ものづくり女子が輝く会社 経営者からのメッセージ

【鈴木さんが経営する株式会社中外陶園について】

約1300年の歴史を誇る日本を代表する窯業地 “瀬戸”で伝承されたセトノベルティの技術をベースに、「心に届くやきものづくり」をテーマに、「薬師窯」の窯名で干支(えと)置物、招き猫、雛人形など、縁起置物や四季折々の季節飾りなどを手掛ける陶磁器工芸メーカー。
同業界では商品デザインを外注するメーカーが多いなか、中外陶園は自社でデザイナーを採用・育成し、商品の企画、デザインから製造、販売に至るまで一貫して行う体制を構築。時代とともに変化する消費者ニーズに柔軟に対応することで、国内市場を開拓してきた。
2013年には、地域資源活用事業計画の認定を受けているほか、2014年には「愛知ブランド企業」の認定、2015年には「愛知県ファミリー・フレンドリー企業」としての認定も受けている。社長に就任したのは、1995年8月。
愛知県瀬戸市薬師町50番地
設立:1952年【昭和27年】
資本金:1,500万円
従業員数:49名うち女性30名(女性従業員比率61.2%) 
平均勤続年数:13年(男性:20年、女性:8年) 
主な事業内容:干支(えと)置物、雛人形、五月人形、招き猫、風鈴、蚊やり器など、縁起物や季節を彩る焼き物の製造・販売
ホームページ:http://www.chugaitoen.co.jp/
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【ものづくり女子におすすめの本】
  具体的にこの本というのはありませんが、
私はマーケティングの本をよく読むようにしてきました。
ものづくりだからマーケティングは関係ないと考えるのではなく、機会があったら気になったマーケティング関連の本をいろいろ読んでみてください。
市場の原理原則を学んでおくと、何かの時に役に立つと思います。

株式会社中外陶園 代表取締役 鈴木 政成さん
株式会社 中外陶園
代表取締役 鈴木 政成さん
動画再生 社長語録
其の一 「心に届くやきものづくり」が当社のキャッチフレーズでもあるんですが、自分たちがつくり出した
もので、たくさんの人々の心を満たすことができるのが、ものづくりの一番の醍醐味でしょう。
其の二

日本の人が一番欲しいものは何なのかと考えた時に、やっぱり「癒やされて、ほっとできて、あれば
心が和むかわいいもの」というところに行きつきました。自分が展開したかったものが女性の感性の
もので、それが今に結びついた感じです。

其の三 商品開発にはいろんな制約があるわけですが、その中で、女性ならではの柔軟な対応力が
大きな力になっています。
其の四 会社全体の力を上げていくためには、いろんな人材を採用していかなければいけないと思っています。
其の五 中小企業らしい経営ができるのは、社員が50名くらいまでだと思います。
トップの発想や着想で会社が方向を決めていけ、社員も強固なチームワークを作っていける。
それではじめてニッチな部分がしっかり担えるのだと思います。

★女性活躍推進のための取組★

<会社のコアとなる商品開発の部門を女性中心の組織へと転換>

  • 現在、女性で一番若い社員は21歳です。新卒で当社に入社し、社会経験がうちからというケースも多いので、
    とくに20代前半の若手社員には、社会経験と見識を広めてもらうために名古屋で行われる研修会になどにも
    積極的に参加してもらうようにしています。
  • 商品開発を担う女性社員には、実際にいろんなものを見て勉強してもらいたいので、研修の一環として、年に数回、
    美術館などに出掛けて感性を磨く機会も設けています。年次により役職がついてくると、京都など歴史的な造形物や
    美術工芸品にふれられる場所への出張も用意しています。
  • 商品開発の主任級のベテラン社員2名には、海外市場の開拓を見据え、中国に出張してもらったりもしています。
    現地の量販店などを視察して顧客となりうる中国の女性の趣味嗜好などを肌で感じてもらい、新たな商品企画に
    役立ててもらっています。

<育休や産休の取得を推進する一方で、独自の制度を設けて仕事復帰を支援>

  • 産休のほか、育休は子どもが1歳6カ月になるまでの1年半認めています。当社では出産後の職場復帰を真剣に考えて
    準備している女性社員のために、1年未満に復帰した場合、復帰後半年間は短時間勤務でも産休に入る直前の給与を
    保証するという制度を設けています。また産休・育休中は、総務の女性社員が最低でも月に1度は必ず連絡を入れるようにし、近況報告を受けるとともに女性ならではの問題や相談事にも対応しやすいようにしています。
  • 職場復帰に際しても、頻繁に面談を実施。家事や子育てに関して、夫や親からどれだけサポートが受けられるかを確認し、
    復帰の仕方を提案するようにしています。原職への復帰が可能であればそれが一番なのですが、まずは会社や社会に復帰する
    ことが第一と考え、原職復帰にこだわらず、本人の希望や状況に応じて時短でも働きやすいポジションを用意するなど、
    スムーズな仕事復帰をサポートしています。

