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中部発きらり企業紹介 Vol.15

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鍋屋バイテック株式会社

第1回「ものづくり日本大賞」優秀賞受賞
〜Vプーリの多種要るだけ微量生産を実現した、ゆったり自働加工設備の開発とコスト削減〜
 

今回は、昨年8月に政府主催の第1回「ものづくり日本大賞」において優秀賞を受賞した鍋屋バイテック株式会社(岐阜県関市)の岡本太一社長にお話を伺いました。今回、『関工園(せきこうえん)』と呼ばれている関市の本社工場にお邪魔しました。そこは、豊かな緑に囲まれた55,000坪の広くゆったりとした敷地の中に洒落た雰囲気の、地域にも開放されている円形音楽ホールやプールが設けられた“工場公園”で、とても鋳物屋さんとは思えないところです。コンクリート打ち放しの、落ち着いたデザインの事務棟で出迎えていただきました。

 





岡本社長:

 「ものづくり日本大賞」優秀賞の受賞、おめでとうございます。今回、御社の6人の社員の皆さんが表彰されましたが、今回の受賞について岡本社長ご自身の感想をお聞かせいただけますか。

 ご案内のとおり、プーリというのは、ベルトを掛ける溝のついた滑車のことで、モータやエンジンなどの動力を機械設備に伝えるための部品です。プーリは、鋳物材料を切削加工して作りますが、従来は、基準となる面、反対側の面、V溝部の3つの工程を3台の機械で加工していました。しかし、加工するプーリの種類を変えるたびに3台の機械の段取りや調整を行う必要があり、それだけで1回に5時間ぐらいかかってしまいます。
 
お客様からの注文は多品種微量の傾向がだんだんと強くなっていきますし、このままでは十分にお客様の要望に応えることができない、当社も商売にならないということで、20年ほど前、当社の経営方針である多品種微量生産に合った自前の機械作りをスタートさせました。今回表彰いただいた“ゆったり自 働加工設備”のTCM(ツー・チャック・マシン)は、いわばその最新の成果です。
 この自前の機械を社員が協力して作り上げたこと、そして他社にないモノ作りのコンセプト“多種要るだけ微量生産”を実現したことが、今回の受賞で認められたと思いますので、私としても大変うれしく思っています。
 

「良い製品は 、良い環境から」という考えから
誕生したガーデンファクトリー 『関工園』


『関工園』内にはプールや音楽ホールも!


 

   

 

 多品種微量生産を可能にしたTCMによる加工について、そのメリットを含めて教えていただけますか。
 
岡本社長:  そもそも、プーリは直径、溝の種類、溝の数の違いから、組み合わせにより約3,000種類あります。多品種微量生産となると、一般の工作機械では段取り・調整ばかりに時間を使ってしまいますが、TCMの場合は、基本的にコンピュータプログラムを変えるだけで済み、10秒から数分程度で段取り・調整ができます。ですから、午後3時までの注文であればその日のうちに出荷ができますし、在庫も従来は1ヶ月分程度あったものを数日分にまで激減させることができました。設備コストも、大量生産仕様の3台の機械設備をTCM1台にすることで大幅に削減できますし、生産コストも工程間のマテハンや仕掛かりの無駄を減らすことができ、1/2以下を実現することができました。
 


3000種類以上もあるプーリ


配送センター
午後3時までに発注があれば即日出荷

 


岡本社長:

 多品種微量生産への移行やTCMを自社開発されたきっかけはなんでしょうか。

 
25年ほど前、景気が落ち込んだとき、在庫をチェックすると、ある製品は35年分、ある製品は20年分、といったふうに在庫の山になっている製品があり、倉庫の中は昼間でも薄暗いほどでした。このときはショックでしたね。右肩上がりの時代であれば、1種類のものを何千個、何万個作っても売れると思います。しかし、世の中のニーズが多様化し、必要な分だけしか買わないという考え方が徐々に広まってきました。そういう世の中の変化に対して、当社は、大量生産はやらない、多品種多量もできないということで、事業活動のドメインを多品種微量に決め、それに合うように会社を変えようと考えたわけです。
 それから、新製品開発も、多品種微量が必要とされるニッチ分野にだけ焦点を絞ったのです。たとえば、ボルト・ナットの分野でも、極めて限られた用途の特殊ねじが、ねじ市場全体の0.1%〜0.2%はある、それならこのニッチ分野でトップを目指そう、そういう発想です。
   いっぽう、大手工作機械メーカーの市販の工作機械は、1台数千万円もする大量生産用の機械です。当社の多品種微量生産に使おうとしてもその能力の1%も使い切れず、コスト高になってしまいます。非常にもったいないわけです。そこで、当社が目指す多品種微量生産に見合う機械を自社で開発・製作するしかないと考えたわけです。
   



岡本社長:

 TCMを自社開発する上で苦労された点などはありますか。

 
苦労した点というか苦労のはじまりは、世の中に多品種微量生産のための機械設備がないということです。先にもお話しましたが、そもそも、世の中の機械設備は大量生産するためのもので、工作機械メーカーでもない当社が多品種微量生産の機械を作るということは、それこそゼロからのスタートということでした。TCMの開発でも、アイデアが浮かんだとき簡単なポンチ絵を書いて、自機開発部のスタッフにこんな機械はできないかとか、実際に部品も購入して作るようにと提案もしました。
 
