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中部発きらり企業紹介 Vol.25

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  株式会社野口製作所




〜世界に誇る円筒深絞り加工技術〜

 今回は、私ども経済産業省中部経済産業局の企業育成総合支援室で担当している東海ものづくり創生プロジェクトのひとつ「東三河産業創出ネットワーク支援事業(チタノミックス研究会)」に参画されている株式会社野口製作所(愛知県豊橋市)の野口真司会長と加藤昌一社長にお話を伺いました。


御社は昭和23年に創業されたとお聞きしておりますが、創業された経緯、きっかけなどついて最初にご紹介いただけますか。
 


       株式会社野口製作所

野口会長:

 

 

 

 当社は、私の父の兄が先の大戦中、東京都大田区でやっていた板金工場が工場疎開で豊橋に移ってきて、私の父が疎開後その板金工場で働いた経験を活かして、昭和23年にプレス加工工場を独立創業したのが始まりです。最初は、カメラ部品からはじまり、時代とともにテレビなどの家電製品や、自動車の部品
  など、その時代々々の主力製品の部品づくりを行ってきました。バブル経済崩壊前の1990年頃には、自動車部品加工の仕事が全体の90%を占めるようになっていました。私自身は学校卒業とともに父親の経営する当社に入社し、以来プレス加工部品づくり一筋で今日に至っています。


その時代々々を代表する主力製品の部品づくりを順当に行ってこられた御社が、現在御社の主力製品とお聞きしています自社開発製品のステンレス製「プレス絞り管」の開発に取り組まれたのはどういったきっかけからでしょうか。
 

自社開発製品「P管」(イージーメイド)

 

円筒深絞り加工技術は何工程もの
プレス加工からなる

  野口会長:

 バブル経済真っ盛りの頃、自動車向け部品のプレス加工が仕事の大半を占めていた当社は、言ってみれば特定の系列企業から貰う仕事で成り立っていた企業でした。ですから、バブル経済の崩壊によってその影響をまともに受けて、仕事が激減し、経営もピンチに陥りました。それと、当時、部品素材が金属からプラスチックに変わりつつあったことや、IT革命でアナログ的な部品からデジタル部品に移り変わりつつあったことなど、世の中のニーズが大きく変わりつつあることも実感していましたので、これからは、特定のお客様だけではなく、幅広い分野の方をお客様にできるようにしようということで独自の新しい加工技術による自社開発製品づくりに取り組んだわけです。
当時、ステンレスの加工技術に長けた企業がまだ少なかったことからステンレス加工分野に特化して技術開発研究を進めて、苦労の末に「ステンレスの円筒深絞り加工技術」を自社開発し、1994年に初めての自社開発製品である「P管」の販売にこぎつけました。


当時はまだステンレスの加工技術に長けた企業が少なかったというお話ですが、ステンレスの円筒深絞り加工技術を独自に開発す

るのには、相当のご苦労があったかと思うのですが、開発にあたって最初どういったところから手を着けられたのですか。

野口会長:

 当時、アルカリ乾電池の外側のケース・缶を作る仕事があって、当初なかなか上手く作れず苦労していたと記憶しています。そこで何とかしなければと知り合いに紹介してもらい刈谷市にある愛知県の工業技術センター(現「愛知県産業技術研究所」)に相談に行きました。しかし、県の工業技術センターというのは地場産業への対応、つまり、当時の愛知県工業試験場というのは窯業関連技術なら指導してもらえるのですが、金属の深絞り加工技術は、愛知県内での指導ニーズが当時まだ少なかったことから、当社の金属加工技術に関しては指導・解決してくれる研究者もいなくて、結局良い結果が得られませんでした。
ということで次の手ということで、金属加工産業が地場産業である新潟県の三条、燕地区に出向いたところ、幸運にもステンレスの絞り加工に詳しい方と出会うことができました。その後、その方と情報交換を行うようになり、いくつもの貴重なアドバイスをいただきました。それからというもの、社員にも金属加工の学会に所属させ、生産担当者には論文を読ませたり、大学の先生に会いに行かせたりするなど、全社挙げて金属加工に関する情報収集や知識の習得に励みました。こうした努力の結果、問題・課題も一つ一つですが着実に解決・乗り越えられるようになりました。



全く経験も知識もなかった御社が未知のステンレスの「円筒深絞り加工技術」を研究開発され、確立するまでには、いろいろな方々との接触、出会い、交流があったわけですが、こうした多くの方との繋がり・結びつきというものは、その後の御社の経営に何か良い影響はありまし たか。

 

