西濃運輸株式会社(岐阜県大垣市)

「同業他社や鉄道事業者、海運業者との連携を図りながら、
運送事業におけるCO2削減策を多角的に展開」

業種:運輸業(貨物自動車運送事業、貨物運送取扱事業など)

 住所:岐阜県大垣市田口町1番地

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西濃運輸が展開する「特別積合せ貨物運送」のイメージ図
西濃運輸が展開する「特別積合せ貨物運送」のイメージ図

事業の概要

○「カンガルー特急便」を中心とした商業物流サービス事業を展開。

○特定貨物運送事業者として、国のCO2排出量削減目標の実現に向けて、ドライバーの働き方改革、生産性向上も目指しながら、カーボンニュートラル実現に向けた取組を多角的に展開。

○ブロックトレインや船舶によるモーダルシフト、トレーラーで大型トラック2台分を連結輸送するダブル連結トラック輸送、FCEV(水素燃料電池)大型トラック運行の実証実験など、他社と連携しながら展開。

○2018年から2022年までの5年間で27,484トン/年のCO2削減を達成。同業他社の垣根を超えた取組を通じて、次世代の地球環境に負担をかけない事業活動を目指す。

省エネ取組の主な概要

モーダルシフト

トラックでの陸上輸送の一部を、鉄道や船舶に転換して輸送。
鉄道では、ブロックトレイン(専用列車)により3ルート、船舶では5ルートを展開。

モーダルシフトのイメージ(鉄道輸送を例に)


モーダルシフトのイメージ

専用列車「カンガルーライナー」によるモーダルシフト

専用列車「カンガルーライナー」

船舶によるモーダルシフト

船舶によるモーダルシフト

ダブル連結トラック

トレーラーで大型2台分のトラックを連結させて輸送。5ルートを展開。このうち、関西と関東を結ぶ便では、西濃運輸、ヤマト運輸、日本通運、日本郵便の4社で共同運行を行っている。

ダブル連結運行(共同運行など)

ダブル連結運行(共同運行など)
FCEV(水素燃料電池)の大型トラック運行の実証実験

FCEV(水素燃料電池)大型トラック運行の実証実験を、東京~神奈川間で実施予定。

FCEV(水素燃料電池)大型トラック

FCEV(水素燃料電池)大型トラック

省エネ取組による省エネ効果

各取組での効果

 鉄道利用によるCO2削減量   28,431トン/年(乗用車2億km走行相当)
 船舶利用によるCO2削減量     929トン/年(乗用車670万km走行相当)

※ダブル連結輸送
 CO2削減量       623トン/年(乗用車450万km走行相当)

企業全体での効果

※CO2削減量(2018年→2022年) 29,983トン/年(乗用車2.1億km走行相当)

担当者インタビュー

西濃運輸株式会社
執行役員 運行部 部長 糀矢 亮 さん

省エネの取組推進のきっかけ

国のCO2排出量削減目標の実現に向けて、本格的に取組を開始。

 当社は、創立77年(1946.11創立)の特別積合せ貨物運送事業を行う特定貨物運送事業者です。「特別積合せ貨物運送」とは、全国各地に営業所を有し、不特定多数の荷主の商品を1台の車両に積載し、送付先へ運び、商品を積み卸ろし、仕分けを行う拠点間を、定期的な幹線輸送で行う運送形態のことを指します。
 当社は「特別積合せ貨物運送」として、1日5,000台の大型トラックを長距離輸送で走らせています。
 カーボンニュートラルの取組の背景として、まず、国の「地球温暖化対策計画」(2021.10閣議決定)において、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた目標設定があげられます。同計画で、運輸部門としては、2030年までにCO2排出量35%削減を目標とすることが定められたことで、特定貨物運送事業者として本格的にCO2削減の取組を進めることになりました。

来たるべき「2024年問題」に備え、モーダルシフト等を実践。ドライバーの働き方改革、生産性向上を図る。

 一方、運送事業者としては、中長期的な労働力不足への対応が長年の課題になっています。特に、600kmを超える長距離輸送は、2024年4月の働き方改革関連法施行でトラックドライバーの時間外労働の上限規制が設定されることで懸念される「2024年問題」により、トラックだけでの輸送が難しくなります。
 労働力不足の解消に加え、法令を遵守しながら輸送サービスを維持するためにも、鉄道や船舶との連携を図るモーダルシフトは有効であり、ドライバーの働き方改革、生産性向上、作業効率の向上にもつながるものとして、積極的に取り組んでいます。

