株式会社トランテックス(石川県白山市)

「生産工程におけるCO2排出量削減と再生可能エネルギーの活用の
2本立ての取組で、カーボンニュートラルを目指す」

業種:製造業(各種トラックボデーの製造)

 住所:石川県白山市徳丸町670番地

エネルギー測定コストダウン

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工場
製品

事業の概要

○日野自動車グループ企業として、各種トラックボデーの製造を行う。

○日野自動車グループの一員として、環境保全計画を毎年作成し、段階的に省エネの取組を実施。工場全体の電力消費量を算出し、エネルギー消費の大きい電着塗装にフォーカスして省エネを検討。

○電着塗装におけるフックの改良等による通電不良を防ぐ対応と、電着塗装関連の装置の稼働時間を3時間短縮することで、CO2削減量を年間で合計26トン削減。

○再生可能エネルギーの活用と、生産工程等におけるCO2排出量削減の2本立てで、カーボンニュートラルを目指す。

省エネ取組の主な概要

電着塗装における通電不良を防ぐ対応

電着塗装工程において、穴のあいたワークにひっかけるフック(電気を流す)に改良を重ねることで、 通電不良を改善。
・フックの断面とワークの穴の接点を1点から2点に増やすよう、フックの断面を四角に形状改良
・フックの曲げ角度を75度から60度に変更(穴からフックが抜け落ちるのを防ぐ)
・電着塗装を5回行った後に必ずフックを清掃(実験で通電を阻害しない塗装回数を見極める)

電着塗装のイメージ図

電着塗装のイメージ図

フックの断面の改良イメージ

フックの断面の改良イメージ

電着塗装の電力消費状況を見える化させて、装置の稼働時間を短縮用

電着塗装の工程における電力消費量を見える化。装置の稼働時間を確認し、装置の稼働開始時間を1時間遅らせる一方、停止時間は2時間早くするよう、タイマーを変更し、計3時間の稼働時間を削減。

電着塗装の電力消費状況を見える化したグラフ

電着塗装の電力消費状況を見える化したグラフ

省エネ取組による省エネ効果

各取組での効果

※電着塗装における通電不良を防ぐ対応
CO2削減量: 約20t-CO2/年
        (不良率が8%から0.3%に低下)

※電着塗装の電力消費状況を見える化させて、装置の稼働時間を短縮
CO2削減量: 約 6t-CO2/年

全社での効果(本社・工場、古河工場の合計)

※生産CO2排出量(2021年): 1,896t-CO2/年
       (2020年度比・3,277 t-CO2/年減)

※物流CO2排出量(2021年): 1,240t-CO2/年
       (2020年度比・94 t-CO2/年減)

担当者インタビュー

株式会社トランテックス
総務・人事部 安全・環境グループ グループ長 中島 誠 さん
生産技術部 生産技術グループ グループ長  森 晋太郎 さん

省エネの取組推進のきっかけ

日野自動車グループの一員として、環境保全計画を毎年作成し、段階的に省エネの取組を進める。

 トランテックスは、日野自動車グループの一員で、各種トラックボデーの製造を行っています。
 日野自動車が環境目標の1つとして設定している「2050年にCO2排出量をゼロにする」目標に向かって、環境保全計画を毎年作成し、その中で段階的に省エネの取組を進めています。
 また組織として、環境保全を推進するため、全社的組織として社長を委員長とする「トランテックス環境委員会」を設置し、基本方針の決定と諸活動の総合推進を図っています。また、下部組織として本社・工場環境管理委員会と2つの専門委員会を設置しており、専門委員会の1つが「エネルギー削減小委員会」で、事業活動による環境負荷の低減として大きな課題であるCO2低減に向けて、部門横断的な視点から検討を進めています。

工場全体の電力消費量を算出し、エネルギー消費の大きい電着塗装にフォーカスして省エネを検討することに。

 当社としては、まずは生産活動の中で省エネに取り組むこと、例えば、仕損じをしないこと、稼働時間を短くすることなどで対応することを重視しています。
 また、工場全体の電力消費量を算出すると、塗装工程はポンプやモーターなど付帯設備がとても多いこともあり、電気を消費する工程になります。工場全体の消費エネルギーの約半分は塗装工程であり、また塗装工程における消費エネルギーの中でも約6割が電気エネルギーを占めているので、この電気をどう減らすかが大きな課題とみています。尚、当社では粉体塗装、溶剤塗装、電着塗装の3つの塗装方法を採用しています。
 中でも、水溶性塗料を入れた水槽にワーク(=塗る対象の部品等)を浸し、塗料を陽極、ワークを陰極として直流電気を流して塗膜を密着・形成させる「電着塗装」は、装置のサイズが大きく、それにともない付帯設備のポンプやモーターも大型になるので、最も電力消費が大きくなります。
 そのため、電着塗装にフォーカスを当てて、省エネを検討することに着手しました。

