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中部発きらり企業紹介 Vol.96


株式会社福光屋

~ 「お酒」だけではなく、「お酒のある暮らし」を提供したい。
大いなる可能性を秘めた発酵の力 ~

ちゅぼっと君

今回は、株式会社 福光屋の福光 松太郎社長にお話を伺いました。同社の主要ターゲットは、女性。食事と一緒にお酒を楽しむことの多い女性向けに、ほどよい酸味とふっくらおいしい味わいのお酒を追求した結果、たどり着いた「純米藏宣言」を始め、酒粕を利用したスイーツ、おしゃれな酒器、日本酒造りおける米醗酵技術から生まれた化粧品には福光屋さんの思いがぎっしり詰まっています。我が日本が誇る日本酒と、その日本酒造りにおける米発酵技術の魅力をぜひご堪能ください。

 

40年も続いた日本酒の消費減退への突破口は今までほとんど日本酒に触れることのなかった女性

 日本酒の消費は長くは40年近くも減少傾向にありましたが、昨年、一昨年でやっと下げ止まりとなりました。それでも消費量はピーク時の3分の1ほどです。要因としては、清酒の画一化とライバルの台頭が挙げられると思います。戦前は、各蔵に独特の酵母がいて、蔵の個性が酒に出せて非常に面白かったのですが、戦後は醸造試験所が、一番安定しているものを10種ほど国の酵母と指定して、使用するよう求められました。もちろん安定している酵母ですので、品質は平準化しますが、味を規定する重要な酵母ですので、酒蔵毎の個性が出せなくなってしまいました。戦前は7000あった酒蔵も現在では1500程にまで減ってしまったのです。
 昭和40年から50年ぐらいまでは、戦後復興、経済成長を経て、日本酒の消費が伸びていた時代でしたが、ビールやウィスキー、焼酎、さらにはワインと、日本酒のライバルも登場しました。なおかつ、それらのメーカーは大企業であることが多いので、マーケティングにもコストをかけ、力を入れていました。一方、一般的に原始的零細企業群と言われる日本酒の企業は1社1社が小さいのでなかなか太刀打ちできない状況でした。
 我が社の出荷数の下がり始めは昭和57年でしたので、私が、昭和60年に社長になった当時から需要減退にいかに対処するかが重要なミッションとなりました。それまでは、日本酒の需要を支えていたのは中高年男性でしたが、宴会等が少なくなってきたこともありますし、そのような方々は、20年もすると歳を取りますので、ユーザーではなくなってしまうとの懸念もありました。かといって、大企業が莫大なコストをかけているビール、ウィスキーには到底適わない。当時、ウィスキーの水割りを和食に浸透させたウィスキー会社に、日本酒の市場を奪われてしまうという事態も起きていました。このままではいけない、どうにかしなければならないとの思いから、男性市場だけではなく、今までほとんど日本酒に触れていなかった「女性」に目を付け始めたのがこの頃です。

料理と一緒に楽しむお酒の味わいはふっくらおいしく、後味はさらっと。行き着いたのは原点である純米蔵宣言


【洗練されたパッケージのお酒】
 昭和50年代になると、生活情報誌等、女性向けに発行される雑誌が多くなり、会社で働いている男性よりも、女性に圧倒的に情報が入っていくような仕組みになっていきました。一般的であった「食事の前にアルコールを楽しむ」スタイルとは一線を画した「料理と一緒にお酒を楽しむ」スタイルも、男性よりも先に女性に浸透することとなりました。それまでは男性は塩辛い少しのつまみとお酒を楽しみ、その後ご飯を一気に食べて食事時間は終わり。それでは、食事の際の家族間のコミュニケーションも十分図れないですよね。
 そこで、女性向けに、食事も一緒に楽しめるようなお酒の戦略を進めていきました。例えば、味わいはふっくらおいしく、さらっと楽しめるものが食事に合うので、食中酒として後味をさらっとさせるため日本酒の品種改良を追求していきました。さらに、日本の食生活が洋風化していくことを踏まえ、ワイン等が洋食にマッチすることからも分かるように、日本酒の酸味も強い方がより良いだろうということから、アルコール添加をやめることとしました。そもそも戦前までに造っていたお酒は全て純米酒だったのですが、戦時中、戦後とお酒を造るための米がない時代の策として、アルコール添加が行われるようになりました。アルコール添加をしないものを純米酒と呼びますが、純米酒はしっかり造れば、ある程度の酸味の出る、非常にバランスの良いお酒です。現在でも、国内の日本酒生産量の約85%がアルコール添加を経て造られているのは寂しいですが・・。
 当社では、製造するお酒を全て純米酒化していくこととし、2001年に純米蔵宣言をするに至りました。まさに、原点回帰ですね。

