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中部発きらり企業紹介 Vol.55

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旭金属工業株式会社  
〜 「先行投資型」の精神で常に新しいことを模索、
自立した航空機部品加工メーカーとしてグローバルな市場でのサプライヤーを目指す〜

今回の中部発きらり企業紹介は、平成20年に元気なモノ作り中小企業300社に選定され、戦略的基盤技術高度化支援事業(通称:サポイン事業)取り組んでいる旭金属工業(株) 岐阜安八工場において中村止常務取締役にお話を伺いました。 同社は、航空宇宙製品製造の特殊工程に対して必須である世界で唯一の統一認証プログラム「Nadcap(国際特殊工程認証システム)」を国内で初めて取得した品質管理能力を持ち、コア技術である表面処理をキーとしての前後の工程を結合した航空機部品の一貫生産を実施しています。
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岐阜安八工場
岐阜安八工場
 
岐阜安八300年工場
岐阜安八300年工場
インタビュー

はじめに御社の創業の経緯などについてご紹介いただけますか?

 
説明 中村常務
 昭和23年に電気メッキ業として会社を設立し、当初は民生部品のめっきや精密理化学機械の部品加工を手がけていましたが、防衛省向けの航空機部品の表面処理を始めた事をきっかけとして、米国ボーイング社の特殊工程の認定工場になるなどして、航空機部品産業に参入しました。
 その後、航空機部品には今後の需要が見込めるとの考えから、航空機産業の集積の高い中部地域への進出を考えていたところ、三菱重工業(株)がボーイング777の共同開発の関連で、表面処理の作業を行う外注先として当社を選定し、中部地域への進出要請があったことにより、平成4年に岐阜県安八工場を建設しました。
 当社の売り上げ構成は、航空機部品が99%ほどで、残りの1%は原子力関係などです。航空機関連の取引先としては、ボーイング機種が一番多く約50%、防衛省向けが約21%、カナダ機種向けが約16%となっています。今後、MRJの生産開始により、この売り上げ構成も変わっていくだろうと考えており、その売り上げ見込みはボーイング機種を超える可能性もあると思っておりMRJには期待しています。
 MRJが国際間競争の中で評価が高くなるようになるためには、我々部品メーカーは技術力の向上により、より品質の高いものをより安く提供できるようにして、努力する必要があると思っています 。
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ショットピーニング行程
ショットピーニング 工程
 
表面処理工程
表面処理工程

インタビュー

具体的にはどのような取り組みが必要だとお考えですか?

 
説明 中村常務
 航空機の部品製造においては、機体メーカー等の親会社が多数の部品加工メーカーに外注依頼として発注をしており、親会社は多くの外注先から納品を受けて次の工程を担当するメーカーに渡し、またそこで納品を受けて次工程へ渡すというようなことを繰り返す、通称「のこぎり発注」と呼ばれる非効率な生産・供給の流れとなっています。しかも、作業を行うメーカーの数が多いため、そののこぎりの歯が非常に細かく、非常に手間がかかっている状態です。
 今後はその歯を少しでも少なくなるように、ある程度複数の工程をとりまとめられるような生産構造にして、親会社とやりとりする回数を減らし、生産性を上げていく必要があると思っています。自動車などの一般のモノ作りではそのようなことは当然の仕組みになっていると思いますが、航空機産業は品質保証の問題などでなかなかそれが進んでいません。
 当社は表面処理加工が主な事業内容になりますが、表面処理加工には多額の設備投資が必要であり、投資額を回収し利益を出していくためには量の確保を図って行かなければなりません。このため、得意な技術を持った企業がコンソーシアムを形成して、それぞれの持つ強みを生かし、生産性を向上させ、グローバルな市場から受注できるよう国際競争力を強化していくことが必要だと思っています。
 当社には特殊工程である表面処理加工と前後の工程について、今までの経験から工程間をとりまとめるノウハウの蓄積があります。当社がコンソーシアムを組んだ各企業の工程全体を品質保証することにより、高コスト体質となっている 「のこぎり発注」構造から脱却することができると思います。このような取り組みにより、品質の高いものを低コストで生産、加工することができるようになれば、内外の航空機体メーカーと直接取引できる自立した航空機部品サプライヤーの集合体になることができると思います。
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溶射の設備
溶射の設備
 
タングステンカーバイドの粉末
タングステンカーバイドの粉末
インタビュー

 航空機の国際競争力を強化するための取り組みの一環として、航空機部品の環境負荷低減を実現するような技術の高度化について研究されていますね。経済産業省の平成20年度のサポイン事業に「環境配慮に適応した溶射技術高度化の開発」ということで採択されていますが、これはどのような研究なのでしょうか?