取組推進のポイント

電着塗装における通電不良を防ぐ対応を、日野グループの企業からアドバイスや協力を得て実践。

 電着塗装工程の省エネ化として、まずは通電不良を防ぐ対応を行いました。
 当社では、ワークに穴をあけて、そこにフックをひっかけて、フックから電気を流して塗膜の密着・形成を行うのですが、フックに塗料など通電を阻害するものがくっつくと電気が流れず、塗膜がつかなくなるため、電着塗装を再度行う必要が出てきます。塗装回数が増えるとその分、電気消費量は増えることになります。
 対応策として、電気を流れやすくするため、フックの断面とワークの穴の接点を、以前は1点だけだったのを必ず2点以上が接するよう、フックの断面を四角に形状改良しました。また、フックの曲げ角度を75度から60度へと鋭角にすることで、ワークがフックから抜け落ちるのを防ぐようにしました。さらに、電着塗装を1回行うだけでも必ずフックに塗料が付着するので、実験で通電を阻害しない塗装回数を見極め、電着塗装を5回行うたびにフックを清掃するようにしました。これらの対応策を行った結果、不良率の大幅ダウンにつながりました。
 この取組は、日野グループで企業5,6社が集まり、工程改善に関するテーマを各社決めて研究している自主技術研究会で、参加企業からのアドバイスや協力を得て、対応策が実践できるようになりました。

設備投資により、電着塗装の電力消費状況を見える化。その結果、装置の稼働時間を3時間短縮することに。

 また、電着塗装の工程において、どのように電力消費しているかをデータ把握するため、装置の6ヶ所に計測機器を設置し、計測データを集計・グラフ化するソフトも導入して、電力監視を行いました。
 データ取得結果を見ると、元々設定していた装置の稼働時間が、工場の始業時間が8時よりも1時間早く動いており、なおかつ19時30分頃には工場は生産が終了しているのにもかかわらず23時まで動いていて、それら電力消費量の大きいことが分かりました。
 そこで、装置の稼働開始時間を1時間遅らせる一方、停止時間は2時間早くするよう、タイマーの設定を変更し、計3時間の稼働時間を減らしたところ、工場は問題なく生産できることが分かったため、今はこの設定を採用しています。
 この時、電力をいつ、どれだけ使っているかを見える化すること、さらにはそのデータを解析して、「何をすべきか」を検討・判断することが、省エネ活動にはとても有効であることを実感しました。
 今後は、他の生産工程においても、電力消費状況の見える化と活動改善について、横展開していく予定です。

設備更新の際に、生産効率向上につながる省エネ機器を採用。

 生産技術部では、設備更新の際には生産効率向上につながる省エネ機器を採用しています。また、設備投資が回収できる年数としては、2,3年の短いスパンで捉えています。
 当面の予定では、工場内で使用するボイラー群について、動力源がLPGのタイプとA重油のタイプの2種類を保有しているのですが、このうちA重油の方が高額でなおかつCO2排出量も多いので、なるべくLPGのボイラーを優先して使用し、さらには更新時にはLPGタイプのボイラーへの切替を進めていく予定にしています。

取組効果、今後の課題

省エネにかかる実績について。

 電着塗装における通電不良を防ぐ対応により、CO2削減量を年間20トン削減しました。不良率を減らすことができれば、塗装した後の乾燥炉での乾燥工程時間が減るので、そこで使用するLPGの使用量も減ります。
 電着塗装の稼働時間を3時間短縮することでは、CO2削減量を年間6トン削減できました。
 また、2019年から2022年の4年連続で、事業者クラス分け評価制度でSクラスとして評価を受けています。その功績から、2020年にはエネルギー管理優良事業者等に表彰されました。
 当社の省エネ活動の大半は、電着塗装の改善のほか、エアコン温度の設定変更、エア漏れ防止などと細かい改善活動であり、それらを積み上げてきました。工場における改善活動を長年続けていますが、これらもコスト削減や工数削減などを通じてエネルギー消費量が減る効果があるので、最終的には省エネにつながっているように思います。

生産工程におけるCO2排出量削減と再生可能エネルギーの活用の2本立てで、カーボンニュートラルを目指す。

 2021年より、本社工場では再生可能エネルギー100%由来の電力の導入も進めています。今後も、限りある資源・エネルギーの使用を少しでも減らすため、これからも使用電力量の削減を続けていくつもりです。
 また、2050年にCO2排出量をゼロにする目標に向かって、再生可能エネルギーの活用に加えて、生産工程等でCO2排出しない取組ももちろん重要で、これらの2本立てで取り組むことになると考えています。

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