女性にはお酒だけでなく、「お酒のある暮らし」を勧めたい


【甘酒キャラメル】

【酒粕を利用したクランチ】

【化粧品 アミノリセシリーズ】
 2001年に純米蔵宣言をしたわけですが、浸透しつつある日本酒についての情報を、女性にさらに確実に伝えるにはどうすれば良いかということを考えるようになりました。そこで、思い立ったのが日本酒の虎の巻を記載した「裏ラベル」です。以前はお酒の種類は級別でしたので、特級、1級、2級といった説明ができれば良かったのですが、その級別がなくなった際、大吟醸、純米、本醸造等いろんな種類のお酒を造るようになりました。そうすると小売店等では、単に級のみ説明すればよかったものを、説明が難しくなるので、瓶の裏に、どこの米を使った、どのような特徴のお酒であるかを記載したラベルを貼り付けることにしたのです。今でこそ裏ラベルは一般的なものになりましたが、日本で初めて日本酒に貼り付けたのは当社です。
 ただ、それでもやはり、お客様への説明が十分ではなかったので、直接、お客様に接し、当社のお酒を説明したいとの思いから、純米蔵宣言に先駆け、1999年に銀座西5番街に第一号となる直営店を出店しました。
 そこでは、女性にはお酒だけを勧めるのではなく、「お酒のある暮らしを勧める」べきと考え、お酒の器、お酒と一緒に楽しむ食品、酒蔵の技術を活かしたお菓子等も取り扱うようになり、現在、全ての店舗で、女性の購買比率が85%となっています。
 そうして、女性の顧客、ショップが増えていく中で、肌に良い成分であるアミノ酸を含む日本酒を、飲むだけでなく、肌に付けて頂けるようにすれば、もっと喜ばれるのではないかと考え始めました。普通、お酒を造るために米を発酵させるとアルコール分が出ますが、化粧品としては、アルコール分がない方が好都合です。その点を重視しながら研究を進めていたところ、ついに、アミノ酸は出すが、アルコールは出さない酵母を発見し、特許を取得しました。これが、アミノリセ開発の第一歩となりました。

本業が厳しい中でも化粧品への挑戦を続けられた国の支援


【松井圭三 常務取締役】

 こうして女性向けの事業を拡大していきましたが、女性向け事業が拡大していくスピードに比べて、従来の日本酒の男性市場が減少していくスピードはまだまだ速く厳しいものでした。研究開発のコスト等を考えると、本業が厳しい状況にある中での新規事業の立ち上げには、銀行も融資に前向きではありませんでした。その状況を打開するため、私は2つの条件を作りました。1つは、新規事業の設備投資は自分の所では一切しない、2つ目は、商品企画は自社で行うが、その他の必要なプロセスはパートナー工場を作って行う、ということです。
 1つ目の条件は、本業が厳しかったので、そう言わざるを得ない状況であったのですが(笑)、2つ目の条件は当時、自社工場を持っていないのに素晴らしい製品を展開していたナイキやアップルにヒントを得ました。基になる企画・デザインを押さえておけば、製造は委託しても良いのではないかと思ったのです。
 その後、中部経済産業局が進めていた産業クラスター計画を受けて設立されたNPO法人北陸ライフケアクラスター研究会へ参画しました。クラスター活動を通じ、北陸先端大学、金沢大学との産学官連携により、自然派化粧品を開発することができ、その後、地域資源活用事業を活用することで、事業化を達成し商品の発売を開始することができました。
 また、当社の商品の原料には、全ての人にアレルギーが起こらないよう、動物性のものは決して使いません。純米蔵宣言をした中で、それが例え化粧品であったとしても、パラベン等の防腐剤を含まず、口に入れても問題の無い商品を作ることを目指しました。先述の2つ目の呪文であるパートナーさん探しの際には、防腐剤を使わない化粧品会社さんがなかなか見つけられなかったのですが、先のクラスターを通じて現在のパートナーと出会い、思いを実らせることができました。

