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中部発きらり企業 Vol. 77

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ミナミ産業株式会社 ミナミ産業株式会社
独創性豊かな豆腐ビジネスで世界を駆け巡る

今回は、ミナミ産業株式会社の南川勤社長にお話を伺いました。同社は、おからの出ない大豆まるごと豆腐製造機器を開発・販売するほか、地元の伝統産業である萬古焼(ばんこやき)のメーカーと連携し、誰でも手軽に豆腐を作れる鍋を開発するなど、独創性豊かな豆腐ビジネスの多角化経営を進め、豆腐製造の新規開業支援は60店舗を超え、海外取引の実績は22カ国にのぼっています。

ミナミ産業(株)[本社]
ミナミ産業(株)[本社]
インタビュー

御社のこれまでの沿革等について教えてください。

 
説明 南川社長
 1951年に、祖父と父が、豆腐用の大豆を絞る濾過布の販売を手掛けたのが始まりです。豆腐の凝固剤も扱うようになり、その後、機械を得意とする父は、大豆摺機など豆腐製造の関連機器の開発に乗り出し、機械製造を柱に事業を拡大していきました。1968年に株式会社化し、父が社長となり、折しも高度経済成長期で、食品を大量販売するスーパーマーケットなどが台頭する中、当社は油揚げの簡易自動包装機を開発し、全国規模で売れるヒット商品となりました。父は矢継ぎ早に様々な機器を開発し、業績を伸ばしていきましたが、メンテナンス体制が充分ではなかったことや、機械を製造委託していた協力会社とのトラブルもあり、次第に社員の定着率も悪化し、厳しい経営状況に追い込まれました。私は大学卒業後、すぐに当社に入社することになりましたが、入社後まもなく切り盛りしていた役員が急逝するなど、存亡の危機を迎える中、1992年に28歳で社長に就きました。就任して1年目は何とか黒字に転換できましたが、バブル崩壊の影響で協力会社が破綻に追い込まれるなど、再び経営の危機を迎えました。銀行からは融資を断られ、将来性がないと廃業も勧められました。このままではいけないと思い悩んでいた時、東京都大田区の町工場が、独創性を活かしニッチな分野でトップシェア製品を作っているという新聞記事を目にし、衝撃を受けました。大量生産に対応した大型機械の開発を進めていては、資金的に厳しい状況を打開できない、それならば得意とする「大豆の加工技術」を掘り下げ、他がやらないことをやっていこうと、危機的な状況にもがく中で、ニッチトップを目指・キという方針が固まっていきました。この期を境に、豆腐ビジネスの多角化経営へと事業転換を図っていきました。
 
生大豆を微粉砕しパウダー化
生大豆を微粉砕しパウダー化
 
パウダーの粒度計測
パウダーの粒度計測
インタビュー
おからの出ない大豆まるごと豆腐の開発についてお聞かせください。
 
説明 南川社長
 社長に就任した年と同じ1992年に、味の素株式会社の中央研究所の所長を務めておられた奥村氏と出会ったのがきっかけです。奥村氏から「おからは将来問題になる。おからの出ない豆腐作りの研究をしなさい」と勧められました。従来の豆腐製法では、原料である大豆よりも多いおからが発生します。年間で使用する大豆約50万トンに対し、おからは約70万トンで、ほとんどが廃棄されており、おからの出ない技術が確立できれば画期的なことです。会社は今日か明日には潰れるかもしれない瀬戸際の時でしたが、人がやらない独創的なことをやっていかなければ明日はないと思い、おからの出ない豆腐作りにチャレンジしていきました。奥村氏の協力を得ながら、複数の企業と連携して研究を進め、スポンサーもつき注目される中、1995年に国内初のおからの出ない大豆まるごと豆腐製造プラントを開発しました。しかしながら技術が未熟で、取組は頓挫してしまい、業界からも結局は無理だという烙印を押され、窮地に立たされました。それでも、ニッチトップを目指すという決意を思い起こし、なんとかやり遂げようと奮起しました。豆腐製造者や様々な機械メーカーの協力を得ながら、トライ&エラーを繰り返し、改良を重ね、1998年、ようやく実用レベルのおからの出ない豆腐製造プラントの開発に至りました。開発ポイントは大きく2つあり、一つは、脂質が多いためパウダー化するのは不可能といわれていた生の大豆そのままを、20マイクロメートル(20/1000mm)まで安定的にばらつきなく微粉砕する技術です。もう一つは、パウダー化した大豆を水に溶き、ダマをつくらずに豆乳にするために、高速で加水・攪拌する技術です。これらの技術の確・ァにより、健康に良いとされる大豆の様々な栄養等がまるごと入った、こくのある豆乳や豆腐を作ることが出来るようになりました。おからを排出しないので、歩留まりが良く、廃棄コストもかかりません。また、従来の豆腐製造では、前日からの仕込み等が大変で、豆腐を作ることだけに専念せざるを得ず、売るところまで頭が回らなかったり、大変さに加えて職人技も要するため、後継者がなかなかいないという状況でしたが、大豆まるごと豆腐は、製造工程が非常に短時間で、職人技も必要とせず、誰でも簡単に出来たての豆腐を作ることができるというメリットがあります。
 