小さな会社では何でも一人でこなす人材が必要だと常々思っています。また、社員には、知恵と日頃の鍛錬の技を駆使してモノ作りに挑戦する“ハイテク職人”になってほしいと考えています。社長とはいえ、素人のポンチ絵を示されてこれを作れといわれて、設計図なしでTCMを作ってのけた自機開発部のスタッフは見事としかいいようがありません。大変苦労したと思います。
 余談になるかもしれませんが、こうした苦しいときなどに社員が失敗することもありますが、私は絶対に怒らないようにしています。上のものが社員の失敗をとがめると、社員はやる気を失って、けっして会社にとってプラスにはなりません。アイデアを描いただけの私のポンチ絵も、社員の中でおもしろい提案だとの意見になって上手く浸透していますし、現場主義を実践して、社員とのコミュニケーションも上手くでき、結果として社員の能力を引き出せるようになりました。今では、社員自ら機械設備を直せるようになったり、たくさんの新しい情報を得るために自らアンテナを広く張ってくれるようになっています。
 


第1回「ものづくり日本大賞」優秀賞を受賞
するきっかけとなった岡本社長のポンチ絵


機械設備は自社開発・自社製作


プーリ加工機「TCM」
 

       

 

 本日お伺いして知りましたが、工場というといかにもユニホームといったものを採用している企業が多いと思いますが、御社ではロゴ付きポロシャツがユニホーム替わりになっているようですね。こうした社員の働く環境面への取り組みというものも御社の人材育成の一環と思いますが、差し支えなければ御社の社員への教育といいますか、人材育成についてお話をお聞かせいただけますか。
岡本社長:

ユニホームの件は、偶然もあって現在に至ったというのが真相です。昔、1枚100円のTシャツを80円で買わないかと持ちかけられたので、思いきってたくさん買ってNBKのロゴを付けて社員に配ったことがきっかけです。結果、大変良かったと思っています。今では、ポロシャツ、トレーナー、ブルゾンがあり、それぞれに豊富なカラーバリエーションを揃えています。
 
社員教育については、当社では、自己研鑽をサポートする“マイスター制度”として、資格取得のための費用は全て会社が負担し、資格を取得した後には、資格の種類に応じて、毎月500円から5万円の手当を出しています。良いモノを作るには、社員自らが進んで取り組む姿勢が大切で、そのための環境整備が重要だと思っています。また、多品種微量のモノづくりを進めていくうえで、コミュニケーション能力は益々重要となります。つまり、微量の製品の付加価値を上げるうえでサービス的要素が必須です。安全・安心な品質のモノを提供することはもちろんのこと、社員がお客様のニーズを読み取り、それに細かく応えていくという取り組みが不可欠だと思います。
 30年ほど前からずっと欠かさず続けていることですが、一緒に働く社員のことをよく知ることが重要だと考えて、すべての社員の誕生日には本人に、また結婚している場合は結婚記念日に奥さんあてに、手紙付きのプレゼントを渡しています。それから、家族の

 


カラフルなロゴ入りポロシャツを着た社員による   ディスカッション風景


社員とのコミュニケーションは何よりも重要

  人にもいろいろな行事、たとえば関工園での夏のプールサイドパーティーや飛行機2機分にもなる海外旅行などに参加してもらい、社員だけではなく、その家族も含めて、ファミリーというか仲間というか、そんなふうになればいいなと思っています。ただ、社員一人一人の顔と名前を覚えられるのも200人くらいまでと思いますが、当社の社員も200人を大きく超えてしまい、違う意味で今は苦労しています。
         
 




人作りの場にもなる
プールサイドパーティー
 

 





岡本社長:

 御社では、社員の皆さんやその家族までもがいかに大切にされているかがよく分かりました。ところで、こちらのガーデンファクトリーと呼ばれている『関工園』の雰囲気、環境はとてもすばらしいですね・・・。

工場でもあり、かつ公園でもあるガーデンファクトリーという『関工園』のコンセプトは、実は岐阜から関市に移転する当初から考え付いたものではありません。岐阜からここに移って来た1974年当時、 建設される工場が“鋳物工場”ということで近隣住民の方などから、どういう工場なのかとか、地域環境に悪影響はないのかなどの説明を求められたり、意見交換をする機会
  がありました。当時は地球環境保護が今日ほど大きな問題として意識されてはいませんでしたが、こうした貴重な経験をさせてもらったことが、私自身の環境への意識を向上させる良い契機となり、結果としてこのガーデンファクトリー『関工園』ができあがったわけです。当時、県内企業では初めて市町村(関市)と当社との間で公害防止協定も締結しました。
 

 最後に、今後の御社の事業・経営ビジョンについて教えていただけますでしょうか。
 
岡本社長:

これからも、当社は他よりも“良いモノ”を“少し安く” “少し早く”作れるよう取り組んでいきたいと思います。不況の時でも、“良いモノ”を作り続けていれば、少し高くても買ってもらえると信じています。
また、海外のお客様にも、日本の品質の良さと、お客様が必要とするモノを、そのときに、要るだけお出しするという“寿司バーコンセプト”でもって当社を理解してもらいたいと努力しています。ひとつひとつ丁寧に、手際よく、腕をふるう寿司職人のように仕事をする“寿司バーコンセプト”は必ず世界中で評価されると思っています。

 


コンセプトは「寿司バー」

       

 

本日はお忙しいところありがとうございました。今後の御活躍を祈念申し上げます。
      会 社 概 要
会社名: 鍋屋バイテック株式会社
本 社: 岐阜県関市倉知向山4909−55
創 業: 1560年
  設 立:   1940年
代表者: 代表取締役社長 岡本太一
事業内容: 伝動・制御機器の開発・製造・販売


  資本金:   2億4600万円
  従業員:   280名
  URL:   http://www.nbk1560.com/
  TEL:   0575−23−1121
  FAX:   0575−23−1129

 


岡本 太一 社長

 

                              第1回「ものづくり日本大賞」に関するプレスリリース資料(平成17年8月)
        取材:平成18年6月5日 総務課 情報公開・広報室 
 



 中部経済産業局 総務課 情報公開・広報室

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