HOME > 中部発きらり企業紹介
 
中部発きらり企業紹介 Vol.16

    バックナンバー

飛騨フォレスト株式会社

第1回「ものづくり日本大賞」優秀賞受賞
〜間伐材を活用した健康ひのき畳の開発商品化〜

今回は、昨年8月に政府主催の第1回「ものづくり日本大賞」において優秀賞を受賞した飛騨フォレスト株式会社(岐阜県下呂市)の今井實郎社長にお話を伺いました。

 





今井社長:

 昨年度の「第1回ものづくり日本大賞優秀賞」の受賞おめでとうございます。はじめに今回の受賞について感想をお聞かせいただけますでしょうか。

 
今回、「健康ひのき畳」という最先端の代物でもないけれども、これまでにない新しい畳を開発・製造した私が、モノ作りや伝統の技を支える人材を表彰する「ものづくり日本大賞」の第1回目に選ばれたことで、長年悩みながらも信じて取組み続けてきたことが認められ、本当に嬉しく思っています。特に、私どものような中小・零細企業でも、一生懸命頑張れば、大企業と同じように国からモノ作りに貢献している者として表彰して頂けるということに大変感激しております。
 
 


飛騨フォレスト株式会社
 

   

 

 今井社長が開発された間伐材を活用した「健康ひのき畳」の良さは、どのような点でしょうか。
 
今井社長:  従来、畳はワラでできた畳床で作られていましたが、国内の農業の衰退などでワラが調達できなくなり現在の化学建材の畳床が主流になりました。しかし、化学物質を使ったクッション材などは、シックハウスやアレルギーを引き起こす原因になり、環境面や健康面でも問題があります。一方、100%天然素材の檜を使った「健康ひのき畳」は、檜の持つ特性により、湿度調節効果、森林浴効果、消臭効果、ダニなどを寄せ付けない防虫効果など人間に優しい機能がたくさんあります。もともと檜は日本の風土で育った木ですし、日本の風土、日本人の生活に合った素材だと思います。こうした特性を持つ檜を畳床に使っている点が一番の良さだと思います。
 



健康ひのき畳の断面

 

 




今井社長:

  畳の床材、クッション材に檜を使おうというのはなかなか発想できないと思いますが、どのようなことをきっかけにこの商品を開発されたのでしょうか。

 
私は、この緑豊かな飛騨の土地に生まれ、育ちました。ですから昭和33年に学校を出て最初に就いた仕事も当時この山間地では主要な産業だった農林業の仕事です。この萩原地域というのは昔から木曾 檜と並ぶ檜や杉の産地として有名な土地で、林業に従事する者であれば当然知っていることですが、良い材木を作るために間伐作業が昔から回りの山で行われていたわけです。今でも間伐は行われていますので今も大量の間伐材が出ています。
  ところが、私が農林業に関わっていた当時から間伐材の有効利用に決め手を欠いていて、全国的に間伐材の活用研究が行われてもなかなか良い活用方法が見つからない状況でした。私自身も檜や杉の間伐材が有効に使われずにいるのを目の当たりにしていましたから大変もったいないので、当時から何とかしたいと考えていました。 その後昭和49年、35歳頃ですが地元で事務用品などを販売する商売を新しく始めました。その後ドア、扉などの建材の下請け加工の仕事も始めましたが、そんなある時、大工さんが鉋がけするのを側で見る機会があってその時見た薄い鉋屑が実に見事で、良い香りはするし、引っ張っても簡単にはちぎれないので、これは何かに使えるのではとその時思ったわけです。建材加工の仕事もしていたこともあって、この鉋屑が使える建材はないかと考えたところ、ふと思い付いたのが「畳」だったわけです。ただ、その後の商品開発には、大変苦労もしましたし時間もだいぶかかりました。平成元年頃から開発をスタートして飛騨フォレスト株式会社を設立する平成7年までかかりました。
なぜこうまでして「健康ひのき畳」の開発に多くの時間、労力、資金をつぎ込んだのか。建材加工の下請の仕事で下請け企業経営の難しさを経験したことがひとつ理由としてあげられると思います。この経験から親企業に左右されない自前の製品を何が何でも作りたい、どうせなら岐阜県飛騨を世界に発信するような、オンリーワンの自社製品を作りたいという私自身の思いが強まったことも、今にして思えば「健康ひのき畳」の開発動機であり、長期間の苦労にも耐えられた理由のひとつだと思っています。
   




