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中部発きらり企業 Vol.79

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株式会社キントビロゴ 株式会社金トビ志賀  
郷土料理「きしめん」の食文化を世界に発信!

今回は、株式会社金トビ志賀の志賀重介社長にお話を伺いました。同社は、うどんやきしめん等の麺用小麦粉を専門とする老舗企業で、長年培ってこられた技術により安定した高品質の小麦粉や乾麺を提供し続けています。また、愛知県・名古屋の郷土料理「きしめん」の食文化を世界に伝える「きしめん・でら・パスタ計画」の中心メンバーとして活動されています。


(株)金トビ志賀[本社]
株式会社金トビ志賀 [本社]
インタビュー

御社のこれまでの沿革等について教えてください。

 
説明 志賀社長
 初代社長の志賀八五郎が、水車製粉の修行を積み、1917年(大正6年)にこの地(蒲郡市)で小麦の製粉等の賃挽きを開業したのが始まりです。石臼で挽き、粉と小麦の物々交換で、挽いた小麦粉の一部を代金としてもらっていました。たまった小麦粉で現金収入を得るために、乾麺にして売っていたと聞いています。戦後の混乱期を経て、1950年に小麦粉の統制解除が行われ、自社ブランドで小麦粉を売れるようになったことを機に、個人商店から会社組織化し、前身となる株式会社志賀製粉所を設立しました。国内では非常に珍しかったドイツ製の最新式機械をいち早く導入し、製粉会社として事業を拡大していきました。会社から見る空には三河湾から来る潮風の上昇気流に乗ってトビが舞い、また最新設備で生産する良質な麺用粉をグレードで示すなら金ということで、名古屋城の金鯱への憧れも含め、販売する小麦粉の袋に「金トビ」のマークを付け製品名としました。品質がお客様に評価され定着していった「金トビ」ブランドは、後に現在の社名にもなりました。今でもトビは時に何十羽と舞っています。1955年から、細々と続けていた乾麺を「金トビめん」として本格的に製造・販売するようになり、その2年後に市場開拓のため名古屋に営業所を開設して以降は、名古屋周辺を主力に販売が伸びていきました。売上げの構成は小麦粉と乾麺でほぼ半々となり、現在もその比率は変わっていません。2007年に私が4代目社長となり、初代から90年以上にわたり受け継がれてきた伝統技術を大切にしつつ、海外展開など新しいことへのチャレンジにも積極的に取り組み始めているところです。
 
金トビ   かもめ
小麦粉:性質別に細かく製品化。ロングセラーの 「金トビ」とベストセラーの「かもめ」
  パッケージデザインリニューアル
乾麺:2008年~09年、食味・食感を改善し、半世紀ぶりにパッケージデザインをリニューアル
 
茶色の粒から真っ白な粉へ
製粉工程
製粉:独自の方法で小麦の質を調整した後、ロール機による粉砕とふるい分けを繰り返して麺に最適な小麦粉を生産
インタビュー
御社の強みについてお聞かせください。
 
説明 志賀社長
 小麦粉の製粉業者は、お菓子等を作る薄力粉からパン等の強力粉まで多種多用途の小麦粉を取り扱うところがほとんどですが、当社は全国でも珍しい麺用小麦粉専門のメーカーです。麺専用の中力粉に特化していますので、機械化しつつも、微妙な調整をしながら麺用粉に最適なシステムを組むことができるのが当社の強みです。お客様である手打ちうどん屋さんは年中手でこねておられるので、少しでも粉の感じが変わるとすぐにクレームが来ます。それに対応できるよう、技術を磨き経験を積んでいき、毎年変化する小麦の品質や季節等に左右されない安定感のある小麦粉を提供し続けることで、お客様からの信頼を獲得してきました。
 特に当社が大切にしているのは、小麦が持っている自然の風味を最大限に生かす「味のある小麦粉」を作る技術です。これは原料のブレンドと製粉技術のベストマッチングから生み出されます。原料である小麦はオーストラリア産と愛知県産をブレンドしています。オーストラリア産は品質が安定しており、弾力やコシが出やすく、愛知県産はつゆの乗りを良くし、風味に優れており、それぞれの良さをうまく引き出すようにブレンドしています。小麦の品質は毎年変わりますが、職人技により新旧の小麦を混ぜながら時間をかけて入れ替えていき安定感を保っています。小麦の製粉はお酒の米のように外から磨いていって中身を残すのではなく、粒を割ってから内側を削いで取る製法です。割った瞬間に自然に転がり出る粉は、特に旨味がある良い粉で、上手に取り分けるための独自の工夫をし、特別な粉として大事に取り扱っています。皮に近いところは旨味がありますが、削ぎすぎると皮が崩れて製品に入ってしまい品質を悪くしてしまうため、皮を残しつつ、中の美味しい部分を少しでも多く取る製法を試行錯誤し開発しました。全体の歩留まりは下がっても、ゆっくりと丁寧に挽くことにこだわり、良い粉となる部分の歩留まりは上げていくという、麺用粉専門メーカーならではの品質を追求した製法です。こうしてできた小麦粉は、東海地区を始め全国のうどん屋さんなどから、風味とコシが出る「味のある小麦粉」として高い評価を受けています。
 乾麺は、自社の挽きたての小麦粉を使い、製粉から製麺までを一貫生産しています。お客様であるうどん職人の方々から学んできた手打ちの技術を生かし、「味のある小麦粉」の良さを最大限に引き出す製麺・乾燥技術により、品質の安定した美味しい麺を提供し続けています。