お金をかけずに、広報には全力投球

 純米酒はそれまでのお酒に比べて、コストがかかりますが、それを価格に転嫁するのではなく、企業内部のコストを削減することで、吸収するよう心がけました。また、広報についても、東京の店舗が中心になって、ジャーナリズム関係の人たちとのネットワークを密にし、「最低でも一日一件は国内の記事に掲載されること」を目標としました。今でも、年間450件は当社の記事が何れかのメディアで取り上げられています。これはすべて無料でやってもらえていますが、お金をかけてやろうと思ったら莫大なコストがかかります。取材依頼に積極的に対応する姿勢を心がけ、広報担当部署も充実させたことが功を奏したのかなと思っています。パブリシティに力を入れることで、女性誌にも数多く取り上げられ、当社を知らない女性にも「何だか今、日本酒が良いのかな」と思ってもらえる風潮を作ることができたことの効果も大きかったと思います。
 女性市場に着目してから25年、今となっては圧倒的に男性より女性の方が、しかも年齢を問わず、若い世代から年配の方まですべての世代の女性が当社のお酒を飲んでくださっているので、女性市場は非常に順調に伸びています。
 女性市場に着目してきたので、社内の女性登用も進みました。現時点では、直営店の店長は全て女性、全社員の構成も53%が女性となり、平成26年度「ダイバーシティ経営企業100選」に選定されました。

専門家集団が造り出すOld BioとNew Bioが掛け合わされた現在のお酒

 現在の日本酒市場は、全体では昨年か一昨年に底打ちとなっていますが、純米酒に限っては7、8年前から前年を上回る状況が続いています。原点回帰と言える純米酒のold bioと後味をさらっとさせるという新しいバイオテクノロジーのかけ算がこのような結果をもたらしました。昔は農業や漁業従事者の冬の二次的労働として、杜氏が中心となりお酒を造っていましたが、現在は理系の専門家集団が議論を重ねながらお酒を造るべきとの着眼点から、全員社員化する体制も整えています。

味や価格帯からブランディングしたバラエティ豊かなお酒の銘柄


【バラエティに富んだ数々のお酒】

 お酒の表示は、級別制度がある時には、例えば、「福正宗」の特級、1級、2級で商品展開をすれば良かったのですが、級別制度がなくなってからも、ある銘柄の特選、上選、佳選、あるいは、ある銘柄の純米酒、大吟醸等と、一つの銘柄で展開する酒蔵がほとんどです。しかし、一つの銘柄が持つイメージはある程度限られることから、一つの銘柄のみで様々な展開をすることには限界があると思うのです。その点、当社は戦前の級別制度がなかった時代から、福正宗、万歳、旭鶴等いくつか味や価格帯からブランディングを行い、複数の銘柄を持って、対応していたので、現在もマルチに展開することができています。価格が非日常性をもたらすことを踏まえつつ、全ての商品がグッドデザインになるように、生活の場面や食べ物との関係でブランディングしています。高価格で特別な時に飲むお酒、日常仕様のお手頃なお酒といった感じで商品を造っています。このことにより、直営店においては、日本酒だけであっても、いくつもの銘柄が並べられ、さらには化粧品までも取り扱う、お客様に楽しんでいただけるバラエティに富んだ店舗展開ができたのも良かったと思います。直営店に加えて現在は通販も順調に売上を伸ばしています。
 今、和食以外のお料理とのペアリングにも力を入れています。例えば、イタリア料理の名店とタッグを組み、前菜からデザートまでのコースとのコラボレーションを展開しています。当社自慢の各銘柄の個性とそれぞれのお料理の相乗効果で、より一層皆さんに満足いただけるようなご提案をさせていただいています 。

