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中部発きらり企業紹介 Vol.19

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  三惠工業株式会社


〜環境保全、社会生活、空間の創造に貢献するイスの加工・販売メーカー〜
 

 今回は、経済産業省が進める「モノ作り現場におけるエコデザインの推進」を検討するモノ作りエコデザイン推進会議のメンバーであり、日々、環境保全、社会生活、空間の創造に貢献する“イス(椅子)”づくりに取り組まれる三惠工業株式会社(三重県鈴鹿市)の岡田信春社長と大森久男専務にお話を伺いました。
 
 


岡田社長:

 はじめに、御社の創業から現在までの沿革について簡単にご紹介いただけますでしょうか。

 
当社は、亡くなった先代である私の父親が昭和26年に名古屋市中川区笈瀬町に株式会社三惠ブレーキ製作所を設立したのが始まりです。当初は鋼製家具全般の製造と販売をしていました。その後昭和40年頃からイスの製造販売に特化しはじめ、現在の“イスのサンケイ”になりました。
  当社は、生産・販売を含めたすべての機能をここ鈴鹿の本社に集中させています。以前は会社
 


三恵工業株式会社

  の規模の拡大とともに営業所も東京、大阪、福岡など全国に幾つか設けていましたが、鈴鹿に機能集中するため全国の営業所もすべて閉鎖しました。鈴鹿に全機能を集中させたのは現在のようなOEM供給を主体とする経営に変えていくためのものです。
 ちなみに、なぜ鈴鹿の地に本社を移したかと言いますと、父親が鈴鹿出身で、鈴鹿の知り合いの方から鈴鹿に工場を移して来ないかと誘われ、昭和37年に最初の工場を建設したのがきっかけです。
 
 

 話は変わりますが、岡田社長ご自身が御社に入社されたのはいつ頃のことでしょうか。

岡田
社長:
 
 私は、昭和49年、23歳の時、株式会社サンケイに入社し、半年後東京営業所に配属されました。ただ、今思えば技術者であった先代社長は昭和56年に会長に退いてからは代わって社長に就任した私に営業の一切を任せ、本人は生産現場に入って技術者を鍛えつつモノ作りに没頭していましたから、初めから私が入社したら営業の仕事を全部任せようと考えていたように思います。ちなみに現在当社の技術部門を背負っている大森専務や技術部長らは先代社長から直接指南された社員です。

 



 

 御社では当時営業機能も鈴鹿本社に集約するため東京営業所など全国の営業拠点を閉鎖されたということですが、そうしますと御社の製品はその後どのような方法で販売されたのでしょうか。
岡田社長:
 
 現在、自社ブランド製品もわずかですが製造販売していますが、今当社で作っている製品の大半はOEM品で、内田洋行さんやコクヨさん、岡村製作所さんなどの大手事務機器メーカーに販売しています。
 ご案内のとおり、昔は、小中学校などの学校の近くには必ず文房具屋がありました。しかし、 時代とともにそれらはほとんど無くなって、スーパーなどの大型小売店やコンビニなどに置き換わってきました。こうした文房具などの事務用品をはじめ事務機器などの販売の形態が大きく変わってきたことを受けて、当社も大手事務機器メーカーにOEM供給 する、販売する事業を主体とする経営に切り替えました。こうした経営の変化に伴い広範な営業拠点を整理したわけです。





大森専務:

 何社もの大手事務機器メーカーとOEM取引があるということは、御社の高い製品開発力、技術力、品質に裏打ちされたものだと思いますが、今のそうした御社の高い信頼性はどのようにして築かれたのでしょうか。

 
それは、一つには先代社長のモノ作りに対する情熱・志が社内にしっかりと根付いて、当社が高い技術力や品質を維持できる企業になったからだと思います。
 私自身のことで恐縮ですが、私は本田技研を辞めてデザインの仕事をしている時に、先代社長の モノ作りに対する考え方に惹かれ三惠工業に入り


  先代社長のモノ作りへのこだわりを語る
           大森専務

  ました。先代には、「新しいことに挑戦することの大切さ」と「何でも上を目指す心意気」をたたき込まれました。新工場を建てた際には、「新工場を建てたのだから、自分達の考え方も新しくしろ」と言われたり、TQCをやると決めたら、当時の「名古屋通産局長賞をとれ」と活を入れられたりしました。
 それともう一つは、当社の技術力や品質の向上にとって忘れてならないのは、当社には“たとえ失敗しても再挑戦できる環境”が整えられていることだと思います。新しい試みや取り組みに失敗しても岡田社長は決して怒りません。今までに、どれだけ金型を駄目にしてきたか分かりませんが、それでも、岡田社長は次から次へと可能性のある新しいことに挑戦させてくれます。
 
