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中部発きらり企業紹介 Vol.18

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             株式会社ナノシーズ
 

〜微小粒子測定をコア技術に持つ産総研発ベンチャー〜
 

今回は、経済産業省の『中小企業新事業活動支援補助金(中小企業・ベンチャー挑戦支援事業のうち実用化研究開発事業)』を平成18年度に活用して、軟らかい顆粒の強度や微小粒子の凝集力を測定する装置の製品開発に取り組まれている独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)発のベンチャー企業、株式会社ナノシーズ(名古屋市守山区)の島田泰拓社長にお話を伺いました。
 

 




島田社長:

 御社は平成17年6月に産総研の技術移転ベンチャー企業として創業されたとお聞きしておりますが、最初にまず起業された経緯、きっかけなどについてお話しいただけますでしょうか。
 

私は、今は微小粒子の付着力測定装置の研究開発をしていますが、実はそれ以前は名城大学大学院薬学研究科で主に医薬品の基となるミクロン単位の粉の物性分析の研究をしていました。錠剤や粉薬にしても元はものすごく細かな粒子でできていて、胃腸薬なら上手く胃や腸で溶けるような性質を持った粒子で作らなければいけないわけで、薬学の世界でも微小な粒子の性質や状態を知ること、研究することというのはものすごく重要なテーマなんです。

そんな研究を大学院でしていた当時、世間一般では微小粒子の付着力を測定する研究などしている人は大学でも企業でもほとんどいなくて、私のところに大手製薬会社から畑違いの自動車メーカーや電機製品メーカーから微少粒子の付着力測定の作業依頼が殺到したんです。

実はこの時に、微小粒子の付着力などの性質を測定する研究や技術に対する社会的ニーズというものが、ものすごく大きいもので、将来的にもこの研究開発に専念してみる価値は充分あると私自身思ったわけです。こういった大学院時代の経験が、今の道に進むきっかけになったと思います。

 

 


(株)ナノシーズ研究開発室が入る
産総研中部産学官連携研究棟


各種測定装置が並ぶ研究開発室

 



島田社長:
 大学院修了後、直ぐに潟iノシーズを立ち上げられたのでしょうか。
 

いいえ。大学を離れた後は粒子の測定装置メーカーに就職してそこで関連の研究開発を目指しました。しかし、微粒子付着力の測定などをもっと深く研究してみたくなって、次ぎに産総研に移りました。最初にお世話になった岡田精工鰍ウんとはその後もいろいろとお世話になり、今は仕事上の大切なパートナーになってもらっています。その後、平成17年6月に産総研はじめ関係の皆様のご支援もあってお陰様で今の潟iノシーズを設立することができ、この産総研中部の産学官連携研究棟に入ることができました。

 


トナーの粉が紙に転写されるまでを、
実際にプリンターを使って分かりやすく説明


トナーの粉の付着力の強弱により、
粉が液体のように変化
 




島田社長:

 大学時代から研究されてこられた微小粒子の測定技術などをコア技術として創業されということですが、実際創業されてからのお仕事の状況はいかがですか。

お陰様で、大手電機メーカー、製薬メーカーなどからたくさんの仕事をいただき、毎日忙しく動き回っています。先程の大学院時代の話しのなかで触れましたように、当社の技術や製品は、微小粒子の付着力・凝集力などの測定分析を行うという非常にニッチな分野のもので、技術レベルも非常に難易度の高い分野のものです。当社はその意味で強い競争力を持っています。

ご存知のようにカーボンナノチューブを例として、世の中が“ナノ”の世界に注目するようになって、ミクロン単位、ナノ単位での品質が昨今急速に求められるようになったことが当社の成功の背景にあると思います。
 



島田社長:
 

 差し支えなければ、御社の事業についてもう少し具体的にお教えいただけますか。
 

現在、当社への仕事の依頼というのは、大部分が大手電機メーカーの業務用プリンターや印刷機のトナーの粒子の付着力などの測定に関するものとなっています。そのほか各製薬メーカーからの医薬品の粒子の強度などの測定の仕事も行っています。

 



 

島田社長:

 業務用プリンターなどのトナーと医薬品を組成する粒子の測定というのは、随分、分野が異なる世界のことのように思えますが・・・。
 

確かに産業としては全然違う分野の仕事になりますが、いずれも“粉”“微粒子”という点では同じ分野、同じ物を対象にした仕事になります。

文字や写真が綺麗にプリントされたり、コピーできることというのは、実は、トナーの粉の粒子の性質と大きく関係しているんです。印刷したものがにじんだり、トナーで汚れたり、色が薄かったりという経験があると思いますが、これは、トナーの粉の付着力や凝集力などの性質を精密に制御できていない、つまりコピー機などの感光部の性能にマッチした粒子でトナーが作られていないために起こっているわけです。もちろん感光部部品の劣化に起因するケースもありますが、いずれにしてもトナーの粒子の特性がよく判っていないことも重要な要因になっているんです。

