企業の取組事例

Examples of
EFFORTS

企業の取組事例

株式会社山田製作所

ビジネス環境の変化へ対応するための改革

同社は、切削・切断や研削などの高い技術力を用いて受注した製品を加工する町工場だった。大半が受注加工生産であったため、従業員は受注・加工時に各製品の利益率を把握しておらず、製品によっては赤字になっていることもあった。加えて、商社経由での受注が約6割を占めており、価格交渉等も難航し、状況を変えることが難しかった。
2014年社長着任後、このような状況を脱却し、人手不足など、今後のビジネス環境の変化に備え企業体力をつけるべく、現状・課題の洗い出しと社内外を巻き込んだ改革の方針・取組内容を決定した。社内の改革として、自動化に加え、作業手順の標準化と生産状況を含む工場内の見える化に着手した。加えて、品質保証部の新設や地道な取引交渉・説明により、商社経由から大企業直接取引の割合を増加させるなど、社外関係にも改革を進めた。

外部専門家とタッグを組み、生産状況と個別製品原価率をリアルタイムに見える化

一般的に、外部に委託してシステムを構築する場合、ランニングコストが高いうえ、自社で細かな修正を行うことができず、利便性の向上が難しいケースが多い。同社は、最低限のスペックのシステムを買い取り、取得すべきデータを外部専門家と相談して決定した。現場の声を聞き、アジャイルでカスタマイズすることで、利便性の向上も実現した。取得したデータをリアルタイムでグラフ化・見える化し、各設備の稼働状況、各製品の原価率や累計加工時間を、どこでも瞬時に把握することができるようになった。外部の専門人材(Excelが非常に得意な人)を活用することで、実現することができた。
経営判断を行う山田社長、データの性質と現場を理解している山田常務、デジタル・ものづくりの外部専門家が集まり、抽出したデータ・グラフ等の情報をもとに月に2回程度会議を実施。会議では、月ごとにデータを比較することで変化・異常を捉え、生産計画と実際の稼働状況を検証し、各製品の利益率を把握。顧客業種のバランスを見ながら特定の業種に偏りすぎないようにし、今後社としてどの分野・製品に力を入れていくか、どのような設備投資を行うべきか等について議論する。外部専門家の協力を得ることで、データ活用経営を実現し、以前は6割ほどであった商社経由の仕事が約18%となった。
また、データを社内に広く共有することで従業員のモチベーションアップにも繋がっている。一例として、製品の月ごとの不良率を可視化し目標値と比較できるようすることで従業員一人一人が目標値を意識し、不良率の改善に取り組むようになった。加えて、不良率の改善が、会社のコスト削減にどの程度寄与しているか、従業員が認識できるようになり、デジタル化が当事者意識とコスト意識を醸成している。不良率の改善目標を達成した際にキッチンカーを社内に呼んで食事会を開くなど、同社が利益を出した際に従業員に還元される仕組みも整っている。

製造現場でのデータの見える化

安定・継続供給をデータで担保し顧客の信頼・新規顧客獲得、属人化からの脱却

新型コロナウイルス感染症拡大や世界情勢の変化により、企業の技術力だけでなく、部品の安定・継続供給がこれまで以上に求められるようになった。そのようななか、リアルタイムで抽出した生産データを自社生産能力の根拠として客先に提示することで、信頼を得ることができ、新規顧客の獲得にも繋がっている。
現在、従業員の女性割合は7割弱。新たな人材の活躍のため作業手順の標準化にもデジタル化が生きている。ベテラン従業員の業務内容を単純作業とスキルを要する作業に分解。スキルを要する作業については手順書やマニュアル作成を徹底することでどの従業員でも行えるようにした。例えば、加工機械に取り付けたタブレット端末に、図面や生産目標時間を記載し、熟練作業者の作業動画も搭載。このような業務の標準化により、急遽子供の発熱等で担当技術者が休んでしまった場合でも、別の現場担当者の対応をアシストすることができる。こうした細かな工夫の積み重ねにより、加速度的に技術の属人化を脱却。ジョブローテーション対応ができる働きやすい環境となり、女性従業員の積極的な採用に繋がった。

女性が活躍する職場

徹底したルーティン業務の自動化と企業価値の向上

業務の標準化により、技術職の職員でなくとも生産ラインに導入しているロボットへの動作のティーチングが可能になった。今後は、更にデジタル化を進め、ルーティン業務を自動化していく。人の関与が不要になった余剰時間を活用し、海外との取引を含めた営業分野など、より価値のある部分(クリエイティブな部分)に人材を投入することができる。また、現在建設中の新工場についてもデジタル化を徹底し、工場全体をショールームにする計画を立てている。デジタル化の先には、新しいことへのチャレンジがあり、同社の企業価値を高めていく原動力になっている。

ロボットのティーチングの様子

担当後記

データ活用をすることで、経営方針の改善や従業員のモチベーション向上に繋がり、そこで得られた利益を従業員に還元している好事例。

Company
PROFILE

会社概要

団体名 株式会社山田製作所
社長 山田 英登
所在地 愛知県あま市花正七反地19番地
従業員数 50名
設立 1986年
HP https://www.ysei.co.jp/
(代表取締役 山田 英登)
(代表取締役 山田 英登)

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