企業の取組事例

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企業の取組事例

ミズタニバルブ工業株式会社

生産性と付加価値向上のためのDX

同社は住宅の水回りに必要不可欠な給水栓をはじめとした水回り製品の企画、設計、製造、販売、メンテナンスを行うメーカーである。社長は生産性と付加価値の向上の必要性を感じ、2010年から生産性向上のためにカイゼン活動に取り組んでいた。改善のスピードをさらに向上させるべく、「IoT生産管理板」を社長自ら開発するなど、デジタル技術を導入した変革に取り組んだ。

デジタルで加速するカイゼン活動

デジタル技術として、最初に岐阜県IoT導入促進補助金(2018年)を活用してIoT生産管理板を導入した。タブレットを活用して、製品の組立実績を自動で記録するもので、製品1台を生産するために要した時間が生産計画と比較してどの程度遅延しているかを自動取得できるようになった。遅延理由もクラウド上でデータとして蓄積し、カイゼン活動を加速させている。
また、PCでの定型作業の自動化や主幹システムと個人で管理しているデータを自動連携することを目的に岐阜県デジタル変革推進事業補助金(2020年~)を活用してRPA(Robotic Process Automation)を導入した。有志のメンバーを立候補で募りプロジェクトチームを立ち上げ、各部署における最適なRPAの検討・開発を行った。プロジェクトの中で、メンバーから「より現場に適したデータを連携できるようなシステムにしたい」と声もあがってきた。そのような提案を受けてRPAだけではなく、ノーコードツール、ローコードツールをはじめとした各種デジタルツールを導入し、連携させることでアジャイル的に機能を追加させて自社開発を進めている。また、現在はプロジェクトメンバーから2名を抜擢し、デジタル推進室を設立。様々な部署から提案や相談を受け、社員自走的な業務改善を進めている。

現場でのIoT生産管理板


データに基づいた課題解決

同社では投入費用(人件費を含む)に対しての付加価値を各部門のKPIとして設定している。毎月の労働生産性をRPAから算出し、KPIとの差異を確認している。
データ活用を進め、社員が労働生産性などの数字を目にすることが多くなる中で、経営に関係する数字も社員に理解してほしいという思いが芽生え、損益計算書の勉強会を開催した。社長のビジョンや考え方を社員に共有し、日々の取組によってどこの数値が変動するのかを同社の実際の数字を活用しながら学び、現場の課題解決力や意識の向上に繋げている。

DXを支える組織変革

従業員が自ら進んで提案する社風が同社の全社的なDXの原動力になっているが、このような社風を醸成するのには長い時間がかかった。社長が自ら意識して従業員とのコミュニケーションを活発にすることで、現場から提案しやすい風通しの良い雰囲気へと変えた。
また、プロジェクトチームについても人員が抜けた部分を有志のメンバーがカバーするような体制となっている。様々な状況に臨機応変に対応できるような組織に変革ができている点もDX成功のポイントである。

プロジェクトチーム活動の様子

デジタル人財育成

プロジェクトメンバーだけでなく、従業員全体のデジタル知識の底上げにも力を入れている。様々な資格に対して資格手当が出るような社内規程を社長自らが考案。従業員が実際に持っている資格を参考に対象となる資格を選定するなかで、ITパスポートをはじめとした情報系の資格もこれに含めた。
情報系の資格を従業員が独学で勉強をするのは決して簡単ではない。同社では、基本情報技術者や応用情報技術者などの情報系の知識を持っている大学生を招聘して、ITパスポート取得のための講義を行っている。週に1日現場のラインを一部止めて実施しており全従業員の6割超が参加し、3割ほどはすでに資格試験に合格しており、今後も合格者の増加が見込まれる。

ITパスポート取得のための講義の様子

今後の展望

取引先の課題をリサーチして同社で開発しているシステムを提供するビジネスを構想している。デジタル人材が不足している地域の企業に対して、そのようなサービスを展開することで、同社と取引することによる付加価値を高めることが狙いである。
また、社内のDXについても新たな取り組みを検討している。材料在庫をリアルタイムで把握し、仕入れ先とデータを連携させることで、無理のない仕入れと欠品の防止を実現したいと考えている。今後は作業標準化を進めることで部署の垣根を取り払い、多能工化を進めていく。そのために、機械加工に必要な全てのスキルを一覧にし、スキルと給与が連動するようなシステムを構築していくなど、組織自体の変革にも着手することで、同社はさらなるDXの推進を目指している。属人化を避ける取組として、社内ナレッジをデータとして蓄積し、問い合わせに対して生成AIが文章を作成して回答するシステムの開発を進めている。

チームでの開発の様子

DXと両輪で進めるサイバーセキュリティ

同社ではDXの取組とともにサイバーセキュリティ対策についても取組を進めている。DXの取組によって社内のデジタルデータが増加しサイバーセキュリティ対策の必要性が高まった。岐阜県中小企業等スマートワーク推進補助金(2022年)を活用し、第三者に自社セキュリティの弱点を分析、評価を依頼した。その結果をもとに全社のPC及びタブレットに対してセキュリティ設備を導入し、あわせてBCP(事業継続計画)の観点から社内サーバーのデータを東京営業所に毎晩バックアップをすることで、日頃からサイバー攻撃に備え対策をしている。

支援機関コメント(岐阜県庁)

DXの恩恵はシステムに投資すればすぐに得られるものではなく、企業が抱える課題について時間をかけて抽出し、一つずつ丁寧に取り組んでいくことで漸く実感できるものです。同社は社長のDXに対する取り組みの積極性と粘り強さが社内のデジタル化を前進に導いた先行例と言えます。今後も勉強会を通した従業員の一層のスキルアップや新しい取り組みへのチャレンジが業務の生産性向上に繋がることを期待します。また、地域の事業者のパイオニアとしてDX推進のモデルケースとなっていただくよう引き続き支援してまいります。

Company
PROFILE

会社概要

団体名 ミズタニバルブ工業株式会社
社長 水谷 真也
所在地 岐阜県山県市富永194番地
従業員数 63名
設立 1959年
HP https://www.mizutani-v.co.jp/
(代表取締役社長 水谷 真也)
(代表取締役社長 水谷 真也)

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