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中部発きらり企業紹介 Vol. 70

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  茶久染色株式会社 茶久染色株式会社
伝統の染色加工技術を活かして新分野を開拓  


 今回は、地域イノベーション創出研究開発事業を活用し「カーボンナノチューブのコーティング技術による新規導電繊維の研究開発」を行い、伝統の染色加工技術を活かし世界初の新しい導電繊維の開発に成功し、染色業界ひいてはモノ作りの新しい可能性を切り開いている、茶久染色株式会社の今枝憲彦社長と蜂矢雅明開発部長にお話しを伺いました。
茶久染色(株)
茶久染色株式会社
インタビュー
 御社のこれまでの沿革について教えてください。
 
説明 今枝社長
 ここ一宮市は、愛知県尾張地方に位置する毛織物の産地です。曾祖父が一宮市音羽通りで染色業を始め、受け継いだ祖父が大正5年に現在地に移転し、茶久染工場を創業しました。社名の「久」は曾祖父の久吉という名前から「久」の一字を取っています。「茶」は、糸を茶に染めるのが難しかったため、染屋のステータスとして商号に茶の字が使われることが多かったのが所以です。事業が軌道に乗り、昭和31年に株式会社に組織変更しました。先代社長の時には、コージェネレーションシステムを先駆けて導入したり、中小企業の規模でありながら綿染めの会社を買収したことなどが話題になりました。平成15年にはタイに合弁会社を設立しており、現在はチャイナプラスワンの流れもあって、衣料を中心に受注が伸びています。染色方法は、創業時はかせ(糸の束)染めでスタートし、事業の拡大に伴い大量のロットに対応できるチーズ染色(糸をボビンに巻いて染色する方法/巻いた状態がチーズの固まりのような形)に転換していきました。染める対象はウールから合成繊維に移り、現在はポリエステルが主流です。先代社長は、茶久の久にクオリティの「Q」を当てロゴをCHAQとしました。4代目となる私は、CHAQのCにチャレンジを当て、従来の経営にこだわらず何事にも挑戦し続けることを当社の行動理念の一つに掲げています。

糸のボビン巻き 染色現場
糸のボビン巻き 染色現場
SP
 
試作室
試作室
商談室設置の染色サンプル
商談室設置の染色サンプル
インタビュー
 繊維製品の多くが海外で生産される等、染色業界を含め繊維産業を取り巻く環境変化が著しい中、御社が染色加工業としてこれまでやってこられた強みなどをお聞かせください。
 
説明 今枝社長
 現在、当社の売上げの構成は、衣料と産業資材で5:5です。衣料関係の染色を専門としていましたが、昭和50年代に先代社長がカーシート等の産業資材の染色に乗り出しました。ただ、カーシート等は衣料の染色とは違い、納品に至るまでの条件は過酷でした。紫外線による色あせや摩擦への対応、難燃加工、色合わせや納期の厳しさ、量産が決まるまでの試作の積み重ね、品質管理など苦労の連続でした。その頃、地場では衣料関係の景気がまだ良かった頃でしたので、周囲からはそこまで苦労して産業資材に手を出す必要があるのか、という見方もあったようです。今となっては売上げ面でも、また技術の高度化という面でも産業資材に打って出たことは正解でした。衣料だけではいずれやっていけなくなると判断した、先代社長の先見の明です。当社は染色加工業ですので、最終商品に社名が出てこないため、あまり知られていないのですが、初代新幹線から現在の新幹線に至るまで、全国の新幹線車両のほとんどの座席シートの布地に使われている糸は当社が染めたものです。自動車やバスの他、航空機の座席シートにも採用されています。
 
説明 蜂矢部長
糸にただ色を付ければいいということであれば、低コストでできる海外に流れていきます。また、産業資材の染色のノウハウは安全性の確認などのために今ではほとんどオープンになってきており、他社との差別化を図るのは容易ではないのが現状です。現在、当社が持てる強みといいますと、色合わせ、高品質、機能性加工、短納期など、国内でしかできない細かい対応と高い技術力です。特に色合わせに関しては自信があり、お客様のイメージに対して、こういう色ならこんな色の組み合わせが良いといった提案ができます。取引先のデザイナーが当社に勉強に来られるくらいです
SP
インタビュー
 自動車メーカーの海外進出等により産業資材の分野も厳しさを増しているかと思いますが、次へのチャレンジとして取り組まれている、新しい導電繊維の開発について教えてください。
 