従来製法と大豆まるごと製法との比較
 
インタビュー

大豆まるごと豆腐の事業はどの様に進めていかれましたか。

 
説明 南川社長
 開発当初の大豆まるごと豆腐は、粉っぽく風味も悪かったため、良い評価を得られませんでした。そこで改良を重ねていったのですが、一度ついたイメージはなかなか払拭できませんでした。そうした折、当社の取組を理解していただける豆腐屋さんと出会い、協力を得て消費者に受け入れられる商品作りの研究を進めていきました。この豆腐屋さんは脱サラして開業した方で、大豆まるごと豆腐は徐々に評判となり、ドライブインなどに商品を置いてもらうようになると、それを買った方から自分のところでも豆腐作りを始めたい、という声が上がるようになりました。大豆まるごと豆腐は、誰でも簡単に作ることができ、脱サラした方でも商売を始められるということで、豆腐屋さん以外の方からも開業したいという要望をいただくようになり、様々な形での新規開業のお手伝いを手掛けるようになりました。脱サラの方をはじめ、農家の直売所や道の駅、異業種の多角化経営、障害者施設、レストランとの併設など、これまでの開業支援は全国で60店舗を超えています。大豆まるごとでは難しいといわれた油揚げやがんもの製造機器も開発し、ニーズに対応したプラントを提供しています。原料となる大豆パウダーは、当社から提供するものだけではなく、その土地ごとの大豆を当社に送っていただき微粉砕しお返しすることで、地産地消の豆腐作りにも対応しています。また、大豆まるごとの微粉砕ができるなら、他の食品等も微粉砕できないか、といった依頼も増えており、お米やお茶、お花などの特産品を微粉砕し、パンやお菓子を作るなど、地域資源を活用した新たな商品開発の取り組みへとつながっています。
 