乾麺製造
乾麺製造:挽きたての「味のある小麦粉」を使用し、学んできた手打ちの技術を生かす
愛知県内ではスーパーの6割以上の店舗で当社の乾麺が販売されており、最近ではホームページからの注文も増えています。
 当社は、コストで勝負するのではなく、丁寧に良質のものを作ることに専念してきました。他社にない独自色を実現してきたことが、当社の支えとなっています。
 
インタビュー
JAPANブランド育成支援事業を活用して取り組まれている「きしめん・でら・パスタ計画」の活動について経緯等を教えてください 。
 
説明 志賀社長
 きしめんは、400年の歴史がある愛知・名古屋の郷土料理ですが、ライフスタイルの変化等からきしめんを食べる機会や場所は減少しているのが現実です。愛知県のひらめん乾麺の生産量は全国で一位であるものの、生産量は10年前と比べ、3分の1程度にまで落ち込んでいます。きしめんの食文化を受け継ぎ、もっと元気にしていこうと、NPO法人「食・尾張プロジェクト」や「愛知県きしめん普及委員会」の活動が始まり、当社も一員である中部製粉工業協同組合もそれらの活動に協力し、きしめんの普及活動を行ってきました。そうした中、製粉工業組合が主体となって何か取り組みができないかとの提案を受け、活用できる助成制度として挙がったのが、地域産品の輸出促進を支援するJAPANブランド事業でした。組合内で話し合い、お互いが抱く危機感は共通している部分も多く、地域製粉業の今後のためにも新しいことに挑戦していこうという方向でまとまりました。全国の製粉組合の組合員は各県に1社といった状況になりつつありますが、愛知県は中小製粉企業が9社と、製粉業者が連携して取り組むには適した地域で、自然と業界からの注目も集まります。 
  きしめんは、平たい形状で薄いため茹で時間が短く、一方で幅があるのでボリューム感があり、つゆの乗りも良いという、名古屋人の気質に合った合理性の高い麺です。この特長を生かしつつ、麺が伝わってきたシルクロードをたどり、国の枠を超えてそれぞれの土地の食べ方できしめんを食べてもらいたいと考え、「きしめん・でら・パスタ計画」と銘打ち、JAPANブランド事業に申請した結果、採択を得ました。きしめんの食文化を、ヘルシー、スローフード、クールジャパンのキーワードで見直し、アジアをはじめ、欧米でのきしめんの販路を開拓すると共に、海外の反響を国内にも情報発信し、全体として盛り上げていくことがプロジェクトの目指すところです。
 
インタビュー

「きしめん・でら・パスタ計画」の活動内容について教えてください。

 
説明 志賀社長
 中部製粉工業協同組合と愛知県乾麺工業協同組合から、有志の企業が集まり、製粉業と乾麺業の真ん中に置くイメージで「きしめん・でら・パスタ委員会」を発足させ、プロジェクトがスタートしました。初年度(平成22年度)は、主に海外市場の調査を行いました。麺の文化がありマーケットのボリュームが期待される香港と上海、英語圏や世界に向けての情報発信力が高いニューヨークの3カ所を選定し、現地のスーパーや食品展示会を視察しました。どの市場にも、想像以上に日本製食品が並んでいて驚きました。海外市場開拓への期待が高まると同時に、後発組であるという厳しさも感じました。うどんやそうめん等の日本の麺は既に海外に流通しており、きしめんはまだ知られていないものの、単にジャパニーズヌードルというだけでは戦えないことが分かりました。
英・中・日の3か国のパンフレット&ホームページ
きしめんの中国語表記「可喜面」は中国・香港・台湾に商標権申請中