米へのこだわりー発酵の力で人間にプラスのパワーを与える


【お米のヨーグルト「ANP71」】
 お米のヨーグルトの開発にも取り組みました。石川県内でもっとも機能的な乳酸菌を探し出す事業に参加し、珠洲の伝統食である「あじのなれずし」から乳酸菌を発見しました。あじのなれずしは、あじを塩と米飯で乳酸発酵させた食品で、後から聞いたところ、地元では、風邪の予防のために昔から子供に食べさせていたそうです。このお米のヨーグルトの製品企画では、経産省の農商工連携事業を活用して取り組んだ、「おこめみるく」での経験を活かし、味だけでなく、機能性も重視するよう心がけました。
 なぜ米にこだわるのか、それは、お米はアレルギーがないことからです。食の欧米化が進み、今では日本人の3割が牛乳アレルギーだと言われています。その他にもアレルギーを誘発する食品としては、小麦、卵等も挙げられます。そう考えると最後の砦はお米です。目指すのはその米に、発酵の力で人間にプラスのパワーを与えることです。お米ヨーグルトは、デメリットが全くありません。今、一般的に普及しているのは動物性のヨーグルトです。でもそれは、牛乳アレルギーの方は食べられないですよね。近い将来「お米のヨーグルト」がスーパーに並び、全ての人に満足していただくのが私の夢です 。

米を発酵させる会社、福光屋

福光屋 玄関先
 今後の展望は、米を発酵させる会社として、純米酒、米発酵の化粧品、米発酵の機能性食品を三本柱に、進めていきたいと思っています。すべての柱が大いなる可能性を秘めているので楽しみです。また、すべて、お客様に喜んでいただけるということにやりがいを感じていますし、国内の需要もまだまだ伸びていくと考えています。
 海外展開については、現在、お酒が15カ国くらいの和食レストランに入っていますが、お酒を理解し、お酒の本質をしっかりと理解できる外国の方はまだまだ少ないと思います。小売店で買って家で飲むなど、和食レストラン以外での消費はまだなされていません。海外に普及させるためには、もっともっと日常的に取り入れてもらわないといけません。ただ、今の味と形で世界に受け入れられるかはまだ未知数です。外国の方の好みに合わせるというより、日本食以外の食事に合わせることを考え、酸味を増やす等の対応を突き詰めると世界市場も見えてくるかもしれませんね。

<<社長のお勧め>>

ブリ大根
 当社のお酒はいろいろお好みで楽しんでもらいたいのですが、「のどぐろの塩焼き」や「ブリ大根」と、「黒帯の悠々」を約50℃程度にお燗して併せるとものすごく美味しいと思います。「お燗」に最適なお酒となっていますので、その飲み方を体験されながら、金沢の冬の料理と一緒に楽しんで頂ければ、非常に幸せな時間が過ごせると思います。 

会社概要

社: 株式会社福光屋
代表取締役 衣笠貢司
法人番号: 7220001011356
社: 石川県金沢市石引二丁目八番三号
事業内容:

日本酒、焼酎、リキュール、調味料、醗酵食品、化粧品などの製造、販売

業: 1625年
代表者: 代表取締役社長 福光 松太郎
資本金: 3,200万円
従業員: 103名
URL: http://www.fukumitsuya.co.jp/外部リンク
TEL: 076-223-1161
FAX: 076-222-3769


このページに関するお問い合わせ先

中部経済産業局 総務企画部 情報公開・広報室
住所:〒460‐8510 愛知県名古屋市中区三の丸二丁目五番二号
電話番号:052-951-0535
FAX番号:052-951-0557

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