 
説明 中村常務
 航空機部品には、クロムめっきを使っている部分が非常に多いのですが、クロムめっきは公害の問題等もあり、環境負荷が高く、作業環境も良いとは言えません。また、時の経過とともに剥離しますので、それを研磨し、再び塗装しなければならないというメンテナンス上の問題もあります。
 高速フレーム溶射(HVOF溶射)というのは、クロムめっきに替わる環境対応型の新しい技術で、タングステンカーバイド等の金属合金粉末を高熱で溶かして、約マッハ3で被覆対象物の表面に打ちつけます。その結果、対象物の素材に強く密着するため、密着強度が増し、剥離しなくなります。塗装は表面に塗るだけなので密着強度が弱いですが、溶射では非常に高い密着強度が得られます。このように、溶射をした部品の特性としては、非常に耐久性が高いということと、表面改質をすることにより摩擦が少なくなるので、非常にスムーズに動くようになるということがあります。
 この溶射技術について、膜圧が均質な被膜の生成や表面の硬度・表面粗度の向上を図り、クロムめっき以上の機能を確保しつつ、複雑形状部品への適用を低コストで可能にするというのがサポイン事業による研究開発の内容です。先ほども申しましたとおり、航空機部品はクロムめっきを使っている部分が非常に多いので、それに代替できるようになれば応用の幅は広いと考えています 。
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塗装工程
塗装工程
 
塗装の色見本
塗装の色見本
インタビュー

 当局と御社との関係でいうと、本年6月に開催されたパリ・エアショーでは当局も微力ながら支援させてもらいましたが、その成果はありましたか?

 
説明 中村常務
 パリ・エアショーは非常に有意義で、パリ・エアショー出展を契機に、当社は海外航空機体メーカーとの直接取引について真剣に考えるようになりました。このため、パリ・エアショーでは海外企業との直接取引するべくかなり積極的に動きましたが、それまでは海外メーカーと取引しようという意識が全くありませんでした。このパリ・エアショーへの出展を契機に具体的な商談につなげるべく営業活動中であり、実際の取引になることを期待しているところです。
 海外の航空機体メーカーとの交渉で私が感じたことは、日本人は英語でのコミュニケーション能力が低いことです。東南アジア諸国の人は海外メーカーと英語でコミュニケーションをとることができるのですが、日本人はその点で劣っていると感じました。Face to Faceでのコミュニケーションは非常に重要で、例えば海外メーカーとのメールでのやり取りでは、先方は多忙を極めるため読まれもせず削除されることが多いのですが、現地に出向いたりして直接会う機会を作ることができれば相手もディレクタークラスが対応してくれます。海外メーカーとの交渉では、相手に直接会って話しをすることに意味があり、英語でのコミュニケーション能力が低いことは、日本にとって大きなビジネスチャンスを失っていると思います。
 
インタビュー

 当局としても、航空機産業は今後の中部地域の大きな柱となる産業として期待しており、それに関わる人材の育成について名古屋大学を代表機関にした「航空機開発DBT(デザイン・ビルドアップ・チーム)リーダーシップ養成講座」を立ち上げるなど、今後も支援をしていきたいと思っています。最後になりますが、今後の御社の方針をお聞かせいただけないでしょうか。

 
説明 中村常務
 現在は航空機専業というような売り上げ構成になっていますが、航空機以外にも大きな柱を作るべきだという意識は持っています。当社は先行投資型の企業だという自負がありまして、将来を見越して世の中の状況・流れを見て、取り組むものは取り組む、かつ、それを一番最初にやるということが重要だと考えており、 「のこぎり発注」構造改善のためのコンソーシアム構想や、高速フレーム溶射技術の確立への研究もこの考えによるものです。
例えば、先日ものづくり日本大賞の経済産業大臣賞を頂きましたが、これも加速器といった最先端の科学技術発展のため、表面改質に取り組みましたが、この研究が直接利益を生むわけではありません。しかし、新しい事への取り組みは苦労もありますが、おもしろい技術だということで社員のやりがいや励みに繋がります。
今後もこの先行投資型の企業風土を大切にしながら、コア技術を活かし、それを応用できる分野や技術の模索を常に考えていきたいと思っています。
SP

本日はお忙しいところ色々とお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。当局としても、航空機産業は今後の中部地域の重要な産業になると位置づけており、その生産性を向上させることは重要な課題だと考えています。「先行投資型企業」として、常にチャレンジの姿勢を続ける御社の今後益々の御発展と皆様の御活躍をお祈り申し上げます。
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              《《《 会 社 概 要 》》》
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会 社 名 旭金属工業株式会社  
中村 止 常務取締役
中村  止 常務取締役
本   社 京都市上京区下立売通智恵光院西入ル  
岐阜
安八工場
岐阜県安八郡安八町牧字新長田4851-4  
設   立 昭和 23年6月  
代 表 者 代表取締役社長 山中 泰宏  
事業内容

・航空・宇宙機器部品の製造
・航空・宇宙エンジン部品の製造
・航空・宇宙機器部品の加工用冶具・組立冶具の製造  
・原子力機器部品・加速器部品の製造
・その他大物部品の陽極処理

 
資 本 金 9,950万円  
従 業 員 325名  
U R L http://www.akg.co.jp/  
T E L 075-801-0151(本社・本社工場)
0584-64-5061(岐阜安八工場)
 
F A X 075-821-1944(本社・本社工場)
0584-64-5324(岐阜安八工場)
 
取材:平成 21年1113日 総務課 情報公開・広報室




     中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

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