今井社長:

 檜の鉋屑からヒントを得て実際の製品開発に取りかかられたということですが、一体どのようにして檜の持っている健康に良い機能を生かしつつ、程よいクッション性が必要な畳床を檜で作るのですか。

 
作りたい自社製品は檜を使った製品で、健康面、環境面で価値のあるものにする考えでしたので、製品開発当初から接着剤などの化学物質は一切使わずに、檜の良さ、特性を最大限に生かす、引き出す加工方法の開発が決め手になると考えその研究に没頭したわけです。長年の苦労の甲斐あって開発した方法が檜のスライス木片を“縫製により形状固定する”というものです。製造装置も自社開発したもので、特許も取得しました。
 
 


健康ひのき畳の製造装置


 

 



社内には2つの製造ラインを整備

 



今井社長:

 ところで、「健康ひのき畳」の売れ行きやユーザーの反応はいかがですか。

 お陰様で、現在、ハウスメーカーやインターネットを通じて製品販売をしておりますが、“サライ”などの雑誌でも取り上げられ、たくさんのお客様に購入していただいています。
売り上げも少しずつ増えてきていますが、私はいくら良いものであっても、市場の適切なプライスゾーンに製品価格がなければ、その製品は一定以上売れないという考えでいます。そこで今、積極的に進めているのが、高額なものから少し無理すれば手が出る価格帯のものまで幅広い製品づくりです。具体的にはアイテム
  数や値段のバリュエーションを増やし、お客様の多様な好み、選択にかなうような商品開発です。
 このためには、まだまだ、コストを下げる必要もありますし、アイテム数を増やす上では天然素材を扱う事業者、企業とのコラボレーションが重要だと思っています。自分一人でやるだけではなく、他者との連携という発想がますます必要になってくるのではないでしょうか。
   

 他者とのコラボレーションが必要ということですが、現在具体的に取り組まれている事業はありますか。
 
今井社長:

はい、あります。それは「森林ひのきシート」というものです。このシートは綿製の非常に薄いシートで檜のスライス片を薄く包み込んだもので、一般の畳の畳表と畳床との間に挟み込み檜効果を発揮するという使われ方になります。檜のスライス片の量を変えることでシートの厚みを変えられ、それにより用途も広がるというものです。
薄くスライスして、そのスライスチップをニードルパンチ製法でシート化したものです。このシートの製造段階で、当社と地元のニードルパンチ機械を持つ企業と、スライスした檜を覆う綿を扱う企業の3者がコラボレーションしています。 それから、このシートの将来性、可能性にいち早く目を掛けてくれた九州の大手

 

来客との打ち合わせも健康ひのき畳の上で
 

  畳ふすま業者と連携して、畳の需要が多い九州地方への販売も順調に進みつつあります。
そもそも、檜のスライス片で作るクッション性のある柔らかいボードは「芯材」として使われるので、それを覆う天然素材を変えればそのコラボレーションは幾通りも考えられます。さらには、できあがった幾種類もの「森林ひのきシート」を椅子などの様々な生活用品や建築材と組み合わせれば、「森林ひのきシート」を使った製品の数も無限大に広がります。この「森林ひのきシート」は特許申請もしており、将来的には、全国の間伐材の有効な活用策の一つとして多くの方に利用していただけるものと思っています。
 
   

 

 御社は、今井社長ご自身の並々ならぬこれまでの努力によりオンリーワンの自社製品の開発に成功され、今日に至っておられるわけですが、同じように自社製品づくりを目指す中小、零細企業やベンチャー企業に対してアドバイスなどありましたらお願いします。
 




あらゆる商品とのコラボレーションの可能性を秘めた「森林ひのきシート」
 

 
今井社長:

