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中部発きらり企業紹介 Vol.53

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三重樹脂株式会社

〜 オンリーワン技術を武器に厳しい経済状況でも引く手あまた、夢は産学官一体の『カーボンバレー鈴鹿』の実現 〜


  今回は、平成19年に「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」による認定、平成20年に戦略的基盤技術高度化支援事業の採択を受け、同時に元気なモノ作り中小企業300社に選定されるなど、大手航空機メーカーに対して技術指導・技術者養成を実施するほどの高度なウォータージェット加工技術をオンリーワン技術とする三重樹脂(株)の打田昌昭社長にお話を伺いました。
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三重樹脂(株) 【玉垣複合材工場】
三重樹脂(株) 【玉垣複合材工場】
インタビュー

 はじめに御社の創業の経緯などについてご紹介いただけますか?

説明 打田社長
 当初、ガラスやアクリルシートの加工をしているメーカー(現在の北名古屋市)でYS−11のプラスチック部品(客席窓やコクピット窓ガラスの部分等)やジェット機のキャノピー部品の加工技術を磨いていました。その後、自分の力を試したいという意欲に駆られ、昭和46年5月に独立しました。創業当時は、航空機部品分野への新規参入が難しかったので、一般的なプラスチック部品の加工から始めました。
 その後、プラスチック部品の加工に加えて、難削材加工の仕事が増えてきてため、ダイヤモンドを用いた特殊な工具を作製して対応するなどしていましたが、納期に大変苦労していました。これを解決するために、早く加工できる技術は何かないかとあれこれ模索していました。また、バブル崩壊を契機に、これからのメーカーは量産ではなく、最先端の素材開発に注力していくだろうと予想し、特殊な素材の加工ができる技術が強みになると考えはじめました。
 そんなとき、水でモノを切るというウォータージェット加工技術の存在を知り、そのすばらしさに胸を打たれました。およそ2年間ほど様々なテストと検討を重ねた結果、アメリカのフロー社のウォータージェット加工機が一番切れ味が良いことが分かりました。当時、フロー社の日本進出を計画と我々の思いが一致したこともあり、平成2年に日本で初めてウォータージェット加工機を導入しました。そのときからセラミックの加工も手がけ、現在では炭素繊維材料、チタン、更にはこれらの複合材料の加工まで手がけるようになり、これが当社のコア技術になりました。
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フロー社製宇ぞータージェット加工機
フロー社製ウォータージェット加工機
 
ウォータージェット加工技術による各種サンプル
ウォータージェット加工技術による各種サンプル
インタビュー

 御社はウォータージェット加工技術について非常に高い評価を受けており、それを武器に新規参入が難しいと言われている航空機産業への参入を果たされたと聞いていますが、どのような経緯があったのでしょうか?

説明 打田社長
 航空機産業に参入したきっかけは、ウォータージェット加工機を導入して、カーボンなどの特殊な難削材の加工を手がけてしばらくしてからです。およそ5年前、 ある航空機メーカーからのカーボン加工の打診にさかのぼります。
 当時、そのメーカーが打診してきた素材は、自社ではその素材の切断が困難か、切断に丸一日を費やすといった状況でした。ところが、当社はそれをものの数分で加工することが可能でした。それをきっかけにして そのメーカーとの取引が始まり、その結果、航空機産業界への参入を果たすことができました。
  また、ウォータージェット加工技術の導入以前の切削現場では埃や粉塵が発生して環境が悪かったのですが、ウォータージェット加工なら埃も出ませんし、加工スピードも格段に速く、生産効率が大幅に向上しました。
  さらに、ウォータージェット加工は機械加工、レーザーカット、ワイヤーカットなどとは異なり、摩擦などによる熱が発生しないので、加工対象の素材の分子構造を破壊しないというメリットもあります。加えて、素材に負荷がかからないので、固定できないものや隙間があるようなものでも加工が可能といった特長もあります。
  このように、ウォータージェット加工は、特に難削材や複合材の加工に優位性があるわけですが、それだけでなく柔らかい素材も加工できるので、アイデア一つで様々な加工技術や新しい商品の実現が可能となります。現在も、いくつかのアイデアを練っています。
  難削材の加工については、航空機だけではなく、あらゆる分野で需要があり、幅広い応用が可能です。例えば、今後は低炭素社会の実現に向けて、自動車の軽量化が一層加速されて、自動車の構造材がカーボン材料に置き換わっていくようになります。その結果、我々のコア技術が今後もっと活躍できる場面が増えていくのではないかと期待しています 。
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穴の断面を斜めに加工することにより、円柱部品がスッポリ収まる
穴の断面を斜めに加工することにより、円柱部品がスッポリ収まる
インタビュー

 ウォータージェット加工機の能力がいかに優れていても、それを使いこなす技術・ノウハウがなければ宝の持ち腐れになってしまうと思いますが、それらについてはどのような人材育成・教育訓練をされているのでしょうか?