岡田社長:  新しいことにチャレンジすることというのは、例え失敗しても、次に繋がる何かを得るはずです。ただし、“やっぱり駄目だった”ということは許しません。最初から失敗すると思って挑戦することは認めません。
 それと、私は、日頃から社員に同業他社ではなく他業種の企業の「技」を見て、自らの技を磨けと言っています。以前、本田技研の社員が当社の「ループスタッキングチェア」を見に来たことがありました。世界に名だたる大企業であっても当社のような中小企業の製品づくりに目を向け、徹底した調査を行っていったことに非常に驚かされました。

 
 


 座の部分が人間工学の 視点から作られた
「ループスタッキングチェア」
40脚まで大量収納可能

 




岡田
社長:

 他業種の技、モノ作りを見ることが重要と言われましたが、こうしたことで御社にとってどういった利点、メリットが出てくるのでしょうか。

 一生懸命、同業他社を見ていても、他にはない新しいアイデアはなかなか見つかりません。新しいアイデア、他には無いアイデアを生み出す可能性というのは、自分の得意とする分野よりも自分が知らない分野・業界のほうにあると思います。
 当社のような中小企業では、コストの面から不得意な分野とか他業種の技術を初めから自費を投じて研究するわけにはいきませんから、日頃から社長、幹部だけでなく一般の社員レベルでも積極的に様々な異分野の人達とネットワークを作るようにしています。こうした取り組みからも新たなビジネスチャンスを貰っています。
 少しご紹介しますと、例えば、「みえメディカル研究会」に参加したことで、福祉分野への展開の可能性が見い出せたこととか、さらにはその活動を通じて、三重大学や鈴鹿高専の教授とのネットワークも作ることができました。それから、中部経済産業局の「モノ作りエコデザイン推進会議」に参加していることで、異業種のしかも大手企業である岐阜プラスチック工業さんと知り合う機会も得ましたし、今月19日からポートメッセなごやで開催されるメッセナゴヤ2006「環業見本市」にも出展する機会を得ました。
 当社は、こうした幅広く社外に築いたネットワークによって自社開発製品をOEM供給する自立したメーカーとしての地位を築いたと言っても過言ではないと思っています。
   

 異分野の方々とのネットワーク作りを非常に重要視されていることがよく分かりました。御社は当局主催の「モノ作りエコデザイン推進会議」にも積極的に参加していただいているわけですが、お聞きしているところでは、大分以前から“イス”作りの面で環境配慮活動を実践されておられるようですが、これまでの御社の環境配慮活動について簡単に御紹介いただけますでしょうか。
 
岡田社長:  当社の環境に配慮した製品作りは、1992(平成4)年まで遡ります。当時は、まだ「リサイクル」という言葉も世の中に浸透しておらず、環境に対する世間の意識はまだまだ低いものだったと記憶しています。その92年という年は、リオデジャネイロで“地球温暖化会議”が開催され、世界中が環境問題に目を向けた年でした。世界中で環境が注目され、地球環境の保全のためアメリカでのマスキー法による自動車排ガス規制や、南洋材の丸太の輸出禁止などの措置がとられました。 こうした環境配  

らくらく分解、分別設計
(家庭の工具で簡単に分解、分別可能)

  慮の世界的な動きのためにイスの材料の合板価格も当時いっきに2倍以上に高騰しました。
 当然にこうした動きは当社の経営を圧迫し、危機的な状況にまで当社は陥っていましたので、必死に打開策を考えました。そうした状況で出した結論というのが、経営逼迫の要因でもある“環境”にターゲットをしぼった製品作りをやろうというものでした。つまり“環境”に配慮した製品作りです。
 その年から早速取り組み始めたのが『RE5』というものです。これはReduse(ゴミの減量)、Reuse(商品のロングライフ化)、Recycle(資源のリサイクル活用)の「3R」に、当社独自のRefine(ゴミ分別による再資源化)とRebuy(リサイクル品の積極採用))の2つの『Re』を加えたもので、1995(平成7)年に最初の環境配慮型製品を売り出しました。
   

 

 世界が環境に注目し始めた初期の頃に、世の中の大きな流れを読んで、御社の進むべき方向性をいち早く決断されたわけですね。
 


タイから届いたリサイクル用のイス




海外からリサイクル部品を回収するための
専用コンテナ

  岡田社長:















 




岡田社長:


 




岡田社長:

 そういうことです。 現在、当社は「MY DEAR GLOBE」の理念のもと、“イスに生まれてイスに戻る”、“資源循環型製品”の提案を行っています。21世紀の今日では、「エコ製品だから高い」、「リサイクルだから良いデザインが出せない」という考えは通用しません。「環境」は今日ではその高度化が要求されています。もう少し経つと次なる新たな時代を代表するテーマが登場してくると思います。
  時代を代表するテーマというのは、10年から15年間は時のテーマとして長く注目され続けます。ということは、企業にとっても短期的な流行などに翻弄されることのなく、長期間にわたっての経営のテーマにもなるということです。

