企業の取組事例

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企業の取組事例

協和工業株式会社

全体最適を目指した明確なビジョン

自動車や産業機械等に使用するユニバーサルジョイント、ステアリングジョイントの専門メーカー。自社開発した冷間鍛造をコア技術に、設計から製造まで、素材から成型まで一貫生産体制を強みとしている。
1980年代に入りいち早く生産管理システムを導入。当初は手計算が楽になるなど機能したが工程内管理をするのが基本であり、工程間は別途人の手で補完的に入力が必要など無駄な作業が多く、価値を生まない業務に時間がとられ全体最適化へのネックになっていた。
変化が激しい経済環境の下、企業競争力と変革への対応力を向上させていくためには、リアルタイムに経営判断ができるシステムを構築する必要があり、入口から出口までの全体最適を目指すNKS(New KYOWA System)をテーマとして掲げ取り組んでいる。

業務プロセスの洗い出しがすべての始まり

NKSの推進に当たり、まず「今やっていることが課題」という視点を持ち、業務の棚卸しから始めた。業務の手順がいつ決まったのか、なぜ必要なのか、人がどの程度介在しているのか、という視点で徹底的に業務プロセスを洗い出し、その中で価値を生まないことはやめてしまう方針とした。
2つ目は属人化を排除する標準化である。ある人に業務が集中し属人化してしまうが故にブラックボックス化し誰も手が出せなくなってしまうため、手順を明確にして標準化すればデータ化できる。
3つ目はIoT導入によるリアルタイムデータの収集である。これまでは作業実績を生産管理システムで集計するのに二週間を要していたが、その間現場ではどんどん状況が変化してしまっており分析が追いついていなかった。そこで安価なセンサーを活用しリアルタイムに工程や設備ごとに稼働状況を把握することで、計画と実績をリアルタイムで把握。その差分は停止時間であり、段取り時間、金型トラブルなど停止時間の要因分析をすることで改善につなげた。

生産状況をリアルタイムで表示

女性現場リーダーによるシステム再構築

もともと現場リーダーは職人気質の男性が多かったが、柔軟に変化を受け止め実践してもらえることを期待し女性を現場リーダーに採用した。ソフトウェアに秀でているわけではなかったが、社内の自動化のためC言語の学習からスタートし、現在では画像処理用のAIを大学の研究室で学び、現場に実装できるほどに成長し活躍している。内製化した画像処理装置は工程内に組み込まれ自動化に寄与しており、今後は寸法精度の検出を可能とすることで、データを金型のメンテナンス等にも活かしていくことを想定している。
また、生産管理部門の女性リーダーは課題であった工程間の最適化に着手。段取りの改善のため、新たに専用治具を設計するとともに、ロボットも組み合わせ、人が介在しなくとも生産できる専用工程を自社で開発することで受注から出荷までの全体最適を図り、生産のリードタイムの50%減を実現した。結果、それまで受注に対し欠品に備えるため大ロットで管理するなど無駄も多かったところを、中間在庫を持たないよう工程をつなげ自動化することで、売れる量だけ、売れるタイミングでの小ロット生産に切り替える生産体制の変革を実現することができた。
こうした作業の標準化や見える化による改善を繰り返し、顧客の要求に即応可能な当該生産工程・体制は、トヨタ生産方式の形式知化とソフトウェアのアジャイル型開発の発想を融合し全体最適化を実現したものであり、大きな改善効果が表れた実例である。



生産管理モニタ情報から課題の共有と
改善ミーティング

戦略的原価システムの構築によるデータドリブン経営へ

今後、同社が実現を目指している「戦略的原価計算」の方向性は、会計処理をする際の原価計算ではなく、リアルタイムで原価計算を把握できるようにするものである。製品ごとにいくらでできるかを見える化し、現場のやり方や人の関わり方など会社全体を俯瞰しながら改善しなければならない。全体最適という考え方のもと、製品ごとの原価計算がリアルに分かれば、その変動要因を労務、材料、設備、輸送など企業経営に必要な項目ごとに把握することができる。変動をリアルタイムに見ることで変化点に気づき、寄与度の大きい変動要因から改善していく。現場の部分最適による改善だけでなく、会社全体を俯瞰しつなげてみて要因を分析していくことが重要であり、この考え方こそがデータドリブン経営の実現につながっていく。

担当後記

「全体最適化を目指した取組が、結果的にDXだった」と語る社長の言葉が印象的であったように、会社をより良くしたいという未来志向と明確なビジョンがDXの推進力となった好事例である。

Company
PROFILE

会社概要

団体名 協和工業株式会社
社長 鬼頭 佑治
所在地 愛知県大府市横根町坊主山1-31
従業員数 130名
設立 1942年
HP https://www.kyowa-uj.com/
(代表取締役 鬼頭 佑治)
(代表取締役 鬼頭 佑治)

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