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中部発きらり企業 Vol. 74

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株式会社 能作 株式会社 能作
伝統ある高岡銅器の技術を活かし、独自の商品開発で世界にはばたく

 今回は、株式会社能作の能作克治社長にお話を伺いました。同社は、高岡400年の伝統ある鋳物技術を活かし、現代のライフスタイルにあったデザイン性の高い独自の商品を開発し続け、注目を浴びています。また、地域資源活用売れる商品づくり支援事業の活用等により、国内外の展示会出展等を通じて、各方面から高い評価を得ています。
(株)能作本社
(株)能作 [本社]
インタビュー

御社のこれまでの沿革等について教えてください。

 
説明 能作 社長
 ここ高岡は、400年の歴史を誇る鋳物産業の集積地で、銅器の生産では国内の9割以上を占めています。加賀藩主の前田利長が、高岡開町後の1611年に鋳物師を呼び集めたのが始まりで、以来、当地域の鋳物産業は発展し、「高岡銅器」は伝統的工芸品の指定を受けています。当社は1916年(大正5年)に創業し、仏具、茶道具、花器等の生地(着色前の素地)を製造し問屋に卸してきました。産地内では分業が進んでおり、当社もその一角を担う、いわゆる 下請け企業です。1984年に、私は新聞社を経て当社に入社し、鋳物の現場で働く中で、高岡で一番の鋳物屋になりたいとの一心から、鋳物の技術を必死に学びました。入社して間もなく、大口のロット注文が舞い込む、好景気の時代を迎えましたが、いずれ中国が台頭しコスト競争で負けると判断し、当社は早々に多品種少量の生産体制に切り替えました。ロット生産用の設備を撤去し、昔ながらの職人の手による鋳物作りに戻しました。生産効率は下がり、収益はなかなか上がりませんでしたが、職人の技術がめきめきと上達し、問屋から高い評価を得る鋳物屋になりました。技術力と多品種少量生産を強みに、その後の不況下でも業績を落とさずに維持していくことができました。
製品の木型 生型(なまがた)鋳造の現場
製品の木型

生型(なまがた)鋳造の現場。木型を砂で固めて鋳型を作り、鋳型の穴に溶かした金属を流し込む。

SP
真鍮の風合いを活かした風鈴
真鍮の風合いを活かした風鈴
インタビュー
真鍮の風鈴や錫(スズ)100%の食器など、独自の商品開発の取り組みについて教えてください
 
説明 能作 社長
 10年前、高岡市開催のデザイン研修会に来られた講師が、当社の鋳物の技術に驚き、展示会を開催するよう勧められたことがきっかけで、東京・原宿で単独展示会を開催することになりました。私は17年間、鋳物の現場で働き、培ってきた技術に絶対の自信がありましたので、あえて着色せずに、真鍮の生地のままの製品を並べ、素材そのものの美しさを見せる展示とし、また、仏具で真鍮の音色の良さを知っていましたので、展示会用に卓上ベルを作り出品しました。当時、真鍮を着色しないということは業界ではあり得ないことでしたが、展示会では好評でした。この展示会を機に、真鍮の素材そのものの風合いが気に入ったと、デザイナーからホテル等の照明器具の注文があり、また、大手セレクトショップから卓上ベルを扱いたいとの申し出を受け、初めて産地問屋以外との取引が始まりました。セレクトショップに卓上ベルを置いてもらったものの、日本には卓上ベルを使用する習慣がないので、一向に売れませんでしたが、女性店員から「風鈴にしたら良いのでは」と言われ、風鈴を作って売り出した途端、ヒット商品となりました。この経験から、これまで商品開発ができなかったのは顧客の顔を見たことがなかったからだ、顧客と接している店員は最大公約数を知っている、と気付きました。それからは店舗に通い、店員から商品開発するための情報や知恵をもらいました。錫100%の食器等を作り始めたのも、店員から「金属の食器がほしい」と言われたのが発端です。真鍮で作ろうと思いましたが、食品衛生法により無理だったため、錫でチャレンジすることにしました。錫は、酸化しにくく、抗菌作用が強いという特性があり、金属アレルギーを起こしにくい素材で、お酒の味をおいしくするとも言われています。錫製の食器等は流通していますが、錫100%では軟らかく曲がってしまうため、ピューターと呼ばれる錫にアンチモンや銅・鉛が含まれた材料が使われています。当社は、鉛フリーで環境に優しく、錫の素材の持つ美しさや特性を最大限に活かそうと、まだ、どこもやっていない錫100%の商品開発に取り組みました。当初は軟らかくて曲がってしまう欠点をどう補おうかと考えていましたが、デザイナーから「曲がるなら曲げて使えばいい」との逆転の発想を受け、「曲げられる金属」を売りにして商品開発を進めました。錫100%の商品作りを可能にしたのは、伝統技術の生型鋳造法です。また、富山県総合デザインセンターと共同で、微細な表現等も可能にした独自のシリコン鋳型鋳造法も開発し、商品のラインナップに幅が出ました。当社の伝統技術とデザイナーとのコラボレーションにより、真鍮や錫の素材を活かしながら、風鈴、テーブルウェア、インテリア雑貨等、現代のライフスタイルにあった機能性とデザイン性を備えた様々な商品を生み出しています。開発に当たっては、メーカーである当社とデザイナーが同じ目線で協議することと、ユーザー目線を大事にすることを心がけています。
KAGOシリーズ 箸置
KAGOシリーズ