取組推進のポイント

専用列車でのモーダルシフトの実施により、CO2排出量を大幅に削減。

 当社ではモーダルシフトとして、トラック輸送の一部を鉄道コンテナでの輸送に転換する取組は、1972(昭和47)年より行ってきました。
 最近では、当社の専用列車で輸送するブロックトレインを推進しており、「カンガルーライナー」という名称で運行しています。現在、2018年5月に運行を開始した大阪~仙台間を皮切りに、3つのルートをJR貨物の協力を得て運行しています。これらの貨物量を大型トラックに換算すると、大阪~仙台間は60台分、及び東京~福山(広島)間は68台分、名古屋~福岡間は74台に相当する貨物量をそれぞれ運んでいます。
 鉄道コンテナでの輸送は、一般の鉄道の運行時間帯(ダイヤグラム)との調整が課題になりますが、専用列車のブロックトレインはJR貨物に協力いただき、ダイヤグラムとの調整を図っているため、スムーズな運行となっています。これらのブロックトレイン運行により、CO2排出量削減25,932トン/年を達成。これは、当社におけるCO2排出量削減分の95%に相当します。

船舶でのモーダルシフトは、大量輸送、リスクヘッジに利点があり、増便を進めている。

 また、船舶でのモーダルシフトについても、2018年以降、清水港 (静岡)~大分港間、東京港~苅田港(福岡)間、敦賀港(福井)~博多港間、横須賀港(神奈川)~新門司港(北九州)間、大阪南港~大分港間と5便を運航しています。
 船舶での輸送は、トラック本体ではなく、トラクター部分に連結したトレーラー・シャーシのみを積載するため、大量輸送できることが利点としてあげられます。また、最近は甚大な気象災害により鉄道が動かない事態も多いので、リスクヘッジとしても有効です。

ダブル連結トラックは、他の運送事業者とのコラボレーションも展開。

 大型トラック2台分を連結させた「ダブル連結トラック」での輸送も行っています。当社では、トラック全長が24mないし25mのものを運行しています。1度に2台分のトラックを運ぶため、CO2削減に加え、省人化及び1人当たりの生産効率の向上にもつながっています。
 なお、ダブル連結トラックの後部のトレーラーは同業他社のものを運ぶこともあります。当社を含めたヤマト運輸、日本通運、日本郵便とのコラボレーションによるこの取組は、複数の事業者が参画する取組として、国土交通省から物流総合効率化法※の対象として国土交通省より認定を受けており、補助金等の支援を受けております。

※改正物流総合効率化法
 流通業務(輸送、保管、荷さばき及び流通加工)を一体的に実施するとともに、「輸送網の集約」「モーダルシフト」「輸配送の共同化」等の輸送の合理化により、流通業務の効率化を図る事業に対する計画の認定や支援措置等を定めた法律

取組効果、今後の課題

省エネにかかる実績について。

 これらの取組を通じて、2018年から2022年までの5年間で27,484トン/年のCO2削減を達成しております。これは、乗用車での走行に換算すると2億km、地球5000周分に相当します。
 なお、ダブル連結輸送の取組は、2019年に「第18回グリーン物流パートナーシップ会議 優良事業者表彰」の特別賞を受賞しています。
 また、2006年よりエコドライブを実践しており、2012年からは燃費向上に安全の要素も重視した「エコ安全ドライブ」を展開しています。この活動が評価され、2016年度と2020年度に、「エコドライブ活動コンクール」で事業部門の最優秀賞にあたる国土交通大臣賞を受賞しています。

水素燃料電池の大型トラックの実証実験を4社共同で実施中。

 現在、自動車メーカーの協力を得て、2023年6月からFCEV(水素燃料電池)の大型トラック運行の実証実験を進めております。アサヒグループホールディングス、NEXT Logistics Japan、ヤマト運輸、当社の4社が参画し、東京~小田原間で運行いたします。
 運送事業者は、カーボンニュートラル実現に向けて、個社単位でトラック運転を進化させる取組に加え、同業他社の垣根を超えた取組を通じて、荷主様などお客様の繁栄に繋げることが使命だと考えております。
 当社としては、これからも次世代の地球環境に負担をかけない事業活動を目指し、今後もこれらの取組を継続していくつもりです。

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