 



 

島田社長:

 
 確かに、コピー機が紙詰まりで故障したとき、取り除いたコピー紙などはトナーがにじんだりして汚れています。
 

今のプリンターやコピー機などのトナーは以前のものに比べて品質が向上し、綺麗にコピーができるようになっていますが、実は驚くことに、今でもプリンターなどのメーカーの開発現場では技術者が何万回にも及ぶ試し刷りをして、それに技術者の職人的“勘”などを加えて、中から一番相性の良い部品類とトナーを選び出して、それらを組み合わせるという方法で新製品を作っているんです。
 
これでは、メーカーも大きなコストと労力が掛かって堪ったものではないわけです。そこで、微粒子レベルの測定能力を持っている当社の粒子間付着力測定装置(PAF−300N)を使えば、メーカーは科学的数値で裏付けられた信頼性の確保と大幅なコストダウンの実現が可能となるわけです

 






島田社長:

 普段、何気なく仕事で使うプリンターやコピー機のトナーで、マイクロ、ナノレベルでの測定値がこれほど重要であるとは驚きました。
ところで、御社の測定技術について簡単に教えていただけますでしょうか。
 

粒子間の付着力を測定する最も一般的な方法としては“遠心分離法”があります。この方法は名のとおり遠心力を使ったものですが、これでは一定の付着力を持つ粒子までしか測定できませんし、手順が非常に複雑です。その他に1μm程度の微粒子でも付着力を測定できる方法もありますが、非常にコストや時間がかかるし、高い操作技術を必要としますので、一般に普及していません。

一方、当社が開発販売している微小粒子間付着力測定装置(PAF−300N)は、5μm以上の粒子になりますが、その付着力を正確に、かつ簡単操作で直接測定できるという優れものなんです。

それから、今年度経産省から補助金支援をいただき、今製品開発を進めている測定装置は、軟らかい顆粒の粒子強度を短い時間で簡単測定でき、加えて微小粒子凝縮力も併せて測定できるというさらに優れた装置で、かつ同レベルの他社製品の半分ほどの価格で販売できるものになります。

 

 


遠心法による付着力測定装置





島田
社長:

 なぜ小さな創業1年2か月のベンチャー企業に大手製薬会社とか大手電機メーカーからたくさんの仕事が舞い込んでくるんでしょうか。単に御社の技術力が優れているという理由だけなんでしょうか。

 そうですね。たぶん、私自身が薬学の世界で医薬品の粒子研究をしてきた人間であること、つまり、少
  しの誤差、過ちが人の生命に係わる医薬品の世界で過ごしてきた人間であることも、当社の信頼性、信用力の高さにプラスになっているかもしれません。それと、私の“モノ作りへのこだわり”も関係しているかもしれません。
 中学時代のことですが、地元岐阜県各務原の日本宇宙少年団でのロケット製作に参加して、全長1.5メートルほどの上空2kmの地点まで十数秒で到達する非常に高性能なロケットの制御センサーの製作を当時中学生だった私が担当して製作しました。打ち上げのためフランスにも行き、2基のうち1基の打ち上げを成功させたことを今でもよく覚えています。高校時代も化学部に所属していましたし、こうした若い頃を振り返ると私のモノ作りへのこだわりは結構早くから持っているようです。
 









 




島田
社長:
 

 

 本日いろいろとお話をお聞きするにあたって事前に御社について勉強をしてまいりましたが、御社に関するいろいろな資料、データを見てもどこにも“特許”の文字が見当たらなかったのですが、御社の高い技術力、製品に関する発明について特許は取られていないのでしょうか。
 

実は、当社はお客様に対しては弊社の技術情報については公開しています。 弊社の特許がお客様の特許の障害にもなるため、あまり特許は積極的に取得していません。 私は、お客様から技術的な質問などがあれば、隠さずアドバイスや新しいアイデアを提案しています。そうすることによって、私の方はお客様の様々なニーズや新たな考え・アイデアを教えてもらうという好循環を生み出しています。それもあってか当社にはリピーターのお客様がたくさんいらっしゃいます。 それから、特許を取らない理由ですが、当社の測定装置は特殊なノウハウで製造された部品や装置の組み合わせでできていること、それと心臓部分となる制御ソフトは粉体工学とシステム制御のノウハウなどが複雑に絡み合ってできているもので、簡単に真似できるのもでないからです。

 


モニターで確認できる接触針を用いた
付着力の直接測定法

微小粒子間付着力測定装置
RAF−300N







 