箸置

曲がる金属という特性を活かした錫100%の商品例。手で容易に曲げることができる。
用途は使う人の発想で自由に。
インタビュー
産地との関係で問題はありませんでしたか。
 
説明 能作 社長
 分業体制でやってきた産地との関係を崩さないために、一つは、新規の取引の依頼があっても、高岡の問屋と取引がある所は問屋を通す、もう一つは、従来から問屋に卸している製品は県外に持って行かない、独自に開発した商品のみ県外に持って行く、と決めました。当社は、新しい販路に新しい商品を持ち込んでいるので、高岡全体の経済に貢献しているという自負はあります。御法度なのは産地の問屋で扱ってもらっている商品をそのまま産地外に持って行くことです。売ろうとする先が産地の問屋と取引がある所だったりすると、不協和音が生まれてしまいます。
SP
インタビュー
販路開拓や海外展開への取り組み等についてお聞かせください。
 
説明 能作 社長
 当社の技術と商品を広く情報発信していくために、地域資源活用売れる商品づくり支援事業等も活用しながら、展示会に積極的に出展し、市場の拡大を図っています。興味のない人に対しては、これでもかというくらい見せていかないと認知してもらえませんので、同じ展示会に何年か続けて出展するようにしています。伝統産業の良い所は背景を持っていることです。「モノ」だけではなく、高岡銅器400年の歴史といった「コト」が訴えられるのは大きな魅力です。それを活かして、どう見せていくかというのも大事です。産地との関係もあり、当社から売り込みに行くことはしません。技術と商品には自信があります。だから直接見て、価値を評価してもらい、結果、取引をしたい人は必ず当社まで足を運んでくれます。2009年には日本橋三越本店に、今年は松屋銀座店に当社の直営店を設けました。いずれも百貨店からの依頼を受けての出店です。三越や松屋の直営店を通じて、店員だけではなくユーザーの声も聞けるようになり、次の手を打っていくための貴重な情報収集の場となっています。また、セレクトショップや卸売業者、旅館・料亭等の業務用など、県外との取引は250社程になりました。独自の商品開発をスタートして10年経ちますが、売上げが伸び始めたのは7年目くらいからです。継続は力なりで、あきらめずに続けていくことの大切さを肌で感じています。今年の売上げの構成は、産地における従来の取引が3割で、独自の商品が7割に達する見込みです。
 国内の販路開拓にある程度の実績が出始め、次は、海外へ挑戦していこうと、2010年1月に、パリで開催されたインテリアの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ2010」に出展しました。総来場者数は8万5千人、出展者数は2千8百で、世界各国のバイヤーが訪れます。海外に挑戦していくことに抵抗感はありませんでした。本来、金属文化は国内ではなく海外にありますから、当社の技術や商品がどこまで通用するのか、試してみたいという気持ちが強かったのです。結果として、多くの商談があり、ヨーロッパやアジアの企業からの受注やフランス大手セレクトショップとの取引につながるなど、思っていた以上の成果を得ることができました。2010年の11月には上海で開催されたインテリア等の国際見本市に、2011年1月にはメゾン・エ・オブジェに2回目の出展をしました。メゾン・エ・オブジェ出展期間中には、パリのレストランで当社の食器を用いたディナーフェアを開催し、業務用としての市場拡大も進めているところです。今年11月には上海の国際見本市に2回目の出展を、来年1月にはメゾン・エ・オブジェに3回目の出展を予定しています。アメリカ方面では、2008年に当社の卓上ベルがニューヨーク近代美術館(MoMA)の販売品に認定され、今年7月にニューヨークの紀伊國屋内にオープンした和のモダンを集めたショップでは、当社の商品が販売されています。まだまだ勉強することが多く、海外展開のはっきりとした方向性は模索中ですが、受注は伸びてきており、海外においても当社の技術・商品が通じるという確かな手応えを感じています。続けていくことが力となりますから、海外の展示会への出展も最低5年は必要と考えています。
「メゾン・エ・オブジェ2011」 展示風景 「メゾン・エ・オブジェ2011」 展示風景
「メゾン・エ・オブジェ2011」 展示風景
SP
職人による仕上げ加工
職人による仕上げ加工
インタビュー
人材育成等について教えてください。
 