 岡田社長の考えておられる“環境”の次の“時代を代表する新しいテーマ”とはいったい何でしょうか。差し支えなければお教え願えますか。

 今後は、高齢者や障害者に関連したテーマ、つまり“福祉”が次の時代的テーマになってくるのではないかと思っています。

 
そうしますと、“福祉”に配慮した製品づくりに向けて既に今後の経営方針などいろいろと考えておられるわけでしょうか。

 もちろん、いろいろと検討しています。たとえば、当社としてそうした製品づくりを進めていくためには、量産できる製品でなくてはいけないので、ユニバーサルデザインの導入など、お年寄りや障害者の方も含めあらゆるユーザーにとって使い易い製品づくりの視点が非常に重要になってくると考えています。
 





岡田社長:
















 








岡田社長:

 御社がこれまでも長年にわたりいろいろなユーザーの求めや環境配慮ついて取り組まれ、応えてきておられることを考えますと、これからはこれまでの実績に加えて、更に“福祉”やユニバーサルデザインにも配慮したイス作りに取り組まれるということになるわけですね

 そういうモノ作りをしていかなければこれからの10年、20年間は生き残っていけないぐらいに思っています。時代とともにイスに求められるニーズは着実に変わってきています。例えば、以前のようにJIS基準にもあった“堅牢な”イスではなく、今は“軽くて持ち運べる”など、座ること意外の要素もイスに求められています。
 もちろん“製造者としての責任”を果たすモノ作りも非常に重要です。例えば、イスは本来人が腰をかけるものですが、実際のイスの使われ方でよくあるのが踏み台としての利用です。これを踏まえれば座面はもちろん肘掛部分を足場に使っても壊れないようなモノ作りをしなければ駄目ですし、折りたたみイスであれば、折りたたむ際に指を挟まないようなイスでなければなりません。
  お客様に安心して使っていただけなければ真にお客様に求められるメーカーにはなれないと思います。大変ですがやりがいのあることだと思っています。


 
御社の安全で高機能、高品質なイスづくりと御社の高い信頼性は、社員一人一人のイス作り、モノ作りへの情熱によって支えられた長年の実績によって生み出されているわけですね。 こうした情熱をもった社員を育てていくことは御社にとって不可欠のことと思います。この点岡田社長の人材育成に関してのお考えをお聞かせいただけますでしょうか

 先代社長の親父が今のわが社の技術部門を支える大森専務や大杉部長を育て上げたように、私としても当社の次代を担う強い志と強い気持ち、高い技術力を持った技術者を育て上げたいと思っています。
 少し具体的にお話しますと、志や考え方のトレーニングは、日常業務の中でOJTでやっていますが、体系的な技術論の習得は、中小企業大学校の研修を活用しています。それから、わが社に特徴的なことだと思いますが、大手事務機器メーカーとのOEMの共同開発の打ち合わせなどの現場に若い社員を機会多く参加させています。こうした機会が若手社員の専門知識を高めてくれますし、結果的に当社の製品開発レベルの向上にも繋がります。
  いずれにしても、時代を象徴する“環境”のようなテーマが15年あるいは20年と長いスパンで続くように、当社の次代を担う社員も小細工をせず、じっくりと育て上げていきたいと考えています。

指をはさまない工夫がなされた
フラット収納チェア


折りたたむとパイプ一本分の厚さ



積み重ねてもコンパクト

 
 

 最後に、これからの御社のビジョンといいますか、経営のあり方について簡単にまとめていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
岡田社長:  私 達の目標は、皆さんから“イス”と言えば「サンケイ」と言われる会社になることです。そのためには、やはり、社員一人一人がイスをただ座るだけのものと捉えるのではなく、環境保全、社会生活、空間の創造に貢献するものとして捉え、その気持ちでイス作りをしていくことが不可欠だと考えています。そうした強い志とともに、高い技術力を持った人材を育てていくことが当社の将来にとって非常に重要だと思っていますので、これらの点を見据えた経営をこれからも続けていきたいと思っています。
   

 

 本日はお忙しいところ色々とお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。貴社の今後ますますの御発展と皆様の御活躍をお祈り申し上げます。
      会 社 概 要
会社名: 三惠工業株式会社
本 社: 三重県鈴鹿市上野町字助町48番地
  設 立:   昭和26年8月
代表者: 代表取締役社長 岡田信春
  事業内容: 金属家具(折りたたみイス、食堂用、会議用、他各種イス、テーブル類)の製造
 
  資本金:   5000万円
  従業員:   75名
  URL:   http://www.isu-sankei.co.jp/index.html
  TEL:   059−378−1243
FAX:   059−378−3718



岡田 信春 社長

                          
        取材:平成18年10月6日 総務課 情報公開・広報室 
 



 中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

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