低コスト・短納期化を実現する
レディメイド(RM)

 
金型製作からプレス加工まで一貫生産体制
によるオーダーメイド(OM)


短納期化を図るため量産用プレス機を
約100台保有

野口会長  特定のお客様としか取引がなかった時代では考えも及ばなかったのですが、全社を挙げて問題解決のために走り回り、多くの方と知り合い、情報交換を行ったことで、公設試験場の研究者の方や大学の先生などともその後もお付き合いしていただけるようになったことは、その後の当社製品の競争力を高めるという点で非常にプラスになっています。
というのは、例えば「ステンレスが割れた」などのクレームがお客様から寄せられた際、その問題の発生原因を科学的根拠に基づいて分析し、特定することが、当社、お客様双方にとって非常に重要になります。いろいろと考えられる問題の原因を科学的に分析、特定する能力や施設を持ち合わせない当社にとっては、大学や公設試験場との関係構築ができたことで、迅速な科学的な原因究明が可能となりましたし、素早い適切なクレーム対応ができるようになりました。それだけではなく、これらの問題・苦情の事例解決方法は、当然に当社のノウハウとして蓄積して生産現場の仕事にも反映できていますので、当社製品の品質向上、競争力向上に大きく役立っています。

非常に厳しい時代に全社一丸となって自社開発製品づくりに努力され、今日に至っておられることがよく分かりました。それでは次に、御社の円筒深絞り加工技術による製品をご紹介いただけますでしょうか。

野口会長

 当社の製品は、主に自動車部品の電磁弁ケース、乾電池の外ケース、その他センサーケースなど、円筒形状の金属部品となります。缶状になった金属板の側面をしごく「しごき」加工は、高い精度の技術を有しており、薄くて深いものを100分の1ミリ単位で作ることができます。
当社の代表製品のステンレス製「プレス絞り管」をご紹介しますと、お客様の多様なご要望に
 
低価格でお応えするため、レディメイド(RM)、イージーメイド (EM)、オーダーメイド(OM)の3つのメニューを用意しています。レディメイド(RM)は、長さ・外径・板厚を規格化したもので、長さ・外径・板厚の組み合わせは172通りあり、低コストで短期納入可能なものです。イージーメイド(EM)は、標準外形状にも幅広く対応可能な製品で、外径・長さ・板厚を規格化し標準形状と特殊形状オプションを利用することで、ご要望のサイズにぴったり対応できます。しかも標準形状の場合は金型製作費が必要ありません。オーダーメイド(OM)は、金型製作からプレス加工まで、一貫生産体制で提供するもので、開発段階から技術的な検討や提案を行い、低コストでご提供する製品です。
なお、当社では、お客様のニーズに幅広く、しかも素早く対応するため、深絞り専用プレス加工機を自社製作しているほか、量産用プレス設備も能力10トンから400トンまでのものを約100台設置しています。


 

チタノミックス・センサー
「測温抵抗体温度センサー」

チタノミックス・センサー
「サーミスタ温度センサー」

 
現在、御社はステンレス製プレス絞り管を主力製品とされていますが、最近、純チタン製の円筒深絞り管の生産を始められたとお聞きしたのですが、差し付かえなければご紹介いただけますか。
野口会長:  ことの経緯を初めにご説明しますと、当社は、独自にチタンという素材に以前から注目し、いろいろデータ収集などしていましたが、経済産業省中部経済産業局が推進する産業クラスター計画の活動の一環で2003年に東三河地域の企業、大学などが集まって発足した主にチタン素材を研究する「チタノミックス研究会」に参画して、その活動の一環でチタンケースを使ったセンサーの開発を進めたことが具体化の始まりでした。この活動で開発した『チタノミックス・センサー』というのは、プレス深絞り加工技術で作った純チタン製の筒をセンサー保護管として活用したもので、チタン材の高耐食性、非磁性、軽量性、生体適合性、高比強度性などの特性と当社の薄肉加工技術により、海洋プラントや化学プラント、原子力発電所などの現場や航空機関係などで、温度センサーや熱電対センサーとしての需要が見込まれ
  るものです。当社では、この『チタノミックス・センサー』を少量生産型のセンサーとして1個からでもお客様の受注に応えられるようにしています。


 

