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中部発きらり企業 Vol. 75

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株式会社 能作 富士特殊紙業株式会社
未来を考え、時代をリードする食品パッケージを提供

 今回は、富士特殊紙業株式会社(フジトク)の杉山仁朗社長にお話を伺いました。同社は、環境負荷の高い有機溶剤(VOC)を使用しない「水性グラビア印刷」や「無溶剤型ラミネート」の技術を確立し、人と地球環境にやさしい食品パッケージを提供しています。また、機能性や利便性を追求した先進的なパッケージの開発に常に取り組み、現在、新連携支援事業も活用し、世界初の包装技術により新たな市場開拓を進めています。
富士特殊紙業(株) 本社工場
インタビュー

御社のこれまでの沿革等について教えてください。

 
説明 杉山 社長
 先代社長が昭和25年に、静岡県富士市で食品包装材を製造する会社を設立したのが始まりです。前例も設備もない食品包装の黎明期で、当時の包装材は蝋(ロウ)紙でした。富士市で事業を始めたのは原材料があったからというのが理由の一つでしたが、名古屋にある食品メーカーとの取引が次第に増え、食品は作ってすぐに包装する必要があるため納期が短く、こまめに対応するにはお客様の近くが良いということで、昭和50年に名古屋市西区に移転しました。
 大手繊維メーカー等が食品用の包装フィルムを手掛け始め、機能性の高い合成樹脂製のフィルムが次々と開発されていく中、当社はフィルムを提供するメーカーとお客様である食品メーカーとの橋渡し役となり、用途開発や印刷技術など食品パッケージに対する様々なニーズに応えていくことで業績を伸ばしてきました。例えば、フィルムそのままでは袋になりませんが、当社の印刷技術によりフィルムにのりを印刷し袋に加工できるようにしたところ、あられやせんべい業界に瞬く間に拡がりました。また、ハムや味噌などが酸化するのを防止するパッケージの開発に携わり、近場でしか売れなかった商品が全国区の商品となりました。画期的だったのは、鰹節削りのパックです。削った鰹節は一日も経つと乾燥してぱさぱさになり、色も香りも落ちてしまいます。何とか削って売れないかということで、関係各社が協力し、乾燥しない、色も香りも落ちない鰹節削りのパックを実現しました。
 
水性グラビア印刷の商品例
水性グラビア印刷の商品例
 こうした食品パッケージの進化は、食品産業と共にスーパーマーケットなど食品流通産業の発展にも貢献してきたといえると思います。フジトクに行けば何とかして商品化してくれる、その様な評価をいただきながら業績が伸び事業を拡大していきました。デジタル化の波が押し寄せ、フィルムのグラビア印刷(版のくぼみにインキを入れて印刷する方法)の製版もデジタル化への対応が必要となり、また、長年の懸案であった有機溶剤の問題への対応として、環境にやさしい水性グラビア印刷の技術開発にチャレンジしていくことを決断し、スペースが確保できる工業団地を求め、平成5年にここ瀬戸市に移転してきました。
SP
インタビュー

