豊田合成株式会社(愛知県清須市)

「目標を国内外の関係会社と共有し、生産技術革新、
再生可能エネルギーの導入、材料・製品開発等で省エネ活動を推進」

業種:製造業(合成樹脂・ゴムを中心とする自動車部品などの製造・販売)

 住所:愛知県清須市春日長畑1

設備更新

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豊田合成工場の配置
豊田合成工場の配置
ウェザストリップ
高圧水素タンク

事業の概要

○自動車に関するゴム、樹脂製品を提供するグローバルな自動車部品メーカー。

○2030年までのScope1,2のカーボンニュートラル実現を目指し、「日常改善」、「生産技術革新」、「再生可能エネルギー活用」を加速。

○2030年までのScope3のCO2排出量27.5%削減の目標達成を目指し、「リサイクル材やバイオマス材の開発」、「環境負荷低減の製品開発」を推進。

○ゴムのリサイクルやサプライヤーとの協働などでScope3の目標達成を目指す。

省エネ取組の主な概要

TG2050環境チャレンジに向けた中長期シナリオ

豊田合成は、2016年に、長期目標「TG2050環境チャレンジ」を公表し、その実現に向けて、2030年の「中間目標」、更には5年毎に「環境取組みプラン」を設定し取り組みを推進。

TG2050環境チャレンジ(2050年目標)

TG2050環境チャレンジ(2050年目標)

TGグループの環境活動

TGグループの環境活動
気候変動への対策を強化するために、カーボンニュートラルの達成時期を前倒し

2023年8月に、Scope1,2について、2030年にカーボンニュートラルの達成時期の前倒しを宣言。 合わせてScope3の目標を設定。その実現に向けて日常改善、生産技術革新の強化、再生可能エネルギー拡大やバイオマス材・リサイクル材の開発・利用の拡大等を進めて目標の実現を図る。

TGグループの環境活動
塗装ブースのコンパクト化によりCO2排出量を31%削減(Scope1,2)

生産技術革新の1つとして、コンパクトかつ塗装効率が高い塗装ロボットを開発。塗装ブース体積を45%削減することで空調エネルギーを低減し、CO2排出量を31%削減。

生産技術革新(例:塗装ブースのコンパクト化)

生産技術革新(例:塗装ブースのコンパクト化)
計画的に再生可能エネルギーを導入(Scope1,2)

豊田合成は、徹底した省エネ活動を推進。その一方で、2019年より新工場への太陽光発電設備設置を標準化。既存の工場も含めて計画的に太陽光発電設備を設置し、残りをグリーン電力の購入で対応し、2030年までに全電力の再生可能エネギー100%を目指して取組を推進。
なお、2023年から豊田合成記念体育館のイベントはCO2フリーで開催。

再生可能エネルギーの導入

再生可能エネルギーの導入
材料メーカーと協働でリサイクル材やバイオマス材の開発に取り組む(Scope3)

材料製造時に排出されるCO2の削減を目指し、材料メーカーと協働でリサイクル材やバイオマス材の開発に取り組む。その結果、当社独自技術でゴムのリサイクル材を開発。

ゴムのリサイクル

ゴムのリサイクル

省エネ取組による省エネ効果

豊田合成は、今回紹介した各取組など省エネ活動を推進した結果、以下のCO2排出量実績となっている。

CO2排出実績

各取組での効果

担当者インタビュー

豊田合成株式会社
カーボンニュートラル・環境推進部 環境企画室 室長 阪口 祐一さん
グループリーダー 田中 道人さん

省エネの取組推進のきっかけ

国内外の関係会社と目標を共有。 社長をトップにした全社横断プロジェクトチームで環境活動を推進。  

 豊田合成は、経営理念の1つに「地球環境・資源の保全」を掲げています。これに基づき、「2030年中間目標」や「5ヶ年計画の取組みプラン」を策定し、2050年脱炭素社会、資源循環社会の実現に向けて推進しています。この環境活動は、国内だけでなく、海外の関係会社とも目標を共有して取り組んでいます。
 当社では、社長が委員長を務める年2回の委員会で、経営判断が必要な環境活動を審議、決定します。カーボンニュートラルに関しては、取組を強化するために、社長をトップ、各部門長をコアメンバー、社外取締役をアドバイザーにしたプロジェクトチームを設立しました。社長がトップで、部長がコアメンバーであるため、即断即決できるプロジェクトで推進しています。強い意志を持って短期間で実現すべきプロジェクトは、メンバーの選定や体制が大切だと感じています。

2030年までのScope3の27.5%減(2019年比)、Scope1,2のカーボンニュートラルの目標を設定。

 2023年、当社は、2030年までのScope3のCO2削減目標として、2019年比27.5%減を公表しました。2050年Scope1,2,3でのカーボンニュートラルの目標達成に向けて、まずは2030年までにScope1,2でのカーボンニュートラル達成に向けて活動しています。 
 当社は、材料・部品の調達が全体のCO2排出量の7~8割を占めています。よって材料開発により材料・部品の調達のCO2排出量をいかに削減するかが、カーボンニュートラルに向けた大きな課題です。

