株式会社 十八楼

「照明・空調更新とEMS導入による省エネルギー事業」

業種:宿泊業(温泉旅館)

 住所:岐阜県岐阜市湊町10番地

設備更新

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エアコン室外機
エアコン室外機

事業の概要

 岐阜市長良川河畔にある老舗の温泉旅館であり、1860年の創業以来、150有余年を誇る。
施設の増改築に合わせて照明や空調の設備改修をエリア毎に都度実施してきていたが、今回、省エネ補助金を活用した設備更新事例があることを知り、出来るならばと更新時期にあった空調と照明をまとめて高効率機器へ更新するべく計画した。さらにエネマネ事業者の参画を得てEMSの導入も含め立案・申請した。
 各フロアの照明をLED化し、空調は集中熱源方式から個別空調方式としてインバータシステム採用の高効率ビルマルエアコンに更新、さらにEMSを導入し、空調の温度管理や電力ピークカットに寄与する制御を実施している。

省エネ取組の主な概要

○照明
1F~7Fのフロアで計1417台の蛍光灯を1173台の高効率LED照明に更新

○空調
8台のチラー・ボイラ熱源+88台のファンコイルユニット方式を、インバータシステム搭載のビルマルチエアコン個別方式に更新(室内機87台、室外機8台)
その他、パッケージエアコン2台、水冷式エアコン5台設置
※照明・空調機器の消費電力(機器仕様値)は、371.3kW → 191.1kWへ

○揚水ポンプのインバータ化
11kW4台

○EMS導入
計測点数14点(受電取引計、照明、空調電力)
制御点数13点(既設12台、新設1台)
これにより空調と冷凍設備を温度管理しながら季時別でサイクリック制御
電力ピークカットも可

屋上に設置されたビルマルチエアコン室外機
屋上に設置されたビルマルチエアコン室外機
1F天井のLED照明
1F天井のLED照明 揚水ポンプのインバータ盤
揚水ポンプのインバータ盤

※平成28年度 エネルギー使用合理化等事業者支援事業 を活用
 [総事業費 175百万円/補助金額 76.5百万円(補助率 1/2。エネマネ事業見込み)]

省エネ効果

○省エネ設備導入部分のエネルギー削減量  
 (1)照明、空調更新
    平成27年度302.0kL/年 → 平成29年度85.4kL/年(原油換算値)
    削減効果216.6kL/年(対当初計画値132%達成)、削減率71.7%
 (2)EMS制御
    制御効果16.1kL/年(対当初計画値138%達成)
 (3)電力ピーク対策効果
    (夏冬期電力平準化時間帯の空調・照明・ポンプ電力使用量の削減)
    136.97千kWh/年(対当初計画値146%達成)、削減率52.7%

○事業所全体の省エネ効果
    平成27年度1043.5kL/年 → 平成29年度933.0kL/年 削減率10.6%

○その他の効果
  個別空調化による管理レベルの向上と共に、お客様へのおもてなし、好感度向上に寄与

伊藤専務様へのインタビュー

伊藤豊邦様
専務取締役 伊藤豊邦様

まず最初に、今回の取組みのきっかけといったところからお聞かせください。

旅館業ですから、とにかくお客様に快適に過ごしていただくことなので、老朽化も目立ってきたし、何より岐阜は日本一夏暑い場所なので、空調設備は少しずつでも効率の良いものに更新していかなければと考えて、最初は自前資金で取組んでいました。省エネというより老朽更新が待ったなしだったということがきっかけです。

補助金の情報はどこでお知りになったのでしょう?

同業者の組合からの情報で、補助金をいただける仕組みがあることを知りました。それまでは全く知らなかったです。
早速、出入りの設備工事会社に相談し、空調設備の更新や照明のLED化をまとめて計画したという次第です。
紹介していただいたエネマネ事業者さんにEMSの導入も含めて申請計画を作ってもらいました。
最初は、ほんとうにこんな金額を頂けるのか半信半疑でしたが、頂けるなら思い切ってまとめて一気に更新してしまうのが良いと考え、平成28年度の申請に繋がりました。

申請から工事完了まで日もなく、営業も止めにくいでしょうから工事計画は大変だったでしょうね?

設備工事業者さんがすべて上手くやってくれました。
工事はフロア毎に順に取り替えねばならないのでお客様の入り状況に合わせて計画していくのは結構大変でした。
機器の納期調整もいろいろ調整してもらったように聞いています。

省エネの成果は期待通りですか?

更新工事後の電気使用量の削減は順調で、デマンド削減にもつながりました。
個別空調にしていますので、フロア毎、部屋毎に空調温度を設定でき、お客様に満足いただけるようになっていると思います。
中間期は例えば人の多い宴会場では冷房、客室では暖房を利用とか、集客の状況により個別に調整できるのも効果的です。
従業員の意識も上がって来ています。

老舗旅館ならではのご苦労がお有りでしょうが、いかがですか?

とにかく長い歴史の中でやってきていますので、活かすべきところ、遺していくべき部分は変えにくいですね。
旅館ではお客様がいったん客室に入られた後は、そこはプライベート空間なので、食事やお風呂で不在の時の照明や空調に口出しはいたしませんし、スイッチの入切もお客様次第です。お客様の到着に合わせて前もって照明や冷暖房を効かせておくのも必要です。
最近のホテルのように部屋の入り口にカードキーのメインスイッチがあって不在時に自動的にオフになるような仕掛けはありません。
こういうところは省エネといってもなかなか手が出せませんね。

今後の取り組みについてお聞かせください。

今回、このような補助金がいただける仕組みがなければ、こんな大規模な更新工事は出来ませんでした。
空調設備の変更では、チラー・ボイラ熱源をすべて電気にしていますので、冬場の電気代が結構多いことが分かりました。
給湯設備のガス使用量も含めて全体で上手く削減できないかと考えています。
将来的には使いやすい技術の普及が進んで、例えば蓄電による需給の平均化とかできれば、こういう業態ですのでお客様の入りに左右されず電気代が抑制できますよね。
照明のLED化はまだ全てやり切れていませんのでこれは課題の一つですし、EMSによる見える化も活用し、これらを合わせた補助金申請がまた出来ないか検討したいと思っています。

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