事業の概要
Lustrowareブランドで知られる密閉容器をはじめ、プラスチック家庭日用品雑貨や自動車用合成樹脂製品などの製造・販売を手掛け、技術開発力に定評のある会社である。
唯一の国内製造拠点である三重プラントにおいて、生産量の増加による電力コスト増加が目立ち、その対策として射出成形機の高効率機への更新による生産性の向上とエネルギーコスト削減を目指した。
平成28年度に射出成形機2台を高効率機に更新するべく補助金申請したものの不採択となったが、これに諦めずその原因を検討し、かつエネマネ事業者と連携することにより省エネ対策の充実を図った後、翌年度の平成29年度に再度申請した。その内容は、更新する射出成形機の台数を2台から5台に増やして規模を拡大し、かつエネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入して省エネ率を高めたもので、無事採択に至った。
省エネ取組の主な概要
○射出成形機
34台のうち、製造品目構成から見て主力となる規模の5台を油圧式からエネルギー効率に優れた電動サーボ方式に更新(450t×2機、350t×1機、180t×2機)
○EMS導入
受電電力量と、個々の射出成形機およびその冷却水系循環ポンプや工場・倉庫ヤードのルーフファンの各電力量を「見える化」し最適制御を実施
・冷却水循環ポンプインバータ制御
射出成形機の稼働状況に呼応した冷却水圧力変化を捉えてポンプ出力をインバータ制御
・ルーフファンの間欠運転プログラム制御
運転⇔停止時間間隔をチューニングにより見直し最適化
冷却水ポンプ
EMS画面
インバータ盤
※平成29年度 エネルギー使用合理化等事業者支援事業 を活用
[総事業費 128百万円/補助金額 64百万円(補助率 1/2)]
省エネ効果
○省エネ設備導入部分のエネルギー削減量 273kL/年(原油換算値)
(1)射出成形機更新効果 251kL/年、削減率79.0% (対当初計画値127%達成)
(2)EMS効果 22kL/年
いずれも平成28年度(4月~3月)と平成30年度(4月~3月)のデータを比較
○工場全体の省エネ効果
生産個数を分母としたエネルギー消費原単位で評価すると、平成28年度を100とすれば、平成30年度は89.7(低減率10.3%)
○その他の効果
射出成形機の最新鋭機化により、生産性向上と不良率低減、人的ミスも低減
油圧式がなくなったことにより、メンテナンス性向上、騒音も低減するなどの職場環境改善効果あり
牧戸工場長様へのインタビュー
工場長 牧戸芳文様
まず最初に、今回の省エネ活動に取組んだきっかけからお聞かせください。
生産量の増加に伴って電気代が増加してきており、コスト削減というか電気代を少しでも安く出来ないかとの思いです。
それと、設備更新により生産性向上や不良品削減の効果も期待できるのではないかと。
それまで、特に省エネ活動を意識したことは無かったです。
補助金による設備更新のことはどこでお知りになったのでしょう?
近隣の工場で補助金を活用して省エネ更新投資をした事例が有ることを知りました。
うちの場合は対象が射出成形機ですが、使えるのではないかと思い、早速メーカーさんやリース会社さんに相談し、検討を始めました。
最初の年にトライしたけれど不採択だったと伺いましたが・・・
そうなんです。おそらく省エネ効果が小さ過ぎて通らなかったのではと考え、次の年は規模を大きくして省エネ量も省エネ率も増加させ、かつ、エネマネ事業者さんに加わってもらい、補機関係のEMS(エネルギーマネージメントシステム)を導入して採択を目指しました。
射出成形機の更新台数は前年度の申請では2台だったのを今回5台に増やしました。
射出成形機は全部で34台あるんですね、この更新対象5台は主力となる機械ですか?
プラスチックの成形では製品サイズ、品目別に射出成形機を使い分けるので、製品は市場ニーズによって、また季節によっても変化しますので、稼働率の高い機械を選んで更新対象としたものです。
もっと多くの台数を更新しようとすれば、稼働率の低い機械も含まれてくるので、費用対効果の面では有利ではないということで割り切りました。
省エネ成果は期待通りですね。
成形機単体でこんなに省エネ効果が出るならもっと多くの台数を更新する計画にしても良かったのかも知れません。
それでも、油圧式から電動式の最新機種に変わり大きなメリットがあります。
また、導入したEMSの活用にて冷却水循環ポンプや建屋の換気ファンの省電力効果も出ていますし、見える化でデマンド管理などに効果があります。
省エネ成果以外にも、何より生産性が上がりましたし、ミスオペも減りましたし、従業員の省エネや生産管理面での意識向上に繋がっています。
加えて、油圧装置が撤去されたので職場の作業環境やメンテナンスの面でも好結果が得られました。
今後の取り組みについてお聞かせください。
今回、ある程度まとめて射出成形機の更新ができましたが、油圧式の旧タイプは依然多くあります。これらの更新計画を今後考えていきたいのですが、費用対効果の面では今すぐには苦しいので、EMSを活用した見える化による新たなテーマなどを加えて今後計画を練っていきたいと考えています。