取組推進のポイント

リサイクル材やバイオマス材の開発、環境負荷低減を目指した製品開発により、Scope3の目標達成を目指す。

 Scope3の脱炭素に向け、材料開発と環境負荷低減を目指した製品開発に取り組んでいます。
バージン材をリサイクル材に変更すると、材料製造時のCO2排出量を大幅に削減できるため、当社独自技術でのリサイクルに加えて、材料メーカーと協働で、リサイクル材やバイオマス材の開発や利用の拡大を進めています。
 開発したリサイクル材の例として、ゴムのリサイクル材があります。ゴムのリサイクルは難しいとされていましたが、当社独自の脱硫再生技術を用いてゴムの硬化を分子レベルで解くことで、リサイクル可能な工程を開発することができました。
 ゴムのリサイクルは、現在、社内で出る端材や廃材を材料にリサイクル材を製造しています。将来的には、ゴムを市場から回収し、再生した後、製品としてよみがえらせるとともに、我々が材料メーカーとしてリサイクルゴムを社外販売することでサーキュラーエコノミーを促進したいと考えております。また、現在、簡単に解体できる製品設計にし、市場から製品を回収しやすくする仕組みと合わせて取り組みを検討しています。
 また、環境負荷低減を目指した製品開発の取組の1つとして、自動車の走行時の燃費向上につながる軽量化を積極的に進めています。例えば、給油に使用するフューエルフィラーパイプを樹脂化することで大きく軽量化することができます。

日常改善、生産技術革新、再生可能エネルギーの活用によりScope1,2のカーボンニュートラルを目指す。

 2030年までのScope1,2のカーボンニュートラルの実現を目指し、「日常改善」、「生産技術革新」、「再生可能エネルギー活用」を加速しています。
 「日常改善」では、エア漏れ、放熱ロスの削減など徹底的なムダの排除による省エネ活動に加えて、ボイラー、コンプレッサー等の古いユーティリティの更新に地道に取り組んでいます。
 「生産技術革新」では、使用エネルギーを削減する革新的な製造方法への変更を推進しています。例えば、コンパクトで塗装効率が高い塗装ロボットを開発し、塗装ブースの体積を45%削減しました。この塗装ブースのコンパクト化により、使用する空調エネルギーを低減でき、CO2排出量を31%削減できました。
 「再生可能エネルギー活用」では、2019年より新工場の建設時には太陽光発電設備を設置することを標準化しました。2030年には、全電力を100%再生可能エネルギーで賄うために、計画的に太陽光発電設備を設置し、残りをグリーン電力の購入等で実現していきます。また、70周年事業で建設した豊田合成記念体育館でイベントを開催する場合は、全てCO2フリーで開催しています。

全従業員の環境意識向上に向け、社内で取組をアピール。6年間で認知度が39.2%増加し、浸透しつつある。 

 日常生活では、環境を意識する機会が少ないため、環境意識啓発を目指し、社内報で毎月1つ以上は環境関連の記事を掲載するよう工夫しています。
 また、工場ロビーや食堂等、従業員の目に付く場所で環境活動紹介動画を放映したり、年に数回は環境展示会を開催したりしています。
 2022年に全従業員(約6,000人)に対し、環境意識調査を実施したところ、2050年に向けた「TG2050環境チャレンジ」の認知度が2016年比で39.2%増加しました。地道に進めてきた従業員の環境意識向上に向けた活動が実を結んできたと感じています。カーボンニュートラル・環境推進部に配属を希望する新入社員もおり、環境に興味を持つ若い社員が増えています。

取組効果、今後の課題

Scope1、2の2030年カーボンニュートラルの達成に向けた省エネに取り組む。

 工場における日常改善と生産技術革新をパラレルで推し進め、省エネを加速していく必要があります。具体的には、工場全体のエネルギーの見える化により、ムダ・ロスの徹底的な排除によるユーティリティ(コンプレッサーや蒸気ボイラーなど)半減やゴム成形の加硫条件などの最適化、樹脂成形降工程の電動化・低圧化などの生産技術革新を推進し、カーボンニュートラルを目指します。

Scope3の目標達成に向け、サプライヤーと協働で省エネに取り組む。 

 現在、Scope3の目標達成を目指し、2022年から本格的に、取引先にCO2排出量の削減目標値を設定しました。この目標を達成するため、当社では、エア漏れ検知器、サーモグラフィ、電力ロガーの貸与や省エネ道場での勉強会などで、サプライヤーの省エネ活動を支援しています。
 省エネ道場では、省エネ対策の効果を実感できるよう、エネルギー使用量を金額ベースに換算して表示しています。サプライヤーの社長は、省エネ道場で無駄なエネルギーに支払っているコストを知って、省エネ活動に前向きになっています。また、補助金や太陽光発電等の環境情報をサプライヤーに提供する勉強会も開催しています。勉強会では、小グループでの情報交換も実施し、ゴムチームや樹脂チーム等、同業で悩み相談ができるようグループ分けを工夫しています。
 サプライヤーも巻き込んだScope3の取組は始まったばかりです。今後は、引き続きサプライヤーと協働で、省エネ活動に取り組んでいきます。

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