 
「健康ひのき畳」の研究開発に着手した初期の頃は周囲から絶対できないと散々言われていましたので、長い年月と多額の資金、労力をかけてしまったことはもちろんですし、家族にも大分心配、苦労をかけました。何度もなぜこんなことを始めてしまったのかと、死にたいほど悩んだことも度々ありましたが、自社製品作り、モノ作りへの強く熱い思い、絶対に成功するんだという強い信念、それと周囲の人達の温かい支えがあったからこそ、コンセプトどおりの自社製品を見事開発することができたんだと私は思っています。
 これらは、何か新しい、誰もまだ作ったことのない新製品の開発を目指し、それを成し
  遂げるためには一番必要、重要なことだと思います。それから、国や県などの行政機関の支援策である、「岐阜県オリベブランド」認定、「エコマーク商品」認定、「Gマーク商品」認定、今回受賞した「日本ものづくり大賞」などは私ども中小企業が世の中に広く打って出る際に必要な“お墨付き”を与えてくれるとともに、認定を受け、賞をもらうことは、何よりこれまで苦労しつつも頑張ってやってきたことが間違いではなかったと周囲が認めてくれたことになると思うので、新商品開発などに苦しくとも頑張り続けるには大変重要なものだと思います。

 

 最後に、御社の今後の事業・経営ビジョンについて教えていただけますでしょうか。
今井社長:

実は、当社の「森林ひのきシート」が、先日下呂市内の会場で行われた第57回全国植樹祭のメインステージ上で天皇皇后両陛下がお座りになった椅子に使われました。実はこれも飛騨の伝統家具業者と当社とのコラボレーションで実現したもので、関係者の皆さんから好評をいただきました。今回岐阜県内で全国植樹祭が催されるという話を聞きつけ、是非岐阜の森林から生まれる優れた素材を使って何かできないかと考え、それで思い浮かんだアイデアを飛騨の伝統家具業者さんに私が持ちかけで実現した取り組みです。両社が岐阜の天然木で作る椅子を全国植樹祭のメインステージ上の両陛下用の椅子として使用してはどうかと岐阜県庁にプロデュースしたわけです。
 この経験は私の大変大きな自信となりましたし、地元である下呂市萩原地域の発展への思い、期待もより一層強いものとなりました。当社としましては、今後も飛騨の森の恵みを存分に活用して、企業の儲けの追求だけではなく地域と共に生きるという姿勢で、飛騨の

 


第57回全国植樹際メインステージで
天皇皇后両陛下がお座りになった椅子

  名前を全国にもっと売り出せるように努力したいと思います。特にこれからは、ますます環境、健康、安心などが求められる世の中になると思いますので、飛騨地域の製品は、それらのニーズを満足させる可能性をまだまだたくさん秘めていると思います。私個人としましても僭越ですが、自ら取り組む企業活動により、飛騨地域における新産業創出あるいは雇用の創出、さらには地域の活性化に少しでも貢献できることが一番の喜びと思っていますので、今後とも次の世代に引き継ぐまで頑張り続けたいと思っております。
   

 

本日はお忙しいところありがとうございました。今後の御活躍を祈念申し上げます。
      会 社 概 要
会社名: 飛騨フォレスト株式会社
本 社: 岐阜県下呂市萩原町古関248−2
  設 立:   1995年
代表者: 代表取締役社長 今井 實郎
  事業内容: 健康ひのき畳・畳ベッドの製造・販売
  資本金:   1000万円
  従業員:   5名
  URL:   http://www.hida-f.co.jp/
  TEL:   0576−52−4460
FAX:   0576−52−3956



今井 實郎 社長

 

                              第1回「ものづくり日本大賞」に関するプレスリリース資料
(平成17年8月)
        取材:平成18年7月7日 総務課 情報公開・広報室 
 



 中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

〒460-8510 愛知県名古屋市中区三の丸2-5-2

TEL:052-951-0535 FAX:052-962-0557 E-mail:
chb-ikenbako@meti.go.jp



著作権:中部経済産業局