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中部発きらり企業 Vol.89

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株式会社田中金属製作所 株式会社田中金属製作所
自社の持つ要素技術を進化させてオリジナル製品を開発し、様々な手法を試しながら顧客ニーズをつかみ市場を創出

 今回は、株式会社田中金属製作所の田中和広社長にお話を伺いました。同社は水栓バルブの金属部品メーカーとして創業され、近年、その技術を生かして節水、美容のためのシャワーヘッドを開発されました。これを新たな地域ブランド商品として地元企業とともに製造され、海外市場への展開にも着手されています。
 
株式会社田中金属製作所  [社屋]
 
【株式会社田中金属製作所  [社屋] 】
インタビュー
御社の創業から自社製品の開発・商品化への経緯をお教えください 。
 
説明 田中社長
 我が社が立地する岐阜県山県市の旧美山町は、日本の「水栓バルブ発祥の地」と言われていて、現在も関連企業が集まっています。昭和40年に先代社長が金属部品メーカーとして創業した当時は地元の中心的なバルブメーカーの二次外注先でしたが、私が平成元年に入社し、平成15年頃には一次外注先になりました。自社商品を開発しようとしたきっかけは、節水コンサルタントの会社からの依頼で節水器具を製作した際、このような器具が製造原価に比較して高い値段で流通していることを知ったことです。
水栓バルブ発祥の地  
【水栓バルブ発祥の地】  
その後、別の製品の製作を受注する中で水に空気を混ぜる技術を知り、自社で節水泡沫器を開発して他社に提供していました。
 
アリアミスト ボリーナ
 
【アリアミスト ボリーナ】
さらに、柔らかい水産食品などを水流で運ぶ方法として使われていたミックスジェットという技術をベースに、現在の定番商品であるシャワーヘッド「アリアミスト」を自社製品として開発しました。岐阜県出身のデザイナーにデザインしていただき、樹脂成型のための金型を用意して地元企業に成型をお願いし、自社の金属製部品を組み込んで美山ブランドとして平成17年に商品化しました。 この商品は、都市部に展開しているDIY店などの店頭に並べていただくことができたのですが、並べただけで売れるわけではなく、平成18年にテレビ通販で取り扱っていただくようになって個人の消費者の方に売れるようになりました。しかし、仲介してくれていた商社の都合で放送が終了すると売り上げが落ちてしまい、新たな販路開拓のため大口需要が見込まれるホテルや省エネ型の給湯器の売り込みを始めていたガス業界に営業先を広げていったのです。
 
 
シャワーヘッド内部
 
【シャワーヘッド内部】
インタビュー
その後もテレビ番組でも取り上げられたヒット商品を生み出されました。これには自社の経営資源を生かしつつ国の支援策も活用いただきました。
 
説明 田中社長
 自社製品を売り出す一方で、本業のバルブ部品製造においては納入先である地元中心メーカーが廃業されてしまい、我が社も大きな影響を受けて債務も膨らんで経営が苦しくなりました。「アリアミスト」だけで業務体質を改善するのは難しかったので、「水に空気を混ぜる」という我が社の持つ要素技術を基にして新たな製品を創り出そうと、次は「マイクロナノバブル」の商品を開発することにしました。外から空気を取り込んで水に混ぜるという従来方式ですとどうしても気泡が大きくなってしまうので、水中に溶け込んでいる空気を使って旋回流で気泡を発生させる方法に転換しました。
我が社の製品の気泡は粒子径0.1マイクロメートルと他社のマイクロバブルよりも細かく、長期間にわたって浮き上がらずに水中に留まり、かつ再び水に溶け込まずにいられます。また、毛穴よりも細かいためいろいろな作用が認められました。この新たな「ミュージェットシステム」を内蔵したシャワーヘッド「ボリーナ」を開発しました。製品化にあたっては、経費を抑えるための工夫もしました。本体の成型金型は「アリアミスト」と変えず外観はそのままです。また、心臓部の樹脂部品も当初は金型への投資が難しく切削加工で製作していましたが、平成17年に岐阜県から創造法(中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法)の計画認定を取得して金型投資のための銀行融資を得ることができました。その後、中小企業基盤整備機構の指導も受けて「美山の水栓バルブ」として地域産業資源活用計画の認定を取得し、経済産業省からの支援を受けてこれらシャワーヘッドの販路拡大や研究のための費用の捻出が可能となりました。
 