卓上豆腐製造器「豆クックミニ」
卓上豆腐製造機「豆クックミニ」
 
「萬来鍋」製造現場

「萬来鍋」製造現場

インタビュー
地域資源活用支援事業も活用されている「萬古焼を活用した手作り豆腐」の開発の経緯について教えてください。

 
説明 南川社長
 最盛期で5万軒あった豆腐製造業者は、近年では1万軒程度になり、お得意さんであった中規模の豆腐メーカーが廃業していく中、豆腐製造機器を売る先がなくなっていました。豆腐をパックに入れ、日持ちできる技術革新が進む反面、手作りの出来たて豆腐のおいしさが味わえる小さな豆腐屋さんはどんどん店をたたんでいました。独創性を活かすにはどうしたら良いかと考え、大量生産の自動化ラインの逆をいこうと、小型の卓上豆腐製造機を開発しました。始めは、スーパーに売り込みをかけましたが、全然売れませんでした。たまたまホテルや旅館から声が掛かり、手軽においしい手作り豆腐が作れるのは面白いと言われ、展示会に出展したところ好評価を得ました。お客様は豆腐製造業者としか頭になかったのですが、ホテルや旅館などの別の業態で自分の強みを活かせる、ということが分かりました。
 この卓上豆腐製造機を使っていただいている飲食店のお客様から、豆腐を作る樹脂製の容器を木製にできないか、という要望をいただきました。理由を聞きますと、本当に出来たての豆腐を作っていることを直接目で見てもらいたいから外観にもこだわりたい、との答えでした。目の前で作って、そのまま出せるというのは面白いと思い、それならもっと簡単に目の前で豆腐を作ることはできないかと考えました。試行錯誤の結果、蒸気を循環させて上下から加熱する二重鍋構造にたどり着き、職人でも難しい天然にがり(海水から取れる凝固剤)100%の豆腐を、短時間にムラなく簡単に作ることのできる鍋の開発に成功しました。機械メーカーですので、試作の鍋はステンレスで作ったのですが、豆腐の器としては見た目があまりおいしそうではありません。そこで思いついたのが、地元(四日市市)の地域資源である萬古焼です。伝統工芸品である萬古焼は、土鍋の国内シェアで7〜8割を占めており、耐熱性に優れているという特徴があります。早速、地元の窯業者の門をたたきましたが、素人の発案で売れるわけはないといわれ、なかなか賛同を得られませんでした。あきらめずに捜し続け、ようやく協力していただける若手経営者に出会いました。豆腐製造機と萬古焼という、それぞれの得意分野を融合して開発を進めていき、出来上がった鍋で試したところ、陶器の熱伝導率と遠赤効果が良い影響をもたらし、ステンレスよりも非常にうまく豆腐を作ることができ、見た目の風合いも良くなりました。2002年、萬古焼と千客万来を掛け合わせ「萬来鍋」(ばんらいなべ)と名付け、豆乳や天然にがりなどもセットで販売を開始すると、飲食店やホテル等を中心にヒット商品となりました。豆腐が目の前で作れることと、地場産業とタッグを組んだ取り組みが面白いと話題になり、様々なメディアに取り上げていただき、宣伝の大きな助けとなりました。独創的な器具と最適な材料の双方のノウハウを販売に活かすことで、相乗的に売上げを伸ばし、現在、萬来鍋については出荷数が10万個を超えています。
萬来鍋
「萬来鍋」…熟練者でも難しいとされる天然にがり100%の手作り豆腐が10分で出来る 「萬来鍋」の構造図
SP
インタビュー
海外展開の取り組みについてお聞かせください。
 
説明 南川社長
 海外における日本食ブームも手伝って、アメリカやヨーロッパ方面から、萬来鍋を使いたいということで、わざわざ当社まで足を運んでくれる方が何人かいらっしゃいました。そこで、海外市場にもチャレンジしていこうと考え、現地の下調べを行い、展示会に出展したりしましたが、豆乳が日持ちしないという問題が浮上しました。豆乳メーカーと共同で、常温で1年間持つ豆乳を開発し、セットで案内すると、徐々に注文が入り始めましたが、それでも伸びはイマイチでした。展示会に出展しても、アメリカ人はなかなか試食をしてくれません。思い切って開き直り、砂糖を入れ、メープルシロップをかけて試食を出したところ、それまで見向きもしなかった人たちがぱくぱくと食べてくれました。この経験から、こだわりも大事だが、マーケットインの発想が重要であると気付かされました。海外では、豆腐が出来たてであることは必ずしも優位性として働かず、現地に合わせたソースで食べていただくといった、柔軟な発想が必要と分かり、様々なレシピの提案をしていったところ、注文が伸び始めました。現在、萬来鍋等の海外取引の実績は22カ国となっており、有名な日本食レストランやフレンチの三ツ星レストランなどにも出荷しています。海外の販路開拓に当たっては、地域資源活用支援事業の活用により、展示会出展に対する継続的な支援を得られ、とても助かりました。今年度は、韓国、上海、シンガポール、台湾、アメリカ、ドイツなどの食品関連の展示会に出展し、更なる取引拡大に向け取り組んでいます。
パリ国際食品見本市能   韓国フードエキスポ
海外展示会出展風景
左:パリ国際食品見本市
  右:韓国フードエキスポ
SP
インタビュー