説明 蜂矢部長
 開発のきっかけは、今では語り草となっている偶然の再会です。当社の取引先の一つである、クラレトレーディング(大阪)を訪れた際、取引の開始時にお世話になった方に数年来ぶりに偶然再会し、「こんなのあるんだけど、これで糸を染めてくれないか」と渡されたのがカーボンナノチューブ(以下、CNT)の分散液でした。CNTは鉄の数十倍の高強度で、金属なみの高い導電性と熱伝導性を持つといった優れた特性を有する素材です。ポリエステルの染料はナノ材料なので、ナノサイズのCNTも同じような染め方で染まるだろうとトライしたところ、箸にも棒にもかかりませんでした。あきらめかけていたのですが、この件を社長に話したら詰めてやるようにということで研究開発を進めることになりました。
説明 今枝社長
 CNTの話を聞いていなかったら、そのまま何もせずに終わっていたかもしれません。トライしていけば必ず何か得るものがあると判断しました。何事もまずは挑戦です。
説明 蜂矢部長
 CNTは絡み合って存在し、そのままではカーボンの固まりですが、CNT一本一本をバラバラにほぐす分散液を北海道大学の先生が開発していました。当社は糸にCNTをコーティングする技術を確立していきたい、北海道大学はCNT分散液の機能性アップと有意義な応用を図りたいということでマッチングし、お互いキャッチボールをしながら補完し合っていくことで開発のレベルを上げていくことができました。従来の導電繊維は、一本の糸の中にカーボンを練り込んだもので、カーボンの接点部分が少なく、張力を与えるとカーボンが断絶し、導通性が失われ抵抗値が安定しないといった課題がありました。今回取り組んだ研究開発は、細い糸が束になって一本の糸になっているマルチフィラメントの一本一本の表面にCNTをコーティングし、糸が伸縮しても導通性を保ち抵抗値の変化がないCNTのネットワーク(互いに重なって導通している状態)を形成するという、世界的にも初めての試みでした。クレラリビング、北海道大学などと共同で研究開発を進めましたが、中小企業である当社の規模では金銭的負担が重く、加えて、リーマンショック後の落ち込みで経営が一番厳しい時でした。中部経済産業局に助成金について相談に行き、地域イノベーション創出研究開発事業を活用できることとなり大変有り難かったです。これまで培ってきた染色加工技術を応用し、試行錯誤の結果、糸の表面にCNTを精密かつ均一にコーティングした新しい導電繊維の開発にこぎ着けることができました。繊維の表面にCNTのネットワークを形成する技術は世界初です。開発した導電繊維はクレラリビングから「CNTEC」の商標を取得しており、現在、事業化に向けた取り組みを進めています。
CNTコーティング前・後
(CNTコーティング前・後)
CNTネットワークのSEM写真
(CNTネットワークのSEM写真)
SP
成果活用例:埋設用融雪マット
成果活用例:埋設用融雪マット
 
snano tech 2010国際ナノテクノロジー総合展で応用部門賞を受賞
nano tech 2010国際ナノテクノロジー総合展で応用部門賞を受賞
インタビュー
 開発されたCNT導電繊維「CNTEC」は、様々な用途開発の可能性を秘めているかと思いますが、具体的な事業化への取り組み状況について教えてください。
 
説明 今枝社長
 研究開発メンバーや各種メーカーとの共同により、今年4月からの本格的な事業化に向けて、現在準備中です。評価中のものは、シートヒーター、融雪マット、コピー機のクリーニングブラシなどです。融雪マットについては、北海道大学の正門で試験的に実施しており、細かなデータを収集しています。CNTECは発熱効率が良いので、電気使用量についてのコストパフォーマンスの実証が期待できそうです。コピー機のクリーニングブラシは、CNTECが帯電に必要な抵抗値を安定的に出せることと、短くても細くて柔らかい素材であるという特徴を活かしたもので、従来のブラシよりも捌きが良く小型化及び高速化の実現に貢献できそうです。その他には、カーブミラーの曇り防止、高速道路の表示板の着雪防止、屋根の融雪用としてビニールシートへの応用など、様々な用途開発に取り組んでいます。
 
インタビュー
 御社の今後のビジョンなどについてお聞かせください。
 
説明 蜂矢部長
 CNTECは、最終的には非金属の電線として作り上げるのが目標です。まだまだ掘り下げていく必要がありますが、課題の一つにマイナス抵抗値を出せるようにすることが挙げられます。そのためには汎用的な多層CNTではだめで、単層CNTが必要です。単層CNTは、今現在は用途があまりなく生産量が少ないため単価が高額で手を出しにくい材料です。研究開発に当たっては国などの助成金の活用も検討していますが、たとえ高額になっても、CNTECの電線を作る価値はあると思っています。実現すれば、非常に軽量で伸縮性があり、屈曲疲労に優れ、腐食劣化のない電線として他に類のないモノであり、軽量化が求められている電気自動車を始め家電などの電気製品全般のモノ作りに革命を起こすことになるでしょう。
説明 今枝社長
 これからは他社とは違うものを作っていかないと生き残っていけません。CNTECは新しい経営の柱として育てていきます。いずれは量産できる工場を設けることができればと思っています。新分野を伸ばしていくためにも、当社の目的に合った人材を確保していくことも重要だと思っています。近い将来には、開発部門といった新しいことにチャレンジしていく部署を大きくしていきたいです。
SP

本日はお忙しいところ貴重なお話しを聞かせていただきありがとうございました。従来の経営にこだわらず、新分野に果敢にチャレンジされている御社の姿勢に感銘を受けました。CNTECの今後の展開が楽しみです。御社の更なる躍進と皆様の御活躍をお祈り申し上げます。
SP
 
              《《《 会 社 概 要 》》》
  SP SP  
会 社 名 茶久染色株式会社  
今枝憲彦社長
今枝憲彦 社長
 
蜂矢雅明開発部長
蜂矢雅明 開発部長
本   社 愛知県一宮市開明字苅安賀道31番地  
創   立   大正5年  
設   立 昭和31年11月17日  
代 表 者 代表取締役 今枝 憲彦  
事業内容

毛合繊糸染色加工

 
資 本 金 3,200万円  
従 業 員 85名  
U R L http://www.chakyu.co.jp/  
T E L 0586−45−2345  
F A X 0586−45−2326  
取材:平成 23年14日 総務課 情報公開・広報室


 中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

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