<一度退職した女性に再度、働いてもらうための取り組みにも着手>

  • 当社では、家庭の事情などで一旦退職された女性の方を、OGとして迎えられないかと考えています。
    退職後も瀬戸近辺に住んでいる方が多いので、そうした方たちに内職として絵付の仕事をしてもらったり、
    外部のデザイナーとして商品スケッチを描いてもらったりするなど、在宅ワークとして活躍の場を提供していきたいと
    考えています。会社のことを知っている方なら安心して仕事を任せられます。こうしたシステムを確立していくことで、
    当社の総合力もアップしていくと思います。

<女性社員の管理職への登用を積極的に推進>

  • 現在、管理職についている女性は1人しかいませんが、今後は女性の管理職への登用も積極的に進めていきたいと
    考えています。それが他の女性社員にとっての目標にもなればいいと思います。
  • 会社としては、女性のいろんな働き方を応援したいという気持ちもあります。女性として会社の中でキャリアを
    積んでいきたいという気持ちがあれば、そういうステージも用意します。女性の働き方の選択肢の広さを、
    会社の中で実現していきたいですね。

<家族を巻き込み、働きやすい環境づくりや人間関係の構築にも注力>

  • 私の方針でもあるのですが、社員だけでなくその家族との触れ合いも大切にしたいと考えています。
    招き猫まつり、干支の供養祭といった会社の年間行事には、できるだけ家族ぐるみの参加を呼び掛け、
    上手に家族を巻き込むことで、パートナーにも会社の雰囲気が分かってもらえます。
    そうすることで、とくに女性は働きやすくなるのではと考えています。
  • また、会社としても家族の状況が分かっていれば、親の介護が必要になった時なども、
    みんなで協力していこうという空気が生まれやすいと思います。
    こうした家族的なムードも、ある意味、女性が働きやすい環境なのではないかと思っています。

★女性活躍による成果★

<女性の開発力で順調に売り上げをけん引。
                              商品力がアップし、さらに他社との競争力もアップして会社の大きな強みに>

  • いち早く輸出メインの時代と決別し、国内市場に目を向けて季節感のある干支や雛人形、五月人形といった和の世界の商品にシフトして以降、「かわいい」「ほっとできる」「癒やされる」といった世界観の商品を追求してきました。そこにはやはり、女性の力が大きかったと思います。
  • 女性の感性を生かした国内市場向けの商品開発が功を奏し、国内での販路を築いたのに加え、最近では海外からの観光客に向けたお土産需要も増え、インバウンドとして新たに海外市場も開拓されつつあります。とくに台湾や香港などでは現地で代理店を作り、招き猫や干支の置物などを販売しています。今後は、海外も大事なマーケットになってくると思われますので、そうした海外展開に向けても女性の力はますます重要になってくると思います。
  • 商品開発は7名全員が女性ですが、年代、出身地、学歴、職歴などもさまざまで、仕事にもそれぞれの個性が生かされています。多彩な人材がいることで、総合的に商品力がアップしていることは間違いなく、他社に対する競争力という点でも、当社の大きな強みになっています。

<開発アイテムの絞り込みで、利益率の高い体質へと会社の構造を転換していくきっかけにも>

  • 全員女性で組織した商品開発ですが、実は近くメンバー3人が順次、育休に入ることになっています。7人の部署で3人が休みに入るということで、その間をどうつなぐかを検討した結果、これまで自ずと増えてしまっていた開発点数を、思い切って減らすことにしたんです。開発した商品が全てヒットするわけではありません。そのため売り上げを落としたくないという気持ちから、ついつい開発点数が増えていたのですが、商品点数が多くなれば在庫過多になり、いろんな面でのロスも増えます。
  • 開発商品を精査し、点数を絞り込むことで、在庫も圧縮でき、ロスも少なくなり管理もしやすくなります。そうなれば利益率が上がる可能性もあります。商品開発のメンバーが一時減るのを機に、会社の構造的なものを上手く良い方向へ転換することができました。今まで手をつけたくてもなかなかできなった構造改革に踏み切ることができたのも、女性活躍を推進したことによる成果だと思います。

<会社の雰囲気が明るくなり、男性社員にとってもよい刺激に>

  • 社員の約6割が女性ですので、社内の雰囲気も明るく、活気があります。女性に関しては、とくにコミュニケーション能力の高さを感じます。お客さまの中には、フロントの女性との話を楽しみに来られる方も多いんですよ。そういう話の中で、商品を買っていかれる方もいます。 また、女性が頑張っている姿は男性社員にとっても刺激になっているようで、互いに協力し合って働くという、いい空気が生まれているように感じます。

★働く上で大切にしてほしいこと★

  • これは私の思いでもあるのですが、やはり「明るく元気で素直であれ」ということでしょうか。
    どんな時でも前向き思考で、とくに若い人にはいろんなことに貪欲にチャレンジしてほしいですし、
    自分の殻を作らずに可能性を切り拓いてほしいと思っています。
  • また、社員がそうできるような包容力を持った会社にしていくことが、私の使命だとも思っています。
    この会社に入ってよかった、この会社と人生の一部を共にして良かったと社員に思ってもらえることは、
    経営者の一番の幸せです。
  • それは社員だけでなく、協力工場や海外のパートナーも含め、会社と関わる人全てに対して言えることです。
    それをどう突き詰めていくかが、経営者の役目であるとも考えています。