 
インタビュー
自社製品の販路開拓にもご苦労があったと思います。
 
説明 田中社長
 マイクロナノバブルの「ボリーナ」は、平成23年末の発売から平成24年9月までは我が社と私の友人の会社のインターネットショップで販売していましたが、これはお客さんからのレビューを集めるためでした。これで得られた生の声を基に専門機関に依頼して様々な実験データを集め、マイクロナノバブルの効果を明らかにして商品カタログを作りました。これにより大手のテレビ通販にも取り扱っていただけることになりました。また、ホームセンターなどの量販店にも取り扱いをお願いするため、販促ビデオを制作し店頭用のテレビを100台用意して、現在、数台を残しほぼ全数を設置いただいたところです。中小企業では製品開発しても売る道が難しいのです。ガス業界などと共同してオリジナル製品も製作して販売しましたが、直接に個人の消費者にも売る必要があると考え、DIYチェーン店頭で私が自ら毎週末に実演販売をして、一店舗一店舗取扱店を増やしていきました。
  FC岐阜モデル 
  【FC岐阜モデル】
この他にも、外側に金属部品も使用して耐久性を持たせることにより、数多くの温浴施設でも使用していただいています。
 私は、尊敬する京セラ稲盛和夫名誉会長の盛和塾で学び、経営12カ条の中の、「誰にも負けない努力」ならばできると思い、誰よりも働こうと土日に東京に行って実演販売を続けたのです。これにより当初目的の100店舗に納入することができ、社員には「ボリーナ」を月3,000本売るという決意表明をしました。その他の量販店にも販売先を広げ、平成25年7月に1,000本となったところで、8月にテレビ番組で取り上げられました。そのおかげで8、9月には合わせて14,000本が売れ、今も毎月3,000本以上は売れています。テレビ放送がなくても徐々には増えていったと思いますが、ここまで一挙にはならなかったでしょう。商品が売れることでの社員、商社、販売店の皆の喜びが積み重なった結果として、テレビ取材にも繋がったのだと思います。業績の悪い時期、給料カットなどがあった中でもついてきてくれた人たちのおかげで持ち直した今期の決算で、スタート位置に戻った気持ちです。我が社はFC岐阜のサポートカンパニーもしているのですが、今回、オフィシャル・シャワーヘッドを製作して、地元への恩返しとして限定販売することにしました。
 
インタビュー
海外展開や新規分野への参入など今後の展開についてお教えください 。
 
説明 田中社長
 海外展開先としてまず考えているシンガポールは、水が少ない国ですが節水自体は進められているので当社では視点を変えて、低い水圧でも心地よくシャワーを使っていただこうと、同国の節水規格認証を取得して参入できるように準備しています。また、マイクロナノバルブの美容作用を活かし、女性をターゲットにしてシンガポールのほかにもベトナムなど世界に展開しようとしています。また、一般家庭向けとは別に、ホテルが差別化を図るためにデザインやメンテナンス性を考えたシャワーヘッドを提供していきます。国内の柱をしっかりさせつつ海外にも展開していくためにタイアップ先の選定を慎重に進めていることころです。
 シャワーヘッドとは別に医療分野への糸口も勉強しています。既にマイクロナノバブルは手術分野などで実用化されていますが、現在は高価な装置なので、我が社の簡単な仕組みで発生させる技術が活かせないか複数の大学と研究しています。
 私は、今日より明日、明日よりあさってと絶えず創造的な仕事をしようと思っています。我が社では“改善魂”を掲げカイゼン活動の導入もしました。絶えず進化していかなければならないと考えていますし、社員の物心両面での幸せを守りつつ、地域社会、地球社会への貢献もしていかなくてはならないと考えています。
 
 

本日はありがとうございました。水栓バルブ発祥の地という企業集積を生かし、海外市場も見据えつつ、地元に貢献するため新たな地域ブランド商品を送り出していこうという気持ちが伝わってくるインタビューでした。ご活躍に期待します。
 
《《《 会 社 概 要 》》》
SP  

  会 社 名   株式会社田中金属製作所 田中 和広   社長
田中 和広   社長
本   社   岐阜県山県市日永1095番地
創   業   1965年(昭和40年)4月
設   立   1994年(平成6年)4月 
代 表 者 代表取締役 田中 和広
事業内容   バルブ・同附属品製造業 
資 本 金 1,000万円
従 業 員 23名
U R L http://www.tanakakinzoku.com 
T E L 0581-53-2653 
F A X 0581-53-2654 


 

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