 そこで、2年目(平成23年度)は、まずはきしめんの食文化の定義を明確にした上で、簡単明瞭な説明文とロゴデザインを決め、英語・中国語・日本語の3か国語によるパンフレットとホームページを作成しました。それをブランディングツールとし、香港で開催のアジア最大級の国際食品見本市「FOOD EXPO 2011」に出展しました。展示会では、現地に受け入れられる商品開発の参考とするため、いわゆる名古屋きしめんの味だけではなく、様々なソースで試食してもらいました。香港でナンバーワンの食の雑誌にきしめんが大きく取り上げられるなど、滑り出しは好調です。香港の展示会だけではデータが不足していると考え、名古屋在住の外国人の方々を集めて試食会を開催しました。留学生や外国人研修生の方々に試食していただき、様々な意見を集め、海外でも受け入れられるきしめんのレシピについて検討を進めました。結果、「八丁味噌の肉味噌によるボロネーゼ風きしめん」と「大葉を用いたジェノベーゼ風きしめん」の2つのレシピを完成することができました。八丁味噌は岡崎市、大葉は豊橋市が産地であり、両レシピとも地元愛知の食文化を合わせ持ったものです。来年度は、これらのレシピを実際にどの様に商品化していくのかについて、健康志向や縁起物といった市場が求める更なる工夫も踏まえながら検討を進めていく予定です。
 活動していく中で、後発組であっても、ハードとしてのきしめんにソフトとしての地域食文化をミックスし発信していくことで、他の麺や食品との違いを伝えることができ、きしめんを「KISHI-MEN」としてブランディングしていく上での助けとなっていると感じています。また、中小企業単体では発信力が弱くても、連携しグループにより発信していくことで、様々な可能性が見えてきました。
香港開催「FOOD EXPO 2011」展示風景
香港開催「FOOD EXPO 2011」展示風景
  きしめんの可能性が広がる2つのレシピ
きしめんの可能性が広がる2つのレシピ
 
インタビュー
今後の展望などをお聞かせください。
 
説明 志賀社長
 香港のスーパーで東京に営業部門を置いているところがあり、そこにアプローチしたところ、「きしめん・でら・パスタ計画」の活動は面白い取り組みだと興味を持っていただき、当社の乾麺を香港で売り出すことになりました。海外展開の突破口の一つになればと思っています。また、国内における取り組みとして、東京・日本橋に、当社の小麦粉を使ったきしめんを出しておられるワインの立ち飲み屋のお店があり、このお店のメニューに、「きしめん・でら・パスタ委員会」のロゴマーク付きで、今回開発したボロネーゼ風とジェノベーゼ風のきしめんを載せていただく予定です。東京は国内の情報発信地であると共に、東京でもプロジェクトに関連したきしめんのメニューが並ぶことで海外のバイヤーに対する訴求力を高める狙いもあります。ロゴマークについては、参加メンバーの商品等に表記して認知度を高めていき、ゆくゆくは公認きしめんのマークとして幅を拡げていければと思っています。
 すべての基本は、経験することにあるのだと思います。何事もやってみないと分かりませんし、やってみることで発見や創造につながります。当社は、麺用粉専門メーカーという強みを土台とし、これからも小麦粉と乾麺の差別化を図りつつ、現在、新規のお客様の開拓を目指し新商品の開発を行っているところです。面白そうなことにはチャンレンジし続けていきたい。そうしていくことで進むべき道が見えてくると思います。
 

本日はお忙しいところ取材にご協力いただきありがとうございました。食文化というソフトパワーを支え続ける源は、揺るぎない伝統技術と挑戦し続ける開拓精神にあると感じました。「きしめん・でら・パスタ計画」の今後の展開が楽しみです。御社の更なる躍進と皆様の御活躍をお祈り申し上げます。
 
 
《《《 会 社 概 要 》》》
SP SP
会 社 名 株式会社金トビ志賀  
志賀 重介 社長
志賀 重介 社長
本   社 愛知県蒲郡市丸山町4-38  
創   業

1917年(大正6年)8月

 
設   立 1950年(昭和25年)1月  
代 表 者 代表取締役社長 志賀 重介  
事業内容 小麦粉・乾麺の製造販売  
資 本 金 4,792万円  
従 業 員 40名  
U R L http://www.kintobi.com/  
T E L 0533-69-3111  
F A X 0533-69-3119  
取材:平成24年2月8日 総務課 情報公開・広報室


 

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