説明 打田社長
 ウォータージェットの加工技術・ノウハウの伝承については、例えば、航空機の部品には必要なスペックがありますが、それを満たすための技術レベルを分類したマニュアルを作成し、管理しています。その技術レベルを社員が共有し、私自らが社員1人1人の力量を判定し、作業の担当を決定しています。社員への技術指導は、必要な技術レベルに達した者がマンツーマンでOJT指導することで技術のレベルアップを図っていますが、社員全員が更に高い技術レベルを取得できるようにしていきたいと考えています。
  このためにも、平成20年に戦略的基盤技術高度化支援事業(通称:サポインsupporting industry)で「難切削材料(炭素繊維)に対応した切削加工技術の開発」というテーマで採択された研究開発において、そこで新たに確立される切削技術についてもノウハウの平準化・標準化を図っていきたいと考えています。
  社内体制についてもう少し触れますと、当社はいろいろな製品を扱っておりますが、B−787(ボーイング787)の量産対応は別として、当社は基本的には受注生産であり、在庫はありません。また営業マンがおらず、営業活動は行っていませんし、HP(ホームページ)もありません。それにも拘わらず、例えばバイクのヘルメットや風防、さらには飛行機のキャノピー加工などでは、当社独自の技術が活かされ、「歪みがない」、「死角がない」など評判が良く、納期が2−3カ月先としても注文があります 。
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インタビュー

 昨今の厳しい経済状況の中、営業活動をしなくても注文があるということは驚きです。御社の高い技術力に裏付けられた製品に対するファンがそれだけいるという証拠ですね。その業績の良さとも関係があると思われますが、御社は鈴鹿市に新工場を建設するとお聞きしておりますが、それはどのような経緯があったのでしょうか?

 
説明 打田社長
 今から4年ほど前に、 ある企業からB−787の量産にも対応して欲しいとの話がありました。その内容は、月産10機程度を予定しているということでした。月産3−4機程度なら現在の工場でも対応可能だったのですが、ちょうど工場の増設も考えていた時期でしたので、新工場の建設を決定しました。新工場では、B−787やMRJ等の航空機分野での業務の増大を見越して、今後の増産計画があった場合でも対応できるような敷地レイアウトになっています。また、航空機のほか、船や自動車の部品加工にも対応していきたいと思っています。  場所は稲生(鈴鹿サーキットの近く)で、そこは市街化調整区域でしたが、県、市の協力もいただいて建設が可能となりました 。
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難削材料を航空機の形に加工
難削材料を航空機の形に加工
インタビュー

 御社のように、他では真似のできないようなオンリーワン技術という武器があれば、現在のような厳しい経済状況の荒波の中でも、その流れに負けず、確固たる地位を築くことができるというモデルケースとなりますね。それが地域の中小企業の活性化、イノベーション創出に繋がることを期待しています。最後になりますが、今後の御社の方針をお聞かせいただけないでしょうか?

説明 打田社長
 当社の事業で言えば、やはり航空機部門としてB−787やMRJを伸ばしていきたいですね。当社のウォータージェット加工技術は、航空機の部品加工などの分野で優れた効果を発揮できると思いますので、それを生かして特殊な素材や最先端の複合素材を加工できる企業を目指していきたいと考えております。
  私の夢は、鈴鹿市において大田区や東大阪市のような「ものづくりに関するイノベイティブな産業集積」を作り、「地域経済の活性化」に貢献していきたいのです。鈴鹿市には、当社の新工場建設地の近くに新しい工業団地を造成する予定があるのですが、シャープ亀山工場のあるクリスタルバレーやメディカルバレーのように、ここをカーボンに拘わる技術集団、産学官(三重樹脂はじめとする中小企業;三重大学など;鈴鹿市、三重県・・・)一体の『カーボンバレー鈴鹿』にできないかと提案しています。その中には、工業ばかりでなく、農業、医療、商業などの異分野も入って良いのではとも思っています。
  鈴鹿市はF1やバイクで有名であり、シートやハンドルなど大部分がカーボンで構成されていますので、カーボン関連の技術と情報の発信源として最適ではないかと考えています。カーボンに関する技術や人材・知恵が集積する世界的なカーボンの拠点『カーボンバレー鈴鹿』を掲げても、大いに歓迎されると思います。それをいち早く発信するべきだと思います。 カーボンは今や最も重要な環境キーワードとなっており、当社のウォータージェット加工技術、生産ノウハウ、当社が研究開発したノウハウ・知識が必要ならば、当社は喜んで技術指導などもいたします。「カーボンバレー鈴鹿」が認知され、地域の活性化に繋がれば、多くの優れた元気な企業の鈴鹿市への進出など、結果的に当社へも良い効果となると信じています。
  中小企業は、知恵を絞れば様々な可能性が生まれると思っておりまして、そこで中小企業がお互いに協力しあっていけば、10年、さらには15年先には世界に誇れる強い企業集団が鈴鹿から生まれるのではないかと思うのです。当社は、その中で、仲間となる多くの企業の研究開発のヒント作り・ネタ作りができるように、自社で研究開発したノウハウや知識を発信していくという立場になりたいと思っています 。
SP

本日はお忙しいところ色々とお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。地域の活性化については当局としても最重要の課題として取り組むべき事項ですので、積極的に支援・協力するともに、産学官が一体となった『カーボンバレー鈴鹿』構想の実現に向けて、御社の今後益々の御発展と皆様の御活躍をお祈り申し上げます。
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              《《《 会 社 概 要 》》》
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会 社 名 三重樹脂株式会社  
打田 昌昭 社長
打田 昌昭 社長
本   社 三重県鈴鹿市稲生町8687−3  
創   業

昭和46年5月

 
設   立 平成3年11月  
代 表 者 代表取締役社長 打田 昌昭  
事業内容

プラスチック、複合材、セラミック、非鉄金属の加工及びウォータージェットによる切断

 
資 本 金 1000万円  
従 業 員 20名  
T E L 059−389−5440  
F A X 059−389−5441  
取材:平成 21年31日 総務課 情報公開・広報室

 中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

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