して設備の稼働計画を行うようになったため、全社的なデマンドの管理も容易になりました。
再生可能エネルギーとして、太陽光パネルを段階的に導入。将来的には工場全体の14%の電力を賄う見込み
化石燃料の消費量を減らすことで脱炭素化に寄与するため、再生可能エネルギーである太陽光発電設備の導入も進めています。すでに導入した出力155kWの太陽光パネルでは、工場全体の約 1.6%を再生可能エネルギーで賄っています。
今後は、グラウンドにメガソーラー(パネル出力1,461kW)を設置するなどの計画があり、これらと既存設置分を合わせて、工場全体の約14%の電力を賄う見込みです。
省エネにかかる実績について
高効率空調機の導入により44,000kWh/年、空調エリアの分割による省エネにより2,789kWh/年の電力使用量を、それぞれ削減することができました。操炉パターンに基づくデマンド予測と使用電力の平準化では、契約電力として10%を削減することにつながりました。
取組を通じて、2018年を基準年として、2022年にはCO2排出量を36%削減することに成功しました。2018年度より、5年連続で省エネ法事業者クラス分け評価制度において5年連続でS評価を取得しています。また、一連の取組を通じて、2022年にはエネルギー管理優良事業者等(中部経済産業局長表彰)を受賞しています。
今後も、省エネ活動を社員全員参加の取組に位置付けて人材育成を進めていき、利益の還元と企業価値の向上につなげていきたいと考えています。
中小企業版SBT認定を取得。Scope3の算出も視野に入れてGHG排出量削減目標の設定を推進
2023年3月に、温室効果ガス(GHG)排出量削減目標について、SBTi(Science Based Targets Initiative)より中小企業版 SBT(Science Based Targets:科学的根拠に基づく排出削減目標)の認定を取得しました。
既にScope1,2は算出しているのに加え、Scope3についても、まずは二次データ(産業平均等)の活用による概算を進めていて、将来的には一次データ(取引先との実績データ等)での算出に向けて準備を行っています。当社の場合、取扱製品が多岐にわたり、計算すべき品目も多いので、データ収集は今後の課題です。
環境に関する問合せは昔から毎年2、3回はあります。以前は、省エネ活動や環境活動について大まかに聞かれることが多かったのですが、最近では当社全体のCO2排出量や、品種毎の生産する際に発生するCO2排出量(カーボンフットプリント)など、核心に迫る問合せが増えてきており、カーボンニュートラルに対する市場ニーズの高まりを実感しています。
当社は中小企業版 SBTの認定を取得していることもあり、今後もGHG排出量削減に向けて、算出し公表していくよう努めたいと考えています。