説明 能作 社長
 技術継承がうまくいき、職人の平均年齢はとても低く32歳くらいで、若い職人が新人に仕事を教えています。技術や商品が評価され、様々なメディアに紹介されていることも励みとなり、従業員は作っているものに自信と誇りを持って仕事をしています。商品を買ってくれる人の顔を見て、使っている人の意見を聞くことで教えられることがたくさんありますので、職人も直営店に出向いてお客様と直接対面する機会を持つようにしています。
SP
鋳ぐるみによる商品例
鋳ぐるみによる商品例:大手手芸用品
メーカーの目打ち。先端側はステンレス、
手持ち部分は錫。
インタビュー

御社の今後のビジョン等についてお聞かせください。

 
説明 能作 社長
 受注が急激に伸びてきたため、生産が追いつかない状態にあります。生産効率をどう上げるか、在庫管理や物流をどうするかといった課題に対応し、次の段階へとステップアップしていく過程にあります。今は中小機構北陸支部に専門家の派遣を依頼し相談し始めています。
 現在、PRに力を入れている技術の一つに、異素材を高純度の錫でくるむ「鋳(い)ぐるみ」があります。高純度の錫は柔らかく加工しにくいため、他の金属と接合するのは一苦労ですが、当社では開発したシリコン鋳型鋳造法を応用し、 ガラスやステンレス等の異素材を高純度の錫でくるむ鋳造を可能としました。今後、抗菌作用が強いといった錫の特性を活かし、様々な分野における用途開発が期待されるところです。
 伝統産業は、伝統の形・技法・販路を守りすぎているきらいがあります。伝統は創っていかなくてはいけない。100年後には今やっていることが伝統になるわけです。新しい伝統を創っていくことが、伝統産業に携わっている者の役目であると思います。そうでないと日本の伝統産業はだめになってしまいます。産地の下請け企業であった当社が、新たな分野を開拓し、様々なメディアに取り上げられ、高岡を始め、全国の伝統産業の方々が当社を見てくれるようになりました。当社の取り組みが伝統産業の発展に少しでも貢献できればと思います。高岡銅器の全体の売上げは、1990年をピークに下がり続け、現在はその3分の1にまで落ち込んできているのが現実です。目指すところは、当社の独自の取り組みをいずれは地元産地の事業として拡げ、高岡の伝統的工芸鋳物を次世代にしっかりとバトンタッチできる形で盛り上げていくことです。また、能作ブランドを世界に通用するブランドにし、日本の伝統産業の格上げにつなげていきたいと思っています。
SP

本日はお忙しいところ貴重なお話しを聞かせていただきありがとうございました。伝統産業のあり方に大きな一石を投じる、御社の果敢な挑戦と積み重ねてこられた実績に感銘を受けました。御社の更なる躍進と皆様の御活躍をお祈り申し上げます。
SP
 
              《《《 会 社 概 要 》》》
  SP SP  
会 社 名 株式会社 能作  
能作 克治 社長
能作 克治 社長
本   社 富山県高岡市戸出栄町46-1  
創   業   1916年 (大正5年)  
設   立 1967年 (昭和42年)  
代 表 者 代表取締役社長 能作 克治  
事業内容

銅・錫等製品の製造・企画・販売

 
資 本 金 1000万円  
従 業 員 36名  
U R L http://www.nousaku.co.jp/  
T E L 0766-63-5080  
F A X 0766-63-5510  
取材:平成 23年8月日 総務課 情報公開・広報室


 
 中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

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