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中部発きらり企業 Vol.87

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CK 丸井織物株式会社
お客様ニーズのさらにその先を思考し、独創的なモノづくりで市場を牽引する

 今回は、丸井織物株式会社の宮本徹社長にお話を伺いました。同社は、高度な織物技術を使い、スポーツウェア向けをはじめとした高機能衣料素材を開発しています。また、戦略的基盤技術高度化支援事業(通称:サポイン事業)を活用し、軽くて耐衝撃性に優れた炭素繊維の複合材の開発に取り組んでいます。
 
丸井織物式会社株式会社 [本社]
 
【丸井織物式会社  [本社]】
インタビュー
御社のこれまでの沿革について教えてください。
 
説明 宮本社長
 昭和31年4月に初代社長宮本二郎が石川県鹿島郡鹿島町(現中能登町)で創業しました。創業当初は、麻の織物、石川県指定無形文化財にも指定されている能登上布(のとじょうふ)をつくっていました。当時は、織物業者間の過当競争、原糸価格の急騰などにより苦しい経営だったそうです。初代社長のリーダーシップの下、一生懸命、製品の向上に努めたことが今日の当社の基盤になっています。昭和35年、織機を入れ替え、レーヨンなどから合成繊維の防寒衣料・傘地へと生産品種をシフトしていきました。昭和43年、スケールメリットを追求するため、外注していたサイジング部門を内製化しました。
自社ブランド「マルイテックス」の商品  
【自社ブランド「マルイテックス」の商品】
(ダウンジャケット・コートなど)
 
昭和44年、工場を新設し、ウォータージェットルームを60台導入して、ナイロンの織物をはじめました。事業を拡大するにあたり工場が手狭になってきたので、昭和45年に現在の場所に本社、工場を全面移転しました。昭和48年の第一次オイルショック以降は、洋服の裏地に使われるポリエステル裏地の事業が伸びてきました。昭和60年代に入ってからは、スキーブームからスキーウェアなどスポーツウェア関係の生地を製作するようになりました。その頃から「3K」と見られてきた織物業のイメージを一新させるため、「夢工場」計画として、工場の自動化、無人化をすすめていきました。その後、今までの商社や合繊メーカーからの委託加工事業を柱にしながらも、自社ブランド「マルイテックス」をつくり、受身型から主体的に開発する力を持ち、企画提案委託型へ転換を図り、自分で売る企業へと事業を広げています。また、独自の織りの技術と新しい繊維(炭素繊維、アラミド繊維)を使った新しい素材を開発し、新たな事業への拡大を図っています。
 
 
夢工場構想第1弾として建設された七尾工場
 
【夢工場構想第1弾として建設された七尾工場】
インタビュー
御社が取り組んだ「夢工場」計画並びにスポーツウェアなどに使われている高機能素材製品等についてお聞かせください。
 
説明 宮本社長
 夢工場は、七尾市下町の七尾市南部工業団地に建設しました。それまでの工場は手狭で、個々の工程は自動化や機械化されていてもシステマチックに展開されておらず効率が悪くコスト面でも良くありませんでした。この夢工場は、最新の設備を整えることにより「3K」として見られてきた織物産業のイメージを一新させる画期的なもので、合理化と自動化を進め、人手不足も解消しました。
最先端のテキスタイル情報を発信するTEXITILE-STUDO  
【最先端のテキスタイル情報を発信するTEXITILE-STUDO】  
それにより社員が現業から解放されたことで、ロボットや機械では代替できない創造性豊かな仕事に就くことが可能になりました。人間だけが持つ素晴らしい能力を存分に発揮してもらい、高度な織物技術の開発やスポーツウェアなどの高機能素材開発に取り組んでもらっています。創業70周年を迎えた平成18年に「スポーツ素材創造企業宣言」と銘打った差別化戦略を打ち出しました。市場はこれまで以上に製品・サービスに対する的確性と迅速性、他社に追随できない個性的・独創的なモノづくりを求めています。お客様単位のニーズに緻密に応えることが、メーカーにとっての存在価値になり、ブランドの構築につながっていきます。多くのスポーツ、アウトドアブランドで軽量かつ編物のような伸縮性を有し吸汗性に優れた機能性素材が採用され、海外からも引き合いがあります。現在、高機能衣料に使用されている糸は、髪の毛の10分の1程度まで細くなっています。
 
データベース化された生地サンプル
 
【データベース化された生地サンプル】
約30,000点展示れている
この糸を使い、より高密度な織物技術などを開発していき、この分野をさらに深化させていきたいと思っています。また、最先端のテキスタイル情報を発信していくため、本社に「TEXTILE STUDIO(テキスタイルスタジオ)」をつくりました。総床面積1,400平方メートルのフロアには、過去30年分約30,000点の生地サンプルを展示するほか、試織設備や品質管理のための検査設備も充実させました。自社でも最終ユーザーへのマーケティングを行い、さまざまな発想や要望に対しスピーディーに対応できる環境を整え、新たな商品開発に取り組んでいます。自社ブランド「マルイテックス」を機能性と快適性を備えた素材のシンボルとして浸透していきたいと思っています。
 