御社のコア技術である「水性グラビア印刷技術」や「無溶剤型ラミネート技術」についてお聞かせください。

 
説明 杉山 社長
 食品パッケージのフィルムにグラビア印刷を施す際に使用する油性インキには、トルエン等の有機溶剤が使われているため、大気汚染の問題を抱えており、現場で働く従業員の負担にもなっています。これらを何とかして改善したいとの思いから、平成8年に、環境負荷の高い有機溶剤を使用しない、水性インキによるグラビア印刷技術の開発に取り組み始めました。水性インキのグラビア印刷は前例がないため、フィルム、インキ、製版、印刷機械など、それぞれの専門メーカーとの試行錯誤が続きました。水性インキをはじかないようにフィルムを改良する、フィルムにのりやすい水性インキを開発する、水性インキは乾きにくいので、インキ量を減らしつつ、より精密な製版技術で対応する、印刷スピードをできるだけ落とさずに乾燥できる印刷機械を開発する等々、関係各社と共同して総合的に取り組んだ結果、水性グラビア印刷の技術開発に成功し実用化に至りました。水性インキは乾きにくいというデメリットを克服していくことで、油性と比較し、使用するインキ量を40%削減することができ、細部のカラー再現性も格段に向上するなど、油性にはない水性ならではの長所も生まれました。
 水性グラビア印刷技術と同時に開発を進めたのが、無溶剤型ラミネート技術です。合成樹脂製のフィルムを食品パッケージとして使用する際、内容物や保管環境に合わせて複数のフィルムをラミネート(貼り合わせ)加工し、必要な強度や耐性を持たせます。その加工の際に用いる接着剤にも、有機溶剤が使用されてきました。そこで、有機溶剤を使用しないラミネート加工を目指した結果、無溶剤型ラミネートの技術開発に成功しました。  
 これら技術の確立により、地球環境負荷の低減や労働環境の大幅な改善を実現することができ、安全衛生に配慮した食品パッケージとして提供できるようになりました。水性グラビア印刷は、業界に先んじた取り組みでしたので、開発当初は、お客様の御理解をいただくのに時間を要したこともありましたが、昨今では、環境に対する意識の高まりから、水性グラビア印刷はお客様の企業価値を上げるものとして積極的に採用いただいています。現在、グラビア印刷の受注のうち、水性グラビア印刷は8割にまで達しています。
水性グラビア印刷ライン
←水性グラビア印刷ライン
 
 ↓無溶剤型ラミネート加工ライン
無溶剤型ラミネート加工ライン
[作業場に有機溶剤特有のきつい臭いはない]
 
インタビュー

新連携支援事業を活用されている、新しい食品パッケージの製造・販売事業の取り組みについて教えてください。

 
説明 杉山 社長
 何年か前から、日本の包装機械メーカーの先駆者であるフジキカイさんと、横ピロー包装にジッパーを付けられないかと話をしてきました。横ピロー包装は、一枚のフィルムを筒状に貼り合わせ、上下の端を溶着し袋の形状にする包装です。ピロー包装は、食品の自動包装に使われることが多い形状で、食品パッケージの約6割を占めており、そのうち7割が横ピロー包装です。横ピロー包装は、縦方向に開封はできますが、横方向に開封しようとすると、筒状に貼り合わせたセンターシール部にひっかかり、うまく切れませんので、これを解決しなければ、ジッパーを付けても意味がありません。乾麺など一度に使い切らない食品の場合、袋に入れたまま輪ゴム等で縛っておくという方も多いと思いますが、ジッパーが付けられれば再封や保管において、一気に利便性が高まります。食品メーカーからも、より便利さを求める消費者や高齢化社会におけるバリアフリーへの対応として、横方向の開封が容易な機能や再封可能なピロー包装が求められていました。そこで当社は、センターシール部にひっかからずに、手で簡単に横方向に開封することのできる技術を確立し、横ピロー包装の横方向への易開封を可能にしました。また、当社はどの様な用途にも自由に装着可能な独自のジッパーを開発していましたので、これらの技術をフジキカイさんに持ち込み、共同で研究開発を重ねた結果、昨年9月に「易開封+ジッパー+横ピロー」の包装を実現する自動横ピロー包装機の開発に成功しました。包装材には当社の水性グラビア印刷を施すことで、環境への配慮も充分です。昨年11月にシカゴで開催された「PACK EXPO」(世界の最新包装技術が集結する国際展示会)にも、ジッパー付きの横ピロー包装機は、まだ、どこからも出展されていませんでした。チャンスは今だと思い、新連携支援事業も活用し、フジキカイさんと連携して本格的な市場開拓に着手し始めました。まずは今年10月に開催の「2011日本国際包装機械展(ジャパンパック2011)」に、1号機を出展する予定です。世界初の包装技術ですので、どの様な反応が得られるか大いに期待を寄せているところです。
ジッパー付き横ピロー包装(イメージ)
 
インタビュー
海外展開の状況はいかがでしょうか?
 