御社は、「チタノミックス研究会」に参画されてチタンという素材に挑戦して、見事に『チタノミックス・センサー』を開発されたわけですが、チタン製品や同研究会の活動の今後についてどのようにお考えでしょうか。
野口会長:  当社は、「チタノミックス研究会」の2つある分科会の一つ「加工技術分科会」に属して、チタンケースを使ったセンサーやチタンアート製品の開発・市場化に取り組んでいます。そもそも、チタン合金さらには純チタンという素材は、非常に高価格素材で、チタンを扱うビジネスは、市場では非常にニッチな市場だと私は思っています。しかし、チタノミックス研究会が、『チタノミックス』を商標登録して、チタン関連産業が東三河地域の地場産業となるように地域の企業、大学、会議所等が一体となって取り組んでいこうという考えに大いに共感し、現在積極的に活動に参画しています。  


本社入口に設置された
チタンアートの「鬼曼陀羅(おにまんだら)」

 

 

 

   また、私の個人的な考えですが、チタン製品分野というニッチな分野への挑戦は大企業にはできない、隠れた技術を持つ中小企業こそが挑戦者として最適だと思っていますので、これからもチタノミックス研究会活動を発展させていきたいと思っています。
今後、『チタノミックス』ブランド製品づくりとその市場化を成功させるためには、鯖江のチタンメガネフレームや兵庫の生体関連製品など我が国で既に先行し、商品化されているチタン製品用途以外での新しいチタン製品の用途開発が一番のポイントだと思っています。どなたか何かチタン素材の使い道、用途などについてアイデアをお持ちであれば、是非同研究会事務局の豊橋商工会議所なり、当社なりに御連絡いただければ幸いに思います。

 


加藤昌一新社長(右側中央)による
(株)野口製作所の将来ビジョンの説明


現場における製品の作り込み・品質保証
には欠かせないQAステーション

 
御社をはじめ、チタノミックス研究会活動に参画されておられる関係の皆さんの積極的な活動によって、『チタノミックス』ブランドがより広範に認知されるとともに、東三河地域の地場産業の一つとしてチタン加工産業が早く形成されますことをご祈念申し上げます。 最後になりますが、御社の今後のビジョンについて、お聞かせいただけますでしょうか。
加藤社長:
 この4月1日付けで社長に就任したばかりですが、前職で培った知識、経験などを活かして、当社のさらなる発展に注力していきたいと考えています。
製品別に今後についてお話ししますと、まず、当社の現主力製品であるステンレスのプレス絞り管については、他社と比べても非常に高精度・高品質で、価格競争力もあります。そこで、今後は、まず欧米などの海外も視野に入れた販路拡大を図っていきたいと考えています。当社の高品質・低価格の製品は、必ずや海外の多くのお客様からもご利用いただけると確信しています。特に、ステンレスプレス絞り管は、勘・コツ・経験(3K技術)に頼りがちな“職人技的金型技術”を様々な実験や検証により数値・データ化し、蓄積したデータの分析を積み重ねて製造していますので、当社について良く知らないお客様でも安心して使っていただけるものと思っています。
次に、「チタノミックス・センサー」などのチタン素材製品については、コストの面からもまだある程度数量が出るまでに時間がかかると思いますが、当社としても、今後どのようなことに取り組んでいけば良いかというアイデアはたくさ
 

ん用意していますので、先行き心配はしていません。従来からチタン製部品の需要が見込まれる航空宇宙、医療、海洋、化学なども日進月歩で技術が進歩していますから、これまでとは異なる形で、チタン素材が求められる可能性があると見ています。ですから、時代の流れも考慮に入れながら、具体的な使い道を鋭意検討していきたいと考えています。
最後に、当社では、18年度の経済産業省中部経済産業局の戦略的基盤技術高度化支援事業を活用して、難加工材の高精度金属プレス加工技術に関する研究開発に取り組んでいます。これは、当社の“深絞り”や“しごき”加工技術を生かしてレーザープリンター金属ロールの高機能化などを図るものです。この取り組みを成功させれば、新たな応用への道も開けてくるのではないかと考えています。
今後も、当社では、新たなアイデアを提案し挑戦していきたいと考えていますので、皆様のご支援をよろしくお願いします。




本日はお忙しいところ色々とお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。御社の今後益々の御発展と皆様の御活躍をお祈り申し上げます。


      
会 社 概 要

会社名: 株式会社野口製作所
本 社: 愛知県豊橋市西幸町字東脇202番地
  設 立:   昭和33年3月
代表者: 代表取締役社長 加藤昌一
  事業内容: 金属プレス加工及び金型製作
  資本金:   1200万円
  従業員:   159名
  URL:   http://www.noguchi-ss.com/
  TEL:   0532−45−1151
FAX:   0532−45−1153



野口 真司 会長


加藤 昌一 社長


                                          取材:平成19年 4月6日 総務課 情報公開・広報室

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