企業の取組事例

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企業の取組事例

株式会社別川製作所

将来の人手不足を見据えた、DX推進

同社は、特高・高低圧配電盤をはじめとした電気供給に関する設備の設計・製造・設置・メンテナンス等を主の事業としつつ、ファクトリーオートメーションやプラント・ビルの監視制御などトータルシステムソリューションを提供する。労働人口の減少による人手不足やカーボンニュートラルへの対応など大きな社会課題が同社にも立ちはだかるなか、その対応としてDXに関する取り組みを始めている。

DXの推進に最も重要なのはコミュニケーション

同社のDXの取り組みの一つは基幹システムに蓄積された生産管理データの活用に着手したことである。30年以上前から運用を続けている当システムはデータ活用することを前提とした設計になっておらず、文字ベースのデータが羅列的に蓄積されているため使い勝手が悪かった。一般の従業員がデータを調べて業務を行うことは時間を多く浪費するため、生産管理などに必要な情報を紙やホワイトボードで共有していた。今般の取り組みで、当システムのデータを見える化するシステムを開発し、デジタルでの生産管理が可能になった。同時に作業日報も電子化することで、全職員がリアルタイムで工場全体の状況を把握できるようになり、大幅なコスト削減に繋がった。その他にも、デジタルメジャーの導入や、圧着端子のAI画像判別システム、タブレット操作により次工程の指示を出せるシステムなどを自社で開発している。
このようなDX化の取り組みで最も重要なのは現場とのコミュニケーションである。推進側は常に良かれと思って提案をするが、現場からすれば慣れた業務フローを変えなければいけない。現場の抵抗感や変化に伴う負担感を少しでも軽減するために、密にコミュニケーションをとり、現場に寄り添った形でDX推進していくことを大切にしている。同社は六角氏をリーダーとしたDX推進チームのメンバーが社内のDX推進を担っているが、特別なコーディングスキルやデジタルツールに対する専門知識を必ずしも必要としているわけではなく、このようなコミュニケーションがとれ、且つ課題に対する提案ができる人材が活躍している。

旧システム(左)と新システム(右)


DX推進チームと現場メンバーの打合せの様子

自社を実証フィールドにした新たな価値の創出

DXの取り組みは、製造工程だけでなく工場業務全体にも広がりを見せている。同社の主力製品の高圧受電設備や配電盤などは、サイズも大きく製造工数も大きいため、1ヶ月以上工場内に仕掛品として留まることもある。仕掛品の所在管理は当初からデジタル上で管理をしていたが更新作業は人の手で行っており、苦労していた。現在は基幹システム上の生産管理データと連携したことで、デジタル上で正確に工場内の配置を再現できるようになったほか、ステータス(製造中・検査中・出荷済みなど)もリアルタイムで反映され、工場の空間を最大限活用することが可能になっている。
同社はさらに先を見据え、こうした所在管理をデジタルの力で最適化したいと考えている。現在は、仕掛品の保管・配置場所の決定は人間の感覚に頼っているが、数理モデルを活用した最適な配置をはじき出し、自動で最適な工場配置を提案してくれるようなシステムの開発を他社と連携して進めている。自社を実証フィールドとして未来の工場の姿を発信していきたいと考えている。

進んでいくDXと不足するDX人材

DXを進めていくと現場で多様なアイデアがでてくるが、そのアイデアを実現するためのシステムやアプリを開発できる人材が不足しているのが課題であるとの認識のもと、DX人材の育成にも力をいれている。大きな取り組みは2点である。1点目は、ノーコードローコード開発プラットフォームの運用である。現場レベルの課題を解決するアプリケーションを特別なコーディングのスキルがない人間でも開発できるようなプラットフォームを導入し、従業員であれば、誰でもシステムやアプリ開発に取り組めるようにした。既に運用開始まで進んでいるアプリもある。2点目はオンライン教育プラットフォームを活用した人材育成である。デジタルスキル標準(DSS)を基準に自分が取得したいスキルを選択してもらい、スキルアップをしてもらう。2024年7月から開講し、現在は30名程が受講中、今後裾野をどんどん広げていく方針である。なお、同社は2022年にDX認定を取得したが、こうした人材戦略も盛り込む形で2024年に認定更新をした。

ノーコード・ローコードプラットフォームのホーム画面

25年後の自社をイメージしたDX戦略

同社のDX推進の端緒は2015年の次世代幹部育成研修まで遡る。この研修では25年後の別川製作所をイメージし会社や事業の在り方について議論された。その結果、人手不足を始めとした避けられない課題への対応を見据え、そこからのバックキャスティングで2017年に「スマートファクトリー実現プロジェクト」(SmartFactoryProject、以下略称「SFP」)がスタート。これが同社のDX推進の始まりとなった。このような長期的なビジョンを持つことは様々な社会課題に対する適切なタイミングでのアプローチにもつながっている。例えば物流業界が2024年問題に直面しているが、物流会社と連携して、QRコードを活用した出荷情報管理システムを開発した。本システムにより積込み時間の短縮が実現したほか、出荷する製品には付属部品も多いため、出荷漏れ・誤出荷が発生することがあったが、本システム導入後はゼロになり、結果として物流会社の負担も減少している。
成果も多く出てきているが、振り返ると一足飛びには難しかっただろうと六角氏は話す。製造現場のDX化をターゲットにしたSFPで着実に成果を積み重ねることが、DXの取組を社内全体に広げる原動力となり、DX推進チームの組成や、製造・調達・設計部門を含め各部署へのDX担当の配置にもつながった。現在では、SFPの関係者を含め15名ほどでDXを推進している。DXを持続的に進めて会社の成長につなげるためには、長期的なビジョンをしっかりと示しながらも短期的な成果を現場で出していき、DXに携わる人材を少しずつ増やしていくことが重要である。

六角氏とDX推進チームのメンバー

サイバーセキュリティに関する取り組み

同社は、サイバーセキュリティも含めたITインフラの整備についても元々重要視していた。他方で、サービスのクラウド化をはじめとした今後の同社の成長を考えたときに、一層のセキュリティの確保の必要性を感じ、IT経営戦略の中の重要事項として位置づけ、今後の投資に向けた準備を進めている。

Company
PROFILE

会社概要

団体名 株式会社別川製作所
社長 川島 直之
所在地 石川県白山市漆島町1136番地
従業員数 492名(令和6年4月1日現在)
設立 1952年
HP https://www.betsukawa.co.jp
(経営企画室長 六角 篤志)
(経営企画室長 六角 篤志)

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