農商工連携支援事業も活用されている、原料である大豆にこだわった「にがり農法」について教えてください。

 
説明 南川社長
  10年ほど前、お客様から当社の機械の調整をしてほしいとの依頼があった際、かなり手こずったのですが、使っていた国産大豆を産地の違うもの変えてみたところ、すぐに調子が戻りました。良質な豆腐等を作るためには、機械だけでは限界があり、やはり原料である大豆が決め手となると感じました。この経験をきっかけに、大豆作りの研究に取り組み始め、農業生産者の方や大学と連携し、「にがり農法」という栽培方法を確立しました。県内尾鷲市の海洋深層水から塩を作る会社を共同出資で設立しており、塩を精製する際に出来たミネラル豊富なにがりを、葉や土壌に散布すると、大豆のタンパク質の含有量が高まり、品質も安定することが分かったのです。こうして出来た大豆は、非常に歩留まりが良く、加工特性も良いという特徴も表れました。
 
にがり農法/にがり散布風景
にがり農法/にがり散布風景
現在、にがり農法による大豆の契約栽培は、県内で130ヘクタールまで広がっています。化学肥料には頼らず、農薬を減らす、あるいは完全無農薬での大豆栽培を行い、収穫した大豆を当社で微粉砕してパウダーに加工し、開業支援をさせていただいた店舗を含め全国各地の豆腐製造業者等へ出荷しています。これまで国産大豆ではほとんど取り組まれていなかった、生産・加工・販売のトレーサビリティも徹底し、安全・安心な大豆原料として提供しています。単に国産大豆だからということではコストの安い輸入品には勝てません。強い意志を持った者同士の連携により、他にはないものにチャレンジし、付加価値を上げていかなければ、生き残っていくことはできないと思います。
インタビュー
今後の展望などをお聞かせください。
 
説明 南川社長
 萬来鍋の手作り豆腐や大豆パウダーは、海外の反応は良く認知度も上がり、販路も広がりましたが、震災以降、日本の食材に対する信頼が揺らぎ、輸出はかなり苦戦を強いられました。回復や増加をしているところもありますが、拡大を計画していたアジア、特に韓国や中国での事業計画は大幅に変更しなければならなくなりました。現在、日本の食材をどうやって海外へ売っていくのかを考える大きな転換期にあり、中小企業1社ではなかなか対応できない状況です。これを打開するため、海外輸出など国際化への意識の高い人たちが集まる「オール三重」という場を設けて、共同での取り組みを始めています。食品関連企業から、農業生産者、食器メーカーや流通業者など、地域の様々なメンバーが集まり、勉強会や情報交換をしています。今後は、連携による物流コストの削減や提案力の強みを活かし、海外の展示会への共同出展などを通じて、日本の信頼回復に向けた活動等を積極的に進めていきます。また、近隣の県においても、国際化に向け同じような志を持った取り組みが行われていますので、オール東海、中部地区といった形で連携の輪を拡げていくことも模索していきたいです。このまま座していては、日本のものづくりは駄目になってしまいます。危機感を持ち、連携し知恵を出し合うことで、必ずや新たな道が開けていくと思います。
 

本日はお忙しいところ取材にご協力いただきありがとうございました・B幾たびの困難にもあきらめずにチャレンジし続け、豆腐ビジネスに新たな風を吹き込んでこられた取り組みに感銘を受けました。日本の地域資源の素晴らしさを世界に向け発信し続けていただきたいと思います。御社の更なる躍進と皆様の御活躍をお祈り申し上げます。
SP
《《《 会 社 概 要 》》》
  SP SP  
会 社 名 ミナミ産業株式会社  
南川 勤 社長
南川 勤 社長
本   社 三重県四日市市東新町3-18  
創   業

1951年(昭和26年)

 
設   立 1968年(昭和43年)11月  
代 表 者 代表取締役社長 南川 勤  
事業内容

豆腐製造機器の製造・販売、大豆等粉砕・加工、豆腐調理鍋の販売等

 
資 本 金 1,000万円  
従 業 員 20名  
U R L http://www.minamisangyo.com/  
T E L 059-331-2158  
F A X 059-331-7324  
取材:平成23年11月15日 総務課 情報公開・広報室


 
 中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

〒460-8510 愛知県名古屋市中区三の丸2-5-2

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