説明 杉山 社長
 当社は国内のフィルムメーカーと共同開発したフィルム等を海外へ輸出しています。約20年に亘る実績がありますが、中国の市場の大きさには今さらながら驚いています。食品の包装は短納期をクリアする必要があり、お客様である国内の食品メーカーは国内で包装するため、現在のところ海外への工場立地等は予定していませんが、昨今の経済状況では何が起こるか分かりません。アジア地域に関しては、グラビア印刷が主流であり、基本的に印刷方法は同じですので、まずは技術供与によるアライアンスを進めていきたいと思っています。お客様のメイン工場が海外へ移転された場合は、包装資材も現地で調達する必要がありますから、国内にいては確実に受注減になりますし、これまでと同じ品質・機能を維持した包装資材を供給するためにも、お客様についていく形で海外展開を検討する必要があると思っています。
SP
水第16回デュポン賞金賞受賞
第16回デュポンアワード金賞受賞
水性印刷・無溶剤ラミネート技術が高く評価され、国際的に権威ある賞を受賞。
 
資源循環型ものづくりシンポジウム(IMS2010)最優秀賞受賞
資源循環型ものづくりシンポジウム
(IMS2010)最優秀賞受賞
  大気汚染防止・作業環境向上が評価され、中小企業として初の最優秀賞受賞。
インタビュー

御社の将来ビジョンなどをお聞かせください。

 
説明 杉山 社長
 水性グラビア印刷技術や無溶剤型ラミネート技術は、国内外で高く評価され、いくつかの賞をいただいており、認知度は上がっていますが、大手印刷会社を含め、同業者において水性グラビア印刷を採用するところが増えてきているかというとそうでもありません。当社が開発に関わった、水性グラビア印刷に使用するフィルム、水性インキ、製版技術、印刷機械などは囲い込んだりせず、それぞれのメーカーから自由に販売していますので、必要なモノは全て揃えることができます。地球環境の保全や労働環境の改善を考えますと、結局は水性化していくしか手はないと思いますし、水性化することでお客様の企業価値の向上に貢献し、大気汚染防止法等の環境規制に対応することもできます。当社は水性グラビア印刷をもっと広め、仲間を増やしていきたいと思っています。
 食品パッケージに対するニーズはまだまだたくさんあります。お客様である食品メーカーと消費者の目線を大事に、安全衛生への配慮、消費者の利便性、高齢化社会におけるバリアフリー等に対応した技術・商品開発を推し進め、人と地球環境にやさしい食品パッケージを提供し続けて参ります。これからも製造業として成長していくために、従業員の感性を養い、技能を伸ばしていく環境を大切にし、チャレンジし続ける会社でありたいと思っています。
SP

本日はお忙しいところ取材にご協力いただきありがとうございました。水性グラビア印刷に取り組まれた理由として、労働環境の改善がその一つであるとのお話は、従業員お一人お一人を大切にされている思いが伝わり印象的でした。ジッパー付き横ピロー包装の今後の展開が楽しみです。御社の更なる躍進と皆様の御活躍をお祈り申し上げます。
SP
 
              《《《 会 社 概 要 》》》
  SP SP  
会 社 名 富士特殊紙業株式会社  
杉山 仁朗 社長
杉山 仁朗 社長
本   社 愛知県瀬戸市暁町3-143  
設   立

昭和25年3月

 
代 表 者 代表取締役社長 杉山仁朗  
事業内容

食品向けパッケージの製造・販売等

 
資 本 金 28,000万円  
従 業 員 480名  
U R L http://www.fujitoku.net/  
T E L 0561-86-8511  
F A X 0561-86-8537  
取材:平成 23年9月9日 総務課 情報公開・広報室


 
 中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

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