 
 
【加工がしやすく、立体形状に成型できる炭素繊維織物】
インタビュー
戦略的基盤技術高度化支援事業(通称:サポイン事業)を活用して取り組まれている「耐衝撃性の高い軽量繊維強化コンポジットの製造技術の開発」についてお聞かせください。
 
説明 宮本社長
 地球温暖化の原因とされる排気ガスの排出抑制を実現するには、車両の軽量化は不可欠です。また、ハイブリッド車、電気自動車においても、走行距離を延ばすために軽量化が不可欠です。航空宇宙産業で実用化されている炭素繊維強化複合材(CFRP)が車両軽量化用として注目されていますが、高価で、衝撃によって容易に破損し、飛び石や落石で貫通する恐れがあります。このため、戦略的基盤技術高度化支援事業(通称:サポイン事業)を活用して、当社の織り染め技術を高度化し、軽量で耐衝撃性に優れた新しい炭素繊維ハイブリット複合材料を平成21年度から3年計画で開発に取り組んできました。まだ売り上げには繋がっていませんが、3年間の取り組みで、自動車部材開発製品はほぼ完成できました。このCFRPは、発泡コア材を、高強度な炭素繊維と耐衝撃性に優れた繊維の織物・組紐で挟んだサンドイッチ構造が特徴で、鉄よりも強く、アルミよりも軽くなっています。高強度・高弾性の繊維が表面にあるので、衝撃による変形が少ないうえ、貫通しにくく、仮に貫通したとしても破片が飛び散りません。また、加工のしやすさも特徴の一つで、コア材に含まれる発泡剤の種類の割合を変えたり、糸の太さや組織を変えることにより複雑な形状に成形することも可能で、従来の成形技術に比べても短時間かつ低コストで加工することができます。自動車、バス、トラック、オートバイの部材のほか産業機械、医療用機器など特に振動や電磁波を嫌う部材への利用を考えています。最近、高度成長期に建設された、高速道路、トンネル、橋梁などの老朽化が問題になっていますが、これらの構造物を補強していく必要があり、この分野においても用途が出てくると思っています。業界によって、部材に対する強度の測定基準、評価基準が違います。それぞれ分野ごとに測定・評価を行っていき、用途に合った製品開発を進めていきたいと思っています。当社では創業以来、各時代の新技術を採り入れた新規分野に参入してきましたが、この分野は次の新事業だと思っています。3〜5年を見据えて投資していき、5年後には、1億円程度の売上を目指しています。少しずつですが、ユーザー等からの問い合わせがきています。今後も国内外の展示会等でPRをしていきたいと思っています。
 
インタビュー
最後に現状の課題と今度の展望などをお聞かせください。
 
説明 宮本社長
 当社はこれまで、社員の能力向上に力を入れ、また、パートナーにも恵まれたことにより当地の多くの織物メーカーの中で生き残り成長してきました。しかし、現在の円高、そして中国、台湾、韓国で生地の生産技術が進歩し世界的に競争が厳しくなっている中で、日本においてどう生き残っていくかが課題です。日本は、先端素材の製品は多いですが、加工分野は欧米に比べて、あまり育っていません。今後は、加工分野において産地間の連携強化や地域クラスターが必要になってくると思います。日本のメーカーが海外で生産することは、国内産業の空洞化につながり、日本のモノづくりの構造がこわれてしまいます。日本の企業として日本で稼ぐ仕組みをつくりたい。この場所で事業を続け、日本でしかできない感性や機能性を持った製品を送り出して行きたいと思っています。雇用の維持、良い人材を確保するためにも、既存の事業だけでなく新しい事業に取り組んで行く必要があります。国等は、海外に事業展開する企業を支援するのではなく、日本国内で事業を維持できる仕組みをつくり、そこに支援をして欲しいと思います。
 
 

本日はお忙しいところ取材にご協力いただきありがとうございました。常にエンドユーザーに近い視点でのビジネスを目指し、受身型から、主体的に提案し販売できる自律型への転換に対する取り組みに感銘を受けました。御社の更なる躍進と皆様の御活躍をお祈り申し上げます。
 
《《《 会 社 概 要 》》》
SP  

  会 社 名 丸井織物株式会社 宮本 聡 社長
宮本 徹 社長
本   社 石川県鹿島郡中能登町久乃木井部15
創   業

1956年(昭和31年)4月

代 表 者 代表取締役社長 宮本 徹
事業内容 ・合繊織物
・合繊産業資材織物製造
資 本 金 5,718万円  
従 業 員 211名  
U R L http://www.maruig.co.jp/  
T E L 0767-76-1337  
F A X 0766-76-0304  


 

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