島田社長:









 




島田
社長:

 今年度私ども経産省の補助金支援で研究開発されている新測定装置も顆粒、粒子に関する測定装置なわけですが、御社の高度な測定技術であれば、粒子、粉、顆粒という固体の世界だけではなく、液体の粒子の世界も非常に将来性のある分野ではと素人考えで思うのですが、その点いかがでしょうか。
 

そうですね、塗装や住宅・建築関係などにも確かに需要はあると思います。例えば、細かな液体の粒子を飛ばす塗装はまさしく関係すると思いますし、ハウスダストやホルムアルデヒドなどの皮膚、粘膜への付着力などを測定することで色々なシックハウス症候群などのアレルギーなどの問題の解決のお役に立てる可能性はあると思います。
 


 御社が手がけられている技術の国内での需要の多さについてはよく理解できました。ところで、海外では微小粒子の研究開発は進んでいるのでしょうか。
 

海外でもほとんど日本と同様の状況です。ですから、欧米などからもたくさんの引き合いが当社に来ます。ですが国内のニーズにも充分に答えられないほ

  忙しくしている状況ですので、今はまずは日本国内で認められることを意識して仕事をしています。

特にご当地ナゴヤは手堅い経営どころで、モノ作りの盛んな土地ということもあってか当社のような新興の小さなメーカーは簡単には認めてもらえません。このナゴヤで成功すればどこでも成功するんだという思いで頑張っている状況です。
 海外の話が出たのでお話ししますが、巷では“中国が安い人件費で安いモノを作りとてもかなわない”とか“いつかは中国に追い越される”などの心配する声が聞かれますが、良いモノ、高品質、高精度のモノ作りの力を日本の中小企業は本当に持っていると思っています。当社の製品も新しい技術だけでなく、日本にある中小企業の技術に強く依存しています。

具体的には当社の主力製品である前述のPAF−300Nという装置のコアな部品である針先10ミクロンの接触針は、とある町工場でしか作れないもので、大企業でもコストが高すぎて作れないモノです。


 


 なるほど新技術と職人技術の融合が生んだ製品な訳ですね。ところでこれまで色々なお話をお伺いしてきましが、御社は現在全ての引き合いに答えられないほどに多忙で、御社が今後のさらに成長していく上での心配な点というのはあるのでしょうか。
 
島田社長:

大きな課題があります。実は、私と同じレベルとは言いませんが、粉体工学の一定以上の知識と機械工学的素養と営業センスのある若い人材を探しているのですが、なかなか見つからなくて困っています。仕事が増えてきて、私一人では肉体的にも精神的にも負担が大きくなってきているので、何とかしたいんです。現在測定分析結果を取りまとめてくれている女性社員1名とパートさん3名でやり繰りしていて、こなせる量にも限界があり、依頼があってもお客様を待たせることになってしまっています。これは大変な機会損失であり、受託測定会社としては将来的には致命的な問題だと思います。


 

 


粉体層せん断力測定装置 NS-S200



 

島田社長:

 確かに、仕事の依頼がたくさんあっても、人がいないために断らなければいけないというのは大きな問題ですね。そうしますと、島田社長の今後の経営ビジョンの中では“人材の確保”というのが最重要テーマということになるのでしょうか。
 

今のところ、やはり“人材確保”が重要な経営課題だと思っています。今のように対外的な仕事の全てを私一人でこなしている状態を少しでも早く解消することが、結局順調な当社の成長に繋がっていくのだと思っていますし、もちろん社員のため、私自身のためにも必要なことだと思っています。

この取材記事をご覧になられた方で、粉体工学の分野に明るく、やる気のある快活な若い方を求めておりますので、当社に関心を持たれた学生の方、若い技術者の方、是非一度当社のホームページを覗いてみてください。


 


 

 本日はお忙しいところ色々なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。今後ますますの御活躍と御発展をお祈り申し上げます。

      
会 社 概 要

会社名: 株式会社ナノシーズ
本 社: 岐阜県各務原市那加巾下町6番地
  研究開発室:   名古屋市守山区下志段味穴が洞2266−99
(独)産業技術総合研究所内 中部産学官連携研究棟3F
設 立:   平成17年6月
代表者: 代表取締役社長 島田泰拓
  事業内容: 微小粒子間付着力の受託測定、微小破壊力の受託測定、粉体の帯電(静電気力)に関する受託評価、付着力に関するコンサルティング、受託研究オーダーメイド測定装置の製作
  資本金:   3400万円
  従業員:   5名
  URL:   http://www.nanoseeds.co.jp
  TEL:   052−736−8417
FAX:   052−736−8435



島田 泰拓 社長

                              
        取材:平成18年9月4日 総務課 情報公開・広報室 
 



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